エネルギーと原子力発電所と安全(1)

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 環境を考える上で、電力の消費は大きな要因の一つだ。私たちの生活の上で、様々な電化製品に用いられている。携帯電話、テレビやパソコンといったものまで、ありとあらゆるものが電気を消費している。
 現在、生活に欠かせないモノになった、電気。その電気は発電所から供給されている。発電所で電気を生産し、その電気を私たちが消費しているわけだ。電気社会といってもよい現在で、その電気の需要は年々、高まっている。需要に対して供給があり、供給しないと生活が成り立たなくなる。まさに、なくてはならない存在だろう。
 その電気だが、電気を生産する手段はいくつかある。火力発電や水力発電、風力発電や太陽光発電といったものだ。現在、環境面で風力発電や太陽光発電が注目されているが、ここ最近、最も注目度が高いのが、原子力発電だ。

 注目度が高くなった原子力発電だが現在、世界で原子力発電利用への動きが加速している。建設中の施設だけで日本の既存原発(54基、出力合計4,682万キロワット)に匹敵する規模に拡大しているという。その背景には、化石燃料の価格高止まりや環境問題対応への機運の高まりを背景に、世界で原発需要が高まる中、成長の著しい国が建設を急いでいるためだ。
 国際原子力機関(IAEA)の昨年3月時点のデータによると、世界で現在、建設中の原発は56基で、合計出力が5,185万キロワットに達する。そのうち、中国が21基で2,092万キロワット。ロシアは9基で689万キロワット、韓国は6基で652万キロワット、インドは5基で270万キロワットといった具合だ。
 ちなみに、2008年時点で建設中の原発は、世界で44基で3,898万キロワット。そのうち中国が11基で1,022万キロワットだった。

日本の原子力を売込みが加速。強みは人材育成か

 そうした中、日本政府は原発の売り込みを強化している。世界では原発の建設計画が目白押しで、そこに日本やフランス、ロシアなどの「原発先進国」が目をつけたわけだ。
 東南アジアや中東など、新しく原発を導入する国に照準をあわせ、相次ぎ「協力文書」を締結。クウェートでも原子力協力文書に調印した。20~21年に原発初号基を造るクウェートに対し、専門人材の育成や技術指導などで側面する内容。
 日本が結んだ原子力協力文書はクウェートで10か国目。そのうち7カ国は09年以降に結んだもの。スタート台となる協力文書の締結は今後も増える見通しで、タイとは既に協力文書を結ぶ方向で一致。日本は既に米英仏など6カ国や欧州連合(EU)と協力を結んでいる。さらに、サウジアラビヤは世界有数の産油国だが、人口増加で電力需要が伸びており、原油資源が懸念され、発電過程で温室効果ガスを排出しない原発に注目。そのサウジにも売り込みをかけている。日本政府はインフラ(社会資本)輸出を成長戦略に掲げ、相手国に受注獲得に向けた意欲を示すとともに、政府が主導して原子力産業の海外進出を後押しする格好だ。
 昨年にはベトナムで受注に成功。ベトナムでは30年までに13基の建設を計画しており、ロシアが受注した第1期工事の2基は14年に着工、20年稼働の予定。日本はそれに続く第2基工事の2基を受注した。

 こうした原発建設の需要に対し、新規導入国の多くは技術だけでなく安全を確保する人材も不足しており、日本は人材育成まで含めた技術供与で受注競争をリードしようと狙っている。なぜなら、新規導入国は原発の安全対策を支える人材不足に直面しており、原子力安全のための体制整備が追い付かない状況であるからだ。つまり、人材育成が大きな課題になっている。
 ベトナムでの原発建設では、急ピッチで進む計画に対応するため、規制当局は安全評価や規制の基準作り、法整備作業に追われている。職員は5年前の10倍近い約80人に増えたが、第1期工事が始まる14年までに、さらに200人の増員が必要だという。それに、先進国と違い、必要な能力や資格を持った新しいスタッフの採用は非常に難しい。
 日本原子力研究開発機構によると、20年までに2基の原発新設を計画しているタイでは、今後3年間に技術開発、規制、広報などで計340人の人材育成を予定する。マレーシアでは21年の第1号基の運転開始までに、研究分野で500人、原発の運転・保守要員として700人の要請が必要だと試算している。同様に新規導入を検討しているバングラデシュやカザフスタンなどでは、人材育成計画すら未整備という現状だ。

