民間軍事会社問題

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 戦争や紛争で民間軍事会社の活動が広がっている。世界中の紛争地帯で戦っている兵士の中には、民間軍事会社の兵士も多いという。問題はそうした兵士による事件が多発傾向にあるということだ。

 米国の民間軍事会社、ブラックウォーター(現ジー・サービシズ)が2007年、イラクで民間人17人を射殺した不祥事を起こした事件は記憶に新しい。軍事会社と雇い兵は、今や正規軍と兵士の支援だけでない。現役軍人が、雇い兵の仕事を請け負うこともある。08年、ドイツの特殊部隊員約30人が長い休暇を取り、リビアで最高指導者、カダフィ大佐の護衛隊を訓練していたという副業行為が露見している。

 今や軍事会社が軍を侵食する時代になった。冷戦後の1990年代、国家の消滅や軍隊の削減で元兵士が大量にあぶれ、地域紛争が頻発して雇い兵が急増。
 米英は、対テロ戦争の影響もあり、元軍幹部らの軍事会社が政権中枢との人脈をテコに、法律的な抜け穴と、政治的な後押しを巧みに利用し、大きな市場を開拓した。その影響は大きく、ブッシュ前政権2期目、ブラックウォーターの創設者、エリック・プリンス氏が作戦立案に参画したほどだ。後のオバマ政権がやめさせた。そうしたことから、世界の軍事会社の約8割が米英にあるという。
 ジュネーブ高等国際問題研究所の70か国を対象にした小型武器実態調査の11年版によると、小型武器が広がっている背景として、軍や警察の活動を下請けする民間会社の仕事が、この10年余りで3倍近くに拡大していることが挙げられる。

条約の抜け穴

 ただ、こうした雇い兵の問題に規制がないわけではない。
 ジュネーブ条約1追加議定書(1977年)で初めて違法化され、冷戦が終わった89年には国連総会で「雇い兵禁止条約」も採択された。しかし、発効したのは12年後、批准は未だに32か国にとどまっている。
 ただ、条約が定義する雇い兵は、「積極的な戦闘参加」を要件として、「受け身の立場で警備するだけ」という建前で契約を結ぶ軍事会社を規制できていないのが現実だ。

 伊藤計劃氏の小説「METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS」では、この雇い兵の問題が描かれていた。雇い兵が世界の紛争地帯で普通になり、雇い兵の質や量が今後の世界情勢を占う試金石になるという内容が盛り込まれていた。もちろん、この小説の物語はフィクションであるが、現実の民間軍事会社、雇い兵の問題を見るとそこまで、遠い世界ではないように感じてしまう。
 今後、兵器や武器もハイテク化されていくだろうが、そこにも大きな市場があり、さらには、人やモノなどを管理しやすい環境にもなってくる。そして、それだけ、争いが増える可能性もあるというわけだ。
 ジュネーブの国連欧州本部で5月末の1週間、人権理事会の雇い兵作業部会が開かれ、全加盟国が民間軍事会社を規制する条約作りを話し合ったという。市場経済と軍事は私たちの生活にも大きく関わってくるもので、土台となるものの一つだ。
 小説「METAL GEAR SOLID GUNS OF THE PATRIOTS」のような世界を阻止しないといけない。

【参考資料】

・「人権と外交 増殖する雇い兵 <中> 禁止条約は有名無実 軍事会社、軍を侵食 急成長「産業」に」
伊藤 智永(ジュネーブ)(毎日新聞 2011年8月26日(火))

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