中国の水問題は深刻化しているそうだ。特に北京の水不足は大きな問題になっているという。
もともと降水量が少ないところに、この10年で人口が1.4倍に増加。2014年には2,152万人に達したという。人口増に加え、水洗トイレなどの生活水準も向上し、水資源が追いつかない状況になっているという。
北京市全体の年間水使用量は約36億立方メートル(2013年)で、その約3分の1を河北省などの周辺地域に頼っている状況だそうだ。しかし、周辺地域も水不足が問題化しており、農業用水が枯渇する問題が起きているという。
中国はもともと水問題が悩みの種だったという。
そこで、南は水が豊富なため、その水を北へと送る……そうした構想案が浮上し、総延長2,899kmの大運河を建設する中国一大国家プロジェクト「南水北調」が進められた。そのプロジェクトは3つのルートで構成されている。
東ルートは江蘇省揚州市~天津市など、中央ルートは河南・湖北省境の丹江口ダム~北京など、西ルートは長江上流~黄河上流、という3ルート。
東ルートは2013年に、中央ルートは2014年12月に完成。西ルートは未着工のまま事業は一段落したという。中央ルートの総工費は約2,013億元(約3兆8,000億円)で、年間送水量は95億立方メートルで、北京や河北省など4つの省・市の約6,000万人に飲み水を供給するという。
水問題に動いたが、新たな懸念が生じる
しかし、これで解決ではない。
中央ルートの水源である丹江口ダム周辺では30万人以上が強制的に移住させられることになり、それによる不満の懸念が生じている。さらに、ダム下流の水量が約3分の1に減少し、魚の産卵が減るなど生態系への影響も懸念されている。
水問題を解決するために、こうした大規模な事業が進められたが、生態系の変化や自然環境への変化への影響の可能性は消えていない。
水問題に対処したが、今度は他の問題が浮上してきそうだ。
【参考資料】
・「「時代遅れ」大運河完成 構想60年 中国の一大国家事業 「南水北調」中央ルート 強制移住30万人 批判受けひっそり」
毎日新聞 2015年2月28日(土)