核・原発 原発ビジネスと核軍拡競争

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 2011年3月11日の東日本大震災。それによる福島第一原子力発電所事故は全世界に衝撃を与え、いまだに問題は続いている。日本や先進国といった国々の原発事業は厳しい目が注がれ、今後の原発事業はこれまでより厳しい道が待っている。
 実際、日本は原発停止により電力問題が生じつつも、原発の再稼動は慎重になっている。アメリカやフランスなどは原発は継続の方向ではあるが、反発の声は大きくなっている。中国も原発事業は続けるものの、事故後、原発の検査を行った。

 「原発事業は今後、厳しい展開になりそうだ」と感じつつも、原発事業が活発なところがある。それは、バングラデシュ、インド、ベトナム、イラン、トルコ、ヨルダン、サウジアラビアといった国々だ。
 原発ビジネスは、日本といった厳しい国ではなく、活発な国々に移っていく。つまり、先進国の原発市場の先行きが暗くなり、大半の原発関連企業は中東や東南アジアの未開拓の市場に目を向けざるを得なくなったということだ。
 ロシアは、バングラデシュ、インド、ベトナム、イラン、トルコで推進。アメリカ、フランス、日本、韓国は、ヨルダン、ベトナム、トルコ、サウジアラビアで推進。中国は引き続き、パキスタンで新規の原発建設を続けている。

原発事業(ビジネス)の背景

 何もビジネスの市場を求めただけで、このような状況になったわけではない。ロシアはトルコに対し、利益なしで、もしくは原価を割り込んだ価格で原子炉を売っているという。その背景には、石油パイプライン計画を円滑に運ぶために、隣国トルコに対する影響力を確保したい思惑があるとみられる。アメリカがベトナムの原発を推進するのは、中国を封じ込める狙いも窺えそうだ。
 こうした国と国の政治的な背景に加え、軍事的な背景も重なってくる。イランの核問題が深刻になる中、サウジアラビアは核兵器保有を模索する動きがある。原発事業は核問題にも関わってくるため、原発事業をあからさまに拡散させるのも問題だ。
 過去に、トルコ、シリア、イラン、アルジェリア、エジプト、サウジアラビアでは核兵器開発を模索したり、実際に開発したりした経験がある。パキスタンは、既に核兵器を保有。さらに、エジプト、トルコ、ヨルダン、ベトナム、サウジアラビアでは、核燃料製造の放棄を拒んでいる(核燃料製造能力があれば、短期間で核兵器を造る事が可能)。それに、イラン、エジプト、アルジェリア、シリアは、国際原子力機関(IAEA)の保障措置に違反したことがある。
 こうしたことから、原発事業は核問題にも関わり、政治・軍事面に影響を及ぼし、国と国との関係や国際情勢に深く関わってくる。

 一般市民の生活にも影響(感じやすい)する身近な問題として、原発輸入国は原子力安全規制のシステムが皆無に等しいということだ。それは先ほど挙げたルール違反などのことからもいえるが、(パキスタンを除き)大規模な原発を建設・運営する上で必要な専門技能を備えた技術者が十分にいないことも深刻な問題となっている。
 つまり、専門訓練を受けた原子力技術者が不足しており、トラブルが生じやすい環境をつくりだしているということだ。中国で例を挙げると、中国政府の目標通りに原発の発電量を増やすためには、年間6,000人の技術者を新規に養成する必要があるが、600人が精一杯だという現状だ。
 こうした原発自体を安全に運転・管理する専門技術者がいなければ、原発が動き出しても、トラブルが生じることになるだろう。

 原発事故を防ぐためには、国家間の状況から原発を管理する専門技術者など、大きな枠組と小さな(身近な)枠組を見る必要がある。電力を造るだけが原発ではなく、核兵器製造につながり、それは国のバックアップにもつながることから、核軍拡競争に発展することになる。万が一、そうなれば国際情勢の緊張状態が加速することになってしまう。

【参考資料】

・「フクシマ後に加速する原発の建設ラッシュ」
ヘンリー・ソコルスキー(核拡散防止政策教育センター事務局長)(Newsweek 2012.1.4/11))

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