地球環境をめぐる(1)

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 2009年12月7日からデンマークのコペンハーゲンで国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)が開かれた。同会議には192ヵ国が参加したが、大きな成果は生まなかった。
 2009年7月のG8(主要8ヵ国)首脳会議(ラクイラ・サミット)では、地球の気温上昇を2度以下に抑えるという目標が示された。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の試算によれば、そのためにはG8が20年までに温暖化ガスの排出量を90年比で25~40%削減しなければならない。だが、これまでに約束された削減量は14%にすぎない。
 最悪の場合に予想されるのは、東京からニューヨークまで沿岸部の大都市を脅かす海面上昇、干ばつや洪水の増加、インドや中国の農村部に真水を供給する氷河の消失、命に関わるほどの熱波、農業を脅かす気候の変化が起きるといったことがあげられる。既にインド北部では、気候変動が原因で麦の収穫が減っているという。

ある政府のトップが動き出した

 2006年、ある政府のトップが温室効果ガスの削減を義務付ける法令に署名した。20年までに90年比で20%、50年までに同80%の削減という内容だ。この目標を達成すべく、同政府はキャップ・アンド・トレード方式による温室効果ガスの排出権取引を採用し、12年から実施する予定だ(同様な仕組みは米連邦議会の下院でも承認され、現在は上院で審議されている)。
 二酸化炭素(CO2)の排出削減に伴う企業のコスト負担を軽くするため、この政府はブラジルとインドネシアにも協力を求めた。世界の熱帯雨林の半分以上が集まる両国では、深刻な森林伐採が続いている。そこで、両政府のトップはCO2の排出する企業がブラジルやインドネシアに資金を提供し、その金で森林を保護することで、企業側が自分たちでCO2の排出を減らしたのと同じ効果が得られるのではと考えた。
 この政府のトップの名はアーノルド・シュワルツェネッガー。米カリフォルニア州政府トップ(知事)として、彼はブラジルのアマゾネス州やインドネシアのパプア州など8州と、個別に前述のような契約を交わした。途上国の熱帯雨林の問題を地球規模の温暖化対策の文脈で取り上げたのは、カリフォルニア州が初めてだという。97年の京都議定書は先進国に温室効果ガスの排出削減義務(90年比で5.2%減)を課したが、途上国には熱帯雨林の保護を設けていない。

 途上国は、石炭などの化石燃料から、CO2を排出しない風力発電や太陽光発電などに移行するため、先進国に年間1,000億ドルの援助を求めている。中国とインド(温室効果ガス排出量はそれぞれ世界最大と第5位)は、削減幅に関する国際合意そのものを拒否している。それは今、大気中にある人為的な温室効果ガスの75%は先進国が排出したものだから、責任は先進国が取るべきで、そもそも国民1人当たりの排出量も自分たちはアメリカに比べればごく僅かである(インドの約1トンに対し、アメリカは約20トン)という主張からだ。
 一方で、EU(欧州連合)は域内の企業に具体的な温室効果ガス削減義務を課している。アメリカでも29の州が、電力の一定割合をCO2排出ゼロの燃料で供給することを州法で義務付けている。
 今後、20~30年間で最大の脅威は、中国やインドを含む途上国の対応だろう。途上国グループは全体として、20年までに「何も対策を取らなかった場合に比べて4%」の排出削減を約束しているが、これでは文字通りスズメの涙で、平均気温の上昇を2度食い止めるには、とても足りない。
 中国は11月26日、20年までに温暖化ガスの排出量を05年比で40~45%削減する目標を明らかにした。インド政府も、より柔軟な姿勢で温暖化対策に臨む可能性を示唆している。中国とインドは「合意以上のことをする用意がある」ということから、かたくなな態度を取ってはいるものの、気候変動が自国の産業や社会に大きな打撃を与えることには両国とも気づいているのだろう。

 環境問題の中に、環境悪化を訴える状況に批判的な声もある。
 昨年11月、英イーストアングリア大学の科学者が交わした大量のメールが暴露された通称クライメートゲート事件や、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書に誤りが発覚した問題の余波を受け、気候科学への信頼が揺らいでいる。クライメートゲート事件については4月中旬、調査委員会が科学者の不正を裏付ける証拠はなかったと発表したものの、データ管理のずさんさや統計手法の不適切さが顕となった。
 そもそも気候変動を正確に予測することは困難であるだろう。しかし、気候科学が政治経済と直結して衆目を集める今、不確実さは科学者への不信につながりかねない。

『ジオエンジニアリング』『バイオ』に注目が集まる

 それでも、環境対策は行うべきだろう。
 環境対策の一つに『ジオエンジニアリング』がある。『ジオエンジニアリング』とは気候を改変する技術で、CO2排出削減を行っても温暖化が避けられないなら人為的に気温を下げようというもの。
CO2を吸収する人工樹や太陽光を跳ね返す宇宙鏡、硫黄を成層圏に撒いて日よけにするなど突飛な発想も多い。だが海に鉄を散布して光合成を促すなど既に実施された実験もあり、この先もっと大胆なことが行われることもあるかもしれない。しかし、問題はその副作用だ。どれほどの副作用があるかわからないことが問題なのだ。そこでガイドラインを作ろうと自然科学や社会科学、法律など多分野の専門家が集結したのが、3月末に米カリフォルニア州アシロマで開かれたジオエンジニアリングの国際会議である。
 アシロマといえば、遺伝子組換え技術の指針を協議した75年のアシロマ会議が有名である。科学者が自ら技術の開発を一時停止し、その危険性や社会的責任を話し合った科学史に残る画期的な出来事だった。
ただし、今回には懸念がある。出席した15ヵ国175名の大半は英米からの参加者であるということだ。ある市民団体は、全ての国連加盟国が参加せずに指針を策定するのは時期尚早で無責任だと指摘しており、救世主となるはずの技術も市民との充分な協議と理解がなければ敵視されかねない。

 他にも環境対策というと『バイオ』も注目されている。
 バイオ燃料メーカーにとって、気候変動回避は売りの1つにすぎない。より重要なのは輸入石油への依存を断ち切り、国内で雇用を創出する(バイオ燃料は、原料の産地と使用する場所に近い所で製造する方が安上がりだ)ことだろう。
 H・ジョン・ハインツ科学経済環境研究所のトーマス・ラブジョイ所長らは2009年10月、ヘラルド・トリビューン紙に寄稿し、植物廃棄物から作った灰(バイオ炭と呼ばれる)を土壌に混ぜれば、「毎年(大気中に)排出されるCO2相当部分」を減らせると論じている。
 地球の気温上昇絵を招くという点では、CO2以外の温暖化ガスが、これまで考えられていたより大きな役割を果たしている可能性を示す研究結果が最近増えている。
 今年、2010年は気候変動で2つの国際会議が予定されている。

<参考資料>
・「温暖化を止める主役は誰だ」
シャロン・ベグリー(サイエンス担当/Newsweek 2009.12.9)
・「最相葉月が読むNew Scientist 第1回 気候科学の不確実さと人為的気候改編という“夢”」
最相 葉月(COURRiER Japon 2010.7)

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