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選挙

アメリカはどうなってしまうのか(下)

 超大国アメリカ。これからの時代はアメリカの時代だとはいえなくなってくるだろう。
 新興国の台頭が目立つアメリカ、これからの課題はどういったものがあるのだろうか。

アメリカよ、どこに行く 32
「バーナンキの未完の使命」
ポール・クルーグマン(COURRiER Japon 2010.2)

 世界的な金融危機に陥った現在、その解決の出口を模索中である。
 アメリカの「昨年11月の非農業部門の雇用者数が前月比でわずか1万1000人減にとどまったとする、12月発表の雇用統計の見かたを改めるべきだ」という。

 「景気後退が始まって以来、米国が失った800万人分の雇用を計算に入れるだけでは充分ではない」。「米国の人口が増えている以上、月10万人を上回るペースで、さらなる雇用を創出しなくてはならない」。
 「これは米国が毎月大量の雇用を創出しない限り、完全雇用に近い状態に戻ることはないという事実を示している」。
 「米国は今後5年間で約1800万人分、つまり月30万人分の雇用を創出する必要がある」というのだ。

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アメリカはどうなってしまうのか(中)

 超大国アメリカ。世界でも一番の大きな影響力を持つアメリカが、今、大きく揺らいでいる。
 しかし、揺らいでいても、今も大きな影響力を持つアメリカですが、そのアメリカの抱える問題と現状はどうだろうか。

「オバマびいき報道の危うさ」
ロバート・サミュエルソン(本誌コラムニスト/Newsweek 2009.6.17)

 「大統領の権力がきちんと監視されてこそ政治は正しく機能する」。「だがオバマに対するチェックは緩い」かもしれない。
 「ワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、テレビの3大ネットワーク、公共テレビ局(PBS)、および本誌の1261本の報道を検証」したところ、「オバマに好意的なものが42%だったのに対し、批判的なものの割合は20%だった」という。「ブッシュ(好意的は22%)やクリントン(同27%)とは対照的」な結果になった。
 さらに、「報道の内容にも違いがある」。「オバマの場合は人柄や指導力を扱うものが44%を占め、ブッシュ(22%)やクリントン(26%)のほぼ2倍で、政策に関するものはそれより少なかった」。
 「インターネットのニュースサイトなどに調査値省を広げても、結果に大差はなかった」という。さらに、「ジョージ・メイスン大学が行った別の調査でも同様の結果が出た」という。
 「ピュー・リサーチセンターが行った研究によれば、メディアのオバマびいきの傾向は大統領選挙中に始まった」という。

 「オバマに『批判的な』報道といえば民主党議員との戦術的な対立や一部の支持基盤からの批判止まり」で、「重要課題の検証は軽視されている」。
 「オバマの主張には矛盾が多い」という」。「財政支出の拡大を要求する一方で医療費抑制を唱え、財政赤字が拡大基調にある中で財政規律を回復するという」。「そんな矛盾だらけの主張を、メディアは額面どおりに受け取っているように見える」。
 「メディアは世論に弱いから、支持率の高い大統領は好意的に扱われる」。「ピュー・リサーチセンターによればオバマの支持率は63%」。

 「ジョンソンがケネディから引き継いだ経済政策は70年代にスタグフレーション(不況下のインフレ)を招いた」。「メディアは政権に対し敵対的になるべきではないが、懐疑的な姿勢は保つべきだ」。
 しかし、このバランスが難しい。

 ちなみに、「議会予算局の試算では、連邦予算のGDP(国内総生産)比は08年の21%から19年には25%近くに上昇する見込み」で、「これは第二次大戦後の平均を大きく上回る」。

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日本の行方(下)

 金融危機により世界中が混乱している状況で、日本も危機に陥っている。しかし、その日本、失われた10年を味わった日本に、復活はおとずれるのだろうか。
 日本の大きな問題の解決策はあるのだろうか。

 その解決策、ヒントをさぐる。

世界に雄飛する 「人間力」の時代 第10回
「「ゼロベース改革」を断行することなしに“民主党不況”に歯止めはかけられない」
大前研一(SAPIO 2010.2.10・17)

 日本の状況は非常に深刻である。その解決策はあるのだろうか。
 「企業の事業計画の手法でもあるが、予算の削減方法は大きく3つある」。
 「第1は『見えている無駄を削る』」。
 「第2は『戦略を先に作って削る』」。「つまり、初めに戦略があり、それを実現するために中止する事業、縮小する事業、継続する事業、強化する事業を決めていく」。「『組織は戦略に従う』から、その後、組織も廃止や統合を進める」。「戦略を考えられる力があれば、予算も削れるし、企業や国のかたちが変わる」というわけだ。これは「企業改革では最もオーソドックスな方法」である。
 「第3は『ゼロベースで創る』」。「目的に合わせ、予算をゼロから構築する方法」である。
 「企業の場合、第1の方法はコストを1~3%削る時に使う」。「既存の組織のままでそれ以上削ると業務に支障が出るからだ」。「第2の方法は15%がターゲット」である。

 今の日本の状況には第3の方法が適切になってくる。「なぜなら、約860兆円もの借金を抱えている日本を立て直すには、第1、第2の方法ではとても対応できず、ゼロベースでやるしかないからだ」。「全ての行政サービスで今の制度と同じ満足度を維持しつつ、他の先進国を参考に世界最先端の技術とシステムを使ってゼロから創れば、おそらく行政コストは現在の半分以下になるだろう」。
 「過去の例では、日本の明治維新と第2次世界大戦後、海外ではシンガポールがマレーシアから分離独立した時、旧ユーゴスラビアの分裂によってスロベニアが独立した時、旧ソ連が崩壊してロシアだけになった時などがある」。「これらのケースを見ると、世界のベストプラクティスを参考にしたため、意外に軽々と新たなスタートに成功している」。
 「今の日本は、戦後65年間のしがらみで国家の運営コストが極度に肥大化している」。「有名な『パーキンソンの法則』によれば、組織は自己目的のために増殖し続け」、「国家でも予算と課税は際限なく膨らんでいく」。「日本の中央集権システムは、その典型例と言えるだろう」。「また民主党は修正資本主義的傾向が強く、高度福祉国家に舵を切っている」。

