自然エネルギーへの転換は可能か(2)

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 これまで自然エネルギーは注目されてはきたが、現実的な導入となると、コストの面やデメリットの面から普及がなかなか進まなかったのが現実だった。「いずれは本格的に導入しなければならない」と思いつつ、今に至っているわけだが、今回の震災で再度、自然エネルギーへの注目が高まっている。
 自然エネルギーのメリットは魅力的なものなのは確かである。自然のサイクルに適した範囲に近く、これまでの人工的な発電よりは環境には優しいものになるのだろう。しかし、そうした自然エネルギーだが、デメリットも存在する。そのデメリットが普及してこなかった理由にもなる。

風力や基盤にでもない背景

 これまで自然エネルギーの代名詞の一つにもなってきたのが「風力発電」だ。風の力を利用して発電するという発想から、多くの国々で行われてきた取り組みである。しかし、その風力にもデメリットはある。
 まず、風力発電の前提条件は、風任せであることだ。地形の条件も加え、風力発電のコストと利益のバランスが難しい。つまり、風が不安定になれば、電力は発電できない。風力をなかなか前面に出せない具体的な例もあげられる。風力発電の代替えのためには現在、火力発電が適している(原子力発電の場合もあるが)。現実に2006年に風力の発電量の予測を誤り、ドイツやイタリア、スペイン、オランダなど11カ国の地域で1,700万kW分の大停電が起きる寸前になったという。
 こうしたことから、火力発電を常時、アイドリングしておく必要があるため、ドイツやスペインでは、風力導入が進んだ00年から08年の間に、CO2排出量が増加することになった。
 この他にも風力発電は、景観を損なえるといったことや低周波の騒音で不眠になるといったデメリットもある。この低周波音による健康被害であるが、「ブーン」という低い唸り音を聞き続けることで、不眠症や頭痛、めまい、吐き気などを訴える住民が増え、日本各地で反対運動が起きており、世界的にも広がっている。
 さらに、日本では気候や地理的な要因も大きい。日本では風が強く吹くのは冬季のため、風力事業者の年間発電量の大半は冬季に集中しており、夏季はほとんど発電していないことが多いという。それでは冬季に蓄電池に貯める方法もあるが、現状ではコストの問題と技術的な問題で課題は大きい状況だ。
 これらのようなデメリットなどから、風力発電の普及にはまだ壁があることがわかる。日本風力発電協会の調査によると、2010年度に稼働した風力発電の設備能力(新規導入量)は26万kWと、3年ぶりに前年度実績を下回ったという。10年度の新規導入量は前年度比13%減で、ピークだった06年度に比べ約35%減の水準だそうだ。ちなみに日本の風力発電の設備能力は、10年度末で244万kWで、同協会は20年度までに1,100万kWに高める目標を掲げているが、現状は原発2基分程度にとどまっている。
 そして、震災でも大問題になっている原子力発電所。原発1基(100万kW)を代替するには2,000kWクラスの風車(稼働率24%)が1,770基必要だという。つまり、原発40基分であれば7万基。現在、日本には1,600基の風車があるが、その43倍に相当する。
 環境省の資産では、再生可能エネルギーの中で風力発電を普及できる余地が最も大きく、最大で原発40基分が見込める結果が出たとあるが、困難な課題だといえそうだ。

 風力発電だけでこうしたデメリットがあり、普及には課題が大きいことがわかる。他の自然エネルギーの場合はどうか。
・太陽光発電:天気任せで安定しないことや太陽光パネルの設置場所の問題。
・バイオマス(生物資源)発電:中長期期にはコスト面で実用化に苦戦。
・地熱発電:初期コストの高さと立地がネック。大規模な掘削に費用がかさむことと、源泉が枯れることを心配する温泉街の抵抗も根強い。さらに、火山地帯は国立公園になっていることが多く、法律的に開発が制限されること…などといったことから、地熱発電所は17カ所にとどまり、総電力に占める地熱発電量は0.3%(07年度)となっている。
などといったデメリットがあることがわかる。

 こうしたことから、自然エネルギーがすぐに実用化できるかといえば、課題がいくつかあり、それらをどうクリアしていくかがカギになるだろう。課題があるから、実用化は厳しいというのはわかるが、そうもいかない段階にきている。
 震災の影響で、福島原発は停止になり、これまで大黒柱だった発電所からの電力供給ができなくなった。福島原発だけではなく、他の原発にも(事故ではないが)停止問題は広がり、日本全国、世界にも広がり電力問題は大きくなっている。原発に代わる供給源を確立する必要が現実に出てきたわけだ。

(つづく)

【参考資料】

・「風力発電 伸び悩み 昨年度、新設3年ぶり減 補助金停止、経営厳しく」
(日本経済新聞 2011年6月17日(金))
・「「風力発電なら40基分の発電可能」は嘘っぱち 管首相肝煎り“エコの風”はこんなに怪しい」
清水 典之(フリーライター)(SAPIO 2011.6.15)
・「地熱発電、メタンハイドレートが有力! 「日本ならではの新エネルギー」最前線」
池上 彰(ジャーナリスト)(SAPIO 2011.6.15)

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