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環境問題はたえず進んでいる(1)
- 2010-03-15 (月)
- COURRiER Japon | Newsweek | ヨーロッパ(環境・自然) | 北米(政治) | 北米(環境・自然) | 北米(経済) | 環境・自然
環境問題は日々、話題の上がる一方だ。
これまで私たちは、地球という土台を引っ掻き回してきた。資源を使い、科学技術を発達させ、多くの恩恵を受けてきたわけだ。
しかし、資源が変化をすれば、自然も大きく影響され、環境は変化する。
その変化の影響のせいか、地球温暖化が叫ばれるようになった。
地球温暖化を食い止めるために、二酸化炭素(CO2)の削減を掲げる国々が増えている。
果たして、地球温暖化は食い止められるのか。
「CO2排出戦争が始まった」
シュテファン・タイル(ベルリン支局/Newsweek 2009.7.15)
アメリカが環境問題に本格的に動き出したか。
「バラク・オバマ米大統領は温室効果ガスの排出削減に関してリーダーシップを取ると宣言」した。「6月26日には、包括的な地球温暖化対策をうたった『米クリーンエネルギー・安全保障案』が米議会下院で可決」した。
「6月にドイツのボンで開かれた温暖化対策の枠組みに関する国連作業部会」では、「20年までに温室効果ガスを90年のレベルから25~40%削減するという目標に関して意見がまとまらないまま、閉幕」。
「この数値目標は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の科学者が地球の平均気温の上昇を2度までに抑えるために必要な数値として算出したもの」だという。
しかし、「全ての問題について意見がばらばらだという」。
「交渉のテーブルに載せられた各国の提案は、どれもこの数値から程遠い」。「京都議定書から離脱したアメリカは、20年までに05年比で14%削減という目標を打ち出している」。「だがそれは、排出削減量の基準に用いられることが多い90年レベルに戻すだけのこと」だ。
「麻生太郎首相は6月10日、日本の温室効果ガス削減の中期目標として20年までに90年比で8%の削減を目指すと発表した」。「だがこの数字は、京都議定書での削減義務に比べて2ポイントしか増えていない」という。
つまり、各国の提案は、基準にマッチしていないということだ。
「EU(欧州連合)が提案する90年比20%削減さえ、国連が掲げる目標には届かない」という。「最もEUは他の国が相応の削減に同意すれば30%削減に変更する構え」だ。
「中国は07年にアメリカを抜いて世界最大の排出国になったが、削減を完全に拒否し、先進国に排出量40%の削減を求めている」。さらに、「先進国が途上国の排出量削減のためにGDP(国内総生産)の1%を拠出することも要求」。
「先進国の政府は、自国の企業が厳しい排出規制に従うことで製造コストの上昇に直面する一方、排出削減義務のない中国のライバル企業が勢いづくことを懸念している」。
これは、途上国が消極的な態度のもう一つのデメリットだ。
「アメリカでは、エネルギー集約型産業や労働組合、斜陽の鉄鋼業地帯の利益を代表する議員が特別な保護を要求」。「オバマと米議会が構想している排出権取引制度が導入されれば、二酸化炭素(CO2)の排出量が多い企業は排出権の購入が義務付けられる」。
「アメリカが考えている温暖化防止の枠組み」は、「鉄鋼、アルミニウム、セメントのような国内のエネルギー集約型産業には大きな排出枠を与え、事実上、適用除外という格好になるだろう」。
「アメリカでの温暖化問題の議論では、雇用と競争力に関する不安の比重が高まっており、今後も産業保護を求める声は減らない」。「ヨーロッパの政治家は、中国とアメリカが温暖化ガスの排出削減に同意しなければ、貿易制裁を科すべきだと考えている」という。
「先進国が今まで温室効果ガスを排出し続けてきたのは確かだ」。「しかし途上国の産業化が急速に進んだ今、途上国が温暖化防止に消極的なままでは世界全体での排出量は減らせない」。
「最も埋め難い溝は先進国と途上国の間」は、「97年に採択された京都議定書では、貧しい国は規制から除外されていた」。「だがその後10年の急速な工業化によって、中国や他の新興国の排出量増加を大幅に抑制しない限り、地球規模の排出削減はおぼつかないことが明らかになった」。
「途上国にすれば、先進国に追い付き、貧困から抜け出すには経済を成長させ続けるしかない」。
要するに環境対策に途上国をうまく取り組む案が必要である。
しかし、「中国の交渉担当者は、中国の国民1人当たりの排出量は先進国に比べてごく僅かだと主張」。
さらに「新興国の大半は削減目標の設定を拒否」し、「排出量の増加ペースを落とすことにも消極的だ」。
「中国は表向きは排出削減を突っぱねているが、最近は環境問題を真剣に考えるようになっている」。
「06年に新築建造物に対するエネルギー効率規制を導入」し、「省エネ効果の高い断熱資材、冷暖房や照明設備の使用などを義務付けている」。「07年には遼寧省や吉林省など大気汚染が深刻な都市での火力発電所の新設を禁止した」。「財政省は現在、環境税の導入を検討している」という。
「中国はG20(金融危機を機に集まった20ヵ国・地域の首脳会議)のメンバーとして、ようやく国際舞台で建設的かつ責任ある役割を果たす第1歩を踏み出したところだ」。「4月にはIMF(国際通貨基金)の融資機能を強化するため400億ドルの拠出を約束」。「ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国にも成長維持のための融資を申し出た」。
中国が環境問題に取り組み始めたわけで、良い兆候だろう。
「欧米の専門家らは、中国で最悪の汚染源は国内向け製品の工場であることが多く、輸出品はむしろ近代的で効率化された工場で製造されているケースが多いと指摘する」。
「自動車と家電のエネルギー効率では、中国は既にアメリカを追い抜いている」。「中国の車の燃費基準は1リットル当たり15キロだが、アメリカでは12キロだ」。
問題は中国国内ということだ。
「アメリカが輸入する『炭素集約型』製品で最大の割合を占めるのは中国製ではなくヨーロッパ製だ」。「環境規制が競争力に与える影響がそれほど大きくないことも、多くの研究で明らかにされている」。
「EUは05年に、政府がCO2などの排出枠を企業に設定する『キャップ・アンド・トレード方式』による排出権取引システムを導入した」。「だが国際エネルギー機関(IEA)によれば、域内の重工業の競争力に影響は出ていない」。