 「行政の効率化という点で、ゼロベースで創る最大のメリットは『クラウド・コンピューティング』(インターネット上にあるハードウェアやソフトウェア、データベースのリソースを利用する環境やサービス)である」。「日本の行政は各市町村がみんな同じことをやっている」。「そのサポートにクラウド・コンピューティングを全面的に使えば、効率が飛躍的に高まってコストも一気に削減できる」。
 「民主党は納税と年金が目的の『国民ID』を提案しているが、さらにこれを一歩進めて運転免許、パスポート、戸籍、印鑑証明、各種許認可、選挙など、すべての行政サービス共通のID」にすることで、「国民データベースを作り、すべての行政サービスを一元化するシステムを構築する」。「日本が世界に誇る非接触ICカード技術を活用し、IDとバイオメトリクス(生態認証、体が不自由な人のためには特別なパスワードを組み合わせたもの)を使えば、役所の窓口業務はほとんどなくなる」。「そういうシステムの構築にいくらかかるか試算した」結果、「日本全体でわずか700億円だった」という。

 民主党は、「予算を1.6兆円削減したというが、平成22年度政府予算案は一般会計の総額が過去最大の92.3兆円に達し」、「歳出をカットするどころか、21年度より3.8兆円も増やしてしまった」。
 「予算の削減は世界中の政府がやっているが、その方法は民主党とは根本的に違う」。「他の国々では、まず予算の目的と全体の枠を決め」、「その上で省庁別にターゲットを決め、あとは官僚に削減案を考えさせるのが常道であり、それが政治だ」。「事業仕分けのように目的も全体の枠もなく、最初から個別案件について削るかどうかを政治家が決めるというアプローチは寡聞にして知らない」。「しかも、思うような予算削減ができなかったにもかかわらず、自分たちの『ウィッシュリスト』を足し算したから、過去最大の予算案になってしまった」。

 「国の借金の対GDP比が200%に達し、社会が急激に高齢化している日本は、手をこまねいていたら国家破綻することは火を見るより明らかだ」。「それを回避するための対策を早急に打つべきであり、その方法はゼロベース改革しかない」のかもしれない。

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イラン問題の行方(上)

 イラン問題が依然として続いている。
 欧米とイランの関係は良くない。

 イラク、アフガニスタンの問題と同じくらい、大きな問題として、現代の国際情勢の注目すべき問題である。

 そのイランを取り上げる。

新世界大戦の時代
「「騒乱のイラン」もまたアメリカのエゴにより演出された」
落合信彦(SAPIO 2009.7.22)

 第2次大戦中、パーレビ朝国王を22歳のレザー・パーレビが継いだ。当時、イラン議会は極端なナショナリズムが巻き起こっていた。特に「石油をめぐって議会は国有化に傾いて」おり、「その先頭に立っていたのが、後に首相となるムハンマド・モサデク」であった。
 「かつてイランの石油はセブン・シスターズ(世界石油メジャー7社)の一角であったイギリスのアングロ・イラニアン社(後のBP)が独占していた」。「1951年4月、モサデクは議会石油委員会委員長の権限で石油の国有化を一方的に宣言して国民の圧倒的な支持を得る」。「その2年後、パーレビはモサデクを首相とするとともに石油国有化法に署名する」。
 しかし、アングロ・イラニアン社は、「他のメジャーと組んでイランの石油を国際市場からシャット・アウト」。その反撃に対して、「モサデクは必死に買い手を探すが、誰もメジャーを敵に回すような危険は冒したく」なく、「イランの国庫はからっぽになりつつあった」。
 そして、「当時のアメリカ大統領アイゼンハワーに、『もしアメリカが救いの手を差しのべてくれないならイランはソ連の援助を受けざるを得ない』」(しかもソ連との相互防衛条約も念頭に入れているということも)という書簡を送った。これに対し、「アイゼンハワーはモサデクを危険人物と判断し、CIAにイランの“掃除”を命」ずることになった。
 「CIAに後押しされたパーレビは国王権限でモサデクを罷面」し、「これを契機にモサデクを支持する反国王派のデモがエスカレートし」、「ソ連に焚き付けられた共産主義政党ツデー党が絡んでテヘランの民衆は暴徒化する」。「国王はCIAの指示でひとまずローマに亡命」。「CIAは軍部と警察を握ってカウンターデモを起こし、一夜にして情勢をひっくり返してしまう」。「モサデクは逮捕され国家反逆罪で3年の刑を受ける」。しかし、「パーレビは復権し、それまでとは人が変わったように現実的かつ強権的になる」。

 パーレビは復権により、極端な独裁政治を始め、79年の1月に失脚するまでの約27年間、イランの独裁者として支配を続けた。そして「その独裁の裏には常にアメリカがいた」という。「アメリカにとってイランは中東における忠実なドーベルマン」であったからだ。「これがイラン人が抱く“アメリカの呪縛”である」。しかし、その反面、パーレビは「イランを中東で最も近代化させた」。

 パーレビの独裁はホメイニを生み出した。
 「ホメイニは何度も国王批判の演説を打っては逮捕され、ついに64年に国外追放となった」。「彼はその後15年間、トルコ、イラクを経てフランスで亡命生活を送りながら、国外から国王への抵抗を呼びかけ続けた」。
 「79年1月、パーレビ国王はホメイニの演説に呼応する国民を抑えきれないと判断し、エジプト経由でアメリカに亡命」。そして、「入れ替わるように2月にホメイニが帰国し、国王派を一掃」。「同年4月1日、イラン・イスラム革命が成立、ホメイニは最高指導者に就任した」。
 そのホメイニを生み出した背景には、アメリカが絡んでいるという。
 「79年1月初旬NATO軍最高司令官アレキサンダー・ヘイグの元にカーターから指令が届いた」という。「『イランに特使を送り、どんな状況下でも動かぬよう軍部を説得させろ』」という命令だったという。「イラン軍部の動きを封じこめることは、パーレビを見殺しにするに等しい」。「ヘイグは戦略面と倫理面の両方から命令を拒否した」という。
 「結局、カーターは自分が選んだ特使をイランに派遣し、イラン軍部を説得」。「2月にホメイニがイランに帰国し、それを歓迎する100万人もの一大デモが行われた際も、ついに軍部は動かなかった」。
 「カーターはイラン軍部による国民虐殺を恐れていた」。「自慢の人権外交の名に傷がつく」ため、「これ以上独裁王朝にテコ入れしていると、西側諸国の支持を得られなくなるとも考えていた」という。また、「ホメイニに政権が移っても、イランとの関係は変わらないという判断もあったのだろう」。
 しかし、「イスラム革命後、反米の機運は高まり」、「鎮まることはなかった」。

