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バラク・オバマ

環境問題はたえず進んでいる(1)

 環境問題は日々、話題の上がる一方だ。
 これまで私たちは、地球という土台を引っ掻き回してきた。資源を使い、科学技術を発達させ、多くの恩恵を受けてきたわけだ。
 しかし、資源が変化をすれば、自然も大きく影響され、環境は変化する。
 その変化の影響のせいか、地球温暖化が叫ばれるようになった。

 地球温暖化を食い止めるために、二酸化炭素(CO2)の削減を掲げる国々が増えている。
 果たして、地球温暖化は食い止められるのか。

「CO2排出戦争が始まった」
シュテファン・タイル(ベルリン支局/Newsweek 2009.7.15)

 アメリカが環境問題に本格的に動き出したか。
 「バラク・オバマ米大統領は温室効果ガスの排出削減に関してリーダーシップを取ると宣言」した。「6月26日には、包括的な地球温暖化対策をうたった『米クリーンエネルギー・安全保障案』が米議会下院で可決」した。

 「6月にドイツのボンで開かれた温暖化対策の枠組みに関する国連作業部会」では、「20年までに温室効果ガスを90年のレベルから25~40%削減するという目標に関して意見がまとまらないまま、閉幕」。
 「この数値目標は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の科学者が地球の平均気温の上昇を2度までに抑えるために必要な数値として算出したもの」だという。
 しかし、「全ての問題について意見がばらばらだという」。
 「交渉のテーブルに載せられた各国の提案は、どれもこの数値から程遠い」。「京都議定書から離脱したアメリカは、20年までに05年比で14%削減という目標を打ち出している」。「だがそれは、排出削減量の基準に用いられることが多い90年レベルに戻すだけのこと」だ。
 「麻生太郎首相は6月10日、日本の温室効果ガス削減の中期目標として20年までに90年比で8%の削減を目指すと発表した」。「だがこの数字は、京都議定書での削減義務に比べて2ポイントしか増えていない」という。
 つまり、各国の提案は、基準にマッチしていないということだ。
 「EU(欧州連合)が提案する90年比20%削減さえ、国連が掲げる目標には届かない」という。「最もEUは他の国が相応の削減に同意すれば30%削減に変更する構え」だ。
 「中国は07年にアメリカを抜いて世界最大の排出国になったが、削減を完全に拒否し、先進国に排出量40%の削減を求めている」。さらに、「先進国が途上国の排出量削減のためにGDP(国内総生産)の1%を拠出することも要求」。
 「先進国の政府は、自国の企業が厳しい排出規制に従うことで製造コストの上昇に直面する一方、排出削減義務のない中国のライバル企業が勢いづくことを懸念している」。
 これは、途上国が消極的な態度のもう一つのデメリットだ。

 「アメリカでは、エネルギー集約型産業や労働組合、斜陽の鉄鋼業地帯の利益を代表する議員が特別な保護を要求」。「オバマと米議会が構想している排出権取引制度が導入されれば、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い企業は排出権の購入が義務付けられる」。
 「アメリカが考えている温暖化防止の枠組み」は、「鉄鋼、アルミニウム、セメントのような国内のエネルギー集約型産業には大きな排出枠を与え、事実上、適用除外という格好になるだろう」。
 「アメリカでの温暖化問題の議論では、雇用と競争力に関する不安の比重が高まっており、今後も産業保護を求める声は減らない」。「ヨーロッパの政治家は、中国とアメリカが温暖化ガスの排出削減に同意しなければ、貿易制裁を科すべきだと考えている」という。

 「先進国が今まで温室効果ガスを排出し続けてきたのは確かだ」。「しかし途上国の産業化が急速に進んだ今、途上国が温暖化防止に消極的なままでは世界全体での排出量は減らせない」。
 「最も埋め難い溝は先進国と途上国の間」は、「97年に採択された京都議定書では、貧しい国は規制から除外されていた」。「だがその後10年の急速な工業化によって、中国や他の新興国の排出量増加を大幅に抑制しない限り、地球規模の排出削減はおぼつかないことが明らかになった」。
 「途上国にすれば、先進国に追い付き、貧困から抜け出すには経済を成長させ続けるしかない」。
 要するに環境対策に途上国をうまく取り組む案が必要である。

 しかし、「中国の交渉担当者は、中国の国民1人当たりの排出量は先進国に比べてごく僅かだと主張」。
 さらに「新興国の大半は削減目標の設定を拒否」し、「排出量の増加ペースを落とすことにも消極的だ」。

 「中国は表向きは排出削減を突っぱねているが、最近は環境問題を真剣に考えるようになっている」。
 「06年に新築建造物に対するエネルギー効率規制を導入」し、「省エネ効果の高い断熱資材、冷暖房や照明設備の使用などを義務付けている」。「07年には遼寧省や吉林省など大気汚染が深刻な都市での火力発電所の新設を禁止した」。「財政省は現在、環境税の導入を検討している」という。
 「中国はG20(金融危機を機に集まった20ヵ国・地域の首脳会議)のメンバーとして、ようやく国際舞台で建設的かつ責任ある役割を果たす第1歩を踏み出したところだ」。「4月にはIMF(国際通貨基金)の融資機能を強化するため400億ドルの拠出を約束」。「ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国にも成長維持のための融資を申し出た」。
 中国が環境問題に取り組み始めたわけで、良い兆候だろう。

 「欧米の専門家らは、中国で最悪の汚染源は国内向け製品の工場であることが多く、輸出品はむしろ近代的で効率化された工場で製造されているケースが多いと指摘する」。
 「自動車と家電のエネルギー効率では、中国は既にアメリカを追い抜いている」。「中国の車の燃費基準は1リットル当たり15キロだが、アメリカでは12キロだ」。
 問題は中国国内ということだ。

 「アメリカが輸入する『炭素集約型』製品で最大の割合を占めるのは中国製ではなくヨーロッパ製だ」。「環境規制が競争力に与える影響がそれほど大きくないことも、多くの研究で明らかにされている」。
 「EUは05年に、政府がCO2などの排出枠を企業に設定する『キャップ・アンド・トレード方式』による排出権取引システムを導入した」。「だが国際エネルギー機関(IEA)によれば、域内の重工業の競争力に影響は出ていない」。
 「09年5月のピュー気候変動センター(ワシントン)の試算によれば、12年までに1トンのCO2ごとに15ドルの負担を強いられることになっても、脅威にさらされる製造業の雇用は最大0.2%だ」。「企業が進出先を決定する際、環境規制はほとんど、あるいはまったく考慮されないとの調査結果もある」。「最も重視されるのは市場へのアクセスで、その次は人件費だ」。
 「ドイツの化学産業のように、環境規制をクリアするための効率化が、競争力の強化につながったケースもある」。

 「温暖化防止をめぐる対立を解消する方法」として、「富裕国が途上国の排出削減を支援すること」があげられる。「中国は先進国がGDPの1%を貧困国に提供することや、環境関連の技術移転を求めている」。
 「だがGDPの1%というのは、OECD(経済協力開発機構)加盟国で考えると約4000億ドルに上る」。
 「より実現性が高いのは、国際的な排出権取引システムを通じてコストを民間に移転する方法」。「例えば先進国の企業が排出枠を守れなかった場合、排出枠を下回った中国などから超過分を購入しなければならない」。
 「既にEUは域外との排出権取引を認めている」。「年間の市場規模が約1億トンとされる世界のCO2排出権取引市場で、約3分の2の排出権は中国企業から供給されている」という。

