インターネットと体制From中国(下)

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 世界における中国の存在が高まっている中、中国発のマスコミの存在も大きくなっている。これまでの中国はニュースを抑え込むことで情報統制を行ってきた。しかし、今ではニュースを圧倒すること、市場に独自の情報をあふれさせることが目的になっているようだ。

 世界の大半の報道機関は支局を閉鎖し、ジャーナリストを解雇している。そんな中、「紅色中華通信社」という中国共産党軍の宣伝機関が前身の新華社は、採算を気にせず、中国の国営工場が安物の玩具や安物衣料でやってきたのと同じことをニュースでできる。
 数万ドルの購読料を払えば新華社の記事は読み放題(AP通信やロイター通信やAFP通信なら10万ドルはする)。しかも、コンテンツも機材もテクニカルサポートも一切合切、無料で提供する援助プログラムまである。これは、中東やアフリカ、途上国では魅力的だろう。こうした地域では新聞の売り上げが伸び、人々は欧米以外の視点に飢えている。
 新華社のニュース配信は視聴率調査会社の対象になっていない地域で行われているため、視聴者数はつかみにくいが、キューバ、モンゴル、マレーシア、ベトナム、トルコ、ナイジェリア、ジンバブエの国営報道機関とコンテンツ配信契約を結び、アフリカとアジアの大半で最も多くスタッフを抱える主要メディアとなっている。

新華社の成功

 約80年の歴史を誇る新華社は、この1年間に英語による国外向けテレビの24時間放送を開始し、ニューヨークのタイムズスクエアにある高層ビルに新しいオフィスを構え、取材活動を拡大するという(国外支局を120から200に、ジャーナリストを6,000人に増やすという)。さらに、欧米メディアに対抗し、ニュース、漫画、金融情報、娯楽番組を24時間楽しめるiPhone用アプリケーションもリリースしている。しかも、その費用は推定数十億ドルだそうだ。
 しかし、新華社の「ニュース」は何より死角の多さで有名だという。典型的な新華社の文章は、わざと不正確にしていることも多いそうだ。
 それでも、中国に無関係のニュースに関しては情報操作を減らしていることがプラスになっており、AFPと報道写真通信社のEPA通信は、新華社の映像や画像を国外に配信することになったそうだ。

 新華社はイメージチェンジに取り組み、ロンドンに初の書店をオープンし、ユニセフ(国連児童基金)と共同で子供の幸福と健康的な成長を願うリレー報道を世界6大陸で行い、ヨーロッパ各地に公共の液晶テレビを何十台も設置して自社のニュースを流した。
 こういったプラスのイメージ戦略も行って、新華社の存在は高まっている。今や中国の視点はアルジャジーラやFOXニュースやMSNBCと並ぶ選択肢の1つになっているのかもしれない。
 しかし、それは国外で国内では果たしてどうなのだろう。

 中国のマスコミの存在が高まっているのと同時に、中国のインターネットの存在も高まっている。
 問題は「サイバー攻撃」だ。サイバー攻撃はネットを通じ他人のサイトを攻撃するといったこと。コンピュータによる安全管理が一般化した現在、政府機関や企業へのサイバー攻撃は、武力行使以上に被害を受けるものになっている。
 現に、中国のハッカー集団「中国紅客連盟」が日本の政府機関へのサイバー攻撃を呼び掛け、各地で異変が相次ぎ、防衛省、警察庁、総務省のホームページへのアクセスが難しくなったことがあった。
 ネットの存在が高まる中、中国国内のネットの存在も高まっている証拠だろう。

 ネットが一つのきっかけで、抗議デモへの発展を促した、中東・北アフリカの抗議デモ。中国当局も神経をとがらせている背景に、ネットの存在があるのだろう。
 まだまだネット規制の強化が激しい中国。そのネットでの活動は徐々に拡大している模様だ。

(おわり)

<参考資料>

・「「官製メディア」新華社の躍進」
アイザック・ストーン・フィッシュ(北京支局),トニー・ダコプル(Newsweek 2010.9.22)
・「アジア サバイバル 転換期の安保 2010 サイバー攻撃 中国の影 武力しのぐ脅威に」
「転換期の安保」取材班(毎日新聞 2010年12月24日(金))

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