「09年5月のピュー気候変動センター(ワシントン)の試算によれば、12年までに1トンのCO2ごとに15ドルの負担を強いられることになっても、脅威にさらされる製造業の雇用は最大0.2%だ」。「企業が進出先を決定する際、環境規制はほとんど、あるいはまったく考慮されないとの調査結果もある」。「最も重視されるのは市場へのアクセスで、その次は人件費だ」。
「ドイツの化学産業のように、環境規制をクリアするための効率化が、競争力の強化につながったケースもある」。
「温暖化防止をめぐる対立を解消する方法」として、「富裕国が途上国の排出削減を支援すること」があげられる。「中国は先進国がGDPの1%を貧困国に提供することや、環境関連の技術移転を求めている」。
「だがGDPの1%というのは、OECD(経済協力開発機構)加盟国で考えると約4000億ドルに上る」。
「より実現性が高いのは、国際的な排出権取引システムを通じてコストを民間に移転する方法」。「例えば先進国の企業が排出枠を守れなかった場合、排出枠を下回った中国などから超過分を購入しなければならない」。
「既にEUは域外との排出権取引を認めている」。「年間の市場規模が約1億トンとされる世界のCO2排出権取引市場で、約3分の2の排出権は中国企業から供給されている」という。
「EUは90年に比べてCO2の排出量が9%減ったことが自慢だが、欧州環境庁が5月に発表した報告書によると、削減分の半分は汚染物質をまき散らしていた旧共産圏の工場が89年以降、相次いで閉鎖されたことが直接の原因だ」。
「ヨーロッパが05年に導入したCO2排出権取引システムが、排出削減にどれほど貢献したかも不透明だ」。
「例えば排出量を22%削減したドイツ」。「大きく貢献したのは建設業界だが、これは厳しい規制やエネルギー価格の高騰などのせいで老朽化した建物の省エネ化を図る改築ブームが起きたためだ」。
ヨーロッパの削減対策の実績はこれからが見極めどころか。
今「欠けているのはリーダーシップだ」。「重要なカギの1つは、排出削減を途上国にとって魅力的なものにするために、先進国がどの程度コストを負担する気があるのかをはっきり示すこと」だろう。
「12月には、12年に失効する京都議定書に代わる温室効果ガス排出削減枠組みの合意を目指し、約200ヵ国の代表がデンマークのコペンハーゲンで気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)を行」われたが、結果はご存じだろう。
しかし、まだ間に合うかもしれない。すぐに行動を起こせば。
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アメリカはどうなってしまうのか(下)
- 2010-03-11 (木)
- COURRiER Japon | DAYS JAPAN | Newsweek | 北米(マスコミ・メディア) | 北米(戦争・紛争) | 北米(政治) | 北米(社会) | 北米(経済)
超大国アメリカ。これからの時代はアメリカの時代だとはいえなくなってくるだろう。
新興国の台頭が目立つアメリカ、これからの課題はどういったものがあるのだろうか。
アメリカよ、どこに行く 32
「バーナンキの未完の使命」
ポール・クルーグマン(COURRiER Japon 2010.2)
世界的な金融危機に陥った現在、その解決の出口を模索中である。
アメリカの「昨年11月の非農業部門の雇用者数が前月比でわずか1万1000人減にとどまったとする、12月発表の雇用統計の見かたを改めるべきだ」という。
「景気後退が始まって以来、米国が失った800万人分の雇用を計算に入れるだけでは充分ではない」。「米国の人口が増えている以上、月10万人を上回るペースで、さらなる雇用を創出しなくてはならない」。
「これは米国が毎月大量の雇用を創出しない限り、完全雇用に近い状態に戻ることはないという事実を示している」。
「米国は今後5年間で約1800万人分、つまり月30万人分の雇用を創出する必要がある」というのだ。
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アメリカはどうなってしまうのか(中)
超大国アメリカ。世界でも一番の大きな影響力を持つアメリカが、今、大きく揺らいでいる。
しかし、揺らいでいても、今も大きな影響力を持つアメリカですが、そのアメリカの抱える問題と現状はどうだろうか。
「オバマびいき報道の危うさ」
ロバート・サミュエルソン(本誌コラムニスト/Newsweek 2009.6.17)
「大統領の権力がきちんと監視されてこそ政治は正しく機能する」。「だがオバマに対するチェックは緩い」かもしれない。
「ワシントン・ポスト紙、ニューヨーク・タイムズ紙、テレビの3大ネットワーク、公共テレビ局(PBS)、および本誌の1261本の報道を検証」したところ、「オバマに好意的なものが42%だったのに対し、批判的なものの割合は20%だった」という。「ブッシュ(好意的は22%)やクリントン(同27%)とは対照的」な結果になった。
さらに、「報道の内容にも違いがある」。「オバマの場合は人柄や指導力を扱うものが44%を占め、ブッシュ(22%)やクリントン(26%)のほぼ2倍で、政策に関するものはそれより少なかった」。
「インターネットのニュースサイトなどに調査値省を広げても、結果に大差はなかった」という。さらに、「ジョージ・メイスン大学が行った別の調査でも同様の結果が出た」という。
「ピュー・リサーチセンターが行った研究によれば、メディアのオバマびいきの傾向は大統領選挙中に始まった」という。
「オバマに『批判的な』報道といえば民主党議員との戦術的な対立や一部の支持基盤からの批判止まり」で、「重要課題の検証は軽視されている」。
「オバマの主張には矛盾が多い」という」。「財政支出の拡大を要求する一方で医療費抑制を唱え、財政赤字が拡大基調にある中で財政規律を回復するという」。「そんな矛盾だらけの主張を、メディアは額面どおりに受け取っているように見える」。
「メディアは世論に弱いから、支持率の高い大統領は好意的に扱われる」。「ピュー・リサーチセンターによればオバマの支持率は63%」。
「ジョンソンがケネディから引き継いだ経済政策は70年代にスタグフレーション(不況下のインフレ)を招いた」。「メディアは政権に対し敵対的になるべきではないが、懐疑的な姿勢は保つべきだ」。
しかし、このバランスが難しい。
ちなみに、「議会予算局の試算では、連邦予算のGDP(国内総生産)比は08年の21%から19年には25%近くに上昇する見込み」で、「これは第二次大戦後の平均を大きく上回る」。