 「EUは90年に比べてCO2の排出量が9%減ったことが自慢だが、欧州環境庁が5月に発表した報告書によると、削減分の半分は汚染物質をまき散らしていた旧共産圏の工場が89年以降、相次いで閉鎖されたことが直接の原因だ」。
 「ヨーロッパが05年に導入したCO2排出権取引システムが、排出削減にどれほど貢献したかも不透明だ」。
 「例えば排出量を22%削減したドイツ」。「大きく貢献したのは建設業界だが、これは厳しい規制やエネルギー価格の高騰などのせいで老朽化した建物の省エネ化を図る改築ブームが起きたためだ」。
 ヨーロッパの削減対策の実績はこれからが見極めどころか。

 今「欠けているのはリーダーシップだ」。「重要なカギの1つは、排出削減を途上国にとって魅力的なものにするために、先進国がどの程度コストを負担する気があるのかをはっきり示すこと」だろう。
 「12月には、12年に失効する京都議定書に代わる温室効果ガス排出削減枠組みの合意を目指し、約200ヵ国の代表がデンマークのコペンハーゲンで気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を行」われたが、結果はご存じだろう。
 しかし、まだ間に合うかもしれない。すぐに行動を起こせば。

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アメリカはどうなってしまうのか(下)

 超大国アメリカ。これからの時代はアメリカの時代だとはいえなくなってくるだろう。
 新興国の台頭が目立つアメリカ、これからの課題はどういったものがあるのだろうか。

アメリカよ、どこに行く 32
「バーナンキの未完の使命」
ポール・クルーグマン(COURRiER Japon 2010.2)

 世界的な金融危機に陥った現在、その解決の出口を模索中である。
 アメリカの「昨年11月の非農業部門の雇用者数が前月比でわずか1万1000人減にとどまったとする、12月発表の雇用統計の見かたを改めるべきだ」という。

 「景気後退が始まって以来、米国が失った800万人分の雇用を計算に入れるだけでは充分ではない」。「米国の人口が増えている以上、月10万人を上回るペースで、さらなる雇用を創出しなくてはならない」。
 「これは米国が毎月大量の雇用を創出しない限り、完全雇用に近い状態に戻ることはないという事実を示している」。
 「米国は今後5年間で約1800万人分、つまり月30万人分の雇用を創出する必要がある」というのだ。

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イラン問題の行方(上)

 イラン問題が依然として続いている。
 欧米とイランの関係は良くない。

 イラク、アフガニスタンの問題と同じくらい、大きな問題として、現代の国際情勢の注目すべき問題である。

 そのイランを取り上げる。

新世界大戦の時代
「「騒乱のイラン」もまたアメリカのエゴにより演出された」
落合信彦(SAPIO 2009.7.22)

 第2次大戦中、パーレビ朝国王を22歳のレザー・パーレビが継いだ。当時、イラン議会は極端なナショナリズムが巻き起こっていた。特に「石油をめぐって議会は国有化に傾いて」おり、「その先頭に立っていたのが、後に首相となるムハンマド・モサデク」であった。
 「かつてイランの石油はセブン・シスターズ(世界石油メジャー7社)の一角であったイギリスのアングロ・イラニアン社(後のBP)が独占していた」。「1951年4月、モサデクは議会石油委員会委員長の権限で石油の国有化を一方的に宣言して国民の圧倒的な支持を得る」。「その2年後、パーレビはモサデクを首相とするとともに石油国有化法に署名する」。
 しかし、アングロ・イラニアン社は、「他のメジャーと組んでイランの石油を国際市場からシャット・アウト」。その反撃に対して、「モサデクは必死に買い手を探すが、誰もメジャーを敵に回すような危険は冒したく」なく、「イランの国庫はからっぽになりつつあった」。
 そして、「当時のアメリカ大統領アイゼンハワーに、『もしアメリカが救いの手を差しのべてくれないならイランはソ連の援助を受けざるを得ない』」(しかもソ連との相互防衛条約も念頭に入れているということも)という書簡を送った。これに対し、「アイゼンハワーはモサデクを危険人物と判断し、CIAにイランの“掃除”を命」ずることになった。
 「CIAに後押しされたパーレビは国王権限でモサデクを罷面」し、「これを契機にモサデクを支持する反国王派のデモがエスカレートし」、「ソ連に焚き付けられた共産主義政党ツデー党が絡んでテヘランの民衆は暴徒化する」。「国王はCIAの指示でひとまずローマに亡命」。「CIAは軍部と警察を握ってカウンターデモを起こし、一夜にして情勢をひっくり返してしまう」。「モサデクは逮捕され国家反逆罪で3年の刑を受ける」。しかし、「パーレビは復権し、それまでとは人が変わったように現実的かつ強権的になる」。

 パーレビは復権により、極端な独裁政治を始め、79年の1月に失脚するまでの約27年間、イランの独裁者として支配を続けた。そして「その独裁の裏には常にアメリカがいた」という。「アメリカにとってイランは中東における忠実なドーベルマン」であったからだ。「これがイラン人が抱く“アメリカの呪縛”である」。しかし、その反面、パーレビは「イランを中東で最も近代化させた」。

 パーレビの独裁はホメイニを生み出した。
 「ホメイニは何度も国王批判の演説を打っては逮捕され、ついに64年に国外追放となった」。「彼はその後15年間、トルコ、イラクを経てフランスで亡命生活を送りながら、国外から国王への抵抗を呼びかけ続けた」。
 「79年1月、パーレビ国王はホメイニの演説に呼応する国民を抑えきれないと判断し、エジプト経由でアメリカに亡命」。そして、「入れ替わるように2月にホメイニが帰国し、国王派を一掃」。「同年4月1日、イラン・イスラム革命が成立、ホメイニは最高指導者に就任した」。
 そのホメイニを生み出した背景には、アメリカが絡んでいるという。
 「79年1月初旬NATO軍最高司令官アレキサンダー・ヘイグの元にカーターから指令が届いた」という。「『イランに特使を送り、どんな状況下でも動かぬよう軍部を説得させろ』」という命令だったという。「イラン軍部の動きを封じこめることは、パーレビを見殺しにするに等しい」。「ヘイグは戦略面と倫理面の両方から命令を拒否した」という。
 「結局、カーターは自分が選んだ特使をイランに派遣し、イラン軍部を説得」。「2月にホメイニがイランに帰国し、それを歓迎する100万人もの一大デモが行われた際も、ついに軍部は動かなかった」。
 「カーターはイラン軍部による国民虐殺を恐れていた」。「自慢の人権外交の名に傷がつく」ため、「これ以上独裁王朝にテコ入れしていると、西側諸国の支持を得られなくなるとも考えていた」という。また、「ホメイニに政権が移っても、イランとの関係は変わらないという判断もあったのだろう」。
 しかし、「イスラム革命後、反米の機運は高まり」、「鎮まることはなかった」。

 79年11月、イランのアメリカ大使館人質事件が発生した。「パーレビの亡命を受け入れたアメリカに怒った学生らが大使館を占拠し、人質を取って立てこもった」。「背後では革命防衛隊(イスラム革命後に発足)が彼らを支援していた」。
 「この人質事件に関しては、イスラエル政府がコマンド部隊による作戦を申し出」たが、カーターはこのオファーを断り、「人気回復を狙ったのか」、自ら解決しようとした。
 しかし、「結局、アメリカの救出作戦は輸送機とヘリコプターの接触事故などもあり」、「失敗に終わった」。

 こうしてアメリカのイラン喪失を招いたのだが、その背景には情報機関の弱体もあった。
 「イスラム革命前、CIAはイランに関する情報源をパーレビ側近に頼っていた」という。「パーレビ体制が危機に陥るとすればツデー党によってもたらされると読んでいた」という。
 「イスラエルの情報機関モサドは、パーレビ体制にとって最も危険なのはイスラム教右派の僧侶たちであると分析し、CIAにもレポートを送っていた」。しかし、CIAはそのレポートを無視した。

