中国の技術革新を後押しするか

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 超大国アメリカになったのは、技術力の高さが一つの要因に挙げられる。その要因を後押ししたのが、アメリカ軍の最先端技術を民間にオープンにしたことだ。厳密に言うと、極秘事項もあるだろうが。
 当初、アメリカ政府はクーデターによる政権転覆を防止するために、軍の最新技術は民間にはクローズドにしていたという。最新技術は軍、そして、一昔前の技術(レベルが低いと見られる旧世代の技術)を民間が使用しても良いとしていた。つまり、万が一、反乱やクーデターが起きた場合、それを抑止することができるためだ。
 ある時、その政策をやめ、最新技術であった軍事技術を、民間も使えるようになり、アメリカの技術力の向上が急激に高まったという。

衛星利用を民間にオープン。その効果には善し悪しが

 それと同じような動きが中国でも見られ始めた。
 中国政府は、中国版の全地球測位システム(GPS)を民間向けに開放することになった。中国は2000年から産官学軍が連携し、独自の衛星測位システムに着手。そして、10基目の衛星が軌道に乗り、システムを動かす体制が整った。今年には、さらに6基を打ち上げ、アジア太平洋全域でサービス提供する計画。16基の体制になれば、測位の制度は誤差25mから10mに高まるという。このシステムが完成する20年には35基の体制で全世界をカバーする計画。
 GPSは複数の衛星が不特定多数に信号を発信し、地上の受信機で自分の位置や進路を確認する仕組み。カーナビや航空機などの位置確認や、災害時の状況把握などに使われ、携帯電話やゲームなどにも応用できる。中国では兵器の命中精度の向上など、軍事面でも重要な役割を持つと見られており、これまで中国軍は米国のGPSに頼るしかなかったため、米側がアクセスを遮断されれば、支障が出る弱点があった。
 しかし、30基体制が実現すれば、中国周辺を航行する全ての船舶の状況を正確に把握できるようになり、米海軍の接近を阻止する戦略の一環にもなる。ただし、米国の最新の衛星と比べ、性能が劣る中国の衛星は精度を高めるため、一般的に打ち上げ高度が低いため、消耗が早く、頻繁に打ち上げて更新しなければならない。
 こうした体制が進められている中国のGPS。まずは10基を使い、中国とその周辺地域に限って位置情報を提供するという。無料で仕様を開放する方針だが、企業にとっては使いやすいが、中国側に活動状況を全て把握されることも意味するため、懸念材料は残る。

 こうした中国の衛星体制を高める動きは、周辺国や世界に懸念材料を覚えさせている。今後、アメリカへの依存が少なくなる可能性として、まだ部分的だが民間への開放が動き始めたことによって、その効果が今後出てくるのだろう。
 ただし、中国は同じ道は歩まず、アメリカのような展開にはならないかもしれない。反乱やクーデターを中国政府は脅威に感じており、当然、それを抑止する対策は握っておきたいものだろう。
 しかし、一部でもこれらが使用できるようになるということは、そこからビジネスなり技術革新なりが出てきてもおかしくはない。今後の中国を見ていくにつれ、これらの技術革新の後押しは、中国の存在感を高める要素に繋がる。

【参考資料】

・「中国版GPS 民間に開放 10基目軌道に、20年35基体制へ 米依存を解消」
森安健(北京)(日本経済新聞 2011年12月28日(水))

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