原子力発電から出る廃棄物の行方

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 「小さな材料で、大量のエネルギーをつくることができる」、原子力発電。電力需給が拡大するにつれ、この原発が高く注目され、原発事業が拡大してきた。一時は原発をなくす流れにもなったが、地球温暖化などの対策が注目されるとともに、原発の魅力が勝り再度、原発需要の流れが強くなった。
 しかし、東日本大震災に伴い、改めて原発の在り方が慎重に議論されることになった。その中には、これまで通り原発推進を続けるところもあれば、原発を廃炉に軸を移したところもある。
 原発の魅力は、冒頭でも挙げた「小さな材料で、大量のエネルギーをつくること」だ。しかし、デメリットは東日本大震災により福島第一原発事故やチェルノブイリ原発事故、スリーマイル島原発事故といったものが挙げられる。
 しかし、もう一つ、大きなデメリットがある。それは原発を稼働するにあたり、廃棄物が出るということだ。

 原発を稼働すれば使用済み核燃料が発生する。それらの廃棄物は現在、特殊な処置を行い地下に保管されている。
 国際原子力機関(IAEA)によると、使用済み核燃料は世界で推計約33万トンになるという。年間1万500トンが発生し、そのうち8,500トンが処分に備えて貯蔵され、2,000トンが再処理されている。しかし、再処理しても、高レベル放射性廃棄物が発生するため、使用済み核燃料をそのまま処分するのと同じ歳月の隔離が必要になってくる。

 この原発から出る廃棄物の問題が今、世界の原発事業で大きな課題となっている。
 世界最大の原発を保有するアメリカ。104基が稼働しており、年間2,000~2,400トンの使用済み核燃料が発生。既に計6万5,000トンに達している。しかも、2050年には15万~20万トンに達する可能性があるという。
 そのアメリカ国内でも使用済み核燃料の処理施設の新たな場は決まらない。最終処分場を巡っては、フィンランドとスウェーデン以外どの国も住民の反対で選定が難航している。各国とも代替案にしているのが、一時(中間)貯蔵施設だ。原発内などにある核燃料を移送し、40年(ドイツ)~100年(米国)貯蔵する計画だが、一時しのぎにすぎないだろう。

フィンランドの事業が成功するか、注目

 ただし、最終処分場を建設して、その事業を進めているところもある。
 フィンランドで建設中の最終処分場「オンカロ」だ。3キロ四方のオルキルオト島の中央部にあり、2020年に稼働が始まるという。島には原発2基があり、さらに2基増設する。他にも使用済み核燃料の中間貯蔵施設、原発運転中や解体後に出る中・低レベル放射性廃棄物の地下処分施設もある。
 保管は、円柱上の銅製キャニスター(直径約1m、長さ4.8m、厚さ5m)に使用済み核燃料を詰め込み、地下430mに掘った横穴に5m間隔で縦穴を掘り、そこに筒を1本ずつ処分する。最大1万2,000トンの処分が終わる2120年に地下の施設全体をコンクリートで密封するという。
 原発で使った核燃料は、半減期2万4,000年のプルトニウムなど大量の放射性物質の塊である。自然界に存在する放射線レベルに低減するには、気の遠くなる遠くなるような期間、安全に管理する必要があり、10万年なら1,021世紀までとなる。
 課題は、未来へどう警告するか、という点が挙げられている。文明の後退や断絶も可能性としてあるため、どのようにしてこの処理施設を安全に保つかということだ。施設の危険性を言語やマークで表示するのは確実とはいえないからだ。

 最終処分場といった処理施設。日本でも研究がなされている。研究は岐阜県瑞浪と北海道幌延で行われており、高レベル放射性溶液を、ガラス原料と混ぜて高温で溶融し、ステンレス容器のキャニスターに入れ、冷却固化したもの(ガラス固体化)を、地下300m以上の深さに埋める「地層処分」という方法が研究されている。
 しかし、最終処分場は、日本では1980年代に北海道幌延町や岩手県釜石市などでの計画があったが頓挫し、未だに処分場の立地調査にさえ至った所はない。事業実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)は、これが長期的に、安全確実に廃棄物を隔離する方法であり、閉鎖後の技術的管理は基本的に不要としているが、放射性廃棄物のガラス固化体技術も、製造過程でトラブルが頻繁に起こるなど、安定した技術は確立されていないという。
 問題はそれだけではなく、既に日本にはガラス固化された放射性廃棄物が1,702本、約2万4,100本相当の放射性廃棄物が未処理の状態で存在するという。

 原発から出る廃棄物の行方は、このままいけば行き場がなくなってくる。その廃棄物の処理の仕方は極めて慎重を期する。地層処分の方法が確立されたとしても、その場所をどこにするのか、という課題が残る。さらに、それを長期間、保管する必要があることから、その処分場が極めて安全で安定な環境でなければいけない。
 地震といった災害の影響がその処分場にどういう形でも影響しないようにしなければならないといった、極めて高い保管体制が必要になってくることから、この廃棄物の処理方法は確かなのだろうか。

【参考資料】

・「小出裕章の放射能の話」
小出 裕章(DAYS JAPAN 2011.8)
・「それでも日本には原発が必要だ」
諸葛 宗男(東京大学公共政策大学院特任教授,日本原子力学会社会環境部会長)(Newsweek 2011.8.5 別冊)
・「フクシマ後に吹き荒れる脱原発の嵐」
ウィリアム・アンダーヒル(ロンドン支局長)(Newsweek 2011.8.5 別冊)
・「原発なき世界の危険な未来図」
ロバート・デュジャリック(テンプル大学ジャパンキャンパス・現代アジア研究所所長)(Newsweek 2011.7.27)
・「今こそ原子力から脱却から」
飯田 哲也(環境エネルギー政策研究所所長)(Newsweek 2011.8.5 別冊)
・「全原発停止 CO2排出 16%増 90年比 福島10基では3%」
立山 清也(毎日新聞 2011年7月13日(水))
・「福島原発は廃炉にできない」
千葉 香代子(本誌記者)(Newsweek 2011.7.27)
・「誰も知らない 核のゴミのゆくえ」
稲垣 美穂子(DAYS JAPAN 2011.8)
・「米有識者委 「中間貯蔵施設を」 使用済み核燃料 「多国間管理」も提言」
会川 晴之(ロンドン)(毎日新聞 2011年8月1日(月))
・「世界を読む 管理 10万年先まで フィンランドに建設中の最終処分場 透明手続きで実現 課題は危険性伝承 各国で計画難航」
(毎日新聞 2011年7月31日(日))
・「世界を読む 米「年内覚書締結を」 モンゴル核処分場計画 UAEも参加 安全保障前面に」
会川 晴之(オルキルト(フィンランド南西部))(毎日新聞 2011年7月31日(日))

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