 ワシントンポスト紙の別冊『パレード』誌の『世界最悪の独裁者』ランキングによると、「ハメネイは7位にランクイン」している。「イランには選挙制度はあるが歴とした独裁国家である」。「万が一、イランが民主化に向けて動き出すと、他の独裁者たちは自国にも民主化のうねりが波及するのではないかと気が気ではない」。
 そのため、「アフマディネジャド当選とハメネイが断定した時、中東のリーダーたちはこぞって祝福の電報を送った」。「今回の騒動で、改革派のデモへの参加者たちの70%以上は30歳前の若者だった」という。「ホメイニの廟で自爆テロが行われ、『ハメネイに死を!』のスローガンが繰り返されている」。「彼らは、明らかに神権政治の終焉を願っている」。「ハメネイをはじめとする僧侶たちも彼らの天下を維持しようと必死だ」。
 ちなみに、「エジプトのムバラク大統領もトップ20に入っている」。

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海賊問題はどうなっているのか

 つい先日のことであるが、海賊問題がメディアで騒がれたばかり。現在は、その問題は残りつつも、話題は違う話題になってしまったが。

 果たしてこの問題は今後どうなっていくのだろうか。

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米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (5)

 アメリカ国内からだけではなく、世界中から注目されるバラ・オバマ次期米大統領。そのオバマがこれからのことを考え、そして、政策を進めていくためには、オバマ政権のチーム自体も気になるところだろう。

国務、ヒラリー・クリントン(61)、上院議員(*1)
財務、ティモシー・ガイトナー(47)、ニューヨーク連銀総裁(*1)
国防、ロバート・ゲーツ(65)、国防長官(留任)(*1)
司法、エリック・ホルダー(57)、元司法副長官(*1)
内務、ケン・サラザール(53)、上院議員(*1)
農務、トム・ビルサック(58)、前アイオワ州知事(*1)
商務、ビル・リチャードソン(61)、ニューメキシコ州知事(*1)
労働、ヒルダ・ソリス(51)、下院議員(*1)
厚生、トム・ダシュル(61)、前民主党上院院内総務(*1)
住宅都市開発、ショーン・ドノバン(42)、ニューヨーク市住宅保全開発局長(*1)
運輸、レイ・ラフード(63)、下院議員(*1)
エネルギー、スティーブン・チュー(60)、ローレンスバークリー国立研究所所長(*1)
教育、アーン・ダンカン(44)、シカゴ市教育長(*1)
退役軍人、エリック・シンセキ(66)、元陸軍参謀長(*1)
国土安全保障、ジャネット・ナポリターノ(51)、アリゾナ州知事(*1)
といった面々が、オバマ政権の閣僚に抜擢された。

 さらに、オバマの政権移行チームは23日、次期政権の国務副長官に、クリントン前政権の大統領次席補佐官を務めたジェームズ・スタインバーグ氏と、行政管理予算局(OMB)局長だったジャコブ・ルー氏の2人を起用する発表(*2)。
 1972年の副長官ポスト設置以来、2人体制は初めて(*2)で、外交強化のため国務省の体制を刷新する方針(*2)。米メディアによると国務副長官2人は役割を分担し、スタインバーグ氏は外交政策、ルー氏は予算面を担当する見通し(*2)。
 国家安全保障問題担当の大統領次席補佐官に、クリントン政権で国務次官補を務めたトーマス・ドニラン氏を充てる人事も発表(*2)。
 オバマ次期政権は外交機能を強化するため、国務省のテコ入れを検討(*2)。
 特使や政策調整官のポストを大幅に増設し、交渉担当者としての権限を従来に比べて拡大する案を軸に調整している(*2)。

 情報機関トップの国家情報長官にデニス・ブレア元太平洋軍司令官(61)、情報収集・分析と対外工作を担う中央情報局(CIA)長官にクリントン前大統領の首席補佐官を務めたレオン・パネッタ氏(70)を指名(*3)。
 元CIA高官でテロ対策専門家のジョン・ブレナン氏を国土安全保障問題担当補佐官に起用(*3)。
 国家情報長官はCIAなど16の情報機関を統括する情報部門のトップ。ブレア氏は01年の米同時多発テロの際、太平洋軍を指揮した。かつて太平洋艦隊司令官も務めたこともあり、アジアの安全保障問題に精通した知日派(*3)。
 パネッタ氏は議員経験が長く、議会対策や省庁間の調整に手腕を発揮した。情報分野での経験がないため民主党内からも起用に疑問の声が上がったが、オバマ氏が擁護し、指名にこぎつけた(*3)。

 この閣僚人事を分析すると、人種的にも多彩。黒人4人、中南米系3人、アジア系2人で非白人は9人とほぼ半数を占め、過去最多だったクリントン政権発足時の7人を上回った。黒人のオバマ氏を含めると10人(*4)。
 女性は5人で非白人3人、白人はクリントン次期国務長官、ナポリターノ次期国土安全保障長官の2人(*4)。
 主流の白人男性は9人にとどまった(*4)。
 宗教も主流のキリスト教プロテスタントに属さないのはバイデン氏を含め9人。ほとんどがカトリックだが、エマニュエル次期首席補佐官とオーザック次期行政管理予算局長はユダヤ教徒(*4)。
 ハーバードなど北東部の名門8大学「アイビーリーグ」出身者はオバマ氏を含め8人。他にもタフツ大やスタンフォード大などほとんどが難関校出身で「インテリ政権」の色合いもにじむ(*4)。

 ただ、これまでのことから、民主党はこれまで親日というより、親中の傾向があり、前クリントン政権のときも、親中的な方針であったため、オバマ政権も日本にとっては厳しくなる恐れがあると感じてしまう。オバマ自身は日本とはうまくやっていくというみたいであるが。
 日本にとっては、そして、短期的に見れば、これは厳しいかもしれない。だが、世界全体として、そして、長期的な展望で見れば、これは良い方向に向かうのではないか。ただし、これがいえるのは、世界のリーダーが(抽象的だが)よりよいリーダーシップができればの話だが。

 それでも、オバマへの期待は高い。ブッシュ政権での戦争危機。そして、金融危機での大混乱から、どう抜け出せるか。多くの期待はオバマ政権に注がれているのは間違いないだろう。

終わり

<参考資料>
*1 日本経済新聞 2008年12月21日(日)『オバマ氏、危機対応の布陣 景気回復へ即戦力 国際協調の実現もカギ』
*2 日本経済新聞 2008年12月25日(木)『米次期政権 国務副長官2人起用 スタインバーグ氏ら 外交強化へ体制刷新』
*3 毎日新聞 2009年1月10日(土) 『米情報長官にブレア氏指名 CIA長官パネッタ氏』
*4 毎日新聞 2008年12月22日(月)『オバマ米次期政権閣僚 多様性、融和前面に 実務派布陣 対日重視も』

<参考記事>
・「アメリカ大統領就任式迫る!」/ふれあい七面相のブログ

・「オバマ大統領に期待しましょう」/125歳を目指してーアンチエイジングをまっしぐら

・「政治家の演説!」/今、「生きている」その日に感じた心を綴ろう!

