米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (3)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 バラク・オバマ次期大統領が、ここまでの躍進した理由は様々にあるだろうが、なんといっても、「ウェブ・オブ・パートナーシップス」(*1)が重要な要素になった。これは「クモの巣状の協調関係(*1)という。それは、「あらゆる国の指導者と喜んで会う。友人とも、敵とも」(*1)ということだ。オバマ氏が公約に掲げた各国との対話路線をイメージで表したのが、「クモの巣を広げる外交」(*1)であり、世界と話し合って問題を解決していこうとする姿勢につながる。
 そして、オバマ氏は選挙戦で躍進を遂げたキーワードが、インターネットを使った口コミ。その効果を今後も活用していくようだ。
 オバマ氏は、史上初のテクノロジー担当の高官ポストを創設するほか、メールやネット上に掲載するビデオ映像を国民との「対話」に最大限活用する方針で、「顔の見える政府」を目標に掲げている。高官ポストの役割は、ネット上に関する政府の戦略や公的間の設備拡充、セキュリティーの強化などを指揮(*2)するという。
 具体的には、「オバマ新政権」は動画共有サイト「ユーチューブ」のビデオなどを活用することで、「顔の見える政府を目標にしている」という。その手始めとして、「政権移行チーム」は14日、大統領就任後にオバマ氏が始める米国民向けの大統領演説(毎週土曜放送、約4分)をビデオに録画。ホワイトハウスのウェブサイトに公開する方針(*2)だという。これは、民主党のフランクリン・ルーズベルト大統領(1933~45年)が世界恐慌後の混乱の中で始めたラジオ演説を「顔の見える」メッセージに変える初の試みで、注目を集めている(*2)という。さらに、ビデオやメールを駆使し、国民と質疑を交わす「双方向」の対話システムも構築する(*2)。
 オバマ氏が政権移行に向けて始めた専用サイト「チェンジ・ドット・ゴブ」(http://www.change.go.v/)では、政権移行チーム幹部が今後の方針などを語るビデオが掲示されている。新政権への「アドバイス」コーナーもあり、早くも多数の市民が意見や希望をメールで寄せている(*2)という。

 そんなオバマ氏が「変革」を掲げる上での課題として、
イラク、アフガニスタンでの戦争(*3)
地球温暖化対策(*3)
金融危機対策(*3)
新エネルギー問題(*3)
同盟関係の修復(*3)
などを位置づけており、外交は国際協調路線、内政では超党派路線を基軸に政権運営にあたる(*3)もようだ。

 オバマ氏は、民主主義や希望といった「理念のソフトパワー」を再生、世界と和解することを目指している。協調路線には「敵との直接対話」が含まれる。核開発を進めるイランとの対話にも積極的で、オバマ陣営の中東政策スタッフ、デニス・ロス氏は「イラン最高指導者ハネメイ師との接触がカギ」だと語る。それは、同師が核開発の決定権を持つ人物と見ているから(*4)。
 この直接対話路線は、核問題を抱える北朝鮮に対しても進める意向(*4)。
 さらに、具体的なものとして、オバマ氏は09年1月の大統領就任後16ヵ月以内にイラクから戦闘部隊を撤退し、主戦場をアフガニスタンにシフトさせる方針。アフガンについては北大西洋条約機構(NATO)にも積極貢献を求める(*4)という。
 環境対策に関する公約では、米国の温室効果ガス排出量を「50年までに1990年比で80%削減する」という意欲的な長期目標を掲げた。京都議定書を含む国連気候変動枠組み条約を重視し、その下で「建設的な役割を果たす」とも表明(*5)。
 国内の状況に関して、22日、オバマ氏は全米向けラジオで演説し、2011年1月までに250万人の雇用を確保・創出することを柱とした経済対策の立案を政権移行チームに指示したと発表。09年1月の大統領就任後、予算措置した法案を策定し、早期の成立を図る方針。オバマ氏は演説で「全米規模の雇用活性化を促すきっかけとなる」と強調。道路や学校、エネルギー関連施設の整備など大規模公共事業の実施を表明(*6)。

