放射性廃棄物の行方~イギリスの取組み~

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 日本の電力エネルギーとして、原子力発電所は全体の3割を占めている。それだけ、重要な電力供給源であるが、原発と同等で代替えのものとなると厳しい。しかし、代替えできる電力供給源がないと、私たちの生活にも大きな影響を及ぼす。現実的な火力発電に頼れば、温室効果ガスといった環境悪化に結びついてしまう。
 それならば、原発を維持する方向に傾くかといえば、今回の東日本大震災での事故で大きな問題になったこともあり、厳しいだろう。ただし、世界の、特に新興国では原発政策を進める立場を維持するところもある。代替えがないのなら、維持していくことになるが、そこには今後、大きな問題が生じてくる問題がある。その問題というのは、原発で出る放射性廃棄物で、これをどうするのか。
 そこで、COURRiER Japon(2011.6号)の「放射性廃棄物の“終着地” 英国の再処理工場へ潜入」の記事が大きなヒントになる。

 世界で最初の商用原発であるコールダーホール原発は、イングランド北西部のセラフィールド原子力施設の一部として1956年に操業を開始し、現在も部分的に姿を残している。二つの貯蔵庫のうち一つは、核兵器の開発で発生した放射性廃棄物を貯蔵している。
 セラフィールドには、英国中から放射性廃棄物が集められる。放射性廃棄物を溶かして固めたガラス固化体を封入したステンレス製容器が計4,000個積み重ねられ、それぞれ最大2,000シーベルトの放射線を放出している。ちなみに、英国の屋外で浴びる自然放射線は平均で年間2.2ミリシーベルト。86年にチェルノブイリ原発事故が起き、90年代前半には核施設周辺で白血病の発生率が高いことが指摘されるようになったことからも、放射性物質の問題は深刻だ。
 セラフィールドでは2003年から発電しておらず、現在は放射性廃棄物の再処理と貯蔵施設としてのみ使われている。蓄積した廃棄物は、この状態でずっと保管されるわけではなく、いつかは安全に処理しなくてはならない。

 このセラフィールドの旧式の施設だが、放射性廃棄物が完全に処理できる状態になるまで貯蔵機能を維持するため、新たにコンクリートで覆い、伸縮性の高い塗料を塗らなければならない。貯蔵庫の最大の危険である火災を防ぐため、酸素濃度を燃焼が起きる下限よりはるかに低い4%以下に維持している。
 軍事用の高レベル放射性廃棄物の処理は、貯蔵庫に構造物をかぶせて封鎖した上で、壁に穴を開けてロボットアームを投入し、廃棄物を取り出す、という難しい作業が必要だ。この処理は2017年から始まり、完了までに4~5年かかる見込みだという。

 英国では第1世代の原発が寿命を迎える時期が迫っている。9か所では既に廃炉に向けた作業に入っており、後2か所も作業に入るという。廃炉費用は総額450億ポンド(約6兆1,500億円)かかるそうだ。
 原発を廃炉するには多額の費用がかかる。さらに問題なのは、原子力技術は実用化しながら進化してきたため、それぞれ独自の対策が必要だということだ。
 典型な例が、グロスターシャー州のバークレー発電所。この発電所は英国初の民生用専門の原子力施設として、1957年から建設が始まり、6年後に稼働開始。しかし、後発の施設のような洗練された技術に欠けていたため、89年に採算が取れなくなり以来、廃炉の作業が進められている。完了して更地になるのは2070年代の見込みだという。これまでに、バークレーにあった8万4,877本のウラン燃料棒をセラフィールドに運んで再処理し、16基の巨大な鋼鉄製ボイラーを取り外すなど施設の一部を解体し、冷却プールを排水して埋め立てた。今後は4つの地下貯蔵庫から計2,000m3の放射性廃棄物を運び出す作業が残っている。地下貯蔵庫は巨大なコンクリートの建物で覆われており、廃棄物はこれから地層処分に向けて容器に封入される予定だ。

放射性廃棄物を地層処分する厳しい条件

 これらの原発から出る放射性廃棄物は、後世の私たちの子供たちの問題にもつながっていく。
 現在、放射性廃棄物の処理は地層処分という形が最も望ましくされているが、これにも問題はある。地層処分は、世の終わりまで安全でなければならない。洪水、地震、氷河期、テロ、核爆弾など、何が起きてもびくともせず、何百万年も安全を守り続ける必要があるのだ。そのため、防護している構造物が腐食して、中身が地下水や大気中に漏れ出す頃には、放射能が減衰して自然界の放射線レベルを下回っているくらいでなければならない。
 この条件、かなり厳しい条件だろう。しかし、フランスやスウェーデン、フィンランド、ベルギー、スイス、スペイン、そして日本を含む世界中で少なくとも25か国が、地層処分こそが放射性廃棄物の最善の解決策と考えている。

 それではこの地層処分はどうなっているのか。
 地層処分場が完成するのは2040年の予定となっており、地下200~1,000mにトンネルと貯蔵庫を掘り、中レベルと高レベルの放射性廃棄物を、想像しうる最大の衝撃と最悪の火災に耐えるように設計された容器に貯蔵する。セラフィールドに残された放射性廃棄物と、さらに今後90年間に生成される廃棄物も、全て収容できるという。収容が終われば、2130年頃に施設を閉鎖し、10年がかりでトンネルと貯蔵庫、立抗を全て埋め戻して封鎖。そして地上の建物を撤去。
 といった具合だ。これは英国の放射性廃棄物の処理対策だが、原発を運転しているのは、英国だけではなく、多くの国で運転され、日本にも処理対策が問われてくる。しかし、日本で処理にあたるだろう青森の六ヶ所村も厳しくなる一方だ。

 原発を運転する上でのこうした問題をどう解決させるか。安全面だけが問題ではなく、こうした廃棄物の処理方法も明確な課題として、残っている。

【参考記事】

・「放射性廃棄物の“終着地” 英国の再処理工場へ潜入」
Richard Girling(サンデー・タイムズ・マガジン(UK))(COURRiER Japon 2011.6)

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