米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (4)

 バラク・オバマ上院議員が大統領選挙に勝利したことは、様々な影響を与えている。

 まず、あげられるのは、黒人大統領が誕生するということでの黒人への影響だ。長らく、アメリカでは黒人への人種差別が残されており、それは、同時に他の人種にしてもいえることだった。
 人種差別の問題への希望が黒人大統領の誕生がいかに歴史的なことかは、数字が物語る。黒人は米人口の13.5%を占める。しかし、選挙前の政治勢力では、連邦下院議員は40人で約9%、上院議員は100人のうちオバマ氏のみ。50州のうち選挙で当選した知事はマサチューセッツ州のパトリック氏だけ。閣僚もライス国務長官1人しかいない(*1)。
 それに、選挙区が小さい下院では黒人住民が多い地域で勝てるが、白人が多数派となる州単位の上院・知事選では黒人の当選は極端に難しい。ましてや全米が対象の大統領選では不可能とみられていた。唯一、有望といわれたパウエル元国務長官は妻が暗殺を恐れて出馬を見送らせたといわれている(*1)。
 オバマ氏は母がカンザス州出身の白人、父はケニアの黒人で、先祖に奴隷を持たず、黒人候補としてはむしろ異端。差別是正を声高に叫ぶ従来の候補者像と違ったことが、白人の抵抗感を和らげた。ブッシュ政権への失望や金融危機もオバマ氏には有利に働いた(*1)。

 オバマ氏への支持はこんな形でもあらわれる。
 オバマ氏は6億ドル(約6百億円)異常の過去最高の資金を集め(*2)、アイオワ州で民主党登録者が22万人を超えたのに対して共和党登録者は14万人など、各州で民主党が勢いをみせ、期日前投票は最終的に全投票の3割を占め、前回の22%、前々回の15%から大幅に上昇する見通し(*2)を11月5日付けの日本経済新聞の記事からもうかがえた。

 国内にも大きな影響を与え、現在も与えているバラク氏は、国外にも大きな影響を与えている。
 ニコラ・サルコジ仏大統領は、オバマが今夏にパリを訪れた際には盛んに2人で写真に納まり、大いに宣伝に利用し、アンゲラ・メルケル独首相率いるキリスト教民主同盟の党員たちは7月、ベルリンに20万人強の聴衆を集めたオバマの演説に詰めかけた(*3)。
 EUまとめ役の両トップの振る舞い方からもわかる。

 オバマへの期待は大きいものの、問題は山積みだ。
 オバマ・ブームが世界に広がる中、人種問題や民族間の緊張など、世界各国が抱える社会問題が改めて注目されている(*4)。世界でオバマがこれほどまで注目されるのは、アメリカ以外の国が人種や民族に関して根深い問題を抱えているためで、こうした国々では、マイノリティー出身の一部の政治家や活動家が、「進歩的」なアメリカと自国の旧態依然たる違いを強調し、変革にはずみをつけたいと考えている(*4)。そして、多くの活動家は、オバマのように地域支援活動に従事した経験を持っている(*4)。
 ヨーロッパのほぼすべての国が人種差別問題を抱えているが、実態はそれぞれ異なる。(*4)
 例えばイギリスでは、60年代に多文化社会の建設を目指して採用された政策が、民族ごとに分断されたコミュニティーを生んでしまった。05年には、こうしたコミュニティー出身の若者たちが地下鉄爆破テロを起こした(*4)。
 フランスでは昨年、公的記録に人種や宗教についての項目を設けようというサルコジ政権の努力が違憲とされて頓挫。アラブ系の名前を持つ人や、移民居住区の住民が差別されることは日常茶飯事だというのに、人種問題の正確な把握さえ困難な状況だ(*4)。
 ドイツでは90年代まで、トルコ系労働者とその子供たちは市民権を得られず、公職に就けなかった。現在も多くのドイツ人が、トルコ系を同胞とみなすことに抵抗を感じている(*4)。
 イタリアのベルルスコーニ政権はここ数カ月、少数民族ロマを排斥する姿勢を強めている。ロマの子供たちには、予防接種と諮問捺印を強制。過去1年で、イタリアのロマ人口の1割が出国を余儀なくされた(*4)。
 政界で活躍しているマイノリティー出身者は、選挙で選ばれたのではなく、任命された人が多い。いい例がサルコジが閣僚に任命した3人の女性。アルジェリア人とモロッコ人の血を引くラシダ・ダティ司法相と、アルジェリア系ベルベル人の血を引くファデラ・アマラ都市政策担当閣外相、セネガル生まれのラマ・ヤド外務・人権担当閣外相(*4)だ。

 バラク・オバマへの期待はこんな形にも表れていた。
 世界の1億3400万人の聴取者向けに45ヵ国語で放送を行なっているボイス・オブ・アメリカ(VOA)。パキスタン向けに第1回テレビ討論会の音声を流したところ、予想外の反響があり、急きょ全3回の討論会をすべてほうそうすることにした(*5)。
 民主党候補バラク・オバマゆかりの地ケニアとインドネシアは、オバマ優勢のニュースに沸き返った(*5)。共和党候補のジョン・マケインがベトナム戦争に出征し、捕虜となった経歴をもつことから、ベトナムの人々もこの選挙には注目していた(*5)。
 選挙戦の終盤、国内でのオバマの支持率は平均50%で、44%のマケインを終始リードしていた。ほぼすべての国でオバマの支持率がマケインを上回り、多くの国では大差とつけた。ドイツでは70%、中国では75%という人気ぶりだ(*5)。
 フランスのニコラ・サルコジ政権唯一の黒人閣僚、セネガル移民のラマ・ヤド外務・人権担当閣外相は仏紙ル・パリジャンにこうかたっている。「オバマのような人が出てくるところが、アメリカという国の素晴らしさだ」(*5)っと。
 米国内で語られる大統領選と、世界が見守る大統領選はまったく別もののよう。アメリカのコメンテーターは、今回の選挙も前回や前々回と同じように扱ってきた。彼らが語るのは、日々の支持率の変動であり、激戦州(のなかでも激戦区)の色分けや有権者登録と資金集めの状況、スポット広告、ネガティブキャンペーンの影響など、地域ごとの「戦況報告」だった(*5)。
 一歩国外に出ると、世界に通用する21世紀のリーダーと、いまの時代の政治的・経済的な危機に対応できない冷戦時代の生き残りの戦いだったとも言える(*5)。
 国内でのオバマは、とくに終盤に入ってから、肌の色や知性、エリート的なイメージ、進歩的な考えを前面に出さないようにしていたようだ。しかし、世界で支持が高まったのは、まさにこうした資質のおかげだ(*5)。
 アジアの人々にとってインドネシアで子供時代を過ごしたオバマは身近な存在であり、アフリカの人々もケニア人を父にもつオバマに親しみを感じている。モロッコでニュース雑誌を出しているアフメド・ベンチェムジによれば、中東の人々もフセインというミドルネームに親近感をもつ(*5)。
 今回の大統領選は「変革」をめぐる戦いだと、世界は見てきた(*5)。
 英紙ガーディアンのコラムニスト、ジョナサン・フリードランドは、この7年間に世界は米政府の決定がどれほど重大な影響を及ぼすかを、嫌というほど思い知らされたと書く。「二つの戦争と世界的な金融危機。これらの出来事は、少なくとも部分的にはワシントンの決定に端を発している」(*5)。
 誰が米大統領になるかが、世界の人々の生活に直接的な影響を及ぼすようになった。世界におけるアメリカの地位が揺るがないかぎり、誰がなってもアメリカの大統領イコール世界の指導者という図式はある程度成り立つ(*5)。
 英調査会社ユーガフによると、北欧ではオバマの支持率が70%を超え、エジプト、サウジアラビヤ、アラブ首長国連邦でも50%を優に上回っている。イギリスでは5月以降13ポイント上がって、62%に達した。フランスではオバマ応援クラブが次々に誕生、「フランスはオバマを推す」というロゴ入りのTシャツもネットで売られている(*5)。
 ヨーロッパでは、オバマの登場をきっかけに人種的な少数派が声を上げはじめた(*5)。

 世界中がバラク・オバマへ大きな期待を持っていることが伺えた今回の選挙。もうすぐ、ブッシュからオバマへ、政権交代が行なわれる。
 果たして、オバマが大統領に就任し、オバマ政権が発足。大きな数多くの問題が待ち受けているわけだが、解決していくことができるだろうか。