 79年11月、イランのアメリカ大使館人質事件が発生した。「パーレビの亡命を受け入れたアメリカに怒った学生らが大使館を占拠し、人質を取って立てこもった」。「背後では革命防衛隊(イスラム革命後に発足)が彼らを支援していた」。
 「この人質事件に関しては、イスラエル政府がコマンド部隊による作戦を申し出」たが、カーターはこのオファーを断り、「人気回復を狙ったのか」、自ら解決しようとした。
 しかし、「結局、アメリカの救出作戦は輸送機とヘリコプターの接触事故などもあり」、「失敗に終わった」。

 こうしてアメリカのイラン喪失を招いたのだが、その背景には情報機関の弱体もあった。
 「イスラム革命前、CIAはイランに関する情報源をパーレビ側近に頼っていた」という。「パーレビ体制が危機に陥るとすればツデー党によってもたらされると読んでいた」という。
 「イスラエルの情報機関モサドは、パーレビ体制にとって最も危険なのはイスラム教右派の僧侶たちであると分析し、CIAにもレポートを送っていた」。しかし、CIAはそのレポートを無視した。

 ワシントンポスト紙の別冊『パレード』誌の『世界最悪の独裁者』ランキングによると、「ハメネイは7位にランクイン」している。「イランには選挙制度はあるが歴とした独裁国家である」。「万が一、イランが民主化に向けて動き出すと、他の独裁者たちは自国にも民主化のうねりが波及するのではないかと気が気ではない」。
 そのため、「アフマディネジャド当選とハメネイが断定した時、中東のリーダーたちはこぞって祝福の電報を送った」。「今回の騒動で、改革派のデモへの参加者たちの70%以上は30歳前の若者だった」という。「ホメイニの廟で自爆テロが行われ、『ハメネイに死を!』のスローガンが繰り返されている」。「彼らは、明らかに神権政治の終焉を願っている」。「ハメネイをはじめとする僧侶たちも彼らの天下を維持しようと必死だ」。
 ちなみに、「エジプトのムバラク大統領もトップ20に入っている」。

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アメリカとロシアの関係を忘れてはいけない

 現在、アメリカと中国の関係が注目されている。
 しかし、忘れてはいけないのは、アメリカとロシアの関係である。

 ロシアは現在でも大きな影響力を持ち、アメリカだけでなく、ヨーロッパにも、そして、世界に影響力を持つ。
 現在、中国の勢いが大きいだけに、忘れられがちだが、この間、ロシアの動きを見ていないといけないだろう。

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森林伐採が招く影響力(From SPA! 2009.3.17)

「「新学習指導要領」の影響で休職する教師がさらに急増」

 教育現場は大混乱の状況にある。
 「経済協力開発機構(OECD)によれば、日本は予算に占める教育費の割合は加盟28か国中最低」だという。この結果は、日本の混乱する状況からもあらわれている。

「[森林崩壊]が日本を破滅に導く!」

 日本の木材需要はすごい。
 日本は「世界の3分の1の木材を消費する消費大国」であり、「自給率は20%程度」だという。その日本であるが、「国土面積の3分の2が森林で覆われた森林大国」である。ちなみに、「日本の森林の45%が人工林で、人工林の44%をスギが占めている」という。

 しかし、日本国内での仕事は厳しくなっている。
 三重県の「尾鷲市の林業従業者は55年に855人だったが、00年には79人まで減り、製材業者の数は98年の24から04年の12へと、半減」になったという。この減少の仕方は衝撃的だ。それだけの国産の需要がなくなったということがいえるだろう。

 日本製は質がいいが、量と安い値段で外国製に負けてしまう。
 数々の物は外国製になっているのが普通になってきた。木材もその影響を大きく受けている。「国産材の利用率は急激に減り、木材自給率は20%程度まで落ち込んで」いるという。
 その背景には、

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米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (5)

 アメリカ国内からだけではなく、世界中から注目されるバラ・オバマ次期米大統領。そのオバマがこれからのことを考え、そして、政策を進めていくためには、オバマ政権のチーム自体も気になるところだろう。

国務、ヒラリー・クリントン(61)、上院議員(*1)
財務、ティモシー・ガイトナー(47)、ニューヨーク連銀総裁(*1)
国防、ロバート・ゲーツ(65)、国防長官(留任)(*1)
司法、エリック・ホルダー(57)、元司法副長官(*1)
内務、ケン・サラザール(53)、上院議員(*1)
農務、トム・ビルサック(58)、前アイオワ州知事(*1)
商務、ビル・リチャードソン(61)、ニューメキシコ州知事(*1)
労働、ヒルダ・ソリス(51)、下院議員(*1)
厚生、トム・ダシュル(61)、前民主党上院院内総務(*1)
住宅都市開発、ショーン・ドノバン(42)、ニューヨーク市住宅保全開発局長(*1)
運輸、レイ・ラフード(63)、下院議員(*1)
エネルギー、スティーブン・チュー(60)、ローレンスバークリー国立研究所所長(*1)
教育、アーン・ダンカン(44)、シカゴ市教育長(*1)
退役軍人、エリック・シンセキ(66)、元陸軍参謀長(*1)
国土安全保障、ジャネット・ナポリターノ(51)、アリゾナ州知事(*1)
といった面々が、オバマ政権の閣僚に抜擢された。

 さらに、オバマの政権移行チームは23日、次期政権の国務副長官に、クリントン前政権の大統領次席補佐官を務めたジェームズ・スタインバーグ氏と、行政管理予算局(OMB)局長だったジャコブ・ルー氏の2人を起用する発表(*2)。
 1972年の副長官ポスト設置以来、2人体制は初めて(*2)で、外交強化のため国務省の体制を刷新する方針(*2)。米メディアによると国務副長官2人は役割を分担し、スタインバーグ氏は外交政策、ルー氏は予算面を担当する見通し(*2)。
 国家安全保障問題担当の大統領次席補佐官に、クリントン政権で国務次官補を務めたトーマス・ドニラン氏を充てる人事も発表(*2)。
 オバマ次期政権は外交機能を強化するため、国務省のテコ入れを検討(*2)。
 特使や政策調整官のポストを大幅に増設し、交渉担当者としての権限を従来に比べて拡大する案を軸に調整している(*2)。

 情報機関トップの国家情報長官にデニス・ブレア元太平洋軍司令官(61)、情報収集・分析と対外工作を担う中央情報局(CIA)長官にクリントン前大統領の首席補佐官を務めたレオン・パネッタ氏(70)を指名(*3)。
 元CIA高官でテロ対策専門家のジョン・ブレナン氏を国土安全保障問題担当補佐官に起用(*3)。
 国家情報長官はCIAなど16の情報機関を統括する情報部門のトップ。ブレア氏は01年の米同時多発テロの際、太平洋軍を指揮した。かつて太平洋艦隊司令官も務めたこともあり、アジアの安全保障問題に精通した知日派(*3)。
 パネッタ氏は議員経験が長く、議会対策や省庁間の調整に手腕を発揮した。情報分野での経験がないため民主党内からも起用に疑問の声が上がったが、オバマ氏が擁護し、指名にこぎつけた(*3)。

