サイバー戦争勃発!?(中)

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 世界のウェブサイトが受ける攻撃は1日2,000万件…。サイバー攻撃は日本だけではなく、世界中で問題になっている。サイバー攻撃の最前線ともいえるのが、アメリカ。アメリカだけで企業のサイバー攻撃の被害額は年間1,000億ドル(7兆6,500億円)規模に達するという。さらには、国土安全保障省が今年だけで既に10万件以上のサイバー攻撃に対処しているそうだ。
 それだけ、サイバー攻撃は世界的に大きな影響を与える存在になり、サイバー戦争も始まっている。ターゲットは国家から企業、個人情報に至るまで様々。今ではインターネット空間が戦場であるとの認識は、既に安全保障の常識となっており、アメリカではサイバー空間を陸・海・空・宇宙に並ぶ「第5の軍事領域」に位置付けており、イギリス(政府)ではサイバー攻撃を通常の戦闘と同等に捉え、国防省がサイバー専門部隊の強化に乗り出している。中国やロシアは世界でも最も活発にサイバー攻撃を行い、北朝鮮やイランなどもサイバー空間で暗躍。
 攻撃側として中国がよくあがってくる。しかし、国家機関によるスパイなのか、民間ハッカーによるものか、人民解放軍のサイバー部隊が演習目的で行っているのか、企業に雇われて動く民間のハッカーグループが実績をあげるためなのか…様々な憶測が飛び交っている段階で、わからないのが現状みたいだ。他にもロシアでは、高度な技術を持ったハッカーによる犯罪が多く、ロシア当局は有効な対策も打てない状況だそうだ。
 秘密裏に一般のPCに仕掛けられていたウイルスが、ネットワークを拡大させながら、持ち主に気づかれないまま攻撃に参加する…DDoS攻撃。100万台ほどのPCが一斉攻撃を仕掛け、大量のデータが通信ネットワークや銀行などに数週間にわたって送りこまた結果、経済と国民生活が麻痺…こんな事態になる可能性も高くなっている。
 さらに、サイバー攻撃は国の主権を侵害する戦争行為として、07年9月のイスラエルの爆撃機がシリアの疑惑の施設を爆撃する際にも効果を上げた。防空システムに侵入し、レーダー上では異常がないようにしたというのだ。このような手段は、多くの国で軍事戦略の選択肢の一つになっている。
 さらには、10年にイランで発生したサイバー攻撃では、「スタックスネット」というウイルスにより、9,000個の遠心分離機のうちの10%を、回転数を自動的に上げたり下げたりして、破壊され、衝撃を与えた。インターネットからシステムをほぼ完全に遮断していても、ネットワークが攻撃にあう可能性はあるということだ。ちなみに、スタックスネットは世界15か所の工場で感染が確認され、日本でも36台のPCの感染が判明しているそうだ。
 外部から隔離されたはずのネットワークが攻撃される要因としては、OSを更新する際のインターネット接続や、データのやりとりに使用するUSBのような記憶デバイスなど、様々な要因が挙げられる。
 今後、影響が出そうなのは、環境という面でも大きな期待が持たれている、「スマートグリッド(次世代送電網)」にも大きく関わってきそうだ。

アメリカと中国のサイバー戦争

 こうしたことから、サイバー攻撃は世界中でも大きな存在になっている。そのサイバー戦争でも、アメリカと中国のサイバー戦力は注目すべきだろう。
 実際、アメリカと中国とのサイバー戦争は始まっているという。中国がアメリカ側の国防や安保関連のコンピュータ網に全世界規模で攻撃をかけているというのだ。今の現状では、中国は通常能力ではアメリカに及ばないため、通常ではない手段での戦いで挑むことが必至になる(非対称の戦争)。その手段の一つがサイバー攻撃である。
 米側の軍や公共のシステムは、コンピュータやインターネットに全面依存(軍機関や情報機関のネットワークから電気、水道、廃棄物処理、金融機関、航空管制、社会保障などのシステム)しているといえる。有事にこうしたシステムへのサイバー攻撃が起きれば、国家機能が麻痺する事態になる。つまり、有事の際、サイバー攻撃を仕掛けることで、米軍の移動を遅らせるなど、混乱させることができるというわけだ。
 中国はアメリカの軍事能力に注目してきた。戦争などの際のアメリカの機動力なり分析してきた。特に米軍の遠隔地での兵力ビルドアップ(集結)という点が注目されたそうだ。これは外国での軍事大作戦に兵力をどのように動かし、集めていくかということ。その結果、米軍の作業にはコンピュータ・システムにいかに依存するかを確認したという。つまり、米軍の依存は弱点になるというわけだ。
 それに、中国では人民解放軍が過去10年に中国全土の企業や大学内で組織してきた何千という基地の一つに、インターネットを介したサイバー攻撃や防衛をするサイバー民兵があるという。彼らは一般的に会社に属しているが、サイバー攻撃や防衛を副業としてるというのだ。
 所属するサイバー民兵の総数は、およそ800万人といわれ、彼らはインターネット上で戦う中国の軍隊であり、世界的に増え続けるサイバー攻撃と関係しているそうだ。

 サイバー攻撃が深刻な問題になりつつある今、「ロジックボム」という問題も進行している。ロジックボムとは、ハッキングなどで不正侵入するのではなく、システムやチップなどの製造過程であらかじめ悪意のあるプログラムを潜らせておくというものだ。そして、有事になった場合、外部からの指令でそのプログラムを起動させ、混乱させる。
 これが何を意味するかというと、軍事システム、あるいは発電所や鉄道網、航空管制などの重要インフラのシステムに仕掛けられていれば、それらを混乱させることができるということだ。もっと具体的に言えば、軍事衛星やデータ通信が停止の事態になるかもしれなく、在日米軍も自衛隊もまともに動けなくなる。送電制御システムを暴走させて電力供給をストップさせたり、航空管制を混乱させて事故を誘発させたり、原子力発電所の制御システムが破壊され、大きな事故につながることもあるかもしれない。
 このロジックボムは本来、開戦日まで秘匿される罠であり、今現在どこに、どれほどの数が仕掛けられているのかもわからない。
 サイバー攻撃は、常に新しい脆弱性が発見され、画期的な攻撃手法が開発され続けている。

(つづく)

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