つづく

<参考資料>
*1 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『米国社会 成熟 初の黒人大統領 移民急増が背景に』
*2  日本経済新聞 2008年11月5日(水)『2008年米大統領選 異例ずくめ 選挙戦に幕 現職「正副」不出馬・予備選は最長… 大混戦反映 地盤変化も』
*3 Newsweek 2008.11.12 『ヨーロッパが夢から覚める日』
*4  Newsweek 2008.11.16 『世界に広がるオバマ・フィーバー』
*4  Newsweek 2008.11.12 『世界の大統領 その名はオバマ』

<参考記事>
・「日米間では選挙の手法もかなり違いますね」/ひっそりと語ってみる

・「【米大統領選挙】祝バラク・オバマ」/gujin blog

・「人種のるつぼ合衆国に新しい風が吹く!」/〇い玉子も切りようで口

・「オバマ大統領誕生」/東大生TOEIC講師の日記

・「オバマ大統領誕生は米国にどのような変革をもたらすのか」/ハズレ社会人

米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (3)

 バラク・オバマ次期大統領が、ここまでの躍進した理由は様々にあるだろうが、なんといっても、「ウェブ・オブ・パートナーシップス」(*1)が重要な要素になった。これは「クモの巣状の協調関係(*1)という。それは、「あらゆる国の指導者と喜んで会う。友人とも、敵とも」(*1)ということだ。オバマ氏が公約に掲げた各国との対話路線をイメージで表したのが、「クモの巣を広げる外交」(*1)であり、世界と話し合って問題を解決していこうとする姿勢につながる。
 そして、オバマ氏は選挙戦で躍進を遂げたキーワードが、インターネットを使った口コミ。その効果を今後も活用していくようだ。
 オバマ氏は、史上初のテクノロジー担当の高官ポストを創設するほか、メールやネット上に掲載するビデオ映像を国民との「対話」に最大限活用する方針で、「顔の見える政府」を目標に掲げている。高官ポストの役割は、ネット上に関する政府の戦略や公的間の設備拡充、セキュリティーの強化などを指揮(*2)するという。
 具体的には、「オバマ新政権」は動画共有サイト「ユーチューブ」のビデオなどを活用することで、「顔の見える政府を目標にしている」という。その手始めとして、「政権移行チーム」は14日、大統領就任後にオバマ氏が始める米国民向けの大統領演説(毎週土曜放送、約4分)をビデオに録画。ホワイトハウスのウェブサイトに公開する方針(*2)だという。これは、民主党のフランクリン・ルーズベルト大統領(1933~45年)が世界恐慌後の混乱の中で始めたラジオ演説を「顔の見える」メッセージに変える初の試みで、注目を集めている(*2)という。さらに、ビデオやメールを駆使し、国民と質疑を交わす「双方向」の対話システムも構築する(*2)。
 オバマ氏が政権移行に向けて始めた専用サイト「チェンジ・ドット・ゴブ」(http://www.change.go.v/)では、政権移行チーム幹部が今後の方針などを語るビデオが掲示されている。新政権への「アドバイス」コーナーもあり、早くも多数の市民が意見や希望をメールで寄せている(*2)という。

 そんなオバマ氏が「変革」を掲げる上での課題として、
イラク、アフガニスタンでの戦争(*3)
地球温暖化対策(*3)
金融危機対策(*3)
新エネルギー問題(*3)
同盟関係の修復(*3)
などを位置づけており、外交は国際協調路線、内政では超党派路線を基軸に政権運営にあたる(*3)もようだ。

 オバマ氏は、民主主義や希望といった「理念のソフトパワー」を再生、世界と和解することを目指している。協調路線には「敵との直接対話」が含まれる。核開発を進めるイランとの対話にも積極的で、オバマ陣営の中東政策スタッフ、デニス・ロス氏は「イラン最高指導者ハネメイ師との接触がカギ」だと語る。それは、同師が核開発の決定権を持つ人物と見ているから(*4)。
 この直接対話路線は、核問題を抱える北朝鮮に対しても進める意向(*4)。
 さらに、具体的なものとして、オバマ氏は09年1月の大統領就任後16ヵ月以内にイラクから戦闘部隊を撤退し、主戦場をアフガニスタンにシフトさせる方針。アフガンについては北大西洋条約機構(NATO)にも積極貢献を求める(*4)という。
 環境対策に関する公約では、米国の温室効果ガス排出量を「50年までに1990年比で80%削減する」という意欲的な長期目標を掲げた。京都議定書を含む国連気候変動枠組み条約を重視し、その下で「建設的な役割を果たす」とも表明(*5)。
 国内の状況に関して、22日、オバマ氏は全米向けラジオで演説し、2011年1月までに250万人の雇用を確保・創出することを柱とした経済対策の立案を政権移行チームに指示したと発表。09年1月の大統領就任後、予算措置した法案を策定し、早期の成立を図る方針。オバマ氏は演説で「全米規模の雇用活性化を促すきっかけとなる」と強調。道路や学校、エネルギー関連施設の整備など大規模公共事業の実施を表明(*6)。

 そんなオバマ氏のこれからの方針であるが、果たしてうまくいくのだろうか。
 8年前にジョージ・W・ブッシュが大統領に就任したとき、世界はおおむね平和で、米軍には余裕があった。原油は1バレル=23ドルで、米経済は年3%超のペースで成長。為替相場は1ドル=116円で、米国債の発行残高は6兆ドルを下回り、連邦政府は大幅な財政黒字。9・11テロによってアメリカは大きな損害を受けたが、同情した世界はアメリカと協調路線を強めた(*7)。
 新大統領は、イラクとアフガニスタンにおける戦争、疲弊した軍隊、そして世界的な対テロ戦争を引き継ぐ。原油価格は最高で1バレル=150ドルにまで達し、ドル安が進行し(100円を切っている)、世界各地で反米感情が高まっている。財政赤字は大統領就任の年に1兆ドルに達しかねない。連邦政府の債務は約10兆ドルにふくらんでいる(*7)。
 アフガニスタン情勢は、イスラム原理主義の反政府勢力タリバンが再び勢力絵を拡大し、治安は悪化し、麻薬と腐敗が横行している。米軍とNATO(北大西洋条約機構)軍の増派が必要だが、現地でのナショナリズムの高まりを考えると、増派は暫定的なものにしないといけない(*7)。
 最も力を入れるべきは国軍と警察の強化。アフガニスタンの動向に利害関係をもつイラン、パキスタン、インド、中国、ロシア、NATOとの定期協議も必要(*7)。
 イラクの現状はといえば、米イラク両政府による地位協定交渉では11年末までの撤退とされており、前提となる治安部隊の育成は訓練の主眼はゲリラ戦への対応に置かれ、戦車や装甲車、重火器などの装備も欠いたまま。米軍に依存している兵たん業務の確立には「3~4年が必要」とされる(*8)。
 ロシアの動きも気になる。米国によるMD施設の東欧配備には新型ミサイル配備で対抗することを表明しており、8月のグルジア紛争や世界的な金融危機の責任も米国にあると指摘(*9)している。

 アメリカ国内を見ると、人種問題となった黒人の問題。黒人の社会進出はまだ途上であり、大手企業の経営者は少なく、失業率は白人の2倍以上(*10)というのが現状だ。
 アメリカの人口比率は、白人66%、ヒスパニック15%、黒人13%、アジア系5%、白人の割合は下がり続けており(*11)、人種の多様性を残す「サラダボウル」化の傾向を強める。国勢調査局の予測では白人人口は2042年に5割を切り、ヒスパニックや黒人など非白人層が多数派に転じる見通し(*12)だという。2050年までに白人比率で5割を切り、少数派に転じる(*13)という見方もある。

