原子力発電というエネルギーの進路(中)

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 EU(欧州連合)だけでも、原子力発電政策の方針が分かれた。脱原発にカジを切ったドイツやスイスなど、原発継続のフランスや英国など。どちらの立場でも今後の原発政策の進め方に「安全対策」というテーマが重要になってくる。
 つまり、脱原発は廃炉やそれに伴う安全対策、継続は使用済み核燃料の処理や運転の安全対策など、どちらの方針にも共通する項目が出てくる。そして、東日本大震災による福島原発事故をきっかけとして、安全対策に動くことになった。

 EUは域内の原発143基の全てについて、安全対策を行うことになった。地震や洪水の他、高温、豪雨、飛行機の墜落、付近のタンカーの爆発まで、「テロに比肩する損傷」を含めて検査を行う。検査は2012年4月末に終了し、その結果を発表するとしている。
 主な検査内容は、
・マグニチュード6以上の地震が起こったことのある地域にある原発には、それ以上の地震への耐震を求める
・複合的な要素で、原発の冷却機能が失われる事態に対応できるか
・テロによって起こったかどうかに関係なく、飛行機の衝突に関する格納容器の耐性をみる
・飛行機が炎上した場合や付近のガスタンクが爆発した場合などの耐性を検査する
といった内容を調べる。要するに、
1:原子炉の冷却機能が損なわれる
2:使用済み核燃料貯蔵プールの冷却機能が損なわれる
3:燃料棒の格納容器が壊れる
という3つのケースを想定した対応策を各原発が要しているかを調べるものだ。
 検査は各原発の運営会社が実施し、次に各国の当局が行ってから、他の加盟国の専門家がチェックする流れ。検査結果で問題があれば、加盟国が対処法を決める。もし、閉鎖しない場合は、EUが説明を求めるという。
 EU域内の原子力発電所の数は、
・フランス:58
・英国:19
・ドイツ:17
・スウェーデン:10
・スペイン:8
・ベルギー:7
・チェコ:6
・スロバキア:4
・ハンガリー:4
・フィンランド:4
・ブルガリア:2
・ルーマニア:2
・オランダ:1
・スロベニア:1
といった状況だ。

低線量放射線の内部被曝

 EUが脱原発・維持と固まっていなくても、安全対策に動き出したことは重要なことだ。これまで原発のリスクに対し様々な議論がされてきたが、それでも福島原発のように甚大な問題が発生してしまった。原発の被害が恐いのは被爆という生活にとって、深刻な問題が出るからだ。
 被爆者の初期症状として、まず下痢が起こり、それから嘔吐、鼻血、さらには、口内やまぶたの粘膜などから出血することもあるという。これだけではなく、「ぶらぶら病」という症状もある。「ぶらぶら病」というのは、だるく、動くことすら億劫になるという症状。食欲はあるがだるいという。それは30分も動いたり、働いたりすることが難しいという。最近の研究では、放射線が細胞内のミトコンドリアに影響を与えている、と考えが出ている。ミトコンドリアは細胞の活動に必要なエネルギーを生み出しており、筋肉を支えるタンパク質もそこにある。そこへ放射線が影響を及ぼすことで、正しく作用しない筋肉が部分的にでき、すぐ疲労し強いだるさを感じるようになるのでは、という説が出てきた。
 放射性物質による被爆が問題化しているが、その中でも内部被爆が人間に与える問題で非常に深刻な問題に挙げられている。なぜなら、体内に取り込まれた放射性物質は、癌や白血病、心筋梗塞など、様々な「晩発障害」を引き起こす可能性があるからだ。「晩発」というのは、時間が経ってから体に異変をもたらすものだ。
 そして、本当に危険なのが、低線量放射線の内部被曝だという。原爆の放射線の影響は大きく分けて2つある。
1:爆発というかたちで、放射線が猛烈な力とスピードで人体を貫通。ただし、放射線は全部、通り抜けるため体内には残らない。ただし、貫通時の作用で、ある種の影響はあるかもしれない
2:癌や白血病などの晩発性の障害を起こす、アルファ線やベータ線を放出し続ける低線量放射線の内部被曝
 2が与える影響は、ウランやプルトニウムの分子が細胞の中に入り、命を作る新陳代謝を壊す。詳しく言うと、放射性分子は体液の中で酸素分子に衝突し、それを活性酸素に変える。この活性酸素が悪者で細胞膜を破壊して、放射性分子を細胞内に侵入させる。この細胞内では酸素や水素やカルシウムなどの元素がお互いの持つエネルギーをやりとりし、タンパク質や糖や脂肪を作り、生きる力を作っている。その時にやり取りされるエネルギーの量は、どの元素も100電子ボルト以下。そこに、侵入してきた放射性分子が、270万電子ボルトというケタ違いのエネルギーで、細胞内の生化学反応をめちゃくちゃにするという。
 さらに、こんな影響もあるという。被爆者は早く歳を取る性質があるという。老化が早く、動脈硬化など、老人になって出る病気が30代で出るという。しかも、老化が進むのか、どこまでが放射線の影響なのかは、まだわかっていない。

 福島原発事故は世界中に影響を与え、世界各国で原発施設の安全対策の動きが出ている。EUだけではなく、アメリカでも、韓国でも、そして、日本でも安全対策が急務に進められることになった。
 その背景には経済もあるだろうが、私たち人間や生命体などに大きな深刻な問題をもたらす、放射性物質による被爆問題があるからこそ、対策を急がなければならないことがあった。
 放射性物質は目に見えないことからも、多くの恐怖を抱かせてしまう。そんな恐怖を実は、広島や長崎、そして、チェルノブイリ、スリーマイル島で経験していたが、悲しいことに福島で発生することになってしまった。

つづく

【参考資料】

・「EU、原発の安全性検査 福島並みの災害想定 「耐久」「冷却」など把握 12月に結果報告」
瀬能 繁(ブリュッセル)(日本経済新聞 2011年5月7日(土))
・「EU、原発検査厳格化 飛行機墜落も想定」
斎藤 義彦(ブリュッセル)(毎日新聞 2011年5月26日(木))
・「「最初は下痢、ぶらぶら病。 出血そして老化へ…」」
(週刊文春 (2011)5.26)

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