女性の権利~ノーベル平和賞受賞で~(下)

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 今年のノーベル平和賞で、アフリカ初の女性大統領となった、リベリアのエレン・サーリーフ大統領、リベリアの平和活動家のリーマ・ボウイー氏、イエメンの民主活動家のタワックル・カルマン氏の3人女性が受賞した。
 これまでの性差別問題で、女性の権利に大きな課題が挙げられてきた。そんな中、今回のノーベル平和賞で、女性の権利向上が前進するのではないかとされている。

 リベリア経済は完全に破綻し、国家機関は麻痺し、まともな法律や方針もなく、生産力は低く、価値観のひっくり返った国だった。国の歳入はわずか8,000万ドルで、インフラはなきに等しく、対外債務は国家予算の7倍近くに膨れ上がっていたという。さらに、汚職や国家再建の遅れ、犯罪、内戦中に蔓延し今も悩ますレイプや子供に対する性犯罪などなどは不安の種だ。
 政府は厳しい法律を制定し、特別な警察組織や裁判所を設けたが、警察や裁判所の不手際のせいで、政権発足以来、有罪判決を受けた容疑者はまだ少数だという。
 しかし、それでもサーリーフ大統領が行ってきた功績はある。対外債務をほぼ帳消しにしたり、新興経済国からの投資は0から190億ドルに急増させ、歳入は4倍に増加させたという経済効果だ。

 しかし、今回の平和賞受賞に対し、懸念事項も浮上している。アフリカ初の女性大統領となった、サーリーフ大統領。そのサーリーフ大統領に「受賞に値しない」という声もある。
 1989年に内戦を引き起こし、その後リベリア大統領になったチャールズ・テーラー率いる組織に財政支援した過去があること(後に支援を中止)が厳しい目で見られている。テーラーは89年、独裁者サミュエル・ドウに対抗して反乱を起こした人物で、ドウ政権下で投獄され、亡命を余儀なくされていたサーリーフは、最初のうちテーラーを支援していた。国内外の圧力を受けてテーラーが辞任するまでに、約27万人が内戦で犠牲になっている。
 それに、サーリーフ大統領の行ってきた経済効果だが、問題は大半の国民が享受できていないという。道路や学校、病院や水道が復旧しても、10人中9人近くが1日1.25ドルという貧困ラインかそれ以下で生活している。石油やガス、鉱山は雇用をほとんど生まず、失業率は80%に上るのだ。それに貧しく、教育を受けず、売れるものは何でも売って生計を立てている「マーケット・ウーマン」が大勢おり、明日を生き延びることが必至な状況だ。
 サーリーフ大統領が実施した初等教育の無料化の義務化の効果もなかなかうまく進まない。子供達は働かなければ食べるものが手に入らないからだ。

サーリーフ大統領がどこまで導くことができるのか

 それでも、テーラー時代の内戦の記憶は消えず、それがサーリーフ政権を支える原動力になっている。個々の政策はともかく、平和をもたらしたのはサーリーフ大統領の功績だと言える。そのサーリーフ大統領が自分達の人生を好転させてくれたと考える人々も多い。
 サーリーフ大統領の国外での評価は高い。2006年1月、彼女が近代以降のアフリカ大陸で初の女性国家元首に就任すると、リベリアは数十年に及ぶ、内戦、動乱、クーデター、食人儀式、麻薬漬けにされた子供兵士と虐殺の暗黒時代から、大きく方向を展開した。

 しかし、国内では20歳未満の国民の約95%は今も失業状態で、隣国コートジボワールでの傭兵(報酬500ドル)募集に飛びつく者も。リベリアに派遣されている8.000人規模の国連平和維持部隊の縮小は来年にも始まる予定だが、そうなれば元戦闘員が政権の安定を脅かすような事態も出てくる。
 国際的な汚職監視団体トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗指数ランキングで、常に最悪の部類に入るリベリア。そうしたリベリアでのサーリーフ大統領の行いは成功しないという見方もある。
 それでも、これまでのサーリーフ大統領は厳しい中で少しずつ前進してきたリベリアが浮かび上がっているようだ。そのリベリアの姿が、今後の展開が改善するかしないかで、女性の権利の行方も関わってきそうだ。

(おわり)

【参考資料】

・「リベリアはノーベル平和賞に賛否両論」
エミリー・シュモール,ウェード・ウィリアムズ,メイ・アザンゴ(Newsweek 2011.10.19)
・「ノーベル賞が逆風になるとき」
ブルー・クラーク,エミリー・シュモール(Newsweek 2011.10.26)

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