地球環境をめぐる(4)

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 環境問題には様々な要因がある。
 地球規模で見るべき問題の一つに、大気汚染物質が地球を巡る『越境汚染』だ。北極を中心にして北半球を巡回する偏西風は、雲や水蒸気だけではなく大気汚染も運ぶ。日本に降る雨も、地球的な視野で見れば、遠く東南アジアやインドからモンスーン(季節風)に乗ってやってきた水蒸気だ。梅雨時の日本の雨の10粒に1粒はインド洋から、また4粒くらいは南シナ海や太平洋から運ばれてくるという。
 実は、中国で煤煙を出している工場の何割かは日本の企業でもあることを考えれば、世界の工場が中国に集まり、世界中で分散して出るはずのものが中国で出ているというだけのことである。つまり、新興国の排出量増加が問題化されているが、先進国も加担している格好である。
 米シンクタンク・カーネギー研究所は、113ヵ国・地域を対象に、家電製品や衣料品など57分野での生産に伴うCO2排出量(04年)を調べた。製品の最終消費国を貿易統計などから割り出し、製品の移動先にCO2も移動するとみなし、その「貿易収支」を集計した。その結果、CO2輸入が輸出を上回る量が最も多かったのは米国の6億9,900万トンで、2位の日本は2億8,400万トンの「輸入超過」。一方で、『世界の工場』といわれる中国は輸出が輸入を11億4,700万トン上回った。これは日本の年間国内排出量(約12億トン、輸送やオフィス・家庭からの排出を含む)に匹敵する。

アマゾンが抱える問題

 南米アマゾン川流域に広がる世界最大の熱帯雨林、アマゾン。
 国際機関の報告では、熱帯雨林は1960年代と比べて20%消失し、伐採された森林の70%は放牧地へと転換されているという。アマゾンの森は牧場や大豆、サトウキビ畑の造成、鉱物採掘等のため、ここ数年、年間約26,000平方キロメートル(四国の約1.5倍)という広大な面積が消失している。森を焼いた跡地で収穫した大豆や牛肉は海外に輸出され、先進国に暮らす人々の便利で豊かな生活を支えるために消費される。
 アマゾンの森には先住民だけでなく、野生生物が多く生息しているが、森が焼かれることにより、これら多数の動植物も消滅し、現在1日に約30種以上が絶滅しているという。この中には、もしかしたらエイズ、がん等の病気を治す薬草が含まれているかもしれない。その根拠は、西洋医学に使用する薬の4分の1は、熱帯林に群生する薬草が原料になっているからだ。
 鉱物(鉄・ボーキサイト、金等)採掘に伴う環境整備として森を壊し、道路拡張や鉄道を敷設、労働者が住む町の建設等が開発という名の下に行われ、加えて政府が推進する経済成長加速プログラム(PAC)の一環として巨大ダムの建設も計画中だという。このPACは2010年までに多額の投資を要し、連邦政府、地方自治体、民間企業等が協力し、開発環境整備を拡充、近代化し、さらなる経済成長を目指すことが目的である。しかし現実には、この広大な熱帯雨林を燃やす際に発生する二酸化炭素量が、ブラジル国内で排出する二酸化炭素の80%を占め、深刻な問題になっている。
 アマゾンの森は地球上の酸素の4分の1を生産している場所でもあり、森が減少すると温暖化現象に拍車をかけ、これは地球全体にも影響を及ぼすことになるのである。それに加え、約500年前にポルトガル人が侵入する以前は、1,000万人近い先住民がブラジルの地に存在していたが、侵入者たちによる殺戮や持ち込まれた感染症、環境の激変による疾病の流行で、現在では約38万人にまで減少した。現在、ブラジルの先住民はブラジル政府が認定した保護区に暮らしているが、常に開発の影響で居住地域が狭められる危機に置かれている状況だ。

 20世紀に人類の水消費は7倍に増大したが、それでも地球上に降る雨はその30倍もある。
 FAO(国際連合食糧農業機関)の統計では、世界中で7億人が「都市農業」で日々の食糧を賄っている。200万都市ハバナは有機農業で食糧危機から立ち直り、シンガポールや上海のように大都市でも食肉や野菜の8割以上を自給する例もある。

原発にかわるもの

 世界の風力発電容量は、既に1億5千万キロワットに達しつつあるという。世界の原発200基以上の全発電容量が4億キロワットだから、風力だけで原発の3分の1以上になる。この勢いでいけば、風力や太陽光の不安定さを考慮してもなお、10年以内に自然エネルギーだけで世界の原子力発電を代替する規模となるだろう。
 太陽光発電においても、特に発電効率の高い乾燥地帯や砂漠でメガソーラーファームの建設が急増している。世界の砂漠の4%を太陽電池で覆えば、人類のエネルギー需要が賄えるとも試算される。「不毛の大地」と言われるサハラ砂漠だが、日差しが強く、太陽光発電の効率が非常にいい。そのほとんど無料のエネルギーを、送電ロスのない超伝導網でヨーロッパまで供給する計画もある。砂漠が21世紀の油田になるわけだ、
 新たな取り組みもされている。砂漠の砂に豊富に含まれている珪素(シリコン)で太陽電池用の半導体を製造し、アフリカを太陽電池工場にする計画もある。今まで石油を買うためだけにODAを使っているような国々が、地場の資源でソーラーパネルを作り、太陽光発電をして、そのエネルギーをヨーロッパにどんどん輸出できるようになれば、油田やダイヤモンドに頼らずとも、経済的に自立・発展する道はあるだろう。
 今、人類は石油換算で年間100億トンものエネルギーを消費しているという。太陽から地球に届けられるエネルギーは、その1万3,000倍(石油換算で約130兆トン)もある。つまり太陽エネルギーを1万分の1でもソーラーパネルなどで捕獲できれば、この地球上にエネルギー問題など存在しないはずなのだ。

