自然エネルギーへの転換は可能か(1)

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 世界の2010年のエネルギー起源の二酸化炭素(CO2)排出量が306億トンに達したという(国際エネルギー機関(IEA)による)。しかも、これまで最も多かった08年の293億トンを上回り、過去最大になった。CO2排出は現在、地球温暖化に深刻に影響しているとされ、今回の結果はその深刻さを後押しする形になった。ちなみに、10年の排出量のうち、石炭は44%、石油は36%、天然ガスは20%だという。

 3月11日の東日本大震災により福島第1原子力発電所事故が発生し、原発政策に暗雲をもたらした。その結果、菅直人首相は「再生可能エネルギーの比率を2020年代の早い時期までに20%に引き上げる」と打ち出した。
 すぐに原発を停止すれば大規模停電に陥ることになるため、当面はCO2の排出量の少ない天然ガス火力の発電量を増やし、原発は段階的に廃止。その一方で、再生可能エネルギーの比率を高めていく、というのが現実的な対策といえる。
 原発政策は世界では賛否両論に分かれる議論になっている。福島原発事故が起きた日本では、今後原発政策は厳しい展開になりそうだ。そうした中、原発からのエネルギー供給政策の転換が進められている。原発からの代替えとなるエネルギー源として、太陽光や風力といった再生可能エネルギー、石油や天然ガス、バイオといったものが挙げられている。

 代替え候補として、「地熱」、「揚水」、「小水力」、「太陽光」、「風力」、「バイオマス」、「洋上風力」、「天然ガス」、「シェールガス(天然ガス)」、「メタンハイドレート(天然ガス)」などが挙げられる。
・地熱発電:日本は火山国であり、地下には1,000℃ものマグマだまりで熱せられた高温の地下水が豊富に広がっている。しかも、日本の地熱資源量は、2,300万kW以上で、アメリカ、インドネシアに次いで世界第3位で、原発20基分に相当するという。
 地熱発電の仕組みは、高温の地下水から熱水や蒸気を取り出し、タービンを回して発電する。地下水はその後、再び地下に戻すため枯渇せず、天候や気象条件に左右されないため、安定した出力が見込まれ、CO2の排出が少ないというメリットがある。
・揚水発電:夜間などの余剰電力を利用してポンプで水を汲み上げ、昼間に水を流下させて発電する仕組みで、山がちで急流の多い日本の特性を活かせるというメリットがある。
・バイオマス発電:木くずや都市ごみ、被災地の瓦礫の廃材などを利用などから発電する。
・小水力発電:降水量世界6位で、農業用水路や一般河川の小さな落差でも発電でき、潜在力は高い。太陽光や風力に比べて稼働率が高く、安定供給ができる。
・太陽光発電:一戸建て住宅の屋根に太陽光パネルを張り付けて、自給自足で発電すれば、消費電力の約8割を賄えるという試算がある。
など、特に自然を生かした発電が注目度を高めている。

 これらのような自然エネルギーを利用した発電が注目されており、再生可能エネルギーに追い風となる試算も出ている。
 09年時の原発の総発電量は28万ギガワット時。たとえ既存の原発を2040年までに全廃したとしても、同水準の発電量は水力、地熱、風力、太陽光、バイオマスで十分賄えるという。その中心になるのは9万ギガワット時の風力、8万3,000ギガワット時の太陽光。そして、6万3,000ギガワット時の水力となるという。
 さらに、例えば太陽光発電の場合、3.5ギガワット級を一般住宅700万戸、10キロワット級を共同住宅またはオフィス200万戸に設置すれば、稼働率13.6%という低さでも8万8,000万ギガワット時の発電量が見込めるという。単純計算で09年時の原発17基分に相当する電力量になる。
 環境エネルギー政策研究所と千葉大学の調査によると、土地の自然条件に適したエネルギーを柔軟に組み合わせて導入することで、再生可能エネルギーだけで域内の民生用電力の需要を100%以上賄っている自治体が全国に57カ所あるという。

コストが課題に

 再生可能エネルギーの魅力は、これらのようなことからも魅力的だといえる。ただし、コスト面が課題になってもいる。
 再生可能エネルギーの普及にかかるコストだが、政府試算によると太陽光の発電コストは現在、1ギガワット時当たり46~49円。風力は9~14円。そして、原子力は5~6円。ただし、この原子力のコストにはちょっとした疑問も出てくる。発電設備の耐用年数や稼働率を仮定して算出したデータで、実績に基づいていないという指摘が出ている。つまり、稼働率の場合、政府試算では原子力80%と想定しているが、現実には02年あたりから設備トラブルやデータ改ざんなどによる停止が影響して、65%程度にとどまっている。これらのことから、1970~2007年の電力9社の有価証券報告書を基に発電単価を試算し、立地交付金など原発推進のための税金も加えると、1キロワット時当たり、原子力10.7円、火力9.9円、水力7.3円との結果が出たという。

 再生可能エネルギービジネスを本格的に強化しようとするドイツ。2022年までに国内にある17基の原発全てを停止し、自然エネルギーや天然ガスによる火力発電で代替する。
 そのドイツは、再生可能エネルギーの市場で大きな存在になろうとしている。ドイツの環境保護製品シェアは06年に世界一になった。原子力産業はほとんど成長していないが、自然エネルギーは毎年20%以上成長している。
 自然エネルギー産業が強くなり、国外の原油や天然ガスへの依存度を減らすことができ、環境にも政治にもメリットが大きい。

 今後、環境にも政治にも大きく関わってくる自然エネルギー。自然エネルギーは大きなメリットがあり、注目されている。
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで、2050年の世界のエネルギー消費量の最大77%を賄える可能性があるという。IPCCの報告書は、同エネルギーの現状や今後の導入予測などを164通りの科学的な見通し(シナリオ)に基づいて分析。08年時点では世界の1次エネルギー供給の13%だが、供給可能性の97%は未利用とした。また、50年までに二酸化炭素換算で最大5,600億トンもの温室効果ガス削減につながる可能性があり、対策を取らない場合に比べ、排出量は3分の2に減量できるとした。
 これらのことから、再生可能エネルギーの温暖化対策への貢献度は、原発などより大きいと指摘。
 今後の再生可能エネルギーの開発への注目度が高まっていくだろう。

(つづく)

【参考資料】

・「世界の排出量 再び増加 エネルギー起源のCO2 IEAE調べ 10年、過去最大」
古谷 茂久(パリ)(日本経済新聞 2011年5月31日夕刊(火))
・「脱原発のリアルコスト」
中村 美鈴,長岡 義博(本誌記者)(Newsweek 2011.6.15)
・「地熱発電、メタンハイドレートが有力! 「日本ならではの新エネルギー」最前線」
池上 彰(ジャーナリスト)(SAPIO 2011.6.15)
・「IPCC報告書 世界消費量の77% 再生可能エネルギーで 2050年に 164通りのシナリオ分析」
江口 一(毎日新聞 2011年5月10日(火))
・「ドイツ脱原発の裏に世界制覇の皮算用」
千葉 香代子(本誌記者)(Newsweek 2011.6.22)

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