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アメリカはどうなってしまうのか(上)
超大国アメリカ。アメリカの時代が過ぎようとしているのか。
アメリカが揺らいでいる。
金融危機の大きな被害は全世界を苦しめたが、アメリカ自身、大きな打撃を受けた。
アメリカがこれまで果たしてきた役割は、この先、同じようにはいかないであろう。
そんなアメリカを追う。
「草食化するアメリカ人」
ラーナ・フォルーハー(ビジネス担当/Newsweek 2010.1.20)
金融危機により世界中は混乱に陥っている。各国はそれぞれ対策を講じた。
震源国アメリカでは「自動車販売や鉱工業生産が増加し株価も堅調に推移するなど、最近の経済統計には明るい兆しが多い」という。
しかし、アメリカの未来は明るいとは言えないかもしれない。「金融危機という大きな衝撃があったせいばりではなく、世界経済の勢力図が塗り替えられてしまったために、アメリカ経済が回復を続けたとしても、アメリカの消費者はもはや世界の支配的勢力ではなくなってしまったからだ」。
「今後勢力を伸ばして強くなるのはむしろ、中国やインド、ブラジルといった主要新興市場」だろう。「ドルは引き続き弱くなり、アメリカの労働者は国外の低賃金労働者とますます激しい競争にさらされる」。
「『大きな政府』や規制強化がトレンドで、ひょっとすると保護主義の再来も懸念される中、投資マネーは引っ込んだまま」である。
それに「大企業と平均的な労働者の経済格差が拡大している」という。「株価が上がる一方で、失業率は数十年ぶりの高水準のまま」である。「最も強気の経済学者たちでさえ、今後何年も高止まりすると考えている」。
「そもそも、大企業の利益の源泉の1つは国内での人員削減や雇用の国外移転だ」。「一方、アメリカの新規雇用の最大の創出源である中小企業は、金融危機で真っ先にお金が借りられなくなり最も大きな打撃を受けた」。
「現在は非常に珍しい時代だ」。「19世紀に近代経済が誕生して以来、金融資本主義と実体経済がこれほど断絶したことはない」という。
ただし、「風力発電などいくつかの有意義なプロジェクトに、銀行がまったく投資しないわけではない」。「だが銀行は実業に投資するよりも、複雑な金融商品を開発して金融機関同士で投資し合うバーチャルな世界にのめり込んでいる」。
「こうして資本活動と労働が切り離され、失業率が高止まりした結果、賃金だけでなく人間までが萎縮してしまっている」。「多くの調査によれば、失業者は地域や社会から引き籠もりがちだ」。「そしてその隣人は失業を恐れて働きまくり、やはり地域社会から引き籠もる」。
「親の失業は、子供にも大きなダメージを与える」。「学校の勉強で後れを取るようになり、留年し、不安生涯を患う子供もいる」。「大恐慌のときは、教会や地域センターなど市民団体が今より活発だったから、不況が社会に与える打撃はある程度緩和されたのだが」。
「多くの専門家が懸念するのは、アメリカと中国の貿易摩擦や通貨摩擦だ」。「保護主義的な政策を取れば、大恐慌のときのように不況を悪化させかねない」。
「国際的な基準でみると、アメリカの階層間流動性は70年代以降低下しており、現在ではイギリスやスウェーデン、デンマークよりも低い」。「つまり金持ちの家に生まれた子供は金持ちに、貧しい家に生まれた子供は貧しい一生を送る可能性が高まっている」という。
「アメリカ人は一般に格差に対する許容度が高い」。「だが大不況後の時代には、それも変わるかもしれない」。「もはや新卒の若者が親よりいい生活をすることは期待できず、中小企業も苦しんでいる」。
そうした中、「明るい希望」がみられる。「アメリカの製造業は、昨年来のドル安と生産性の大幅な改善に救われるかもしれない」。「経営コンサルタント会社マッキンゼーの推計によれば、ドル安が10%進んだだけで、100万人の雇用創出につながる」という。
「昨年来のドル安のおかげでアメリカの輸出は10~13年に年11%のペースで増える見込みだ」という。
「アメリカは、過去70年間で最悪の景気後退を経験したばかり」。
「50年代に育ったアメリカ人にも、はっきりした特徴がある」。「ベビーブーム世代の彼らは楽観的」で、「常に上昇志向で、限りない成功の可能性を体現してきた」。「収入を上回る消費をすることもしばしばだが、それは将来はもっと収入が増えると信じられたからこそだ」。
「全米の平均失業率10%に対し、20~24歳の若者の失業率は15%を超える」。「統計によれば、失業率が1ポイント上がるごとに、大学新卒の初任給は6%下がる」。「給与のスタート台が低くなるので、その影響は今後数十年にわたって続く」だろう。
さらに、「平均失業期間が長期化することで未熟練労働者が増えるのも極めて大きな問題だ」。「70年代以降のアメリカ人の賃金水準は比較的安定してきたが、大不況世代はこの30年間で初めて賃金が減る世代になるかもしれない」。
このようなことから、「私たちの生き方は、若いときの衝撃的な体験(素晴らしい体験でもいい)に大きく左右され、生涯影響を受け続けるという」のだ。
「全米経済研究所が1972年から2006年のデータを検証した昨年9月の報告書によれば、たとえそれがたった1年間でも若い時期に厳しい経験をすると、中核の価値観や態度が根本から変わってしまうことがあるという」。
「他の多くの研究でも、景気後退期に育った人はリスクの少ない保守的な資産運用を好むだけでなく、実際に儲ける額も少ないことが分かっている」。「仕事も安定志向で、所得再配分と市場に対する政府の介入を支持する傾向がある」。
「逆説的だが、それでいて彼らは公的機関に不信感を持ち、ひょっとすると人生そのものにも懐疑的で、成功は努力より運のたまものだというヨーロッパ的な信念を持つ傾向がある」。「失業経験が悲惨であればあるほど、彼らはより悲観的になり社会とも疎遠になる」。
「政治的には、時代の雰囲気や時の指導者によって右か左化の一方に走りやすい」。「大恐慌はアメリカのニューディール政策も生んだが、ナチスの第三帝国も生み出した」。
「統計的には、アメリカは09年夏に景気後退期を脱却している」。「だが多くの人々は、07年12月に始まった戦後最長の景気後退と08年9月以降の金融危機で、アメリカ人の心理と行動が永遠に変わってしまったようだと考えている」。
「個人の貯蓄率は最低だった08年と比べて4倍の4.5%に上昇した」。「経営コンサルティング会社アリックスパートナーズの調査によると、アメリカ人は今やそれでも安心できず今後は収入の15%を貯蓄したいと考えているという」。
「アリックスパートナーズの調査の回答者の半分は、株式投資を一切やめてしまった」。「あと3年は株を買わないと答えた人も過半数に達した」。「経済は金融危機前の水準を回復できないと思う人の比率は43%だった」。
