○○の時代 パックス~の衰退はどういう展開

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 欧米の時代が続いている。現在はアメリカの時代。そして、今後はそこに中国が躍り出ようとしている。
 西洋は15世紀頃から、一連の社会制度でのイノベーション(革新)で、他の世界に差をつけ始めた。そのイノベーションの重要な要素となったのが、
・競争:ヨーロッパは多くの国に分かれ、それぞれの国内で営利組織が競い合って、その一部が現代の企業の原型となった。
・科学革命:17世紀の数学・天文学・物理学・化学・生物学における画期的な発見や成果は、全て西欧で生まれた。
・法の支配と代議政治:私有財産権と、投票権を持つ資産家が議会の代表を選ぶ制度が基盤となり、最適な社会と政治秩序のシステムは、英語圏で誕生した。
・近代医学:19~20世紀の医療分野における画期的な発見や成果は、ほぼ全て西欧と北米で生まれた。
・消費社会:産業革命は生産性を高める技術の供給と、より多くの良質で安価な製品(例えば綿服)に対する需要の両方があったイギリスで始まった。
・労働倫理:世界で最も早く、多くの人々が労働集約型の職場で働き、貯蓄には励み、長期的な資本の蓄積が可能になった。
 これらの要素により、西洋の生活水準は他の世界に圧倒的な差をつけた。その結果、16世紀初頭、中国は北米より豊かだったが、それが1970年代後半にはアメリカ人の所得は中国人の20倍以上になり、健康面でも寿命が長くなり、20世紀前半にはアメリカを含む「西洋の帝国」が世界の土地の58%、経済の74%を支配するまでになった。
 イギリスの時代からアメリカの時代に移り、今、中国が次の時代に名乗り上げている。これまで様々な時代が訪れ、その時代の帝国が変わってきた。当時は一見、その帝国が続くように感じたのだろうが、その力は次第に衰え、新たな帝国が現れる。

 帝国が滅び、次の帝国が現れる。その展開は、これまでも様々な舞台で議論されてきた。その中で、帝国(文明)は勃興して隆盛を極めた後、徐々に衰退する、というイメージにいきがちだ。しかし、こんなことも指摘されている。歴史の流れは緩やかな放物線の連続ではなく、いきなり崖から落ちるように急激な下降線を描く、と。つまり、文明は衰退するのではなく、一気に崩壊する、ということだ。
 その具体的な例として、ソ連の急激な崩壊、北アフリカ・中東での独裁体制の崩壊などが挙げられるだろう。後者は、1年前には豪華な宮殿に住み、安泰に見えた独裁者達だったが、外国に追いやられたり、殺されたりして、その体制は崩壊した。彼らの転落に共通する特徴は、独裁を支える複雑な社会システムが突然、機能しなくなった点にある。

アメリカ低下の結果

 時代は変化する。それと同じで、帝国も変化し、崩壊する。その変化の要因は、これまで帝国を繁栄させてきた要素が多く絡んでいるのかもしれない。
 つまり、冒頭で挙げた要素が、これまで帝国の主役を担ってきた側だけが持ち、それを活用できるものではなく、それは帝国側以外にも活用できる要素だからた。日本をはじめとする非西洋諸国は、西洋がイノベーションを起こした要素をうまく取り入れ、西洋を追い上げている。
 そうした結果、いくつかの結果が見られるようになった。
・平均的韓国人の週労働時間はアメリカ人より39%多く、韓国の学校の年間労働日数は220日あるが、アメリカは180日。これは、アメリカの主要大学で勉強熱心な学生を探すと、大抵アジア人かアジア系アメリカ人という。つまり、向上するための努力の勢いの違いが見られる。
・消費社会の面では、世界の巨大ショッピングモール30施設のうち、26は新興国、特にアジアに集中しているという。アメリカはわずか3。
・近代医療の面では、対GDPで、アメリカは日本の2倍、中国の3倍の医療費と、最も高いお金を払っているが、アメリカ人の平均寿命は過去50年間で70歳から78歳に伸びたが、日本は68歳から83歳、中国は43歳から73歳に伸びている。
・法の面では、世界経済フォーラムの経営者意識調査では、私有財産権と統治に関連する16項目中15項目でアメリカの評価は香港より下だった。それも、アメリカが20位以内に入った分野は投資家保護だけだったという。ちなみに、企業の組織犯罪対策コストは86位、政治家の倫理観に対する国民の信頼度は50位、賄賂は42位、会計監査と会計報告の水準は40位。
・科学の面では、アメリカを研究拠点とする多くの科学者が毎年ノーベル賞を受賞しているが、大半は高齢者になる。若者へ注視してみると、世界各国の15歳を対象にしたOECD(経済協力開発機構)の国際学習到達度調査(PISA)によると、「数学的リテラシー」の分野で世界1位の上海、シンガポールの生徒とアメリカの生徒の差は、大きいという。
・競争の面では、世界経済フォーラムが毎年発表する国際競争力調査によると、アメリカの平均競争力指数は2004年以降、5.82から5.43と先進国で最悪レベルの低下になった。中国は4.29から4.90に。国際競争力に懸念があるが、国内の競争力にも深刻な問題が出ており、現在は深刻な社会の二極化が進み、全米の所得の20%を得ている1%の富裕エリート層が他の社会階層、特に所得分配の底辺にいる人々と危険なまでに懸け離れた存在になっている。
 こうしたことから、アメリカの時代から新興国、特に中国の存在感が強くなり、今後のアメリカと中国の関係と行方が気になる要素になっている。

崩壊はいつ、どのように

 ただ、アメリカの時代が崩壊に向かっているとすると、今後の懸念材料として、騒乱と犯罪が急増したり、グローバル化している現在、アメリカの信頼低下などによる、世界の情勢が大きく不安定になるかもしれない。
 アメリカの時代は続くのか、崩壊するのか。帝国の崩壊は徐々にではなく、急激にという指摘は、どこまで当たっているのか。そして、崩壊のペースは、例でも挙げた1年というものなのか。もし、1年だとしたら、あっという間の変化だが、この急激な崩壊説で挙がっている例は、ローマ帝国も挙げられている。ローマ帝国はゆっくりと衰亡の道を歩んだと言われてきたが、ゲルマン人の侵入と内部分裂により、5世紀前半の数十年間で崩壊したという。
 ここからいえるのは、数十年という期間から1年という範囲が出てくる。アメリカの時代がいつかは終わるだろう、という意識は常々思っていたが、その具体的な時期となると様々な議論が巻き起こっている。「まだまだアメリカの時代は続く」という声も、「いや、中国の時代がもう既に近くまで来ている」といった声も。
 今後の世界情勢を見つめた上で、「どうするのか」今から既に考えて行動しないと、ますます日本の状況は不透明になりそうだ。

【参考資料】

・「瀕死のアメリカは復活できるのか」
ニーアル・ファーガソン(本誌コラムニスト、ハーバード大学教授)(Newsweek 2011.11.16)

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