クラスター爆弾禁止への流れはどうなったのか(下)

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 ボスニア・ヘルツェゴビナでは、クラスター爆弾の不発弾による危険区域は全国で18か所にのぼる(非政府組織NGO「ノルウェー・ピープルズ・エイド」によると)。その多くはいまだに詳細な調査さえ行われていなく、より深刻な地雷処理が優先されているという。
 政府の「地雷アクションセンター」によると、地雷やクラスター爆弾の不発弾による戦中戦後の死傷者は計7,430人余りに上るが、被害者支援に必要な財政基盤はまだ整っていない。10年の必要な予算も国会で認められていなかったという。
 さらに、条約で義務化されるクラスター爆弾の廃棄に財政問題が生じている。地上発射型クラスターの子爆弾7万5,000個の廃棄作業を10年10月半ばから始めたが、費用約11万ユーロ(約1,245万円)は全て欧州連合(EU)が拠出した。しかし、今後、空中発射型の廃棄も行うが、政府予算で賄えるめどは立っていないという。

クラスター爆弾の拡散の懸念

 オスロ条約は現在、108か国が署名、43か国が締結している。東アジアの署名国は4か国で、締結国は日本とラオスの2か国。クラスター爆弾を多数保有しているとされる米国や、ロシアなどは未加盟である。
 そのオスロ条約の第1回締約国会議が開催され、条約非加盟で保有国の中国のオブザーバー参加が注目された。しかし、中国は不発弾の被害に「人道上の懸念」を表明したが加盟は拒否した。
 クラスター爆弾禁止には戦略上の壁があるのも事実だ。いざという時、非常に役に立つ兵器であるのは事実上の常識となっており、紛争国やその周辺国が手放すことはできないという現実があるのは否定できない。
 その半面、不発弾問題以外でも、様々な懸念がクラスター爆弾につきまとう。一部の活動家がクラスター爆弾を除去するのでなく、売ろうとしているといったこと、アフリカの紛争地への転売といった懸念。これまでもレバノンでイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラが使ったとみられる中国製のクラスター爆弾が発見されており、拡散の懸念は強く残る。

 クラスター爆弾への取り組みが進みだそうとする中、クラスター爆弾を使用したい立場も存在している。しかし、爆弾による被害が深刻なことも現実である。
 クラスター爆弾にかわるものが見つかれば、という考えも出てくるが、新たなものにも当然、大きなデメリットがあるだろう。しかし、地雷のように戦後、紛争後の世界、ようやく安定を取り戻した生活に大きな不安を及ぼすクラスター爆弾をどうにかできないだろうか。
 NGOのクラスター爆弾連合の調査では、16か国が持ち込みを禁止、共同作業でのクラスター爆弾運搬などの協力も12か国が禁じているという。

(おわり)

<参考資料>

・「クラスター爆弾 締約国会議 中国が加盟拒否 不発弾処理開始 「発効1年以内」採択 「紛争地に転売」懸念」
篠田 航一,服部 正法,矢野 純一(ビエンチャン),伊藤 智永(ジュネーブ)(毎日新聞 2010年11月13日(土)
・「STOPクラスター 第18部 加盟国の“宿題” 上 少女の悲劇 会議直撃 全不発弾撤去「20年以内」」
(毎日新聞 2010年11月13日(土))
・「最大8万5000人死傷 被害国の1/4除去なく クラスター爆弾 NGO世論調査 戦後35年 続く悲劇 ラオス」
西尾 英之(シェンクワン(ラオス北部))(毎日新聞 2010年11月3日(水))
・「米国の支援を待ち焦がれて… 「不発弾」に苦しむラオス国民」
アジア・タイムズ・オンライン(香港)(COURRiER Japon 2010.11)
・「STOPクラスター 安全確認済み0.4% 「すべて除去は不可能」 ラオス北部」
西尾 英之(シェンクワン(ラオス北部))(毎日新聞 2010年11月3日(水))
・「STOPクラスター 第18部 加盟国の“宿題” 下 財政難、廃棄作業にも影 失明、後遺症 補償なく」
樋口 直樹(サラエボ)(毎日新聞 2010年11月14日(日))
・「クラスター爆弾禁止 加盟国の拡大目指す 初の締約国会議 宣言採択へ」
岩本 陽一(ハノイ)(日本経済新聞 2010年11月5日(金))

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