 この閣僚人事を分析すると、人種的にも多彩。黒人4人、中南米系3人、アジア系2人で非白人は9人とほぼ半数を占め、過去最多だったクリントン政権発足時の7人を上回った。黒人のオバマ氏を含めると10人(*4)。
 女性は5人で非白人3人、白人はクリントン次期国務長官、ナポリターノ次期国土安全保障長官の2人(*4)。
 主流の白人男性は9人にとどまった(*4)。
 宗教も主流のキリスト教プロテスタントに属さないのはバイデン氏を含め9人。ほとんどがカトリックだが、エマニュエル次期首席補佐官とオーザック次期行政管理予算局長はユダヤ教徒(*4)。
 ハーバードなど北東部の名門8大学「アイビーリーグ」出身者はオバマ氏を含め8人。他にもタフツ大やスタンフォード大などほとんどが難関校出身で「インテリ政権」の色合いもにじむ(*4)。

 ただ、これまでのことから、民主党はこれまで親日というより、親中の傾向があり、前クリントン政権のときも、親中的な方針であったため、オバマ政権も日本にとっては厳しくなる恐れがあると感じてしまう。オバマ自身は日本とはうまくやっていくというみたいであるが。
 日本にとっては、そして、短期的に見れば、これは厳しいかもしれない。だが、世界全体として、そして、長期的な展望で見れば、これは良い方向に向かうのではないか。ただし、これがいえるのは、世界のリーダーが(抽象的だが)よりよいリーダーシップができればの話だが。

 それでも、オバマへの期待は高い。ブッシュ政権での戦争危機。そして、金融危機での大混乱から、どう抜け出せるか。多くの期待はオバマ政権に注がれているのは間違いないだろう。

終わり

<参考資料>
*1 日本経済新聞 2008年12月21日(日)『オバマ氏、危機対応の布陣 景気回復へ即戦力 国際協調の実現もカギ』
*2 日本経済新聞 2008年12月25日(木)『米次期政権 国務副長官2人起用 スタインバーグ氏ら 外交強化へ体制刷新』
*3 毎日新聞 2009年1月10日(土) 『米情報長官にブレア氏指名 CIA長官パネッタ氏』
*4 毎日新聞 2008年12月22日(月)『オバマ米次期政権閣僚 多様性、融和前面に 実務派布陣 対日重視も』

<参考記事>
・「アメリカ大統領就任式迫る!」/ふれあい七面相のブログ

・「オバマ大統領に期待しましょう」/125歳を目指してーアンチエイジングをまっしぐら

・「政治家の演説!」/今、「生きている」その日に感じた心を綴ろう!

米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (4)

 バラク・オバマ上院議員が大統領選挙に勝利したことは、様々な影響を与えている。

 まず、あげられるのは、黒人大統領が誕生するということでの黒人への影響だ。長らく、アメリカでは黒人への人種差別が残されており、それは、同時に他の人種にしてもいえることだった。
 人種差別の問題への希望が黒人大統領の誕生がいかに歴史的なことかは、数字が物語る。黒人は米人口の13.5%を占める。しかし、選挙前の政治勢力では、連邦下院議員は40人で約9%、上院議員は100人のうちオバマ氏のみ。50州のうち選挙で当選した知事はマサチューセッツ州のパトリック氏だけ。閣僚もライス国務長官1人しかいない(*1)。
 それに、選挙区が小さい下院では黒人住民が多い地域で勝てるが、白人が多数派となる州単位の上院・知事選では黒人の当選は極端に難しい。ましてや全米が対象の大統領選では不可能とみられていた。唯一、有望といわれたパウエル元国務長官は妻が暗殺を恐れて出馬を見送らせたといわれている(*1)。
 オバマ氏は母がカンザス州出身の白人、父はケニアの黒人で、先祖に奴隷を持たず、黒人候補としてはむしろ異端。差別是正を声高に叫ぶ従来の候補者像と違ったことが、白人の抵抗感を和らげた。ブッシュ政権への失望や金融危機もオバマ氏には有利に働いた(*1)。

 オバマ氏への支持はこんな形でもあらわれる。
 オバマ氏は6億ドル(約6百億円)異常の過去最高の資金を集め(*2)、アイオワ州で民主党登録者が22万人を超えたのに対して共和党登録者は14万人など、各州で民主党が勢いをみせ、期日前投票は最終的に全投票の3割を占め、前回の22%、前々回の15%から大幅に上昇する見通し(*2)を11月5日付けの日本経済新聞の記事からもうかがえた。

 国内にも大きな影響を与え、現在も与えているバラク氏は、国外にも大きな影響を与えている。
 ニコラ・サルコジ仏大統領は、オバマが今夏にパリを訪れた際には盛んに2人で写真に納まり、大いに宣伝に利用し、アンゲラ・メルケル独首相率いるキリスト教民主同盟の党員たちは7月、ベルリンに20万人強の聴衆を集めたオバマの演説に詰めかけた(*3)。
 EUまとめ役の両トップの振る舞い方からもわかる。

 オバマへの期待は大きいものの、問題は山積みだ。
 オバマ・ブームが世界に広がる中、人種問題や民族間の緊張など、世界各国が抱える社会問題が改めて注目されている(*4)。世界でオバマがこれほどまで注目されるのは、アメリカ以外の国が人種や民族に関して根深い問題を抱えているためで、こうした国々では、マイノリティー出身の一部の政治家や活動家が、「進歩的」なアメリカと自国の旧態依然たる違いを強調し、変革にはずみをつけたいと考えている(*4)。そして、多くの活動家は、オバマのように地域支援活動に従事した経験を持っている(*4)。
 ヨーロッパのほぼすべての国が人種差別問題を抱えているが、実態はそれぞれ異なる。(*4)
 例えばイギリスでは、60年代に多文化社会の建設を目指して採用された政策が、民族ごとに分断されたコミュニティーを生んでしまった。05年には、こうしたコミュニティー出身の若者たちが地下鉄爆破テロを起こした(*4)。
 フランスでは昨年、公的記録に人種や宗教についての項目を設けようというサルコジ政権の努力が違憲とされて頓挫。アラブ系の名前を持つ人や、移民居住区の住民が差別されることは日常茶飯事だというのに、人種問題の正確な把握さえ困難な状況だ(*4)。
 ドイツでは90年代まで、トルコ系労働者とその子供たちは市民権を得られず、公職に就けなかった。現在も多くのドイツ人が、トルコ系を同胞とみなすことに抵抗を感じている(*4)。
 イタリアのベルルスコーニ政権はここ数カ月、少数民族ロマを排斥する姿勢を強めている。ロマの子供たちには、予防接種と諮問捺印を強制。過去1年で、イタリアのロマ人口の1割が出国を余儀なくされた(*4)。
 政界で活躍しているマイノリティー出身者は、選挙で選ばれたのではなく、任命された人が多い。いい例がサルコジが閣僚に任命した3人の女性。アルジェリア人とモロッコ人の血を引くラシダ・ダティ司法相と、アルジェリア系ベルベル人の血を引くファデラ・アマラ都市政策担当閣外相、セネガル生まれのラマ・ヤド外務・人権担当閣外相(*4)だ。