 そんなオバマ氏のこれからの方針であるが、果たしてうまくいくのだろうか。
 8年前にジョージ・W・ブッシュが大統領に就任したとき、世界はおおむね平和で、米軍には余裕があった。原油は1バレル=23ドルで、米経済は年3%超のペースで成長。為替相場は1ドル=116円で、米国債の発行残高は6兆ドルを下回り、連邦政府は大幅な財政黒字。9・11テロによってアメリカは大きな損害を受けたが、同情した世界はアメリカと協調路線を強めた(*7)。
 新大統領は、イラクとアフガニスタンにおける戦争、疲弊した軍隊、そして世界的な対テロ戦争を引き継ぐ。原油価格は最高で1バレル=150ドルにまで達し、ドル安が進行し(100円を切っている)、世界各地で反米感情が高まっている。財政赤字は大統領就任の年に1兆ドルに達しかねない。連邦政府の債務は約10兆ドルにふくらんでいる(*7)。
 アフガニスタン情勢は、イスラム原理主義の反政府勢力タリバンが再び勢力絵を拡大し、治安は悪化し、麻薬と腐敗が横行している。米軍とNATO(北大西洋条約機構)軍の増派が必要だが、現地でのナショナリズムの高まりを考えると、増派は暫定的なものにしないといけない(*7)。
 最も力を入れるべきは国軍と警察の強化。アフガニスタンの動向に利害関係をもつイラン、パキスタン、インド、中国、ロシア、NATOとの定期協議も必要(*7)。
 イラクの現状はといえば、米イラク両政府による地位協定交渉では11年末までの撤退とされており、前提となる治安部隊の育成は訓練の主眼はゲリラ戦への対応に置かれ、戦車や装甲車、重火器などの装備も欠いたまま。米軍に依存している兵たん業務の確立には「3~4年が必要」とされる(*8)。
 ロシアの動きも気になる。米国によるMD施設の東欧配備には新型ミサイル配備で対抗することを表明しており、8月のグルジア紛争や世界的な金融危機の責任も米国にあると指摘(*9)している。

 アメリカ国内を見ると、人種問題となった黒人の問題。黒人の社会進出はまだ途上であり、大手企業の経営者は少なく、失業率は白人の2倍以上(*10)というのが現状だ。
 アメリカの人口比率は、白人66%、ヒスパニック15%、黒人13%、アジア系5%、白人の割合は下がり続けており(*11)、人種の多様性を残す「サラダボウル」化の傾向を強める。国勢調査局の予測では白人人口は2042年に5割を切り、ヒスパニックや黒人など非白人層が多数派に転じる見通し(*12)だという。2050年までに白人比率で5割を切り、少数派に転じる(*13)という見方もある。

 バラク・オバマ次期大統領の思い描く、アメリカの姿、世界の姿は、オバマ氏の思いと戦略が、どこまで功を奏すのだろう。
オバマ氏のリーダーシップで取り組んでいく策は、問題をどこまで変革させていくのだろう。各国の立場、世界の人々の思いと重なり合い、協力していけるだろうか。それと同時に、アメリカ国民自体が変革を成し遂げるために協力できるだろうか。

つづく

<参考資料>
*1 日本経済新聞 2008年11月9日(日)『オバマの米国と世界 下 「クモの巣」の外交 同盟強化、日本に試練』
*2  毎日新聞 2008年11月16日(日)『オバマのアメリカ 新政権への移行 ネット駆使し国民対話 「顔の見える政府」目指す』
*3 毎日新聞 2008年11月6日(木)『内政・外交を大転換 米大統領選 オバマ氏勝利宣言 「この国の真の力は武力ではなく、民主主義に由来する」』
*4 毎日新聞 2008年11月6日(木)『米大統領にオバマ氏 変化の期待一身に 多難な「対話路線」 「強い米国」との相克 課題』
*5 毎日新聞 2008年11月6日(木)『温暖化対策も転換に期待感』
*6 毎日新聞 2008年11月24日(月)『雇用創出促せ! オバマ氏「250万人分増やす」』
*7 Newsweek 2008.11.12 『第44代大統領が直面する世界』
*8 毎日新聞 2008年11月7日(金)『イラク 米軍早期撤退に懸念 オバマ氏公約 治安に不安も』
*9 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『米新大統領に期待と警戒 ロシア、早くも揺さぶり ミサイル配備表明 対米批判明確に』
*10 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『米国社会 成熟 初の黒人大統領 移民急増が背景に』
*11 毎日新聞 2008年11月8日(土)『西川恵のGLOBALEYE オバマ氏と米社会の変容』
*12 毎日新聞 2008年11月6日(木)『オバマのアメリカ 変革への選択 草の根から頂点へ 白人票分け合う 人種問題 根は深く』
*13 毎日新聞 2008年11月7日(金)『記者の目 人種の壁に風穴あけたオバマ氏 「夢想家」ではなく「開拓者」 強固な精神で苦難克服』

<参考記事>

・「オバマ大統領のリーダーシップやいかに」/言語分析未来予測

・「勝手にアメリカ大統領候補者を分析」/アメリカ記者修業奮闘記

・「オバマ大統領でどうなるんだろう?」/ちょっと気になるキーワードとニュース

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)