軍拡の悪循環に陥りそうな東南アジア

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 ある国(A)が軍事拡大に動き出せば、その周辺国も軍拡に動き出す。つまり、周辺国にとってはAの軍拡は脅威になるため、周辺国はAに対抗しようと、軍拡を強めるわけだ。
 現在、中国の軍拡は急速に強まっており、世界は中国の軍拡の動きに目を光らせている。これまでのアメリカがトップの世界のバランスが崩れようとしている中で、世界の国々は今後の展開を見極めようと注視し、自国の今後の戦略に役立てようと必死になっている。
 一つの国が軍拡に走れば周辺国に……そして、世界へと影響していく。これは、軍拡に対し、さらなる軍拡と……悪循環に陥りやすい。つまり、軍拡の競争というサイクルが、一つの地域から周辺へとドミノ倒しに展開する危険性を持っているのだ。
 問題は中国の軍拡だけが脅威ではない。今、東南アジアでも軍拡の動きが目立ってきている。その背景の一つは、経済だ。各国の財政余力の拡大が武器・兵器の近代化や増強に充てられ、周辺諸国を刺激する。東南アジア諸国連合(ASEAN)で最も軍備増強が進むのはシンガポール。同国は世界で5番目の武器輸入国だという。シンガポールの他に軍拡が目立つのは、インドネシアやタイ、ベトナムも。それだけではなく、マレーシア、フィリピン、カンボジアもだ。
 さらに、この軍拡の状況に、世界の名だたる国の動きが影響を与える。つまり、アメリカ、中国による影響だ(ロシアも)。アメリカは最近、アジア重視の戦略に転換し、アジアへの影響力拡大を図っている。それは、中国の軍拡の影響が脅威になってきているためでもある。
 そこで、アメリカ、中国はそれぞれ、東南アジアの国々に影響力を強めている。東南アジアの国々への武器・兵器のやり取りや軍事訓練などの動きを強め、軍拡競争に拍車をかけている。
 軍拡競争の活発化に、それぞれの国同士の未解決なトラブルといった火種が、東南アジアの不安定化につながっている。

軍拡競争を抑えようと集まった

 こうした状況を何とかするため、ASEANは5月29日、カンボジアで「ASEAN国防相会議」を開催した。
 会議では、軍事上の意見交換の機会を増やし、情報の透明性を高めるため、ASEANと日本やアメリカ、中国など域外8ヵ国が開く「拡大ASEAN国防相会議」の開催回数を3年に1回から、2年に1回に増やすことが決まった。これは、域内国とアメリカや中国などの域外国とも情報交換が図れ、議論することで、理解を深める狙いがある。
 その他にも、詳細は明らかになっていないが、軍事行動の協調を図るため、安全保障分野の連結性を高める「ASEANマスタープラン」の作成を検討することになった。安全保障分野での協調行動を加盟国に促すもので、加盟国間で地域の国防戦略の共有化を目指すとみられる。
 東南アジアの軍拡競争による緊迫化を抑えるため、ASEANは動き出している。しかし、グローバル・レベルのアメリカと中国の動きが、この問題の早期解決を難しくもしている。
 ただ、お互いが話し合いの場を持たず、お互いの状況を知らず、疑心暗鬼だけが膨らんでいく状況は回避している。

【参考資料】

・「東南ア 軍拡歯止め探る ASEAN国防相会議で合意 背後に米中 難題多く」
伊藤 学(プノンペン)(日本経済新聞 2012年5月30日(水))
・「カンボジア国防相 「相互理解深める」」
(日本経済新聞 2012年5月30日(水))

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