「全米経済研究所が72年以降の不況時に成人を迎えた18~25歳を調査したところ、多くが『人生の成功は努力よりも運で決まる』と考える傾向があり、政府への信頼も乏しいことが分かった」。
「努力よりも運だという若者の考え方は、実体経済にも悪影響を与える」という。
「努力よりも運だと考える人は仕事に精を出さない傾向がある」。「それは生産性を下げ、経済成長の足を引っ張る」からだ。
「裏を返せばそれは、『なせば成る』と信じて全力疾走してきたアメリカ人が、1歩引いたところのあるヨーロッパ人よりも長い間高い成長を実現してきた理由なのかもしれない」。
「全米産業審議会は最近、アメリカの雇用満足度が過去20年間で最低であることを示す統計を発表した」。
「現在のトレンドが続けば、大不況世代はますます大恐慌世代に似てくるだろう」。「例えば才能ある大卒の若者は、民間企業の就職するより公務員になることを選ぶだろう」。「理由は昔も今もこれからも、そこには雇用があるからだ」。
「多くのコンサルティング会社は、消費者は家族や友達と費やす時間にもっと価値を見いだすようになるとの調査結果を示している」。「厳しい時代を経験すると、人間は互いに優しくなるという指摘もある」。
「カネのことを考えるだけで、人間は痛みに鈍感になり、助け合ったり見知らぬ人と結び付きを持とうと思わなくなる」。
「80年代の世代がお互いを踏み台にして出世しようとしたのと違って、今の世代は立ち止まって他人に手を伸ばすようになるかもしれない」。
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日本の行方(下)
金融危機により世界中が混乱している状況で、日本も危機に陥っている。しかし、その日本、失われた10年を味わった日本に、復活はおとずれるのだろうか。
日本の大きな問題の解決策はあるのだろうか。
その解決策、ヒントをさぐる。
世界に雄飛する 「人間力」の時代 第10回
「「ゼロベース改革」を断行することなしに“民主党不況”に歯止めはかけられない」
大前研一(SAPIO 2010.2.10・17)
日本の状況は非常に深刻である。その解決策はあるのだろうか。
「企業の事業計画の手法でもあるが、予算の削減方法は大きく3つある」。
「第1は『見えている無駄を削る』」。
「第2は『戦略を先に作って削る』」。「つまり、初めに戦略があり、それを実現するために中止する事業、縮小する事業、継続する事業、強化する事業を決めていく」。「『組織は戦略に従う』から、その後、組織も廃止や統合を進める」。「戦略を考えられる力があれば、予算も削れるし、企業や国のかたちが変わる」というわけだ。これは「企業改革では最もオーソドックスな方法」である。
「第3は『ゼロベースで創る』」。「目的に合わせ、予算をゼロから構築する方法」である。
「企業の場合、第1の方法はコストを1~3%削る時に使う」。「既存の組織のままでそれ以上削ると業務に支障が出るからだ」。「第2の方法は15%がターゲット」である。
今の日本の状況には第3の方法が適切になってくる。「なぜなら、約860兆円もの借金を抱えている日本を立て直すには、第1、第2の方法ではとても対応できず、ゼロベースでやるしかないからだ」。「全ての行政サービスで今の制度と同じ満足度を維持しつつ、他の先進国を参考に世界最先端の技術とシステムを使ってゼロから創れば、おそらく行政コストは現在の半分以下になるだろう」。
「過去の例では、日本の明治維新と第2次世界大戦後、海外ではシンガポールがマレーシアから分離独立した時、旧ユーゴスラビアの分裂によってスロベニアが独立した時、旧ソ連が崩壊してロシアだけになった時などがある」。「これらのケースを見ると、世界のベストプラクティスを参考にしたため、意外に軽々と新たなスタートに成功している」。
「今の日本は、戦後65年間のしがらみで国家の運営コストが極度に肥大化している」。「有名な『パーキンソンの法則』によれば、組織は自己目的のために増殖し続け」、「国家でも予算と課税は際限なく膨らんでいく」。「日本の中央集権システムは、その典型例と言えるだろう」。「また民主党は修正資本主義的傾向が強く、高度福祉国家に舵を切っている」。
「行政の効率化という点で、ゼロベースで創る最大のメリットは『クラウド・コンピューティング』(インターネット上にあるハードウェアやソフトウェア、データベースのリソースを利用する環境やサービス)である」。「日本の行政は各市町村がみんな同じことをやっている」。「そのサポートにクラウド・コンピューティングを全面的に使えば、効率が飛躍的に高まってコストも一気に削減できる」。
「民主党は納税と年金が目的の『国民ID』を提案しているが、さらにこれを一歩進めて運転免許、パスポート、戸籍、印鑑証明、各種許認可、選挙など、すべての行政サービス共通のID」にすることで、「国民データベースを作り、すべての行政サービスを一元化するシステムを構築する」。「日本が世界に誇る非接触ICカード技術を活用し、IDとバイオメトリクス(生態認証、体が不自由な人のためには特別なパスワードを組み合わせたもの)を使えば、役所の窓口業務はほとんどなくなる」。「そういうシステムの構築にいくらかかるか試算した」結果、「日本全体でわずか700億円だった」という。
民主党は、「予算を1.6兆円削減したというが、平成22年度政府予算案は一般会計の総額が過去最大の92.3兆円に達し」、「歳出をカットするどころか、21年度より3.8兆円も増やしてしまった」。
「予算の削減は世界中の政府がやっているが、その方法は民主党とは根本的に違う」。「他の国々では、まず予算の目的と全体の枠を決め」、「その上で省庁別にターゲットを決め、あとは官僚に削減案を考えさせるのが常道であり、それが政治だ」。「事業仕分けのように目的も全体の枠もなく、最初から個別案件について削るかどうかを政治家が決めるというアプローチは寡聞にして知らない」。「しかも、思うような予算削減ができなかったにもかかわらず、自分たちの『ウィッシュリスト』を足し算したから、過去最大の予算案になってしまった」。
「国の借金の対GDP比が200%に達し、社会が急激に高齢化している日本は、手をこまねいていたら国家破綻することは火を見るより明らかだ」。「それを回避するための対策を早急に打つべきであり、その方法はゼロベース改革しかない」のかもしれない。
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日本の行方(上)
日本はどうなってしまうのだろうか。
