過酷な悪循環

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 過酷な状況に置かれている人々がいる。
 そして、過酷な状況にならざる環境もある。

 さらに、そうした状況から脱け出せなくなる循環もある。

 その一部が。

アジアから私たちへ Vol.2
「バナナ」
石井正子(文)、広河隆一(写真)(DAYS JAPAN 2009.6)

 「標高700メートル程にある南コタバト州ティボリ町のある村」では、「居住地に隣接してバナナ農園が広がっている」。
 ここで、「生産されるバナナは、住商フルーツを通じて主に輸出される」。
 この村では、「先住民のティボリ人とビサヤ地方パナイ島周辺からの移民であるヒリガイノン人」が住んでおり、「ミンダナオ島では先住民よりも移民の言葉が通じる」という。
 「同島で先住民は移民の入植により先祖伝来の土地を失い、ユイノリティになっている」という。

 「バナナは高産地が増えた。消費者の健康や環境保護の要求を取り込むかたちで、『減農薬』や『エコ』をうたった新ブランドも登場している」。

 生産者の環境はこんな感じである。
 「労働者は持参した朝食をとり、それぞれの持ち場に散る。そして、除草、施肥、収穫、運搬などの作業にとりかかる。昼食は家にもどって食べ、日が暮れる頃まで働く」という生活だという。
 「日給は約420円。農園に併置された選果・パッキング場で働く労働者の賃金も同じ」。これは、「この地方のプランテーション農園における法定最低賃金とほぼ同額」で、「日本で店頭にならぶバナナ2袋分の金額」である。
 ただ、この賃金は現地の物価ではどうなのだろうか。

 「住商フルーツに土地を貸すと必ず1人は労働者として雇用することが保証される」ため、「住民は1ヘクタールの土地を年間1万ペソでリースしている」。「中等学校へ通う子供の奨学金提供や、大卒であれば会社での雇用の可能性もある」という。
 しかし、「よくよく計算してみると、以前トウモロコシを栽培して、いたときよりも収入が減った」という。「単一作物の栽培なので、土地の疲弊も早く進む」。

 労働者の環境は良いとはいえないだろう。
 「外国間企業や商社に有利な法律や、農薬で身体を壊しながら低賃金で雇われる労働者、労働組合の檀奈津、借金により土地を失っていく農民、という苦い実態が甘いバナナ」を支えているのである。
 「農地改革により自作地を手に入れた労働者は、企業に対する交渉力を高めたが、彼らにとって不当に不利な労働条件はあまり変わらない」状況である。「村では安い土地のリース料と低賃金により、労働者の生活は向上していない」。

 高地アラー渓谷農事法人(UAVFI)は、「2004年からミンダナオ島高地で農民の自立を支えるためにバナナの有機栽培プロジェクトを行っている」。
 UAVFIは、「オルター・トレード・ジャパン社を通じてバナナを日本に輸出」。「南コタバト州レイクセブ町の先住民オボ人の集落でバランゴンというバナナの有機栽培を行っている」。
 バランゴンバナナは効率的には悪い。「背が高」く、「5~6メートルほどの高さに実をつける。袋をかけ、収穫などの作業にはいちいち梯子が必要で、手間がかかる。多国籍企業の農園で栽培される背の低いバナナに比べて、生産効率が悪い」。
 バランゴンバナナは「商品作物として外からもたらされたバナナ」ではなく、「もともとこの地域に自生していたもの」である。「大量生産が目的ではないので、プランテーションのように密集栽培をしない。家屋に隣接する土地に根菜類やトウモロコシなどの野菜と一緒に栽培されている」。
 「バナナに被害をおよぼす植物病原菌は葉から葉へと伝染する」。
 このプロジェクトでのバナナを生産する場合は「バナナを密集して栽培しないため」、農薬は必要はなく、「有機栽培が可能になる」。一方で、「プランテーションでの密集栽培には農薬が必要になりがち」である。
 「収穫されたバナナは1本約2円で売られる」という。「バナナは1年に1~2回収穫」され、「1株のバナナで約240円の収入になる」という。「現在、33世帯がこのプロジェクトに参加し、各世帯が平均274株のバナナを栽培している」という。

