エネルギーをどう使っていくのか

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 国際情勢はエネルギー問題と深く関わっていたりする。単にエネルギーを環境配慮型にするというだけでは、国際情勢の争いでは不十分になるかもしれない。国を支えるエネルギーを各国は、しのぎを削って得ようとしているのが現実だ。それは国益といった国の力の繁栄につながってくるからだ。

 日本はこれまで原子力発電事業を進めてきた。原発は少ない材料で大きなエネルギーを得ることができるため、これまでの火力といった発電事業より魅力的だった。同じ電力を生産するのに必要な原料の絶対量は、石油の7万分の1、石炭の10万分の1だという。
 さらに、原発事業はエネルギー資源を安定的に確保することができる。日本の原油輸入の中東依存度は約90%にも達しているが、原発の原料とされるウランの産出国はオーストラリアやカナダなど政治的に安定した欧米諸国が多い。石油が最も多く眠っている地域は政治的に不安定な地域が多く、世界の主要な原油・天然ガスの輸出国では、「政治的安定」、「法の支配」、「外交的野望」の観点から『世界平和を脅かさない国』と見なせるのは、ノルウェー(原油)とカナダ(天然ガス)だけだという。つまり、石油の供給が止まれば、世界恐慌が再来しかねないということだ。
 1970年代、石油ショックが発生した時に大きなダメージを受けた日本。原発事業が普及したことにより、2008年に原油価格が高騰した際、前回(70年代)のようなダメージを回避することにもなった。石油ショック時は発電電源に占める石油火力の割合は70%程度だったが、発電電源の「非石油化」を進め、現在は発電電源に占める石油火力の比率は約10%にまで低下しているため、原油価格が高騰しても石油ショックは起きなかった。

 3月11日の東日本大震災による原発事故は、世界中の原発事業に大きな衝撃をもたらした。その後、各国に原発事業の行方に黄色信号が灯ったが、同時に続けていく国も多い。
 中国は14基が稼働中で、26基が建設中という原発建設が忙しい国である。世界原子力協会によると、中国では少なくとも50基の建設が予定され、115基の増設が「提案」されているという。さらに、世論調査では今でも国民の70%が原発利用を支持しているそうだ。ただ、その中国だが安全でクリーンな代替エネルギーにも注目しており、再生可能エネルギーに巨額の投資を行い、発電量では既に風力発電が原発を上回っているという。
 これは、政府がエネルギーの安全確保から供給源の多様化を進めているためだ。原発はエネルギー供給全体の中で、かなりの割合を占めるものの、その割合は厳しく限定されており、2020年をめどにした公式の増設計画が達成されても、原発の総発電容量は、現在の発電能力全体の5%足らずにすぎず、原発依存度は低い。

 フランスは電力供給の75%という世界トップの原発大国だ。ただ、そのフランスでも東日本大震災後の原発事故により、反核団体への支持が急増した。来年の大統領選に向けて社会党が脱原発を掲げる緑の党との共闘を模索するなど、フランスでは初めて、原発政策が選挙の争点となりそうな形勢になった。ただし、段階的な原発廃絶へ向かうことは厳しく、エネルギー供給に占める原発割合は徐々に減る方向になるだろう。
 イギリスは19基を所有し、4基の建設を計画中。アメリカは世論の抵抗以上に、資金不足が原発増設の最大の壁になっている。
 ドイツは2020年までに再生可能エネルギーの発電量を倍に増やすとしている。しかし、太陽光と風力発電で世界の最先端を走り達成可能な目標とされるが、達成には巨額の投資が必要で、納税者に大きな負担がかかる。電気料金が最高で30%上がると予測され、短期的には石炭火力発電に頼るなど、脱原発後のドイツでは二酸化炭素排出量が年間2,500万トン増えると、国際エネルギー機関(IEA)は予測している。
 ただ、ヨーロッパが原発事業に流れる方向だったのは、エネルギー源がロシアの天然ガスという背景があり、ロシアがこれを政治的に利用できることがヨーロッパ側が懸念を抱いていた。

経済と関わってくる、エネルギー戦略

 福島原発事故により原発事業をどうするのか、というテーマが世界中で語られた。原発を止めてもやっていくことができるのか。
 原発を止めてもエネルギーを抑えればやっていける、という声もある。しかし、それには生活水準の低下を受け入れが必要になってくる。それに、エネルギー問題は慎重にやらないといかない。生活を改善するには、今までよりも多くのエネルギーが必要になってくることから、特に貧困にあえぐ人々に影響が強い。
 代替案として、太陽光や風力、バイオマス、水力発電などが挙げられるが、現時点では技術的、コスト的に極めて難しい。そして、もう一つ。再生可能エネルギーの中には原材料の生産や開発過程で環境に大きな負担を与えるものもある。
 それでは今後、どんな戦略で進めていけばいいのだろうか。こういう戦略が出ている。こういう戦略が挙げられている。

 まずは、「節電発電所」をつくることだ。省エネ・節電に努めて使える電気を増やす考え方で、政府が事業者や住宅の省エネ対策を支援する需要側管理という政策や、コンピュータによって送配電の効率化を図るスマートグリッドを組み合わせれば、大きな効果が上がる可能性がある。
 次に、「ガスコージェネレーション」。石油・石炭よりも相対的にクリーンで国際相場も落ち着いている天然ガスを使い、ホテルや工場などの大規模施設で熱と電気を同時に作り出すという仕組みをつくることだ。これが広く普及すれば、社会全体の熱効率を高めることができる。
 そして、再生可能な自然エネルギーを飛躍的に増やすことだ。ドイツでは2010年からの10年間に、自然エネルギーによる電力の比率を17%から40%に拡大する方針を掲げている。このように、自然エネルギーを利用することによって、環境に優しい電力の仕組みをつくることだ。
 こうした戦略が実行されることにより、これまでの環境に厳しいエネルギーの使い方による環境破壊の影響は、大きく軽減されることになる。

【参考資料】

・「小出裕章の放射能の話」
小出 裕章(DAYS JAPAN 2011.8)
・「それでも日本には原発が必要だ」
諸葛 宗男(東京大学公共政策大学院特任教授,日本原子力学会社会環境部会長)(Newsweek 2011.8.5 別冊)
・「フクシマ後に吹き荒れる脱原発の嵐」
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン支局長)(Newsweek 2011.8.5 別冊)
・「原発なき世界の危険な未来図」
ロバート・デュジャリック(テンプル大学ジャパンキャンパス・現代アジア研究所所長)(Newsweek 2011.7.27)
・「今こそ原子力から脱却から」
飯田 哲也(環境エネルギー政策研究所所長)(Newsweek 2011.8.5 別冊)
・「全原発停止 CO2排出 16%増 90年比 福島10基では3%」
立山 清也(毎日新聞 2011年7月13日(水))
・「福島原発は廃炉にできない」
千葉 香代子(本誌記者)(Newsweek 2011.7.27)
・「誰も知らない 核のゴミのゆくえ」
稲垣 美穂子(DAYS JAPAN 2011.8)
・「米有識者委 「中間貯蔵施設を」 使用済み核燃料 「多国間管理」も提言」
会川 晴之(ロンドン)(毎日新聞 2011年8月1日(月))
・「世界を読む 管理 10万年先まで フィンランドに建設中の最終処分場 透明手続きで実現 課題は危険性伝承 各国で計画難航」
(毎日新聞 2011年7月31日(日))
・「世界を読む 米「年内覚書締結を」 モンゴル核処分場計画 UAEも参加 安全保障前面に」
会川 晴之(オルキルト(フィンランド南西部))(毎日新聞 2011年7月31日(日))

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