世界的に見ても、経済大国・日本の存在は薄くなってきている。
日本の存在は、世界では大きな存在であった。しかし、その日本はバブルが崩壊し、混迷し、いまだに、混迷から脱け出せていない。さらに、金融危機により、さらに大打撃を受けて、深いトンネルの中を迷い続けている。
日本のこれからの戦略はどうすべきなのか。
まずは、日本のこれまでを追う。
「沈みゆく成長戦略なきニッポン」
ラーナ・フォルーハー(ビジネス担当/Newsweek 2009.9.2)
「中国政府は先頃、現状では日本が圧倒的に優位に立っているメーカー産業の振興計画を発表」した。
「中国は、米ドルが唯一の国際基軸通貨となっていることに異議を唱え、元建ての取引の拡大を図っている」。
「米金融大手ゴールドマン・サックスの予想によると、中国やインドに代表される新興国は先進7ヵ国のGDPの合計を27年に追い越すという」。「以前の予測より10年早まった」。
「中国は10年には世界の消費の伸びの30%を占めることにな」り、「これはアメリカの倍に匹敵する」。
「日本経済は90年代前半に低迷期に突入」。「09年1~3月期のGDP(国内総生産)は年率換算で11.7%減少した」。「先進国としてはここ数十年で最悪レベルの落ち込みだ(4~6月期は3.7%増で、5四半期ぶりのプラス成長)」。
「製造業の奇跡的な発展となったトヨタや日産、ホンダなどの自動車メーカーは、09年4月に7割近い輸出減に直面し、在庫調整のために工場を閉鎖しなければならなかった」。
「日本の衰退ペースは速かった」。「00年代初頭、経済規模はまだ中国の約4倍もあった」。「しかし近年、中国経済が早ければ10年にも日本を追い越す勢いを見せてきた」。「さらに中国が年率8%の成長を維持するなかで日本経済が収縮」。
「1860年代に日本の構造改革が花開いた明治維新から現代まで、日本は『西洋に追い付き、大国として認められるという基本的に1つの目標を追求してきた。その願いを1980年代に果たすと、日本は目標を見失った』」。「今の日本は疲弊している」。
「国民が懸命に働いて貯蓄し、その資金を運用して欧米に製品を輸出するという従来のモデルは明らかに破綻した」。
「日本は新しい技術を見いだすべきだという」。
「グローバル経済の中心が(アジアに)移行し、アジアが経済成長の原動力となっている今、日本がどうやってその中心になれるかを考えなければならない」。
「アメリカや日本の学識者は、日本はカナダやスイスを参考にすべきだとみている」。「豊かで充足したこれらの国々は、近隣の大国との関係を維持しながら繁栄することを学んできた」。
しかし、「日本がカナダと同等の立場に身を置くのは難しい」。「カナダの経済規模は日本の3分の1未満で、アメリカとの関係も日中関係に比べて良好だ」。
「20世紀前半の日本の中国侵略以来、日中両国の関係は穏やかではない」。「貿易や安全保障に関しても双方の国益はしばしば対立する」。「日本はいまだにアメリカの核の傘に守られているが、中国は仮想される脅威の1つ」。
それより、「EU(欧州連合)をドイツと共に牽引するフランスのほうが、より日本に適したモデルになるという見方もある」。「日本と中国がアジアの両輪になるというのだ」。
だが、「アジアとヨーロッパでは事情が違う」。「EUはフランスと西ドイツ(当時)などが石炭と鉄鋼の生産を共通の管理下に置くために設立した欧州石炭鉄鋼共同体から始まった」。
「フランス型モデルの利点」として、「フランスでは、93年のEU発足以来、1人当たり国民所得が42%増えた」。
「日本と中国は、海上油田の採掘権や過去の侵略問題をめぐって対立している」。「国民1人当たりの平均年収の差(中国は日本の17分の1)も、地域のリーダーとして協調関係を築く上での障害になるだろう」。
「輸出の落ち込みを埋めるために、ここ10年ほど横ばいを続ける国内消費を押し上げる必要がある」。
しかし、「国内市場は縮小の一途をたどっている」。「人口は04年の1億2800万人をピークに減り始め、55年には9000万人に落ち込む見通しだ」。「現役世代と高齢者の比率は75年には8対1だったが、05年には約3対1になった」。「55年には1.3対1になると予想」。
「そのため「内需を(必要な水準まで)拡大する現実的なモデルが存在しない」。
日本の大手企業は、「内需よりアジア域内の需要を指す『準内需』について語る経営幹部が多い」。「成長が続くこの新しい『地元』市場の中心に日本を組み込もうという考え方だ」。「中国や東南アジアの中産階級に製品を売るばかりでなく、アジア企業への投資を増やし、農業のように極めて閉鎖的な分野などで貿易の自由化を推進し、環境やテクノロジー、エネルギーの分野などで中国や他の途上国との連携を強めていこうというのだ」。
「近年、日本の対中国輸出は急速に伸びている」。「00年には対中国輸出は対米輸出の約5分の1だったが、今では両者はほぼ互角になっている(ただし、中国への輸出品の多くが組立工場向けのハイテク部品であるのに対し、アメリカ向けは主に完成品)」。
「メーカー各社は、高級車や高額な消費財のアジア向け輸出を増やそうと、欧米よりアジアの消費者に関するリサーチやマーケティングに力を入れ始めている」。
「中国への投資額で日本は上位4ヵ国の一角に食い込んでいるが、対中投資額の3倍近くをアメリカの工場や企業に投じている」。
「日本企業が特に懸念しているのは中国で知的財産権が侵害されること」だ。「高コスト体質の日本メーカーは、製品の中核アイデアを盗まれたら壊滅的なダメージを負うからだ」。
「日中両国は5月、アジア域内で外貨準備のドルを融通し合う枠組み『チェンマイ・イニシアチブ』の拡大に関して、日中の資金拠出割合を同じにすることで合意」。「アジアでの多国間協定で足並みをそろえることになった」。
「日中は運命共同体で、中国が日本より経済で勝る日が来ても、日本には貢献できることがたくさんある」。
「現在、日本政府はGDPの5%を景気対策に投じているが、ようやくプラス成長に転じたばかりで、先行きはなお不透明」だ。「日本はアジア地域との統合に軸足を置いた新たなモデルを見つける必要がある」。
「経済力だけが頼りの大国だった日本が世界で勢いを盛り返すには、経済を新たな成長軌道に乗せる必要がある」。
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イラン問題の行方(下)
イランの問題が、アフガニスタンやイラクと同様に、深刻な状況になっている。
一歩間違えれば、戦争に発展しかねない。
イランは重要な地域である。
隣国にイラクがある。イランと周辺国との関係も厳しい。
イランとの関係をどう進めればよいのだろうか?
