エネルギーと原子力発電所と安全(6)

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 原子力発電所の脅威は事故による爆発といったことだけではない。核爆弾への技術が拡散したり、原発に利用される原料や排出される使用済み核燃料などの拡散、それによる兵器につながる…といった問題も考えられる。

 そうした問題の中、核弾頭の安全性維持に取り組む施設の共同利用などといった取り組みが進められている。
 昨年11月2日、キャメロン英首相とサルコジ仏大統領は核弾頭の安全性に取り組む施設の共同利用など軍事面での協力強化を目指す条約を締結した。通常の軍事部門と核兵器に関わる二つの条約に調印。
 核兵器関連では、弾頭の安全性・性能を検査する技術を開発する研究施設を英国に置き、両国科学者による研究協力を進める予定。一方のフランスには、実験を行う施設を置き、核弾頭の安全性を検証、臨界前核実験を実施する能力も備える。両国が共有するというもの。核弾頭と秘密情報の共有はせず、独立性は保つという。

初の「核燃料バンク」

 さらに同年12月2日には、国際原子力機関(IAEA)が、IAEA自体が低濃縮ウランを管理、供給する初の「核燃料バンク」を協議。米、欧州連合(EU)、ロシアなどの連盟案は、IAEA核バンクの目的について、加盟国への核燃料供給が途絶し、産業市場での購入も不可能な場合に備えた「最後の手段」と定義。加盟国はバンクから供給を受けても、独自に核開発を行う権利を放棄する必要はない。
 流れとしては、加盟国から要請があればIAEA事務局長が供給条件を満たしているかを評価し、加盟国との間で供給量や価格などを決定し、理事会が事務局長の決定を承認する。
 エルバラダイ前IAEA事務局長時代の構想は、ウラン濃縮から使用済み燃料の再処理までを、多国間で管理するもので、イランや核技術の独自開発を目指す非同盟諸国などから反発を招いていた。新しい案は不拡散色を弱め、燃料供給保証を強調した。

 さらに、ロシアの国営原子力企業ロスアトムは、原子力発電に使う核燃料を利用国に提供する「核燃料バンク」を東部アンガルスクに設立。IAEAの管理下で、核燃料の製造技術を持たない新興国に提供する。核燃料バンクの設立は世界で初めて。
 原発の燃料となる低濃縮ウランを貯蔵し、購入を希望する国にIAEAを通して販売。ロスアトムによると、貯蔵施設で120tのウランを貯蔵するという。

 核拡散の問題に対し、世界で核を管理しようとする対策が進められている。原発利用には核兵器にも関係してくる。そのため、原発は安全保障から身近な生活まで幅広く、私たちに関係してくるのだ。
 原発による環境への影響、原発による大惨事、原発による核拡散…といったことは、どれも軽く見てはいけない。これからの原発はこういった問題と恩恵とが入り乱れるだろう。

(おわり)

<参考資料>

・「英仏が核施設共有 緊縮財政下 影響力確保図る」
笠原 敏彦(ロンドン)(毎日新聞 2010年11月3日(水))
・「英仏が軍事協力拡大 首脳会談で条約調印 核情報を一部共有」
岐部 秀光(ロンドン)(日本経済新聞 2010年11月3日(水))
・「「核バンク」設立協議へ IAEA燃料供給保障主眼に」
樋口 直樹(ウィーン)(毎日新聞 2010年12月2日(木))
・「ロシアが核燃料バンク 原発向け 低濃縮ウラン提供」
金子 夏樹(モスクワ)(日本経済新聞 2010年12月3日(金))

<ピックアップ記事>

・「イランの原子力発電所とロシアの戦略」/切り捨て御免

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