 バラク・オバマへの期待はこんな形にも表れていた。
 世界の1億3400万人の聴取者向けに45ヵ国語で放送を行なっているボイス・オブ・アメリカ(VOA)。パキスタン向けに第1回テレビ討論会の音声を流したところ、予想外の反響があり、急きょ全3回の討論会をすべてほうそうすることにした(*5)。
 民主党候補バラク・オバマゆかりの地ケニアとインドネシアは、オバマ優勢のニュースに沸き返った(*5)。共和党候補のジョン・マケインがベトナム戦争に出征し、捕虜となった経歴をもつことから、ベトナムの人々もこの選挙には注目していた(*5)。
 選挙戦の終盤、国内でのオバマの支持率は平均50%で、44%のマケインを終始リードしていた。ほぼすべての国でオバマの支持率がマケインを上回り、多くの国では大差とつけた。ドイツでは70%、中国では75%という人気ぶりだ(*5)。
 フランスのニコラ・サルコジ政権唯一の黒人閣僚、セネガル移民のラマ・ヤド外務・人権担当閣外相は仏紙ル・パリジャンにこうかたっている。「オバマのような人が出てくるところが、アメリカという国の素晴らしさだ」(*5)っと。
 米国内で語られる大統領選と、世界が見守る大統領選はまったく別もののよう。アメリカのコメンテーターは、今回の選挙も前回や前々回と同じように扱ってきた。彼らが語るのは、日々の支持率の変動であり、激戦州(のなかでも激戦区)の色分けや有権者登録と資金集めの状況、スポット広告、ネガティブキャンペーンの影響など、地域ごとの「戦況報告」だった(*5)。
 一歩国外に出ると、世界に通用する21世紀のリーダーと、いまの時代の政治的・経済的な危機に対応できない冷戦時代の生き残りの戦いだったとも言える(*5)。
 国内でのオバマは、とくに終盤に入ってから、肌の色や知性、エリート的なイメージ、進歩的な考えを前面に出さないようにしていたようだ。しかし、世界で支持が高まったのは、まさにこうした資質のおかげだ(*5)。
 アジアの人々にとってインドネシアで子供時代を過ごしたオバマは身近な存在であり、アフリカの人々もケニア人を父にもつオバマに親しみを感じている。モロッコでニュース雑誌を出しているアフメド・ベンチェムジによれば、中東の人々もフセインというミドルネームに親近感をもつ(*5)。
 今回の大統領選は「変革」をめぐる戦いだと、世界は見てきた(*5)。
 英紙ガーディアンのコラムニスト、ジョナサン・フリードランドは、この7年間に世界は米政府の決定がどれほど重大な影響を及ぼすかを、嫌というほど思い知らされたと書く。「二つの戦争と世界的な金融危機。これらの出来事は、少なくとも部分的にはワシントンの決定に端を発している」(*5)。
 誰が米大統領になるかが、世界の人々の生活に直接的な影響を及ぼすようになった。世界におけるアメリカの地位が揺るがないかぎり、誰がなってもアメリカの大統領イコール世界の指導者という図式はある程度成り立つ(*5)。
 英調査会社ユーガフによると、北欧ではオバマの支持率が70%を超え、エジプト、サウジアラビヤ、アラブ首長国連邦でも50%を優に上回っている。イギリスでは5月以降13ポイント上がって、62%に達した。フランスではオバマ応援クラブが次々に誕生、「フランスはオバマを推す」というロゴ入りのTシャツもネットで売られている(*5)。
 ヨーロッパでは、オバマの登場をきっかけに人種的な少数派が声を上げはじめた(*5)。

 世界中がバラク・オバマへ大きな期待を持っていることが伺えた今回の選挙。もうすぐ、ブッシュからオバマへ、政権交代が行なわれる。
 果たして、オバマが大統領に就任し、オバマ政権が発足。大きな数多くの問題が待ち受けているわけだが、解決していくことができるだろうか。

つづく

<参考資料>
*1 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『米国社会 成熟 初の黒人大統領 移民急増が背景に』
*2  日本経済新聞 2008年11月5日(水)『2008年米大統領選 異例ずくめ 選挙戦に幕 現職「正副」不出馬・予備選は最長… 大混戦反映 地盤変化も』
*3 Newsweek 2008.11.12 『ヨーロッパが夢から覚める日』
*4  Newsweek 2008.11.16 『世界に広がるオバマ・フィーバー』
*4  Newsweek 2008.11.12 『世界の大統領 その名はオバマ』

<参考記事>
・「日米間では選挙の手法もかなり違いますね」/ひっそりと語ってみる

・「【米大統領選挙】祝バラク・オバマ」/gujin blog

・「人種のるつぼ合衆国に新しい風が吹く!」/〇い玉子も切りようで口

・「オバマ大統領誕生」/東大生TOEIC講師の日記

・「オバマ大統領誕生は米国にどのような変革をもたらすのか」/ハズレ社会人

米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (3)

