原子力発電所と環境のつながり~デメリット編~

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 3月11日の東日本大震災により、福島第1原子力発電所の事故が発生。未だにその行方は不透明なままだ。福島第1原発事故をきっかけに、今、全国の原発に対し、厳しい目が注がれている。

 日本全国の3分の1の電力を供給する原発だが、その仕組みはどうなっているのか。
 原発が整備される前は、火力発電が主な電力供給の主役だった。この火力発電の仕組みは、パイプの中に水を流し、その水を外から、石油・石炭・天然ガスなどを燃やして温め、沸騰させる。噴き出した蒸気で、タービン(羽根車)を回す。そのタービンに発電機が繋がっており、電気を起こすというわけだ。
 実は、原発もやっていることは同じだ。圧力容器という繭のような形をした圧力容器に、ウランを詰めた燃料棒と言われるものがある(炉心)。炉心でウランが燃えて、この熱で水を沸騰させ、蒸気にして、タービンを回して発電する仕組みだ。

海を暖める仕組みに…

 この原発は、少ない材料で大量のエネルギーをつくること、二酸化炭素排出が極めて少ないこと、といったメリットがあり、これまで日本の国策として原発事業が展開されてきた。しかし、3・11によりこれまで原発に対しての厳しい意見が無視されてきた懸念が現実となってしまった。
 原発が与える影響は、事故によるものだけではない。原発の仕組みによる環境への影響もある。原子炉の水は沸騰し、蒸気でタービンを回し、海から引き込んだ冷たい海水により冷却され、原子炉へ、という循環になっている。つまり、生み方引き込んだ冷たい海水は発電所から海に出す時は温度が高くなっており、ひいては海の温度を上げることになる。それは1秒間に70トンの海水を原発に引き込み、発電所内で温度は約7度上がり、海に流している。日本には現在、54基の原発があり、それらが排出する約7度温かい海水は年間約1,000億トンにもなるという。ちなみに、全国の河川の流量は全部で年間約4,000億トンになるそうだ。

 ただ、原発推進の波が強まった時は、火力より魅力にうつったことだろう。
 2009年度の日本の総発電量8,590億キロワット時のうち、原発の電力量は2,798億キロワット時で、仮に同じ電力を石油で発電すると二酸化炭素の排出量は1.85億トンにもなるという。これは、09年度の二酸化炭素の総排出量約12億トンの実に15%に相当する。
 原発の停止が現実的になった場合はどうするのか。国内の商業用原発の全54基を停止して火力に切り替えるとすると、二酸化炭素排出量が1年間で、1.8億~2.1億トン増加すると、環境省は試算する。東京電力の試算によると、福島第1、第2原発の10基を停止、火力で代替した場合、排出量は年約4,000万トン増え、国内の排出量を約3%押し上げる。なお、浜岡原発を停止した中国電力も年1,200万トンの排出増を見込んでいる。

 こうして見ると、二酸化炭素排出による温暖化問題に関して、原発は大きなメリットがあるように見える。ただ、そこには原発を作る・廃炉にする内容は含まれていないようだ。それに、事故が起これば、環境や人にも深刻な影響が出ることになるというのは、チェルノブイリ、スリーマイルの事故でもわかるだろう。
 それに、資金としても課題がある。原発の建設費は、一基作ると5,000億から6,000億円かかり、建設期間も長い。核燃料を備蓄、研究開発などにも資金が必要になってくる。
 そして、原発の問題点は、燃やしているのがウランであるということだ。そのため、核分裂生成物という放射能ができる。電気をつくるためには、一つの原発が1年動くたびに1トンのウランを燃やすことになるという。

 原発はこれまでメリットばかりが強調されてきたが、その背景には大きなデメリットも存在することを改めて知ることになった。原発は人と環境に大きく影響するもので、私たちの使用する電力に深く関わってくる。
 今後、様々な要素の生活と原発の関わりが、活発に議論されることになる。

【参考資料】

・「小出裕章の放射能の話」
小出 裕章(DAYS JAPAN 2011.8)
・「それでも日本には原発が必要だ」
諸葛 宗男(東京大学公共政策大学院特任教授,日本原子力学会社会環境部会長)(Newsweek 2011.8.5 別冊)
・「フクシマ後に吹き荒れる脱原発の嵐」
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン支局長)(Newsweek 2011.8.5 別冊)
・「原発なき世界の危険な未来図」
ロバート・デュジャリック(テンプル大学ジャパンキャンパス・現代アジア研究所所長)(Newsweek 2011.7.27)
・「今こそ原子力から脱却から」
飯田 哲也(環境エネルギー政策研究所所長)(Newsweek 2011.8.5 別冊)
・「全原発停止 CO2排出 16%増 90年比 福島10基では3%」
立山 清也(毎日新聞 2011年7月13日(水))
・「福島原発は廃炉にできない」
千葉 香代子(本誌記者)(Newsweek 2011.7.27)
・「誰も知らない 核のゴミのゆくえ」
稲垣 美穂子(DAYS JAPAN 2011.8)
・「米有識者委 「中間貯蔵施設を」 使用済み核燃料 「多国間管理」も提言」
会川 晴之(ロンドン)(毎日新聞 2011年8月1日(月))
・「世界を読む 管理 10万年先まで フィンランドに建設中の最終処分場 透明手続きで実現 課題は危険性伝承 各国で計画難航」
(毎日新聞 2011年7月31日(日))
・「世界を読む 米「年内覚書締結を」 モンゴル核処分場計画 UAEも参加 安全保障前面に」
会川 晴之(オルキルト(フィンランド南西部))(毎日新聞 2011年7月31日(日))

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