 バラク・オバマ次期大統領の思い描く、アメリカの姿、世界の姿は、オバマ氏の思いと戦略が、どこまで功を奏すのだろう。
オバマ氏のリーダーシップで取り組んでいく策は、問題をどこまで変革させていくのだろう。各国の立場、世界の人々の思いと重なり合い、協力していけるだろうか。それと同時に、アメリカ国民自体が変革を成し遂げるために協力できるだろうか。

つづく

<参考資料>
*1 日本経済新聞 2008年11月9日(日)『オバマの米国と世界 下 「クモの巣」の外交 同盟強化、日本に試練』
*2  毎日新聞 2008年11月16日(日)『オバマのアメリカ 新政権への移行 ネット駆使し国民対話 「顔の見える政府」目指す』
*3 毎日新聞 2008年11月6日(木)『内政・外交を大転換 米大統領選 オバマ氏勝利宣言 「この国の真の力は武力ではなく、民主主義に由来する」』
*4 毎日新聞 2008年11月6日(木)『米大統領にオバマ氏 変化の期待一身に 多難な「対話路線」 「強い米国」との相克 課題』
*5 毎日新聞 2008年11月6日(木)『温暖化対策も転換に期待感』
*6 毎日新聞 2008年11月24日(月)『雇用創出促せ! オバマ氏「250万人分増やす」』
*7 Newsweek 2008.11.12 『第44代大統領が直面する世界』
*8 毎日新聞 2008年11月7日(金)『イラク 米軍早期撤退に懸念 オバマ氏公約 治安に不安も』
*9 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『米新大統領に期待と警戒 ロシア、早くも揺さぶり ミサイル配備表明 対米批判明確に』
*10 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『米国社会 成熟 初の黒人大統領 移民急増が背景に』
*11 毎日新聞 2008年11月8日(土)『西川恵のGLOBALEYE オバマ氏と米社会の変容』
*12 毎日新聞 2008年11月6日(木)『オバマのアメリカ 変革への選択 草の根から頂点へ 白人票分け合う 人種問題 根は深く』
*13 毎日新聞 2008年11月7日(金)『記者の目 人種の壁に風穴あけたオバマ氏 「夢想家」ではなく「開拓者」 強固な精神で苦難克服』

<参考記事>

・「オバマ大統領のリーダーシップやいかに」/言語分析未来予測

・「勝手にアメリカ大統領候補者を分析」/アメリカ記者修業奮闘記

・「オバマ大統領でどうなるんだろう?」/ちょっと気になるキーワードとニュース

米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (2)

 アメリカの大統領選が盛り上がり、民主党のバラク・オバマ上院議員(47)が次期大統領に当選した。そして、09年1月20日にアメリカの第44代大統領に就任することが決まった。
 これを受けて、アメリカ国内の反応、そして、世界の反応はどうだろうか。

 ヨーロッパの反応はこうだ。
 欧州連合(EU)のバローゾ委員長は11月5日、「新しい世界には新しい政策が必要。オバマ氏が欧州とともに世界の利益のため協力することを望む」(*1)。
 イギリスのブラウン首相も同日、「世界経済の困難な時期を乗り越えるため、人々を助ける決意をオバマ氏と共有している」(*1)「多くの価値観を共有する真の友人」(*2)、フランスのサルコジ大統領は「フランスと欧州に膨大な希望を与えた」(*1)、ドイツのメルケル首相は「世界は大きな転換点を迎えている。欧米が信頼感を持って緊密に連携できると思っている」(*1)「米欧が緊密に協力し、相互信頼の精神で共に危機に立ち向かえると確信する」(*2)という反応だ。ちなみに、フランス大統領府はオバマ氏への祝意を示した上で「米国民は変革と楽観主義を選択した」「仏と欧州は、世界の繁栄と平和維持のための新たなエネルギーを米国から得られるだろう」(*1)などと反応。
 アジアの反応はどうだろうか。中国のコキントウ国家主席は「米中の建設的協力関係を新たなレベルに押し上げるため共に努力した」(*2)という反応。韓国の大統領官邸報道官は11月5日「韓米の未来志向的同盟関係が一層高い次元で発展することを確信する」(*3)とした。
 しかし、辛口な反応もある。
 ロシアのメドベージェフ大統領は米大統領選の結果判明直後の11月5日、年次教書演説で米国に対抗し新型ミサイルを配備する方針を明らかにするなど米国と真っ向から対立。「急速な関係改善は期待できない」(マルゲロフ露上院国際問題委員長)(*2)とし、「米新政権とは本格的につきあうことを期待している」「グルジア紛争は北大西洋条約機構(NATO)拡大の口実として利用された。米国のわがままな外交政策の結果だ」(*4)などメドベージェフ大統領は述べた。ただ、12月4日のプーチン首相が国民からの質問に答えるテレビ番組では「米国との関係改善を望んでおり、前向きなシグナルを受け取っている」と語った(*10)。
 キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長(82)は11月14日、論評を発表し、「世界が変わると信じるのはまったく無邪気なことだ」(*5)と、現時点では米国の政権交代に過大な期待を抱くべきではないと指摘。「(米国が)より寛容になり、より好戦的でなくなるだろうと多くの人が夢を抱いている」とし、「現在の指導者(ブッシュ大統領)に対する軽蔑が、幻想を抱かせている」と分析(*5)した。
 南米のベネズエラの反米左派のチャベス大統領はオバマ氏の勝利を祝福する声明を発表(*6)。

 一方のメディアの反応はどうだろうか。
 まずは米国メディアの反応をうかがう。
  ニューヨーク・タイムズ紙は11月5日付で「オバマ圧勝で人種の壁崩れる」(*6)、イラクから撤退しアフガニスタンのテロとの戦いに集中すべきだ。代替エネルギー開発を急ぐ必要がある。ちぐはぐな金融機関救済策の早期立て直しや移民政策も重要だ(電子版)(*7)。
  ウォールストリートジャーナル紙は社説で、「黒人と白人を両親に持つ」一人の男が(公共施設での黒人分離を認めた)ジム・クロウ法の終えん(64年)からわずか2世代で権力の頂点に立った」と歴史の重みを伝え、「米国を『人種差別主義』と呼ぶ西欧の民主主義国では起こりえなかったこと」を成し遂げたとつづった(*6)、民主党は議会選でも大勝した。オバマ氏が「労働者の95%」向けの減税を約束したことに注目する。(公約と対照的に)税金が増えると考える有権者は70%に上り、うち55%がマケイン候補に投票した。米国民は民主党が国を統治するすべを学んだかどうかを目にするだろう(電子版)(*7)。
  ワシントン・ポスト紙は「オバマ氏はブッシュ大統領の(負の)遺産を消し去ることはできないが、世界における米国の立場を好転させうる」とした。シカゴ・トリビューン紙は同氏の勝利が金融危機を追い風にしたもので、「新大統領は結果で判断される」との反応だった(*6)、有権者はオバマ氏に、ブッシュ政権やマケイン氏よりも優れた経済政策を期待している。地球温暖化など現政権が失敗した課題に対処できると考えている。ただ、米国で差別は残っており、黒人大統領が機能するかどうかは未知数といえる(電子版)(*7)。

 英国のメディアの反応は、タイムズ紙はオバマ氏の当選に関する「米国は言われるほど変化していない」(*6)、と同時に、米国民は再び独特の自己革新能力を発揮した。初の黒人大統領選出は歴史的だ。経済再建などオバマ氏の挑戦も歴史的になる(*7)。
  デイリーテレグラフはコラムで「いずれ新大統領は外交政策の危機に行き着く」。安全保障問題などで米国の国益と欧州の見解が衝突し、オバマ氏への「大いなる幻滅」が広がり、「6カ月もあれば反米主義が息を吹き返す」(*6)。

 仏のメディアの反応はというと、ルモンド紙は、米国民は二十一世紀の世界で米国が要する候補を選んだ。黒人は自分たちが米国民だとさらに強く考えるようになる。米新政権は同盟国との関係強化だけでなく、イランのような対立する国々との対話も進めるだろう。オバマ氏当選は世界にとってチャンスだ(*7)。