 バラク・オバマ次期大統領が、ここまでの躍進した理由は様々にあるだろうが、なんといっても、「ウェブ・オブ・パートナーシップス」(*1)が重要な要素になった。これは「クモの巣状の協調関係(*1)という。それは、「あらゆる国の指導者と喜んで会う。友人とも、敵とも」(*1)ということだ。オバマ氏が公約に掲げた各国との対話路線をイメージで表したのが、「クモの巣を広げる外交」(*1)であり、世界と話し合って問題を解決していこうとする姿勢につながる。
 そして、オバマ氏は選挙戦で躍進を遂げたキーワードが、インターネットを使った口コミ。その効果を今後も活用していくようだ。
 オバマ氏は、史上初のテクノロジー担当の高官ポストを創設するほか、メールやネット上に掲載するビデオ映像を国民との「対話」に最大限活用する方針で、「顔の見える政府」を目標に掲げている。高官ポストの役割は、ネット上に関する政府の戦略や公的間の設備拡充、セキュリティーの強化などを指揮(*2)するという。
 具体的には、「オバマ新政権」は動画共有サイト「ユーチューブ」のビデオなどを活用することで、「顔の見える政府を目標にしている」という。その手始めとして、「政権移行チーム」は14日、大統領就任後にオバマ氏が始める米国民向けの大統領演説(毎週土曜放送、約4分)をビデオに録画。ホワイトハウスのウェブサイトに公開する方針(*2)だという。これは、民主党のフランクリン・ルーズベルト大統領(1933~45年)が世界恐慌後の混乱の中で始めたラジオ演説を「顔の見える」メッセージに変える初の試みで、注目を集めている(*2)という。さらに、ビデオやメールを駆使し、国民と質疑を交わす「双方向」の対話システムも構築する(*2)。
 オバマ氏が政権移行に向けて始めた専用サイト「チェンジ・ドット・ゴブ」(http://www.change.go.v/)では、政権移行チーム幹部が今後の方針などを語るビデオが掲示されている。新政権への「アドバイス」コーナーもあり、早くも多数の市民が意見や希望をメールで寄せている(*2)という。

 そんなオバマ氏が「変革」を掲げる上での課題として、
イラク、アフガニスタンでの戦争(*3)
地球温暖化対策(*3)
金融危機対策(*3)
新エネルギー問題(*3)
同盟関係の修復(*3)
などを位置づけており、外交は国際協調路線、内政では超党派路線を基軸に政権運営にあたる(*3)もようだ。

 オバマ氏は、民主主義や希望といった「理念のソフトパワー」を再生、世界と和解することを目指している。協調路線には「敵との直接対話」が含まれる。核開発を進めるイランとの対話にも積極的で、オバマ陣営の中東政策スタッフ、デニス・ロス氏は「イラン最高指導者ハネメイ師との接触がカギ」だと語る。それは、同師が核開発の決定権を持つ人物と見ているから(*4)。
 この直接対話路線は、核問題を抱える北朝鮮に対しても進める意向(*4)。
 さらに、具体的なものとして、オバマ氏は09年1月の大統領就任後16ヵ月以内にイラクから戦闘部隊を撤退し、主戦場をアフガニスタンにシフトさせる方針。アフガンについては北大西洋条約機構(NATO)にも積極貢献を求める(*4)という。
 環境対策に関する公約では、米国の温室効果ガス排出量を「50年までに1990年比で80%削減する」という意欲的な長期目標を掲げた。京都議定書を含む国連気候変動枠組み条約を重視し、その下で「建設的な役割を果たす」とも表明(*5)。
 国内の状況に関して、22日、オバマ氏は全米向けラジオで演説し、2011年1月までに250万人の雇用を確保・創出することを柱とした経済対策の立案を政権移行チームに指示したと発表。09年1月の大統領就任後、予算措置した法案を策定し、早期の成立を図る方針。オバマ氏は演説で「全米規模の雇用活性化を促すきっかけとなる」と強調。道路や学校、エネルギー関連施設の整備など大規模公共事業の実施を表明(*6)。

 そんなオバマ氏のこれからの方針であるが、果たしてうまくいくのだろうか。
 8年前にジョージ・W・ブッシュが大統領に就任したとき、世界はおおむね平和で、米軍には余裕があった。原油は1バレル=23ドルで、米経済は年3%超のペースで成長。為替相場は1ドル=116円で、米国債の発行残高は6兆ドルを下回り、連邦政府は大幅な財政黒字。9・11テロによってアメリカは大きな損害を受けたが、同情した世界はアメリカと協調路線を強めた(*7)。
 新大統領は、イラクとアフガニスタンにおける戦争、疲弊した軍隊、そして世界的な対テロ戦争を引き継ぐ。原油価格は最高で1バレル=150ドルにまで達し、ドル安が進行し(100円を切っている)、世界各地で反米感情が高まっている。財政赤字は大統領就任の年に1兆ドルに達しかねない。連邦政府の債務は約10兆ドルにふくらんでいる(*7)。
 アフガニスタン情勢は、イスラム原理主義の反政府勢力タリバンが再び勢力絵を拡大し、治安は悪化し、麻薬と腐敗が横行している。米軍とNATO(北大西洋条約機構)軍の増派が必要だが、現地でのナショナリズムの高まりを考えると、増派は暫定的なものにしないといけない(*7)。
 最も力を入れるべきは国軍と警察の強化。アフガニスタンの動向に利害関係をもつイラン、パキスタン、インド、中国、ロシア、NATOとの定期協議も必要(*7)。
 イラクの現状はといえば、米イラク両政府による地位協定交渉では11年末までの撤退とされており、前提となる治安部隊の育成は訓練の主眼はゲリラ戦への対応に置かれ、戦車や装甲車、重火器などの装備も欠いたまま。米軍に依存している兵たん業務の確立には「3~4年が必要」とされる(*8)。
 ロシアの動きも気になる。米国によるMD施設の東欧配備には新型ミサイル配備で対抗することを表明しており、8月のグルジア紛争や世界的な金融危機の責任も米国にあると指摘(*9)している。

 アメリカ国内を見ると、人種問題となった黒人の問題。黒人の社会進出はまだ途上であり、大手企業の経営者は少なく、失業率は白人の2倍以上(*10)というのが現状だ。
 アメリカの人口比率は、白人66%、ヒスパニック15%、黒人13%、アジア系5%、白人の割合は下がり続けており(*11)、人種の多様性を残す「サラダボウル」化の傾向を強める。国勢調査局の予測では白人人口は2042年に5割を切り、ヒスパニックや黒人など非白人層が多数派に転じる見通し(*12)だという。2050年までに白人比率で5割を切り、少数派に転じる(*13)という見方もある。

 バラク・オバマ次期大統領の思い描く、アメリカの姿、世界の姿は、オバマ氏の思いと戦略が、どこまで功を奏すのだろう。
オバマ氏のリーダーシップで取り組んでいく策は、問題をどこまで変革させていくのだろう。各国の立場、世界の人々の思いと重なり合い、協力していけるだろうか。それと同時に、アメリカ国民自体が変革を成し遂げるために協力できるだろうか。

