海賊問題はどうなっているのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 つい先日のことであるが、海賊問題がメディアで騒がれたばかり。現在は、その問題は残りつつも、話題は違う話題になってしまったが。

 果たしてこの問題は今後どうなっていくのだろうか。

「ソマリア海賊の血が流れた日」
マーク・ホーゼンボール、マイケル・イジコフ(ワシントン支局/Newsweek 2009.4.22)

 海賊が過激になっているという。
 「最近まで海賊が船員に暴力を振るうケースは極めてまれ」だったという。というのは、「この1~2年でソマリアのアデン湾で海賊が商船を襲って船員を人質に取り、身代金を要求する事件が多発するようになったことは事実だが、ほとんどの場合、船荷と船員は無傷で解放されていた」という。
 「海賊たちは『交渉戦術』の一環として、船長を怯えさせよう」と船長を拘束して「処刑のまね事」をする場合があったが、その船長は危害を加えられることなく解放された」という。
 この交渉戦術が通用しなくなれば、他の方法になるだろう。

 ソマリアの海賊が国際問題になっている。日本でも自衛隊を派遣するなどして話題になった。
 「東アフリカのソマリア沖でアメリカの貨物船マースク・アラバマ号が海賊の襲撃」を受け、フィリップス船長が人質に取られた。「4月12日の夕方、SEALs(米海軍特殊部隊)が海賊3人を射殺」し、リチャード・フィリップス船長を救出した。
 「海賊の1人が船長に銃口を突き付けているように見えたので射殺に踏み切ったと、米当局者は説明」。「海賊の射殺を許可したバラク・オバマ大統領の判断は、アメリカ国内で政治的立場の違いを超えて高く評価されている」という。
 アメリカの政府関係者や評論家の見方はこうだ。 「SEALsの投入は、フィリップス船長を救出するだけでなく、海賊を牽制する上で適切で必要な措置」だったという。
 「ヒラリー・クリントン国務長官も15日、海賊の逮捕・訴追を推し進めるべきだと発言」。さらに、「海賊の資金の追跡と資産の凍結・没収を検討する意向を示した」という。

 「身代金の受け渡しは大抵現金で行われる」という。
 クリントン国務長官が唱える資金追跡・資産凍結は「銀行を通して送金することはない」ということもあり、簡単にいかないかもしれない。
 最近では、「船の上に身代金をパラシュートで投下するよう海賊が要求する場合が多い」という。しかもカネが海賊の手に渡ってしまえば資金の流れを追跡することはもはや不可能」だというから事態は深刻だ。

 アメリカの海賊への対応は適切だったのだろうか。
 「今回の船長救出作戦の結果、暴力がエスカレートするのではないか」という声が出ている。「海運専門家の間には、アメリカの強硬策が海賊の攻撃性を強め、この海域を航行する商船の危険がむしろ高まりかねない」というのだ。
 「救出作戦の抑止効果を米海軍当局者は強調しているが、軍事介入が海賊の凶暴化を招きかねないと、海賊に関する情報を収集している国際海事局(IMB)は警告を発してきた」。
 つまり、「海賊対策で武力を用いれば、海賊と国際社会の双方にとって事態の重大性が高まる」ということだ。

 ソマリアの海賊問題は深刻なレベルに達している。
 ソマリアの海賊は「今や海賊行為が一大ビジネス」となっており、「この国で繁盛している数少ない商売」だという。
 「コントロール・リスクスの推計では、ソマリア沖の洋上で活動する『プロ』の海賊は300人ほど。それを地上でサポートする人間が同じくらの人数」がいるという。
 海賊への対策は困難を極めそうだ。
 「海賊を1人殺せば、別の1人がその穴を埋めるだけのこと」。しかも、「海賊を100人殺せば、新しい海賊がその何倍も現れる」。だからといって「海賊を片っ端から射殺し始めれば、(ソマリアの)人々の反発が強まる」という悪循環にも。
 事実、「12日の救出作戦の後、ソマリア沖では海賊による襲撃が相次いでいる」という。
 海賊の戦術は次第に洗練させてきているという。
 「最近は商船を乗っ取ると、沿岸にある拠点の村のそばまで移動させる(商船の船員はほとんど丸腰なので制圧するのは簡単)。陸で待っていたメンバーが船に乗り込み、舟と船員を支配下に置いて、船主と保険会社に身代金を請求する」という手はずだという。
 陸と海での連携ができている。

 海賊対策は難航を極める。海賊対策はいくつかあげられるが、「アメリカやそれに同調する国々は、ソマリア沖への艦艇の派遣を増やそうとしている」。
 これが功を奏するかというとそうはいかない。「米政府関係者も認めるように、問題の海域はあまりに広く、通行する船舶の数はあまりに多い。かなりの規模の海軍力を展開させても海賊を根絶するのは難しいだろう」。
 「海賊取り締まりの第1歩を踏み出すだけでも60隻の艦艇が必要」だという。しかし、「海賊対策のためにこの海域に派遣されている艦艇は20隻に満たない」のが現実だ。

「海賊退治はサルコジに学べ」
クリストファー・ディッキー(パリ支局長/Newsweek 2009.5.6/13)

 海賊対策を考える上で重要なことがある。
 「海賊行為の容疑者を、管轄権がどの国にあるか」ということだ。「長期に拘束すれば、複雑な法的問題が生じるから」である。

 海賊対策ついて、「主要国の間では、海賊相手に大国が本気になるのは得策ではない」という見方もある。
 「アメリカ軍艦相手に10代の子供数人が戦っている―ソマリア人はこんな光景を思い浮かべ、海賊たちを英雄視する傾向にある」という。
 「特にアメリカが過剰に反応すれば、海賊と彼らの汚れたカネが国際テロ組織アルカイダに共鳴するイスラム過激派組織に流れるのを助長しかねない」という。
 つまり、対テロ戦争に油をそそぐことになってしまうのではないかということだ。

「フランス国旗を海賊が嫌う理由」
クリストファー・ディッキー(中東総局長/Newsweek 2009.4.22)

 海賊問題は深刻だ。「海賊はヨーロッパに強力な情報網を持ち、どの船をいつ、どこで襲うかを綿密に計画している」という。

 では、海賊問題をどうやって解決するか。海賊対策を武力などで厳しくするだけでは難しいのが現状かもしれない。
 武力を用いれば、戦闘になるわけだが、「戦闘は素人の船員が命を落とす危険性もある。そのため、船主や海上保険業者は、乗組員や船荷に保険をかけておき、いざとなったら身代金を払う方が、海賊と戦ったり軍艦に助けを求めるより安全で安上がり」だという。「海賊は事業コストの一部だとみなされている」という。

 「これまで海賊は商船を乗っ取るだけで、船員に危害を加えることは少なかったが、最近は奇襲攻撃まがいの乱暴なやり方が目立ってきた」という。
 その背景の一つに、各国のばらばらな海賊対策があげられる。「各国がばらばらに自国民の保護や救出に取り組むだけでは、この問題は解決できない」だろう。
 「海賊対策の基本は単純」である。「第1に、交渉で相手の要求に耳を傾けること」。そして、「第2に、海賊が人質を陸上に連れ去るのを阻止すること」だという。「陸に上がれば人質を分散させて隠す場所がいくらでもある」からである。

 海賊対策を高度化させる必要はある。しかし、海賊側も戦術を日々高度化させている。
 「ソマリアの海賊が組織を強化し、国際協力の進展を上回るスピードで戦術を高度化させていくことはほぼ間違いない」。
 対策を高度化しないと、いずれ、手に負えなくなる。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)