 「昨年10月、フィリピン上院が日比経済連携協定に批准。これにより同年12月に発効した同協定については、日本への看護師・介護福祉士の送り出しが注目されている」。
 その一方で、「この協定は自由貿易協定を含んでおり、小型バナナは協定発効から10年間で関税撤廃、その他のバナナの関税も削減される」という。つまり、「バナナはこれまでよりも日本に輸出しやすくなった」ということである。
 ちなみに、「日本の市場に出まわるバナナの9割がフィリピン産」であるという。

佐藤優の国際ニュース解説室
「映画『スラムドッグ$ミリオネア』を見ました。あのようなスラムは、インドが発展すればなくなるのでしょうか?逆にスラムがない国は、どうしてないのでしょうか?」
佐藤 優(COURRiER Japon 2009.7)

 「スウェーデン、ノルウェーなどの北欧諸国にはスラム」がないという。「アイスランドはリーマン・ショック後、国家崩壊の危機」に瀕しているが、それでもスラムは生じてない。
 なぜ、スラムが生じないのか。その要因は、「新自由主義的な『小さな政府』ではなく、社会保障を重視する『大きな政府』という政策をとっている」からである。つまり、「政府にとって富の再分配がきちんとなされている国ではスラムが生まれにくい」ということでだ。
 ちなみに、「旧東ドイツや旧ソ連にもスラム」はなかったという。それは、「国家全体が強制収容所のようになっていた」ためである。

 そんな中、インドではスラムが深刻な問題になっている。インドのスラムの状況を加速させているのは、「インドの貧困が、カースト制度、宗教対立、それにグローバリゼーションによる市場原理主義(新自由主義)が急速に及んできたことが複合して起きている」ことがある。
 さらに、インドの貧困問題に深刻な影響を及ぼしているのは、「伝統的なカースト制度があるため」である。これにより「下層の身分に生まれた人々の上昇には強い限界」があるため、「伝統的な貧困」をつくりだしてしまうのだ。
 そこに「市場原理主義が入ると社会的格差が拡大し、絶対的貧困」が生まれる。「世界の『フラット化』によってインドはIT産業の世界的中心の一つ」になった。そこでは「成功した富裕層が生まれ」、「それにともなって富裕層の数十倍、いや数百倍の絶対的貧困層が生まれ」たわけだ。「伝統的貧困層と新自由主義によって最近生じた貧困層がスラムに流入し、貧困問題の解決をいっそう難しくしている」。

 現在、「地球に住んでいる約67億人のうち、絶対貧困といわれる一日1ドル以下で暮らしている人が12億人以上、2ドル以下だとなんと30億人以上になる」という。

News IQ 40
「アヘン摂取率が世界でもっとも高い国は?」
グローバリスト(USA/COURRiER Japon 2009.6)

 「世界最大のアヘン産出国」であるのはアフガニスタンで、「世界で流通するアヘンなどの薬物の90%以上を産出」しているという。

 「世界のアヘン摂取人口の総数は1650万人と推定されている。最も多いのはアジア地域の930万人で57%、次いでヨーロッパ地域が22%。ヨーロッパでは人口の0.7%がアヘンを摂取している」という。
 やはり、アジアが多いみたいである。

 「米国では120万人がアヘンを摂取」しており、この数字は「人口の0.6%」であるという。
 ロシアでは「アフガニスタン産のアヘンが中おアジア経由で流入」し、薬物汚染が深刻化している。「年間約3万人が薬物摂取により死亡している」とされ、「薬物中毒者の数はここ20年で10倍に増加」しており、「人口の1.6%がアヘンを摂取している」という。
 イランでは「人口の2.8%がアヘンを摂取」しているという。
 さらに、「パキスタンと同様、同国は世界最大のアヘン産出国のアフガニスタンにとって重要な取引先」であり、「2006年にアフガニスタンから世界に流出したアヘンのうち、約53%はイランを経由」。「約33%はパキスタン、残りはタジキスタンなどの中央アジアを経由している」。

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