核・原発 廃棄物をどうするか、MOX・処分地の課題

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 原子力発電所はこれまで、少ない原料で大きなエネルギーを生産できるという風に語られてきた。しかし、一視点ではそう見えるものの、他の視点から見ると、いいことばかりではない。チェルノブイリやスリーマイル、そして、3.11の福島第一原発からもわかるが、トラブルに見舞われた場合、その影響は深刻だ。
 福井県には高速増殖炉「もんじゅ」がある。私が小さかった頃、テレビのニュースでよく話題になっていたのを思い出す。物心がつき、考えることができるようになった学生の頃、ニュースになった意味を知る。もんじゅは現在でも問題視されている。そのもんじゅだが、まだまだ研究段階で実用化に至っていない。小さい頃のニュースは、そのもんじゅで運転の際、ひびわれなどのトラブルが生じるといったことだった。もし、それが大事故につながれば大変なことが起こる。そして、その現実が現在、日本を覆っている。
 原発事故の影響は深刻だ。それと同時に、これまで原発事業が続けられてきたわけだが、もう一つ大きな穴がある。それは、原発で電気を生み出す際に出る、廃棄物の問題だ。この「廃棄物をどうするか」ということが解決されていなく、大きな課題となっている。それも、解決策が見つからなければ日が進むにつれ、その問題は雪だるま式に大きくなっていく。

 原発で電力を生産。そこから出る廃棄物を再処理して、再利用する方法がある。その方法として、MOX燃料がある。MOX燃料とは、プルトニウム・ウラン混合酸化物のこと。これが実現すれば、一度使用した燃料を再び使用。燃料を可能な限り利用する「エコ」のイメージが生みやすい。しかし、これも大きなデメリットが存在する。それも深刻なものだ。
 MOX燃料を使うにも、一部の炉心に使用する「プルサーマル」か、炉心全てに使用するか、という選択肢がある。プルサーマルは多くの国が撤退。今も続けているのはフランスと日本くらい。一方で全ての炉心で使用する方法は、フランスの研究炉で実験が行われた例があるだけという。
 問題として、MOX燃料は、ウラン燃料より原子炉を停止する際の余裕が低下する傾向があるという。緊急時に原子炉内の圧力を下げる安全弁の容量を増やすこと、高性能の制御棒を開発するなど、既存の改良型沸騰水型軽水炉に新たな改良が必要だという。高いレベルの規格を満たす必要があり、コストは高くなる。
 使用済みMOX燃料は、再処理に使用する硝酸に溶けにくい成分が多い。その分、コストがかさみ、実用的な処理方法は開発されていないという。そのため、MOX燃料は、通常のウラン燃料の3割増しから2倍の値段になるという。

廃棄物の処分方法と場所に課題

 イギリスでは使い道を失った余剰プルトニウム(廃棄物)の処分法をいくつか研究しているという。
 8kgで核兵器が製造できるというプルトニウムは、定量を超すと臨界事故を起こすため、小分けにして処分する必要がある。現時点では、プルトニウムの割合は0.05%に薄めてセメントと混ぜる方法がある。だが、英国は世界最多の114.8トンもの余剰プルトニウムを抱えるため、これら全てを小分けに処分すれば、廃棄物の総量は20万トンを超えることになるという。
 そこで、米国が研究している新たな方法として、「カン・インサイド・キャニスター(大筒の中に小筒の意)」という処分方法だ。プルトニウムを他の物質と混ぜ、アイスホッケーのパックのような形状に加工した上で、長さ約50cmの大筒に入れ、隙間に、遮蔽がなければ数秒間で死に至る強い放射線を出す高レベル放射性物質を流し込む。これは、テロリストが大筒からプルトニウムを取り出そうとすると、容器を開けた途端、即死する仕掛けになっている。ただし、課題として、コスト面や技術的に未確立な部分が多い。
 「核分裂性物質に関する国際パネル(IPFM)」によると、10年末時点の世界のプルトニウムは、軍事、民生双方をあわせて約500トン。しかも、再処理による生産量が消費量を大幅に上回る状態が続いているという。

 プルトニウムは、毒性が極めて強い。一般人の摂取制限量は100億分の5.5g。1gで18億人分の摂取制限量に当たる計算になる。半減期が2万4000年、20万年以上も安全に管理する必要がある。
 原発から出る廃物をどうするのか。処分する方法にも工程がある。上記で書いたように、まず廃棄物をどのような形にするか、というもの。そして、それをどこに管理するのか、ということだ。管理場所としては、地下深くということが有力な候補になっている。

 ドイツの北部ゴアレーベン。ここには、高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設、最終処分地建設に向けた調査が進む核施設がある。地下840mに、幅6m、高さ4mのかまぼこ状の坑道がある。この一帯は、2億年前までは海だったという。約1000万年前に隆起し、岩塩ドームができたという。岩塩層は、塩の採掘技術が確立されており、200度の高温に耐えられる特性があり、放射性廃棄物の保管に最適だという。
 しかし、旧西独時代の70年代後半、地元が誘致したのを契機に、東独との国境からわずか2kmまで調査が進んだが、98年に中道左派の社会民主党と連立政権を組んだ環境派の緑の党が「待った」をかけた。00年から10年間の猶予を設け、他の適地を探したが、見つからず、10年10月にゴアレーベンでの調査再開が決まった。
 しかし、地元の反発はある。ドイツは22年までに原発全廃を決めていが、最終処分地選定は揺れる。メルケル政権は、「タブー無しに、全土選定し直す」としている。

 原発で電力を生産するためには燃料が必要で、生産後には廃棄物が出る。その廃棄物を再利用することは理論上、できるというが、廃棄物はなくならない。再利用にも実用段階でコストなり、技術のハードルが高くなる。もし、再利用がクリアされても結果的に出る廃棄物の行方は、まだ解決には程遠い。
 「地中深くで管理する」ことが有力だが、その場所をどこにするかが解決しない。日本でも最終処分場ではない中間貯蔵施設でさえ、処分地が決まらない。この問題が解決しなければ、生産自体ができなくなる日がくる。急ピッチで原発に替わる生産の取り組みが考えられているが、その代替案が出てくるまでに、生産自体ができなくなる恐れがある。もし、それでも解決しなければ、電力消費を抑えるか、できなければ…廃棄物の影響が身近なところにあらわれるようなことになるのだろうか。

【参考資料】

・「東電改革案 安定供給を狙い 収益・効率性改善 限定的との見方も」
神崎修一(毎日新聞 2012年1月28日(土))
・「どうする人類、核のゴミ 5 想定されなかった廃棄 「夢のエネルギー」プルトニウム」
会川晴之(ロンドン)(毎日新聞 2011年12月14日(水)
・「どうする人類、核のゴミ 2 処分地選定ドイツ迷走 岩塩ドーム調査進むが――」
会川晴之(ゴアレーベン(ドイツ北部))(毎日新聞 2011年12月10日(土))

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