つづく

<参考資料>
*1 日本経済新聞 2008年11月9日(日)『オバマの米国と世界 下 「クモの巣」の外交 同盟強化、日本に試練』
*2  毎日新聞 2008年11月16日(日)『オバマのアメリカ 新政権への移行 ネット駆使し国民対話 「顔の見える政府」目指す』
*3 毎日新聞 2008年11月6日(木)『内政・外交を大転換 米大統領選 オバマ氏勝利宣言 「この国の真の力は武力ではなく、民主主義に由来する」』
*4 毎日新聞 2008年11月6日(木)『米大統領にオバマ氏 変化の期待一身に 多難な「対話路線」 「強い米国」との相克 課題』
*5 毎日新聞 2008年11月6日(木)『温暖化対策も転換に期待感』
*6 毎日新聞 2008年11月24日(月)『雇用創出促せ! オバマ氏「250万人分増やす」』
*7 Newsweek 2008.11.12 『第44代大統領が直面する世界』
*8 毎日新聞 2008年11月7日(金)『イラク 米軍早期撤退に懸念 オバマ氏公約 治安に不安も』
*9 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『米新大統領に期待と警戒 ロシア、早くも揺さぶり ミサイル配備表明 対米批判明確に』
*10 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『米国社会 成熟 初の黒人大統領 移民急増が背景に』
*11 毎日新聞 2008年11月8日(土)『西川恵のGLOBALEYE オバマ氏と米社会の変容』
*12 毎日新聞 2008年11月6日(木)『オバマのアメリカ 変革への選択 草の根から頂点へ 白人票分け合う 人種問題 根は深く』
*13 毎日新聞 2008年11月7日(金)『記者の目 人種の壁に風穴あけたオバマ氏 「夢想家」ではなく「開拓者」 強固な精神で苦難克服』

<参考記事>

・「オバマ大統領のリーダーシップやいかに」/言語分析未来予測

・「勝手にアメリカ大統領候補者を分析」/アメリカ記者修業奮闘記

・「オバマ大統領でどうなるんだろう?」/ちょっと気になるキーワードとニュース

米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (2)

 アメリカの大統領選が盛り上がり、民主党のバラク・オバマ上院議員(47)が次期大統領に当選した。そして、09年1月20日にアメリカの第44代大統領に就任することが決まった。
 これを受けて、アメリカ国内の反応、そして、世界の反応はどうだろうか。

 ヨーロッパの反応はこうだ。
 欧州連合(EU)のバローゾ委員長は11月5日、「新しい世界には新しい政策が必要。オバマ氏が欧州とともに世界の利益のため協力することを望む」(*1)。
 イギリスのブラウン首相も同日、「世界経済の困難な時期を乗り越えるため、人々を助ける決意をオバマ氏と共有している」(*1)「多くの価値観を共有する真の友人」(*2)、フランスのサルコジ大統領は「フランスと欧州に膨大な希望を与えた」(*1)、ドイツのメルケル首相は「世界は大きな転換点を迎えている。欧米が信頼感を持って緊密に連携できると思っている」(*1)「米欧が緊密に協力し、相互信頼の精神で共に危機に立ち向かえると確信する」(*2)という反応だ。ちなみに、フランス大統領府はオバマ氏への祝意を示した上で「米国民は変革と楽観主義を選択した」「仏と欧州は、世界の繁栄と平和維持のための新たなエネルギーを米国から得られるだろう」(*1)などと反応。
 アジアの反応はどうだろうか。中国のコキントウ国家主席は「米中の建設的協力関係を新たなレベルに押し上げるため共に努力した」(*2)という反応。韓国の大統領官邸報道官は11月5日「韓米の未来志向的同盟関係が一層高い次元で発展することを確信する」(*3)とした。
 しかし、辛口な反応もある。
 ロシアのメドベージェフ大統領は米大統領選の結果判明直後の11月5日、年次教書演説で米国に対抗し新型ミサイルを配備する方針を明らかにするなど米国と真っ向から対立。「急速な関係改善は期待できない」(マルゲロフ露上院国際問題委員長)(*2)とし、「米新政権とは本格的につきあうことを期待している」「グルジア紛争は北大西洋条約機構(NATO)拡大の口実として利用された。米国のわがままな外交政策の結果だ」(*4)などメドベージェフ大統領は述べた。ただ、12月4日のプーチン首相が国民からの質問に答えるテレビ番組では「米国との関係改善を望んでおり、前向きなシグナルを受け取っている」と語った(*10)。
 キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長(82)は11月14日、論評を発表し、「世界が変わると信じるのはまったく無邪気なことだ」(*5)と、現時点では米国の政権交代に過大な期待を抱くべきではないと指摘。「(米国が)より寛容になり、より好戦的でなくなるだろうと多くの人が夢を抱いている」とし、「現在の指導者(ブッシュ大統領)に対する軽蔑が、幻想を抱かせている」と分析(*5)した。
 南米のベネズエラの反米左派のチャベス大統領はオバマ氏の勝利を祝福する声明を発表(*6)。

 一方のメディアの反応はどうだろうか。
 まずは米国メディアの反応をうかがう。
  ニューヨーク・タイムズ紙は11月5日付で「オバマ圧勝で人種の壁崩れる」(*6)、イラクから撤退しアフガニスタンのテロとの戦いに集中すべきだ。代替エネルギー開発を急ぐ必要がある。ちぐはぐな金融機関救済策の早期立て直しや移民政策も重要だ(電子版)(*7)。
  ウォールストリートジャーナル紙は社説で、「黒人と白人を両親に持つ」一人の男が(公共施設での黒人分離を認めた)ジム・クロウ法の終えん(64年)からわずか2世代で権力の頂点に立った」と歴史の重みを伝え、「米国を『人種差別主義』と呼ぶ西欧の民主主義国では起こりえなかったこと」を成し遂げたとつづった(*6)、民主党は議会選でも大勝した。オバマ氏が「労働者の95%」向けの減税を約束したことに注目する。(公約と対照的に)税金が増えると考える有権者は70%に上り、うち55%がマケイン候補に投票した。米国民は民主党が国を統治するすべを学んだかどうかを目にするだろう(電子版)(*7)。
  ワシントン・ポスト紙は「オバマ氏はブッシュ大統領の(負の)遺産を消し去ることはできないが、世界における米国の立場を好転させうる」とした。シカゴ・トリビューン紙は同氏の勝利が金融危機を追い風にしたもので、「新大統領は結果で判断される」との反応だった(*6)、有権者はオバマ氏に、ブッシュ政権やマケイン氏よりも優れた経済政策を期待している。地球温暖化など現政権が失敗した課題に対処できると考えている。ただ、米国で差別は残っており、黒人大統領が機能するかどうかは未知数といえる(電子版)(*7)。