 ロシアのメディアの反応はというと、ブレーミャ・ノボスチェイ紙は「米国に変革が訪れた」。コムソモリスカヤ・プラウダ紙は「米国人はペレストロイカ(立て直し)を支持」、イズベスチヤ紙は「米大統領選でサーカシビリ(グルジア大統領)が敗北」との見出しで、マケイン氏を反露サーカシビリ政権に重ね合わせた(*6)。

 アジアでは、中国の中国共産党機関紙・人民日報が発行する11月6日付の時事情報紙が「環球時報」は中国人指揮者5人のインタビューを一挙掲載し、オバマ氏の対中政策について「楽観を許さない」。オバマ氏個人の評価については「理想主義者であると同時に現実主義者であり、中国の敵にはならないだろう」(*6)。
  新華社は、米議会は民主党が優勢になる。同一政党がホワイトハウスと議会で優勢になると、民衆の警戒心を引き起こすため、世論の抵抗などに直面するだろう。オバマ氏が大統領就任後に第一に着手するのは経済の立て直しだ。危機を克服できるかを世界が注目している(*7)。
 韓国の朝鮮日報は「上下両院を掌握する民主党も保護主義の意向が強く、アジア諸国がやり玉に挙げられる可能性が高い」(*6)。

 中東では、イスラエル最大紙イディオト・アハロノト(11月6日付)は、笑顔で娘を抱きかかえるオバマ氏の写真を1面にあしらい、「希望」の大見出しを掲げた。特にイランの各開発問題を巡る同氏の「対話路線」には、「オバマ氏は依然、謎だ」などと警戒感を隠さない(*6)。
 イランの保守有力紙レサラトは社説で、「イランに爆弾投下を」と叫んだマケイン氏に対し、対話重視のオバマ氏の対イランが意向に期待を表明。「現実のイラン」と向き合い、「イラン打倒」を目指しえ失敗した歴代大統領と同じ轍を踏まないよう求めた。オバマ外交は「私たちの対米戦略に左右される」とも指摘(*6)。

 南米ベネズエラでは、チャベス氏の声明について反チャベス派の有力紙ウニベルサルは11月6日、「声明には明らかに和解姿勢のトーンがあり、外交儀礼以上の意味がある。対話を開けるというサインをオバマ氏に送ったものだ」との識者の分析を掲載(*6)。

 アフリカのエジプトの政府系紙アルアハラムは11月6日付の社説で、オバマ氏の勝利によって「米国は変革する能力を証明した」と褒めたたえる一方、「(現)政権が作り上げたイスラム教への敵対停止」と「他国への内政干渉の終了」を図る機会だ、とも指摘(*6)。

 このような各国の反応、メディアの反応があり、オバマ次期米大統領への期待と警戒がうかがえるわけですが、現在、中東の問題となっている、イラク周辺の現地の反応はどうなっているだろう。
 イラク国民は、母国の荒廃を招いたブッシュ共和党政権に反発する人々は、オバマ氏が約束した駐留米軍の早期撤退を歓迎する一方、同氏が唱える「イランとの対話」によってイランの影響力が増すことなどを懸念(*8)しているという。
 一方のイランの反応は、当選当初の歓迎ムードが、やや現実的な見方に変化してきたそうだ。核問題などで対立するイランとの「直接対話」を表明していたオバマ氏が、その後、慎重な姿勢を見せ始めたことで、イランのモッタキ外相は11月19日、「米大統領の姿勢は、選挙期間中と就任後では変わるものだ」と指摘、「我々は米国人の(イランに対する)発言を精査しているが、オバマ氏が来年1月に大統領に就任し、対イラン政策が発表されるのを待っている」とも述べ、新政権の出方を慎重にうかがう姿勢(*9)。
 中東での歓迎ムードは「歓迎ムードはブッシュ政権の罪があまりに大きかった反動」(*2)との分析もある。

 このようなことから、次期大統領にオバマ氏が当選したことに対して、多くの反応と期待と警戒がうかがえた。このことは、毎回の米国の大統領選挙に対して、注目されることであるが、今回の注目度は眼の見張るものがある。
 その注目度に対して、オバマ氏はどう答えるのだろうか。「チェンジ」を掲げ、変えようとすることができるのだろうか。

つづく

<参考資料>
*1 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『欧州、関係立て直し望む』
*2 毎日新聞 2008年11月6日(木)『各国首脳 期待の声 「ムード先行」慎重論も』
*3 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『FTA批准や対北朝鮮で不安 韓国』
*4 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『米新大統領に期待と警戒 ロシア、早くも揺さぶり ミサイル配備表明 対米批判明確に』
*5 毎日新聞 2008年11月16日(日)『オバマ氏への期待「無邪気なことだ」 カストロ前議長 指摘』
*6 毎日新聞 2008年11月8日(土)『オバマ大統領誕生へ―――世界のメディアは』
*8 毎日新聞 2008年11月7日(金)『イラク 米軍早期撤退に懸念 オバマ氏公約 治安に不安も』
*9 毎日新聞 2008年11月21日(金)『イラン 「オバマ熱」冷め慎重に 米との対話 就任後の姿勢注視』
*10 毎日新聞 2008年12月5日(金)『プーチン氏 米次期政権に期待感 「首相会見」 露大統領復帰の憶測』

<参考記事>

・「【米大統領選挙】祝バラク・オバマ」/gujin blog

・「オバマ大統領が開く世界を妄想する」/戦争に負けた国

・「んー、アメリカ大統領選の報道姿」/freedomの「ん( )」なブログ

・「Presidential Inauguration 2009」/写楽 in Yahoo

・「第286号 転換の時代」/日々通信 いまを生きる

米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (1)

 2008年11月4日、アメリカ大統領選挙が実施された。
 9・11テロ後、アメリカはアフガニスタンとイラク戦争で泥沼化し、いまだにその泥沼から這い出せないでいる。そんな中、さらにアメリカに追い討ちをかけたのが、リーマン・ブラザーズの破綻。この破綻がきっかけで、金融業会も大混乱に陥ってしまった。
 戦争に、金融危機に、アメリカの地位・信頼は失墜しており、ブッシュ政権の支持率はどん底の結果に陥っている。そんなブッシュ政権の共和党の不利の中、ジョン・マケイン上院議員は大統領選挙で、共和党候補となり、バラク・オバマ上院議員と大統領選を迎える結果になった。
 民主党の変革の勢いはすさまじいものがあったが、予想に反して、共和党のマケイン氏の勢いもあなどれなかった。というのも、戦争や金融危機といったことで、共和党が不利な背景の中、マケイン氏は健闘した。民主党の予備選挙で、オバマ氏とヒラリー・クリントン上院議員との戦いは史上最長のもつれになり、一方、マケイン氏は先に予備選挙に勝利し、一足先に大統領本線へとこまを進めた。

