女性の権利~ノーベル平和賞受賞で~(上)

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 今年のノーベル平和賞が決まった。受賞者はリベリアのエレン・サーリーフ大統領、リベリアの平和活動家リーマ・ボウイー氏。そして、イエメンの民主活動家タワックル・カルマン氏の女性3人だ。女性のノーベル平和賞受賞は2004年のケニアの環境保護活動家マータイ氏(故人)以来だ。
 様々な差別が存在している現在、女性差別も例外ではない。これまでも女性への差別問題が取り組まれてきたが、残念ながら現在も深刻な状況は続いている。そうはいっても、状況が前に進んでいないとはいえず、少しずつだが前進しつつある。
 世界でも女性の指導者が登場しており、世界各国で大統領・首相など政治トップを務める女性は20人以上になるという。代表的なのは、ドイツのメルケル首相や1月に就任したブラジルのルセフ大統領、タイのインラック首相。アメリカのヒラリー・クリントン氏も大きな存在だ。過去には1979年に登場したイギリスのサッチャー元首相が挙げられるだろう。
 こうしたことは女性の権利向上が少しずつ改善されて、日常にも大きな効果をもたらすことにもなった。

受賞者の貢献

 エレン・サーリーフ大統領は、アフリカで初の女性大統領となったことで注目が集まった。サーリーフ大統領は79~80年財務省を務め、80年の軍事クーデターで米国へ亡命。92~97年に国連開発計画でアフリカ局長などを歴任、06年に大統領に就任した。
 17か国が一斉に独立し、「アフリカの年」と呼ばれた60年から半世紀以上が過ぎても、アフリカ諸国では中東のアラブ諸国以上に長期独裁と腐敗、暴力がはびこってきた。リベリアは1847年に米国で解放された黒人奴隷を中心にアフリカ初の共和国として独立。国土は日本の約3分の1で、人口は推定410万人。1989年に始まった内戦は14年間も続き約27万人が犠牲になったという。リベリアはアフリカの中で最も悲惨な内戦を経験し、女性の人権を含むあらゆる人権が虐げられてきた。そんな中、サーリーフ大統領は平和維持や経済の発展を進め、女性の地位向上に取り組んできた。

 リーマ・ボウイー氏は07年からアフリカのNGO「平和と安全の女性ネットワーク」代表を務め、サーリーフ氏が大統領に選ばれた選挙につながる市民運動を主導し、民主主義や女性の地位の向上に取り組んできた。

 タワックル・カルマン氏はイエメンの人権団体「束縛なき女性ジャーナリスト」代表として、サレハ現政権に対し平和的な抗議活動や女性の権利擁護運動を率いてきた。チュニジアでの政変で始まった「アラブの春」に先駆けて、若者団体の民主化デモを主導、7月には民主化勢力の一部を糾合し、「サレハ後」の民主化促進を目指す組織を発足させた。ジャーナリストでもある。
 タワックル氏が活動してきたイエメンだが、90年に南北イエメンが統合され、人口は推定2,426万人。多数派はイスラム教徒のアラブ人。サレハ大統領による33年間もの独裁体制が続いているが、「アラブの春」を機に反政府デモが活性化した。

 受賞した3人の女性は女性の権利向上に取り組み、民主化にも貢献。ここ数年、アフリカでは高学歴の女性が非常に高い地位に就き始めているという。女性の権利向上は政治体制の民主化を準備するという側面を持つという。
 今回の女性3人へのノーベル平和賞受賞は吉報だろう。個人の平和賞受賞者101人のうち、女性は15人に増えることになった。
 これまで女性差別の問題は課題として挙げられ、現在も課題としたままだ。しかし、今回のノーベル平和賞受賞は、その課題に再度、取り組む姿勢に後押しすることになるのではないかと思う。世の中には様々な差別があるが、その差別という意識を認識して受け止めて、課題に対して改善していく方向を歩むべきだろう。

(つづく)

【参考資料】

・「ノーベル平和賞 女性権利向上 3氏に リベリア・イエメン 「非暴力の闘い」」
笠原敏彦(ロンドン)(毎日新聞 2011年10月8日(土))
・「クローズアップ2011 女性進出 民主化の土台 ノーベル平和賞 「アラブの春」後押し 話題性重視を「修正」」
(毎日新聞 2011年10月8日(土))
・「非暴力で独裁に対抗 ノーベル平和賞 カルマン氏 民主化へ決意新た」
和田浩明(カイロ),鵜塚健(テヘラン),杉尾直哉(カブール)(毎日新聞 2011年10月8日(土))
・「国際社会からの激励」
(毎日新聞 2011年10月8日(土))
・「ノーベル平和賞、女性3氏 リベリア大統領ら 地位向上で功績 途上国でも存在感 女性指導者、相次ぎ誕生」
上杉素直(パリ)(日本経済新聞 2011年10月8日(土))
・「NewsBeast ノーベル平和賞、女性3人それぞれの戦い」
(Newsweek2011.10.19)

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