「イラン人の心の内を訪ねて」
フーマン・マシド(作家/Newsweek 2009.6.17)
「オバマ政権が本気でイランとの間に新たな関係を築きたいのなら、イラン人のメッセージを読み取る方法を学ぶべき」かもしれない。
「イランの新年に当たる3月20日、オバマはイランに直接対話を呼び掛けるペルシャ語字幕付きのビデオを公表した」。「それに対するハメネイの挑戦的な発言を、欧米の多くの識者が侮辱と受け取った」。
しかし「発言を聞いたイラン人が最も注目したのは、ハメネイの最後の言葉」だった。それは「アメリカが変わるなら、われわれの行動も変わる」というもの。これは「イランの最高指導者が『変わる』という言葉をこの文脈で使うのは初めてといっていい」ということだ。「今までイランの立場は『自分たちに非はない』というものだった」からである。
イランの警察の検問所には2つの種類がある。「1つは不法移民(大半はアフガニスタン人)を捕らえるためのもの」。もう1つは「密輸を取り締まるためのもの」。「密輸されるのは主にアヘンとヘロインで、アフガニスタンから入ってくる」という。「イランの麻薬問題は深刻で、薬物依存者は100万人を超えるといわれる」。
薬物問題は世界で問題になっており、隣国のアフガニスタンはその麻薬の生産地の規模の割合で多くを占め、その影響はイランにも大きい。
「欧米人の抱くバザールのイメージは、小さな店が迷路のように入り組み、粗悪品を売り付けたり、観光客をカモにする場所」だろう。しかし、「それは正確とはいえない」。「イスファハンのバザールには多くの店のほかに、オフィスがある」。「あまり目立たないが、ビジネスを仕切っているのはオフィスだ」。「店で鍋を作る職人が、銅線や銅配管の卸商に雇われているということもある」。
「バザールでは、時にストが起こる」という。「イラン革命でもバザールのストが王制を倒す力になった」。「ストが起れば店主たちが困るだけでなく、イラン経済全体が影響を受けかねない」。
その「バザールの商人には、しつこいというイメージがある」。「モロッコなど観光客の多いアラブの国々では、客が店を出ても商人が後を付いてくる」。しかし「イランの商人は、そんな振る舞いは卑しさの表れだと考える」という。
「靴屋の男は2つのことを理解していた」。1つは、客が「本当にサンダルを欲しいなら、また来るだろうということ」。「もう1つは、そのとき真剣に交渉すれば売れるということ」だ。「買うかどうか分からない客には時間を使わない」し、「双方が取引に満足できるという見通しがなければ、交渉には入らない」。
「バザールでも他の場所でも、イラン人にとって交渉とはそういうもの」だという。
イランはイスラム教シーア派の国である。「シーア派の総本山とされるコムは、信仰のあつい人々にとって特別な意味を持つ都市」である。
「コムは重要な巡礼地であり、第8代イマーム(指導者)であるアリー・アッリダーの妹ファーティマの墓廟がある」。「ここにある多くの宗教学校は、エリート聖職者を輩出している」。
「コムの中心部から車で5分ほど離れたジャムカランにもモスクがある」。「9世紀に『お隠れ』になった第12代イマームがそこに姿を現したことがあると伝えられている」。
「長い間、ジャムカランのモスクはコムの陰に隠れて地味な存在だった」が、「アハマディネジャドが大統領になり、アハディ(救世主)の再臨を口にするようになると、このモスクは巨大化し始めた(第12代イマームがマハディとしてこのモスクに再臨すると信じられている)」。
「金曜日(イランの休日)とマハディが姿を見せたと伝えられる火曜日には、何十万人もの巡礼者がジャムカランを訪問」する。「祈りをささげ、ピクニックを楽しむ」。「中には『手紙』を井戸に落とす信者もいる」という。「マハディが手紙を読んで、願いをかなえてくれると信じているのだ」。「井戸は2つあり、男女別に分かれている」。
「ジャムカランは世界の終末に対するシーア派教徒の強い思いの象徴のように見える」。
だが「ジャムカランには、信心深い人々が生活から離れ、巡礼によって神をあがめる場所という面もある」という。
「イランでは、欧米で重んじられる『自由』より、貧しい人々が豊かになるチャンスのほうがずっと大事だと思われている」そうだ。
「中東で最も長い通りであるバリアスル大通りは、テヘラン駅を始点に市の最北端まで延びている」。「市の中心部には伝統的な服装を身にまとった年配の男女が多いが、大通りを北に向かうにつれてジーンズや色鮮やかなスカーフが目立つようになる」。
ある青年に、「6月12日の大統領選では誰が勝つと思うか?」と聞いたところ、「『アハマディネジャドに勝ってもらわなきゃ困る』」。「『アハマディネジャドに勝たせれば、既存の政治体制が崩壊に向かうはずだ』」。
「外国人がこうした意見を聞くと、イランの若者が政府を打倒するのは時間の問題だという問題だという印象を持つかもしれない」。
「この国では若者が人口の4分の3を占めて」おり、「イランでも若い世代は娯楽に夢中だ」。だが、「好きな服を着たり、自由に行動したりする権利にはそれほどこだわっていない」という。
「家の中など他人の目に触れない場所でなら『自由』を楽しめるから」である。
「禁欲的な価値観に反発を感じている人々でさえ、ペルシャ民族としてのアイデンティティーや、その歴史と文化を誇りに思っている」という。「彼らの多くは生活に余裕があり、外国旅行の経験も豊富で、欧米流の考え方になじんでいるが、東洋でも西洋でもないイランの立場を大事にしたいと考えている」というのだ。
「アメリカ人が作った地図で『ペルシャ湾』が単に『湾』と記されていたり、ペルシャ人を蔑視するような要素がハリウッド映画に含まれていれば、イラン人は憤慨する」。「テヘラン北部に住む『リベラル』な人たちだって同様」だという。
つまり、うまく外国文化などを取り入れ、自国の文化を大切にしているのだろう。
しかし、イランの現状は「インフレ率も高く、失業者も多いため、イラン経済は深刻な状態にあるとされている」。
テヘランの「ジャバディエ地区」は、「かつてここは非常に治安が悪い地域として有名だった」。「今でもテヘラン市民の大半は足を踏み入れようとしない」。
だが「最近は、前より暮らしやすくなっている」という。「泥レンガ造りの古い建物に交じって、新しいアパートが立っている」。「真新しい車もあちこちに止まっている」。
「この地区の住民の多くはアハマディネジャド支持者だ」。「大統領が育ったのも下層中流階級の町」。「貧しい人々のために尽くす気取らない政治家というイメージを打ち出したアハマディネジャドは、ジャバディエのような地域で非常に人気が高い」という。
「テヘラン南部の住民は信心深く労働者階級が多い」。「彼らは権威に反感を抱いて」おり、「特に裕福なエリート層には厳しい目を向ける」。
「選挙となると、この地域の住民はこぞって投票所に足を運ぶ」。「彼らは市の南部の開発に力を注ぐ市長候補に票を投じて」きており、「アハマディネジャドもそうして選ばれた市長の1人」である。