 さて、4日、アメリカで大統領選の投票が開始され、この結果、当選したのは、民主党のオバマ氏(47)。オバマ氏は4日深夜、地元イリノイ州シカゴで「変革が訪れた」と勝利演説を行い(*1)、となり、来年の2009年1月20日に第44代大統領に正式に就任(*2)することになった。任期は2013年1月までの4年間(*2)。
 結果内容は、オバマ氏の獲得選挙人数は「365」、マケイン氏は「173」。オバマ氏は「28州と首都」、マケイン氏は「22州」をそれぞれ制した(*3)。
 全米約1万8千人から回答を得た米メディアの出口調査によると、オバマ氏の男性からの支持率は49%で、マケイン氏の48%とほぼ並んだ。女性はオバマ氏56%、マケイン氏43%。オバマ氏の黒人の支持率は95%、ヒスパニックは66%に達する(*4)。
 年代別にみると、オバマ氏がマケイン氏にリードを許したのは65歳以上の高齢者のみ。30歳から60歳代前半までは小差でマケイン氏をかわしたほか、18歳から29歳の若者は66%がオバマ氏を支持し、32%のマケイン氏とは倍以上の大差がついた(*4)。
 白人全体のオバマ氏の支持率は43%。マケイン氏は55%。18―29歳の白人に限ると、オバマ氏の支持率(54%)はマケイン氏(44%)を10ポイント上回った(*4)。
 所得階層別では、年収1万5千ドル(約150万円)未満のオバマ氏の得票率は73%で、マケイン氏の25%を圧倒。1万5千ドル以上3万ドル未満の層でも60%の支持。20万ドル以上の富裕層もオバマ氏への支持は52%に上り、マケイン氏の優位は10万ドル以上20万ドル未満の層など一部に限られた(*4)。

 今回の大統領選挙には様々ね記録が破られた。
 まずは、オバマ氏が当選したことによって、米国建国の1776年以来、初めての黒人大統領(*2)が誕生することになった。これに関しては、アメリカ史上最も大きな衝撃となるニュースだといえる。そして、投票率であるが、64.1%(米ジョージ・メイソン大がまとめた推計値)と、過去最高水準を記録した模様。これまでの最高は、(記録が残っている)1960年以降で、ケネディ大統領が当選した60年の大統領選の63.8%(*5)、推定投票者数は1億3660万人で、過去最高だった04年の1億2230万人を大きく上回る見通し(6日付け)(*1)。48年間の破られていなかった記録が破られた形となった。なお、AP通信は、1908年の65.7%が過去最高だったと報じている(*5)。
 さらに、期日前投票に関しては、AP通信が3日、期日前投票状況を26州を対象に集計した結果、2440万人を超えた。全米の期日前投票者数は当日投票を含めた投票総数の30%強を占めると予測され、前回04年の22%から大幅に増える見込み(*6)という結果を、選挙序盤に見られた形。
 今回の選挙の特徴として、オバマ氏が共和党の牙城とされた南部に食い込んだこと(*3)があげられる。ブッシュ大統領は00年と04年に南部14州を総なめにしたが、オバマ氏はこのうちバージニア、ノースカロライナ、フロリダの3州を奪取、バージニア州で民主党が勝利したのはジョンソン大統領以来44年ぶり、ノースカロライナ州ではカーター大統領以来32年ぶり(*3)。さらに、オバマ氏は、前回04年に民主党候補ジョン・ケリー上院議員が勝利した19州と首都を守った上で、共和党のブッシュ大統領が勝利した31州のうち9州を奪取、民主党は「指定席」とされるカリフォルニア、オレゴン、ワシントンの西海岸3州に加え、西部のコロラド、ネバダの3州を共和党から奪取(*3)した。

 今回の大統領選は多くの人々に影響を与え、期待度が高いことをうかがわせた。オバマ氏の地元イリノイ州などで投票待ちの長い列ができ、ニューヨーク州ディクスビル・ノッチ村では、投票総数21のうちオバマ氏が15標を獲得し、マケイン氏の6票を上回った。この村での結果は全米の動向に影響はしないが、これまで共和党が圧倒的に強く、民主党候補が最後に勝利したのは1968年(*6)ということからも、オバマ氏の勢いがうかがえ、国民の期待が高いことがわかる。ちなみに、ブッシュ大統領は過去2回とも大差で勝利(*6)している。
 そして、勢いは続く。オバマ氏は04年にブッシュ大統領が勝利したオハイオ、バージニア両州などを奪還。得票率は52%で、民主党候補が5割を超えた(5日午前までの米メディア集計によると)のは76年のカーター氏以来(*1)。7日には、米大統領選で勝敗が決まっていなかった二つの州のうち、南部ノースカロライナ州で民主党のオバマ上院議員が勝利。同州で民主党が勝利するのは1976年ぶり(*7)。14日のAP通信の報道で、米中西部ネブラスカ州で大統領選の開票作業が終わり、民主党のオバマ次期大統領が選挙人5人のうち1人を獲得した。同州での民主党の選挙人獲得は1964年以来となる。残る4人は共和党のマケイン上院議員が獲得。14日現在の獲得選挙人数は、オバマ氏365人、マケイン氏162人(*8)となった。 そして、19日、中西部ミズーリ州でマケイン氏が勝利し、全米50州と特別区の首都ワシントンの集計がすべて終了した(*3)。
 こうした結果、民主党はクリントン前大統領以来、8年ぶりに政権を奪還(*2)した。

 今回の大統領選には、オバマ氏、マケイン氏の他にも消費者運動家のラルフ・ネーダー氏やリバタリアンのボブ・バー元共和党下院議員ら10人以上が第3党から出馬したが、第3候補の支持率は今回、1%以下で大勢に影響しなかった模様(*6)

 大統領選に伴い、米連邦議会選も行なわれているが、こちらはまだ最終決着がついていない。
 20日現在、上院(定数100で任期6年。2補選を含む35議席改選)は非改選分も含め、民主党58、共和党40、未決着2。下院(定数435で任期2年。全議席改選)は、民主党255、共和党175、未決着5となっている。民主党は76年の選挙を最後に、60議席以上を獲得していない(*9)。

 今回の米大統領選は多くの期待と影響を与えた。アメリカ国民の選挙に対する思いは、オバマ氏の「チェンジ」に大きく影響され、改革しようとする力が大きくなっている。同時に、大統領選は、アメリカ以外にも大きな影響を与えている。日本はもちろん、ヨーロッパからロシアから、中東、アフリカ、アジア、そして、アメリカに近いキューバにも。
 その各国の反応は、アメリカの大統領選挙ではなく、世界の選挙のような雰囲気にもなっているから驚きである。アメリカから世界に影響を与え、世界からアメリカにも影響を与えている。選挙の流れを見ても、波乱万丈な展開、そして、その結果、多くの歴史的な衝撃の記録がうかがえた。

 果たして、この選挙が転機になり、オバマ氏の「チェンジ」が改革へと導くことができるだろうか。

つづく

<参考資料>
*1 毎日新聞 2008年11月6日(木)『内政・外交を大転換 米大統領選 オバマ氏勝利宣言 「この国の真の力は武力ではなく、民主主義に由来する」』
*2 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『オバマ氏、大統領選勝利宣言 米経済再生に余力 「変革の時、到来」 政権移行へ準備加速』
*3 毎日新聞 2008年11月22日(水)『民主、9州奪取 オバマ氏365人 地滑り的大勝 米大統領選 集計終了』
*4 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『2008年米大統領選 オバマ氏 幅広い層が支持 女性56%、ヒスパニック66% 白人の若者も過半 出口調査』
*5 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『投票率最高に 64%、米大推計』
*6 毎日新聞 2008年11月5日(水)『08年大統領選 アメリカの選択 「期日前」空前の3割 「民主支持」優勢に 最終投票率60%超えか』
*7 毎日新聞 2008年11月9日(日)『ノースカロライナ オバマ氏接戦制す』
*8 毎日新聞 2008年11月16日(日)『ネブラスカ州で選挙人1人獲得 民主、64年以来』
*9 毎日新聞 2008年11月22日(土)『議会選は未決着 民主の「上院安定多数」焦点』

<参考記事>

・「オバマ氏の勝利」/ハゲのブログ

・「勝利の後、次期大統領バラク・オバマは、シカゴのグラント公園で、大勢のサポーターと話します。 」/英語仏独伊・葡・西音読器 ReadPlease &『戯曲』

・「1438 オバマ氏、勝利の演説/日本はどうする/保健分野もよろしく」/ビギナーズ鎌倉

・「election」/スピーチカフェonsite

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