 人材育成が大きなカギを握っているのは、これまで最悪の事故は(原発の)発起動時に起きていることがあげられるからだ。新規建設時には課題が多く、全ての事業者が基本的な教訓を共有することが重要である。ノウハウの蓄積がない新規導入国の安全管理に懸念が示されるのだ。それに、原発の新規導入国で重大事故が発生すれば、周辺国に影響が及ぶだけではなく、原発を輸出した国にとってもダメージが大きい。そこで、日本は技術に加え、「人材育成支援」をセールスポイントの一つに据える。
 そうしたことを踏まえ、原子炉の理論や放射線の安全な取扱いなど技術者としての基礎知識をアジアに広めことを目的に昨年夏、原子力機構はアジア7か国から18人を迎えて原子炉工学の研修を実施。こうした知識なしに原子炉の運転をすれば、事故やトラブル対応で非常に大きな問題が生じる。
 しかし、安全に対する考え方は各国で違い、日本のやり方がそのまま通用するとは限らない。そのため、相手国に合った人材育成プログラムを考えるのが課題になる。

高速増殖炉もんじゅの課題

 原発への注目から日本も原発を世界に支援していく方向にあるが、課題の一つに高速増殖炉もんじゅがある。
 高速増殖炉は核分裂反応で、運転しながら核燃料を増やせる特徴を持っているが、世界でも高速増殖炉の実用例はない。高速増殖炉の技術は米仏露など海外が先行してきたが、制御が難しく、計画を中断した炉は多く、仏は世界初の原子炉「スーパーフェニックス」を1998年に閉鎖した。
 高速増殖炉はウランを燃料とする通常の原発とは異なり、原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムを燃やして発電する。この時、発電で消費した以上のプルトニウムを生み出し、燃料を増殖できる。この高速増殖炉は、原発の使用済み核燃料を再処理して改めて原発で使う「プルサーマル発電」とともに、国の核燃料サイクル政策の中核と位置付けられており、ウラン資源の有効利用と放射性廃棄物の低減につながるというわけだ。
 もんじゅは高速増殖炉の試験段階の「原子炉」で、実現すれば核燃料の輸入が不要になると試算し、100年ほどで枯渇するとされるウラン資源がなくても自活可能になるという。

 しかし、91年に完成したもんじゅは95年12月、冷却材のナトリウム漏れ事故で試験運転を中断。その後も、検出器の不具合を見逃すなどのトラブルが続発。計画は4回延期され、原子力機構は信頼を失った。
 燃料のプルトニウムを取り出すには、使用済み核燃料の再処理が欠かせないが、日本では2兆円以上を投じた再処理技術が確立していない。核兵器に転用できるプルトニウムの不拡散の問題も残っている。さらに、懸念すべきことは、地震や電力会社の不祥事、長期間の検査で運転停止が義務付けられていることなどがあげられる。

 日本の原発は70年に軽水炉の運転が始まって以降、現時点で計53基が運転され、日本の総発電量の約4分の1を占める主力発電に成長した。運転時の二酸化炭素(CO2)の排出がゼロで、原子炉1基の発電量は太陽光発電の190万戸分に相当する。
 しかし、そんな中、3月11日、東日本大震災が発生し、福島第一原発の事故。この事故が世界に衝撃を与えた。

(つづく)

<参考資料>

・「原発、新興国で建設加速 中国などで56基 日本の既存数に匹敵 受注、韓国やロシア勢躍進」
岐部 秀光(ウィーン)(日本経済新聞 2010年3月18日(木))
・「原発輸出 政府も躍起 有望国と「協力文書」締結急ぐ 民間の受注へ地ならし」
(日本経済新聞 2010年9月25日(土))
・「クローズアップ 2011 日本の原発輸出 技術者育成も支援 新興国 安全対策に不安 知識普及→受注…に期待 研修受け入れ」
八田 浩輔,西川 拓,立山 清也(毎日新聞 2011年1月10日(月))
・「「もんじゅ」14年ぶり再開容認 原発政策 乏しい未来図 実現性・コスト難題 高速増殖炉 技術確立なお途上」
(日本経済新聞 2010年2月11日(木))
・「2050年の実用化めざす もんじゅ運転判断 地元、来月にも」
(日本経済新聞 2010年2月11日(木))
・「発電しながら核燃料増殖」
(日本経済新聞 2010年2月11日(木))

<ピックアップ記事>

・「原子力発電についてまとめてみる(1)」/日本が好きから始めよう
・「温暖化問題 やはり切り札は原発だった! 14基の大増設に」/憂国広場iza

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