「アハマディネジャドは医療保険や年金の改革に取り組むことによって、ジャバディエで多くの支持者を獲得した」。だが、「彼自身が貧しい家庭の出身だという事実も、政策と同じくらい重要な意味を持っている」。
「バリアスリ大通りは北の端に至ると上り坂になり、雪を頂いたアルボルズ山脈の山麓の丘に続く」。「イラン革命を主導したホメイニ師の一族が住むジャマランはこの丘陵地帯にある」。
「ハタミ前大統領もここに事務所を構えて」おり、「その建物は、ほぼ全員が改革派に転向しているホメイニ一族から提供されたものだ」。
その「ハタミは大統領選出馬を断念」した。
「キングになるよりキングメーカーのほうがいい」。「絶対的な権力者はハメネイ師ただ1人だが、ハシュミ・ラフサンジャニ元大統領やラリジャニ国会議長もキングメーカーとして力を振るっている」。
「大統領選に立候補したり、大統領に就任したりするには、多くの有力者やさまざまな支持基盤の歓心を買う必要があり、妥協を強いられる」。「黒幕はそれほどの苦労をしなくて済む」というわけだ。
「最高指導者のハメネイ師が口にした『変化』を実行するとなると、ハタミには荷が重い」。「信心深い人々から改革派まであらゆる国民に、路線変更が最高の選択肢だと納得させられる人物が大統領にならなければ、変化は起こせない」からだ。
「まだ完成していない原子炉の燃料を、自国で生産する必要があるのかと米政府は疑問視する」。だが「イラン人にしてみれば、原子炉が完成しても燃料は外国頼みという事態は断じて受け入れられない」。「アメリカは石油の対外依存を脱却したがっている」。「なのに、なぜイランにエネルギーの対外依存を強いるのかと、人々は思うのだ」。
「今度の大統領選で誰が勝つにせよ、次期大統領は難題に直面することになる」。「30年間にわたって互いに敵意を抱いてきたアメリカと緊張緩和」である。
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イラン問題の行方(上)
イラン問題が依然として続いている。
欧米とイランの関係は良くない。
イラク、アフガニスタンの問題と同じくらい、大きな問題として、現代の国際情勢の注目すべき問題である。
そのイランを取り上げる。
新世界大戦の時代
「「騒乱のイラン」もまたアメリカのエゴにより演出された」
落合信彦(SAPIO 2009.7.22)
第2次大戦中、パーレビ朝国王を22歳のレザー・パーレビが継いだ。当時、イラン議会は極端なナショナリズムが巻き起こっていた。特に「石油をめぐって議会は国有化に傾いて」おり、「その先頭に立っていたのが、後に首相となるムハンマド・モサデク」であった。
「かつてイランの石油はセブン・シスターズ(世界石油メジャー7社)の一角であったイギリスのアングロ・イラニアン社(後のBP)が独占していた」。「1951年4月、モサデクは議会石油委員会委員長の権限で石油の国有化を一方的に宣言して国民の圧倒的な支持を得る」。「その2年後、パーレビはモサデクを首相とするとともに石油国有化法に署名する」。
しかし、アングロ・イラニアン社は、「他のメジャーと組んでイランの石油を国際市場からシャット・アウト」。その反撃に対して、「モサデクは必死に買い手を探すが、誰もメジャーを敵に回すような危険は冒したく」なく、「イランの国庫はからっぽになりつつあった」。
そして、「当時のアメリカ大統領アイゼンハワーに、『もしアメリカが救いの手を差しのべてくれないならイランはソ連の援助を受けざるを得ない』」(しかもソ連との相互防衛条約も念頭に入れているということも)という書簡を送った。これに対し、「アイゼンハワーはモサデクを危険人物と判断し、CIAにイランの“掃除”を命」ずることになった。
「CIAに後押しされたパーレビは国王権限でモサデクを罷面」し、「これを契機にモサデクを支持する反国王派のデモがエスカレートし」、「ソ連に焚き付けられた共産主義政党ツデー党が絡んでテヘランの民衆は暴徒化する」。「国王はCIAの指示でひとまずローマに亡命」。「CIAは軍部と警察を握ってカウンターデモを起こし、一夜にして情勢をひっくり返してしまう」。「モサデクは逮捕され国家反逆罪で3年の刑を受ける」。しかし、「パーレビは復権し、それまでとは人が変わったように現実的かつ強権的になる」。
パーレビは復権により、極端な独裁政治を始め、79年の1月に失脚するまでの約27年間、イランの独裁者として支配を続けた。そして「その独裁の裏には常にアメリカがいた」という。「アメリカにとってイランは中東における忠実なドーベルマン」であったからだ。「これがイラン人が抱く“アメリカの呪縛”である」。しかし、その反面、パーレビは「イランを中東で最も近代化させた」。
パーレビの独裁はホメイニを生み出した。
「ホメイニは何度も国王批判の演説を打っては逮捕され、ついに64年に国外追放となった」。「彼はその後15年間、トルコ、イラクを経てフランスで亡命生活を送りながら、国外から国王への抵抗を呼びかけ続けた」。
「79年1月、パーレビ国王はホメイニの演説に呼応する国民を抑えきれないと判断し、エジプト経由でアメリカに亡命」。そして、「入れ替わるように2月にホメイニが帰国し、国王派を一掃」。「同年4月1日、イラン・イスラム革命が成立、ホメイニは最高指導者に就任した」。
そのホメイニを生み出した背景には、アメリカが絡んでいるという。
「79年1月初旬NATO軍最高司令官アレキサンダー・ヘイグの元にカーターから指令が届いた」という。「『イランに特使を送り、どんな状況下でも動かぬよう軍部を説得させろ』」という命令だったという。「イラン軍部の動きを封じこめることは、パーレビを見殺しにするに等しい」。「ヘイグは戦略面と倫理面の両方から命令を拒否した」という。
「結局、カーターは自分が選んだ特使をイランに派遣し、イラン軍部を説得」。「2月にホメイニがイランに帰国し、それを歓迎する100万人もの一大デモが行われた際も、ついに軍部は動かなかった」。
「カーターはイラン軍部による国民虐殺を恐れていた」。「自慢の人権外交の名に傷がつく」ため、「これ以上独裁王朝にテコ入れしていると、西側諸国の支持を得られなくなるとも考えていた」という。また、「ホメイニに政権が移っても、イランとの関係は変わらないという判断もあったのだろう」。
しかし、「イスラム革命後、反米の機運は高まり」、「鎮まることはなかった」。
79年11月、イランのアメリカ大使館人質事件が発生した。「パーレビの亡命を受け入れたアメリカに怒った学生らが大使館を占拠し、人質を取って立てこもった」。「背後では革命防衛隊(イスラム革命後に発足)が彼らを支援していた」。
「この人質事件に関しては、イスラエル政府がコマンド部隊による作戦を申し出」たが、カーターはこのオファーを断り、「人気回復を狙ったのか」、自ら解決しようとした。
しかし、「結局、アメリカの救出作戦は輸送機とヘリコプターの接触事故などもあり」、「失敗に終わった」。
