エネルギーと原子力発電所と安全(3)

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 世界で原子力発電への注目度が高まり、原発推進へと加速している。
 そんな中、日本政府もこの流れに遅れないよう、原発推進への流れを強めている。2010年6月末に、核不拡散条約(NPT)に入らないまま核武装したインドとの原子力協定締結に向けて交渉を開始した。さらに、同年6月、福井県でAPEC(アジア太平洋経済協力)エネルギー大臣会合が開催され、日本が強く求めて、APECとして原発推進を初めて明記する「福井宣言」を採択した。

 こうした原発推進への強い流れの中、この「福井宣言」への反発の声も上がった。11か国25団体で「ノーニュークス・アジアフォーラム共同声明」だ。原発は気候変動の効果的な解決策ではなく、それどころか再生可能エネルギーの拡大やエネルギー効率の向上、省エネなどによって行われるべき地球温暖化問題の解決を妨げてしまうと反発。
 これらの原発反対の声は日本だけではない。インドネシアで1990年だ、初のムリア原発(ジャワ島中部)が計画された。97年に原子力法が制定されたが、原発建設は延期となり、98年スハルト軍事独裁が崩壊し、原発計画も立ち消えとなった。2007年に原発建設計画が復活したが、現地の住民たちが大規模な抗議行動を展開して計画は中止になった。
 台湾では1990年代民主化運動が盛り上がり、第四原発建設問題が最大の政治課題となっていた。毎年1万人規模の原発反対デモ(95年の第3回NNAFでは3万人)が行われ、現地・貢寮郷での94年の住民投票でも96%が原発建設に反対した。
 フィリピンでは2009年、バタアン原発(マルコス独裁時代に建設されたが、「ピープルズパワー(人民の力)」で運転前に凍結を復活させようという動きに対して、現地を中心とした広範な人々が立ち上がり、これを止めた。タイでも原発建設計画に対して、1990年代から反原発運動が粘り強く続けられている。

 2006年、世界で原子力によって生産されているエネルギーは、全エネルギー消費量の約2.4%に過ぎず、日本での原子力による電力供給量は約30%である。フランスでは78%の電力が原子力から供給されているが、全体のエネルギー消費量から見れば14%に過ぎず、世界の電気供給量から見ても原子力は15%に過ぎない。ちなみに再生可能エネルギーは17%に達している。
 原子力は今日、巨額の建設費がかかる割には効率が良くない。また、使い終わった核燃料の確実に安心できる処理方法がいまだにないのが現状で、将来、廃炉に伴う経費は数千億ユーロという莫大なものだ。さらに、原子力技術は民間利用も軍事利用も基本は変わらないため、原発が増えれば核拡散を防止することはできない。

大きな不安材料「地震」

 そして、大きな懸念材料になるのが自然災害だ。おりしも、3月11日に発生した東に本題震災では、未曾有の被害が出た。この地震により、東海大地震の脅威が今後、起こる可能性が高くなったという。
 地球の表面を覆っているプレートは絶えず動いており、このプレート構造地質学(プレートテクトニクス)によって説明される地球の運動により、起こる現象が地震だ。日本は4年前に新潟県中越沖地震が起こり、3年前に岩手・宮城内陸地震、2年前には静岡県で駿河湾地震が起こった。これは地震としては中地震から小地震レベル。
 地質学者たちによると、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)から、日本は地震の活動期に入り、この活動期は数十年続くという。今後30年間に次の東海大地震が起こる確率は、政府の地震調査研究推進本部によれば87%という。
 東海大地震の揺れの大きさは、マグニチュード8.0から8.5と予測されており、エネルギーに換算すると、2009年8月11日に同じ震源域で起こった駿河湾地震の178倍から1,000倍である。しかも、阪神・淡路大震災を起こした地震の揺れが、たった10数秒で終わったのに対して、マグニチュード8規模の東海大地震では、それをはるかにしのぐ揺れが1~2分間続くことになる。
 この東海大地震に大きな影響を及ぼすだろうというのが、日本最大の原子炉である浜岡原発だ。浜岡原発は日本列島のちょうどド真ん中にあたり、東に巨大な首都圏があり、西に中部経済圏と関西経済圏が、いずれも至近距離にある。つまり、日本の人口の実に半分以上は、これらの経済圏に住んでいるおり、浜岡原発の影響はこうしたことからも大きな存在だ。
 地震によって原子炉のウランが溶け落ちるメルトダウンと呼ばれる事故が起きれば、放出される放射能の雲は、毎秒2mのそよ風でも、3日間で500km進むのだから、これらの日本の中枢部は、即刻全滅することになるだろう。

 原発の事故は大きな懸念材料ではあるが、同時に自然災害という身近な問題が原発への懸念を大きくしている。

(つづく)

<参考資料>

・「現場から 「日の丸」原発へのアジアへの輸出を許さない」
佐藤 大介(DAYS JAPAN 2010.9)
・「現場から 原子力が本当に救済策なのか?」
コリン・コバヤシ(DAYS JAPAN 2009.11)
・「特集 浜岡原発 爆発は防げるか」
広瀬 隆(DAYS JAPAN 2011.1)

<ピックアップ記事>

・「最近の大地震は核施設密集地帯に起こるのか?」/真実は何?

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