森林伐採をやめない理由

 640km南のマト・グロッソ州はブラジル最大の農地になっている。森林を伐採してわずかな数の牛を飼うという生産的でない農業も営まれている。人工衛星を使って森林伐採を監視している研究機関の報告書によれば、昨年11月からの3ヵ月間で、同州の森林面積は270km2も減ったという。
 そうした中、アマゾン地域に住む人々の生活を向上させるため、政府は『プラノ・アマゾニア』と呼ばれる一連の政策を発表した。その中には熱帯雨林内の道路建設を増やしたり、大規模な水力発電所を建設するなどの計画が含まれており、いずれも森林保護論者たちの批判を浴びている。『プラノ・アマゾニア』には森林伐採の速度を鈍化させる対策も含まれているが、政府がそれを実行するのは難しいだろう。予算は少なく、監視すべきアマゾンの面積は拡大。おまけに伐採で利益を得ている者たちは、とてつもなく巧妙だ。
 熱帯雨林の伐採によって収入を得ている者は多い。州財務省の役人たちによれば、製材所に囲まれたパラ州の町、タイランディアでは、人口の7割が何らかの形で伐採に関係しているという。また、伐採業者は畜産農家と連携している。まずは伐採業者が良質な木を搬出し、その土地を焼き払う。畜産農家はそこに牧草をまき、牛を育てる。牧草地となった土地は急激に地質が落ちるが、そうなったら別の作物を育てる農家に売却し、伐採業者と畜産農家はさらに森の奥に入り、同じことを繰り返していく。熱帯雨林の伐採面積が、牛肉や大豆の価格と連動するのはそのためだ。

 アマゾン地域の約300の地方自治体を対象とした調査によれば、森林が伐採された土地は、短期的には経済的恩恵を受けるものの、すぐに元の低開発状態に戻ってしまうという。また熱帯雨林が伐採されれば、当然ながらブラジルの農業に不可欠な降雨量も減ることになる。
 これだけの風当たりを受けながら、アマゾンの伐採業者と畜産農家が手を引かない理由の一つは、副次的な収入が得られることにある。畜産農家は、畜産業とは別に土地開発を行っている。ジャングルの土地は無料で手に入るので、通常は農家にとって大きな負担となる土地代を払う必要がない。さらに彼らは、法的には自分のものではないその土地を、しばしば第三者に売りさばいて利益を得ているという。
 非営利の調査機関「イマゾン」によれば、アマゾン地域には、正当な権利書に基づいて私有されている土地は14%しかないという。残りの土地は偽の権利書か、単なる定住権に基づいて占有されている。

 パラ州の熱帯雨林地帯では、誰がどの土地の所有者かといった争いを巡って犯罪が起きている。人口6万7,000人のタイランディアの警察によれば、パラ州には金で雇えるガンマンがいまだに存在するという。2年ほど前は、週末に7件もの殺人事件が発生したこともあった。現在も週に2~3件のペースで殺人が起きるため、警察官たちは常に警戒態勢をとっている。この無法地帯化を止めるには、最近議会で承認された土地改革法案が有効かもしれない。新法が施行されれば、所有権をめぐる争いにブラジルの国家が介入することも困難になる。
 政府が土地の所有権を管理するのは、これまでと同様に容易ではないだろう。現在、その任を担当する政府機関のIBAMAは、今のところ、違反者に科した罰金の1%も取りたてられていない。法を破る連中は、法律を深刻な脅威とは感じていないかもしれない。米国とメキシコの国境よりもはるかに長いアマゾン地域の森林と農地の境界線を監視するのは困難だ。

 アマゾン川流域の熱帯雨林の広さがインドの国土に属している。そこで暮らすブラジル人は2,000万人で、総人口の10%を占める。住民たちは、蒸し暑くて疫病が多く、時には危険でさえあるこの土地で、生きていくのが精一杯の生活を送っている状況だ。
 環境運動家の多くは、境界に住む人々により実入りのいい仕事を与えることが、この問題の唯一の解決策だと考えている。
 アマゾン川流域の経済発展を促すには、熱帯雨林に多くの道路を建設することが必要だとブラジル政府は考えている。しかし、この考えには論議を呼んでいる。森林破壊の約80%は、道路から50km以内の場所で起こっているからだ。伐採が道路の両側から森の奥に向かって進んでいることがすぐにわかる。よい道路の周辺ほど、森林破壊は深刻だというのだ。
 ただし、道路の建設は環境破壊につながるかもしれないが、アマゾン地域の住民の生活を向上させるには、必要なことかもしれない。

<参考資料>
・「希望の地球へ もうひとつの地球 1 石油を必要としない未来」
竹村 真一(DAYS JAPAN 2010.4)
・「希望の地球へ もうひとつの地球 3 私たちは皆つながっている」
竹村 真一(DAYS JAPAN 2010.4)
・「希望の地球へ もうひとつの地球 4 20世紀的貧困からの脱出」
竹村 真一(DAYS JAPAN 2010.4)
・「失われた森林、奪われた先住民 消えてゆくアマゾン」
南 研子(DAYS JAPAN 2010.4)
・「CO2「輸入」日本2位 製造国・地域での排出量」
江口 一(毎日新聞 2010年5月30日(日))
・「経済と環境の両立を目指して…“地球の肺”アマゾンを守れ!」
エコノミスト(UK/COURRiER Japon 2009.11)

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