こうしてアメリカのイラン喪失を招いたのだが、その背景には情報機関の弱体もあった。
「イスラム革命前、CIAはイランに関する情報源をパーレビ側近に頼っていた」という。「パーレビ体制が危機に陥るとすればツデー党によってもたらされると読んでいた」という。
「イスラエルの情報機関モサドは、パーレビ体制にとって最も危険なのはイスラム教右派の僧侶たちであると分析し、CIAにもレポートを送っていた」。しかし、CIAはそのレポートを無視した。
ワシントンポスト紙の別冊『パレード』誌の『世界最悪の独裁者』ランキングによると、「ハメネイは7位にランクイン」している。「イランには選挙制度はあるが歴とした独裁国家である」。「万が一、イランが民主化に向けて動き出すと、他の独裁者たちは自国にも民主化のうねりが波及するのではないかと気が気ではない」。
そのため、「アフマディネジャド当選とハメネイが断定した時、中東のリーダーたちはこぞって祝福の電報を送った」。「今回の騒動で、改革派のデモへの参加者たちの70%以上は30歳前の若者だった」という。「ホメイニの廟で自爆テロが行われ、『ハメネイに死を!』のスローガンが繰り返されている」。「彼らは、明らかに神権政治の終焉を願っている」。「ハメネイをはじめとする僧侶たちも彼らの天下を維持しようと必死だ」。
ちなみに、「エジプトのムバラク大統領もトップ20に入っている」。
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ウクライナ大統領選を経て、ヨーロッパとロシアの関係を追う
1月7日にウクライナ大統領選の決選投票が行われた。
結果は、親ロ派ビクトル・ヤヌコビッチ氏が当選した。オレンジ革命を起こした選挙のときから、ウクライナはヨーロッパとロシアの影響を受けてきた。
ウクライナがどうなっていくのか。ヨーロッパとロシアとの関係はどうなのか。アメリカとロシアはどうなのか。
「親ロ派ヤヌコビッチ氏が大統領になるウクライナはどうなるのか」
谷口永治
ウクライナの大統領選の決選投票が、1月7日に行われた。中央選管管理委員会によると、開票率99%で親ロシア派野党党首のビクトル・ヤヌコビッチ前首相の得票率が48.73%、ティモシェンコ首相の得票率は45.68%という結果になり、ヤヌコビッチ氏が当選した。
全欧安保協力機構(OSCE)の選挙監視団は今回の選挙に関して、「民主的な選挙だった」と評価、北大西洋条約機構(NATO)やロシア中心の独立国家共同体(CIS)の監視団も評価した。
両候補の票差は約88万4000票になったという。
この選挙結果を受けて、ティモシェンコ陣営は再投票を求め、提訴する構えだ。
ティモシェンコ陣営は「訴訟に敗れた場合にのみヤヌコビッチ氏の勝利を認める」とし、最高行政裁で再投票や一部地域での票の再集計を求める構え。「100万人以上が正規の手続きを経ずに在宅投票した他、大量の投票用紙が毀損された。千以上の選挙区で不正の疑いがある」からだという。
さて、ヤヌコビッチ氏が大統領となったウクライナはどうなるのだろうか。
ヤヌコビッチ氏は公務でもプライベートでも「じっくり考え、ゆっくりとした口調で話す」人物だそうだ。そして、旧ソ連の政治家を彷彿とさせる調整・根回し型の実務派であり、地元の工業大学を卒業し、小さな輸送会社を任せられたことがきっかけとなり、世に出るきっかけとなった。
そんなヤヌコビッチ氏であるが、貧乏で暴力的な父親に育てられ、青年期には傷害罪で服役した経験を持つ。
ヤヌコビッチ氏はユーシェンコ現大統領が推進した北大西洋条約機構(NATO)加盟の撤回や、ロシア語の地位向上を訴えており、ウクライナに駐留するロシア黒海艦隊についても、現政権が主張してきた17年の貸与期限切れに伴う撤退要求を見直す可能性を示唆するといった外交の軌道修正を図っているとされる。
欧州向けガスパイプラインの運営会社にロシアなどの出資を仰ぐ意向もある。その代わりに「ガス代金の値引きと欧州向けガス輸送料の値上げを求める方針」。
親欧米路線を維持しつつ対ロ関係の改善を唱えたティモシェンコ氏に比べ、ヤヌコビッチ氏はさらにロシア寄りの姿勢をとっている。
しかし、新政権の外交方針として、
①欧州への統合
②ロシアとの関係改善
③軍事同盟への不参加
の3本柱で、「目標は政治・経済面での欧州基準の達成。NATOにも加盟しないが(ロシア主導の軍事同盟)安全保障条約機構にも加盟しない」という。ロシアに全面的に傾いているわけではない。
その背景には、政権基盤であるウクライナ東部の重工業地帯の「オリガルヒ(少数の新興資本家)」がいる。そのオリガルヒは欧州市場でロシア企業と競合する立場にある。そのため、経済危機の中で、ロシアから輸入する天然ガス価格の値下げを求めており、新大統領は少しでも高くガスを売りたいロシア側との難しい交渉を迫られるだろう。
ロシアとの関係改善なくして経済の再生は難しいが、ヤヌコビッチ氏の支持基盤であるこうした勢力はロシアにのみ込まれる事態を警戒しているわけだ。
ウクライナの状況は政界の汚職構造は改善されていなく、世界的な経済危機の影響で財政は破綻の瀬戸際に追い込まれている。昨年、国内総生産(GDP)は前年比約14%減に落ち込み、財政赤字も拡大している。
そんな状況のウクライナ情勢であるが、気になることがある。
ウクライナの情勢をめぐって、ヨーロッパとロシアの関係が気になるところだ。ウクライナは人口約4600万人で、親露的な東部・南部と親欧州の西部で世論が二分されている。
04年の選挙では「オレンジ革命」を支持する中西部と、反対する東部が鮮明に分かれ、「国家分断の危機」も取りざたされたほどだ。その後、リビウ州にもロシア資本の進出が進むなど、融合への流れも生まれたが、今回の選挙結果は改めて東西対立の根深さを感じさせる結果になった。
中央選管の州別暫定集計によると、ヤヌコビッチ氏は地元ドネツク州など東部の重工業地帯、ロシア語系住民が多数派を占める南部のクリミア半島などで70~90%の得票率を収めた。
こうしたことから、ウクライナをまとめるのは非常に難しく、地理的要因も影響して、ヨーロッパとロシアの関係がウクライナで渦巻いている。
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イラクやアフガニスタンだけではない、深刻な状況
- 2010-01-25 (月)
- COURRiER Japon | Newsweek | アジア(社会) | アフリカ(戦争・紛争) | 戦争・紛争
現在、イラクやアフガニスタン戦争が大きな問題になっている。
しかし、イラクやアフガニスタンだけが、問題ではなく、深刻な問題は他の地域にも存在する。
その深刻な状況がどれぐらい存在するのか、そして、具体的に言うとどんな地域が深刻になっているのか。
一部であるが。
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