アラブメディア「アル・ジャジーラ」

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 マスメディアの衰退が目に余る。厳しい経済状況はマスメディアにも大きく影響している。そんな中、アラブで大きな影響力を持つようになった「アル・ジャジーラ」。その勢いは本物だろうか。

 アラブ世界のニュース放送局であるアル・ジャジーラは、1996年に開設された。本社はドーハ。視聴者数は明らかになっていないが、アラビア語放送はアラブ地域の半数の世帯で、英語放送は120か国、2億5,000万世帯で視聴されているという。ドーハ、ロンドン、ワシントン、クアラルンプールにスタジオがあり、72か国に支局と撮影クルーを配置しているという(BBCよりも多いという)。
 このアル・ジャジーラができた背景だが、BBCはサウジアラビアの民間放送局と共同で、94年にアラブ地域のテレビ市場に参入した。しかし、サウジアラビア当局の検閲に抗議して18か月で撤退。そこで、自国に先進的なイメージを持たせたいと考えていたハマド・ハリーファ・アール=サーニは、アル・ジャジーラを開局。2006年には英語放送が開始した。
 カタールには、自由な選挙も、自由な労働組合も、言論の自由もない。そんな同国の首長ハマドは天然ガス開発で儲けた大富豪で、同局に年間10億ドル(約850億円)もの資金を提供している。彼は一族や政界の盟友とともに、英高級百貨店ハロッズやバークレイズ銀行の一部、在英米国大使館や、ロンドンで最も高いビルのシャード・オブ・グラスなどを所有、または経営に関わっている。

 アル・ジャジーラが開局された当時、米政府は歓迎したが9・11を境に状況は変わる。アル・ジャジーラがアルカイダから送られたオサマ・ビンラディンの映像を放映したからだ。その後、アル・ジャジーラはイラク戦争やアフガニスタン戦争を現地から報道することで視聴者を増やしていった。そして、アラブ諸国に革命の波が広がる今、世界の人々がアル・ジャジーラの報道に注目し、その内容に好感を抱いているという。米国では、中東の民衆蜂起の影響で、英語版インターネット放送の視聴者数が25倍となった。米国のケーブルテレビや衛星放送の大手は、今のところアル・ジャジーラの英語放送を行っていないが、視聴を望む声が多く、既にいくつかの企業が放映権の交渉を始めているという。
 アル・ジャジーラは、チュニジアの反政府デモ隊が撮影した映像を放映したことにより、ベンアリ政権は難攻不落で大統領警備隊は鉄壁だという神話は打ち砕かれた。同局がタハリール広場など、デモの現場の映像を24時間体制で生放送したことにより、人々が現場に留まるようになったということからも、アル・ジャジーラの影響力がうかがえる。

 アル・ジャジーラの報道の視点にはいくつか、特徴が挙げられる。
・アル・ジャジーラは確かに他のテレビ局とは異なる点がある。英国の視聴者が普段、目にしているどんな映像よりも陰惨な映像を放映しているということ
・臨時で雇われた若いレポーターが、アラブ革命のバリケードを渡り歩いて民衆とともに過ごしながら、現地の様子を伝えていること
・フェイスブックなどからダウンロードされた映像や、市民ジャーナリストが撮影した検証されていない映像を多用すること
などが挙げられるが、これらのことからも疑問も多い。
・アル・ジャジーラとは何か。社会的に「善」の存在なのか
・「極めて楽観的」で「不正確」な報道
・カタールの指導者たちの批判的な報道はタブーになっている
などという指摘の声もある。

カタールに関する批判はタブー

 問題点も抱えるアル・ジャジーラであるが、体制に媚びて腐敗した報道がはびこる中東において、アル・ジャジーラは自らを独立したジャーナリストの旗手と自負している。アル・ジャジーラは開設当初からタブーに挑戦し、イスラエル政府の関係者へのインタビューも行い、アラブの指導者が恥をかくような報道もしてきた。そのため、多くの独裁者たちが、アル・ジャジーラのオフィスを荒らし、放送を妨害し、ウェブサイトをハッキングし、記者を拘束してきた。
 そんなアル・ジャジーラであるが、今後の課題として、
・ジャスミン革命の動きが収束すれば、欧米の視聴者にとって、中東は再び難解で縁遠い存在となることから、注目されるニュースが他地域や得意分野以外であればどうするのか
・これまで独占状態だったが、今後、英国系の「スカイ・ニュース」という24時間ニュース放送局が参入してくることにより、市場争いが激しくなること
など、今後のアル・ジャジーラの行方も注目される。ちなみに、「スカイ・ニュース」だが、70人のスタッフをアブダビで採用し、ロンドンやワシントンなど世界各地にも支局が設けられるという。イランや中国のテレビ局も24時間体制のニュースチャンネルに重点的な投資を行っていることから、こうしたマスコミの競争は激しくなるだろう。

 アル・ジャジーラの勢いは目を見張るもので、現在、アル・ジャジーラの存在は視聴者にとって普通に存在するものになっている。それだけ、アル・ジャジーラの知名度も上がったということだ。このアル・ジャジーラの勢い、世界中のマスコミの注目にもなっているから、今後の行方も気になるところだ。

【参考記事】

・「圧倒的な影響力を誇るアラブメディア 「アル・ジャジーラ」が目指すものとは」
John Arlidge(サンデー・タイムズ・マガジン(UK))(COURRiER Japon 2011.6)

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