オスロ条約VS…クラスター爆弾問題

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 クラスター爆弾の使用、製造、保有を禁じる条約「クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)」が2010年8月に発効し、クラスター爆弾が非人道的兵器だとの認識が国際社会に定着してきた。
 このクラスター爆弾。数個から数千個の子爆弾を広範囲にばらまく爆弾だが、大量の不発弾が発生することで、紛争後も多くの市民を殺傷していることが問題になっていた。子供がおもちゃと勘違いして爆発、知らないうちに爆弾を踏んで爆発…などといったケースが続発し、いってみれば地雷のような脅威がある。
 この条約は、加盟国に条約発効後8年以内の備蓄の廃棄を定めており、加盟国は日英仏など111カ国に上る。

 クラスター爆弾を禁止しようとする動きは活発になったわけだが、その流れのきっかけになったのが、対人地雷の禁止条約。対人地雷の禁止条約は当初、部分的な禁止条約しか作れなかったため、非政府組織やカナダなどの有志国が、特定通常兵器使用禁止条約(CCW)とは別枠で全面禁止条約を提唱し、1997年に対人地雷禁止条約が締結されたが、米露中は参加しなかった。しかし、加盟国は158と国連加盟国の8割に増加し、保有国は事実上、地雷は使えなくなった。
 このプロセスを踏襲したのがオスロ条約である。

 しかし、オスロ条約の欠点事項として、クラスター爆弾の85~90%を保有する米露中が参加しないことから「実効性が不完全」であるということ、クラスター爆弾に有効性があるといったことから、クラスター爆弾の禁止緩和に向けた動きが米国などから活発になった。
 つまり、米国など非加盟国が中心となり、新型爆弾の保有や仕様を容認する新条約を締結するよう各国に働きかけたわけだ。
 この動きは、軍縮会議「CCW」締約国会議で活発になり、CCW加盟国の7割以上が新条約に賛同した形になった。爆弾の使用規制に強く反対してきた米国、イスラエル、インド、韓国の他に、オスロ条約を署名もしくは批准した日本、フランス、ドイツ、英国、イタリア、オーストラリアなども理解を示した。

新条約案の今後

 新条約案は、
・1980年より前に作られた古い爆弾を12年間の猶予を付けて禁止
・不発率が1%以下の新しい爆弾の使用を容認
という内容。つまり、低い不発率の爆弾を容認し、不発率の高い古い爆弾も最長で12年使えるということだ。
 そして、この新条約案でクラスター爆弾の禁止緩和を狙い、新条約案に賛同した背景には、「オスロ条約の義務に影響しない」などの付帯項目を付けたことも一因だ。
 条約についての一般的ルールを定めた「条約法に関するウィーン条約」により、ある条約に留保することを認めており、留保を表明した国はその部分に関しては当該条約から拘束されないという。ただし、クラスター爆弾の全面禁止を定めたオスロ条約は「留保を付することはできない」と定めているため、留保し得るのは新条約だけだ。

 オスロ条約に対して、クラスター爆弾の使用の選択を残したい側の新条約の動きが活発になり、CCW締約国会議で提起されたが結果、全会一致の支持が得られず廃案となった。
 しかし、楽観視できない。今回の動きは必ずしも通すことだけが目的ではなかっただろう。オスロ条約の効果を下げる効果もあったのではないだろうか。
 米国などは今回、市民の被害を考えて条約を作ろうとした「実績」を作ったことで、「何もしていない」とのオスロ条約側に反論でき、米国側からの視点からクラスター爆弾の問題を考えた動きを阻止したということで、今後の米国側の動きが活発になりやすくもなった。さらに、オスロ条約加盟国内での足並みが乱れたことから、その隙間を突く行為が今後も出てくるだろう。
 おそらく、今後米国側の動きは再度、動いてくるだろう。対人地雷のような環境に持っていくには、まだまだ時間がかかりそうだ。

【参考資料】
・「クラスター禁止 米軸に「骨抜き」案 新条約討議 新型爆弾を容認」
斎藤 義彦(ブリュッセル)(毎日新聞 2011年11月21日(月))
・「爆弾使用継続の“意思” 米に日本など理解 条約実効性への疑問から クラスタ禁止「骨抜き」」
斎藤 義彦(ブリュッセル)(毎日新聞 2011年11月21日(月))
・「矛盾する条約も参加可能」
真野 森作(毎日新聞 2011年11月21日(月))
・「クラスター 禁止条約脱退求めず 米高官「緩い条約と併存を」」
斎藤 義彦(ジュネーブ)(毎日新聞 2011年11月25日(金))
・「ジュネーブ会議 大量保有国が一斉賛成 クラスター禁止「骨抜き」 反対国へ圧力」
斎藤 義彦(ジュネーブ)(毎日新聞 2011年11月26日(土))
・「クラスター禁止「骨抜き」廃案 オスロ条約に支持加速も」
斎藤 義彦(ジュネーブ)(毎日新聞 2011年11月27日(日))

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