 英国のメディアの反応は、タイムズ紙はオバマ氏の当選に関する「米国は言われるほど変化していない」(*6)、と同時に、米国民は再び独特の自己革新能力を発揮した。初の黒人大統領選出は歴史的だ。経済再建などオバマ氏の挑戦も歴史的になる(*7)。
  デイリーテレグラフはコラムで「いずれ新大統領は外交政策の危機に行き着く」。安全保障問題などで米国の国益と欧州の見解が衝突し、オバマ氏への「大いなる幻滅」が広がり、「6カ月もあれば反米主義が息を吹き返す」(*6)。

 仏のメディアの反応はというと、ルモンド紙は、米国民は二十一世紀の世界で米国が要する候補を選んだ。黒人は自分たちが米国民だとさらに強く考えるようになる。米新政権は同盟国との関係強化だけでなく、イランのような対立する国々との対話も進めるだろう。オバマ氏当選は世界にとってチャンスだ(*7)。

 ロシアのメディアの反応はというと、ブレーミャ・ノボスチェイ紙は「米国に変革が訪れた」。コムソモリスカヤ・プラウダ紙は「米国人はペレストロイカ(立て直し)を支持」、イズベスチヤ紙は「米大統領選でサーカシビリ(グルジア大統領)が敗北」との見出しで、マケイン氏を反露サーカシビリ政権に重ね合わせた(*6)。

 アジアでは、中国の中国共産党機関紙・人民日報が発行する11月6日付の時事情報紙が「環球時報」は中国人指揮者5人のインタビューを一挙掲載し、オバマ氏の対中政策について「楽観を許さない」。オバマ氏個人の評価については「理想主義者であると同時に現実主義者であり、中国の敵にはならないだろう」(*6)。
  新華社は、米議会は民主党が優勢になる。同一政党がホワイトハウスと議会で優勢になると、民衆の警戒心を引き起こすため、世論の抵抗などに直面するだろう。オバマ氏が大統領就任後に第一に着手するのは経済の立て直しだ。危機を克服できるかを世界が注目している(*7)。
 韓国の朝鮮日報は「上下両院を掌握する民主党も保護主義の意向が強く、アジア諸国がやり玉に挙げられる可能性が高い」(*6)。

 中東では、イスラエル最大紙イディオト・アハロノト(11月6日付)は、笑顔で娘を抱きかかえるオバマ氏の写真を1面にあしらい、「希望」の大見出しを掲げた。特にイランの各開発問題を巡る同氏の「対話路線」には、「オバマ氏は依然、謎だ」などと警戒感を隠さない(*6)。
 イランの保守有力紙レサラトは社説で、「イランに爆弾投下を」と叫んだマケイン氏に対し、対話重視のオバマ氏の対イランが意向に期待を表明。「現実のイラン」と向き合い、「イラン打倒」を目指しえ失敗した歴代大統領と同じ轍を踏まないよう求めた。オバマ外交は「私たちの対米戦略に左右される」とも指摘(*6)。

 南米ベネズエラでは、チャベス氏の声明について反チャベス派の有力紙ウニベルサルは11月6日、「声明には明らかに和解姿勢のトーンがあり、外交儀礼以上の意味がある。対話を開けるというサインをオバマ氏に送ったものだ」との識者の分析を掲載(*6)。

 アフリカのエジプトの政府系紙アルアハラムは11月6日付の社説で、オバマ氏の勝利によって「米国は変革する能力を証明した」と褒めたたえる一方、「(現)政権が作り上げたイスラム教への敵対停止」と「他国への内政干渉の終了」を図る機会だ、とも指摘(*6)。

 このような各国の反応、メディアの反応があり、オバマ次期米大統領への期待と警戒がうかがえるわけですが、現在、中東の問題となっている、イラク周辺の現地の反応はどうなっているだろう。
 イラク国民は、母国の荒廃を招いたブッシュ共和党政権に反発する人々は、オバマ氏が約束した駐留米軍の早期撤退を歓迎する一方、同氏が唱える「イランとの対話」によってイランの影響力が増すことなどを懸念(*8)しているという。
 一方のイランの反応は、当選当初の歓迎ムードが、やや現実的な見方に変化してきたそうだ。核問題などで対立するイランとの「直接対話」を表明していたオバマ氏が、その後、慎重な姿勢を見せ始めたことで、イランのモッタキ外相は11月19日、「米大統領の姿勢は、選挙期間中と就任後では変わるものだ」と指摘、「我々は米国人の(イランに対する)発言を精査しているが、オバマ氏が来年1月に大統領に就任し、対イラン政策が発表されるのを待っている」とも述べ、新政権の出方を慎重にうかがう姿勢(*9)。
 中東での歓迎ムードは「歓迎ムードはブッシュ政権の罪があまりに大きかった反動」(*2)との分析もある。

 このようなことから、次期大統領にオバマ氏が当選したことに対して、多くの反応と期待と警戒がうかがえた。このことは、毎回の米国の大統領選挙に対して、注目されることであるが、今回の注目度は眼の見張るものがある。
 その注目度に対して、オバマ氏はどう答えるのだろうか。「チェンジ」を掲げ、変えようとすることができるのだろうか。

つづく

<参考資料>
*1 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『欧州、関係立て直し望む』
*2 毎日新聞 2008年11月6日(木)『各国首脳 期待の声 「ムード先行」慎重論も』
*3 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『FTA批准や対北朝鮮で不安 韓国』
*4 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『米新大統領に期待と警戒 ロシア、早くも揺さぶり ミサイル配備表明 対米批判明確に』
*5 毎日新聞 2008年11月16日(日)『オバマ氏への期待「無邪気なことだ」 カストロ前議長 指摘』
*6 毎日新聞 2008年11月8日(土)『オバマ大統領誕生へ―――世界のメディアは』
*8 毎日新聞 2008年11月7日(金)『イラク 米軍早期撤退に懸念 オバマ氏公約 治安に不安も』
*9 毎日新聞 2008年11月21日(金)『イラン 「オバマ熱」冷め慎重に 米との対話 就任後の姿勢注視』
*10 毎日新聞 2008年12月5日(金)『プーチン氏 米次期政権に期待感 「首相会見」 露大統領復帰の憶測』

<参考記事>

・「【米大統領選挙】祝バラク・オバマ」/gujin blog

・「オバマ大統領が開く世界を妄想する」/戦争に負けた国

・「んー、アメリカ大統領選の報道姿」/freedomの「ん( )」なブログ

・「Presidential Inauguration 2009」/写楽 in Yahoo

・「第286号 転換の時代」/日々通信 いまを生きる

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