世界とアフリカ(4)

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 海賊問題の話題が騒がれなくなったが、問題は続いているのだろう。
 1991年といえば、80年代以降大統領を務めたモハメド・シアド・バーレの政権が崩壊した年であり、このとき以来、同国は国際的に承認される中央政府が消滅している。政府は統治能力を失い、武装勢力が国土を分割して実効支配を敷いている状態である。
 貧しい漁民たちは漁場を確保しようと、自分たちで「全国海上保安ボランティア」というものを立ち上げるしかなく、それがいま「海賊」とよばれているものに変化したという。

 ソマリアでは1991年以降、ソマリア沖のインド洋ではヨーロッパやアラブ、また日本など極東の国々から来た漁船が、無許可で操業して魚を獲り、ソマリアの漁民たちは大変、迷惑をこうむってきた。彼らは国連やEUに不満を訴えてきたが、完全に国際社会から無視されてきた。
 ソマリアの海賊が今、深刻な問題になっているが、そのきっかけはこちら側がつくっていたのかもしれない。
 92年以来、ソマリア沖には多国籍企業により、膨大な産業廃棄物、核廃棄物が捨てられてきた。ヨーロッパで廃棄物を捨てる場合は1トンあたり1,000ドルの料金が発生するが、ソマリア沖に不法に捨てるなら1トンあたり2.5ドルの運搬費だけですむというのが、多国籍企業にとっては魅力のようだ。

 ソマリアという国は、欧米列強による植民地支配、東西冷戦、その後の政情不安を経て、「崩壊国家」と呼ばれるほど荒廃してしまっている。医療インフラの不足のため、国民の平均寿命は47歳で、産業もなく、人口の43%は1日1ドル以下で暮らしている。
 過去の歴史も悲惨なもので、環境も悪かった。

リチウム・ラッシュ

 ボリビアで起きている「リチウム・ラッシュ」は、迫り来る環境破壊に警告を発している。
 アンデス中央高原の標高3,700mの地点に横たわるウユニ塩湖。約180万年前に海から隆起した塩の宝庫だ。キラキラと輝く湖は、表面積1万平方キロ以上、塩湖としては世界最大。そして塩の表面下では、世界最大量のリチウムを含有する湖水が眠る。
 この銀白色の軟らかい金属は、電気化学的な特質のおかげで、電池と電気自動車の製造現場で花形となった。高まる需要に後押しされて、この5年間で価格は1トン当たり350ドルから3,000ドルにはねあがった。
 リチウム・フィーバーを激化させるのは、国際的なベンチャー企業だ。自分たちの必要量を確保しようと躍起になり。企業だけではなく、イランもまた興味を示している。リチウムは核兵器の燃料となるトリチウムの製造に不可欠なのだ。

性問題

 コンゴ民主共和国では10年にわたる武力紛争の結果、540万人以上の人々が国内避難民のキャンプや村に避難した。とりわけ女性たちは世界最悪と言われる性的暴力に苦しめられており、平均すると年間1万4245件のレイプが報告されている。女性たちはいたるところでレイプされる。畑で、ジャングルで、自宅で、学校で、そしてキャンプで。武装した制服姿の男たちが加害者の大半だが、普通の男たちが加害者になるケースも増えている。

 女性たちはレイプされるだけではなく、その後、銃や棒や砂などによって、膣口を傷つけられるという。残虐な暴力のために命を落とす女性もいる。たとえ生き延びてもその多くは「多傷性膣瘻」と呼ばれる症状に苦しめられ、排尿や排便の自由がきかなくなる。治療のために大きな病院で手術を受けても、不妊症になる者もいる。しかも、村に帰ってからコミュニティからつまはじきにされることもあり、夫たちの多くは彼女を捨て、他の女性と再婚してしまう。女性たちは自分の肉体的苦痛に加え、社会的な汚名も着せられてしまう。

 武力紛争は人々の生活に深刻な影響をもたらす。それは一瞬にして人を殺すだけではなく、女性の生命をさまざまな方法で脅かす。女性の権利が侵害されると、やがてその部族や、人類全体にまで問題がおよぶことになるのだ。
 犯罪がなぜ野放しにされているか。それは加害者を起訴する法的機関がないからだ。武装したレイプ魔はジャングルに逃げこんでしまい、彼らを見つけだし、逮捕するのは難しい。たとえ彼らが逮捕されたところで、DNA鑑定というような科学的方法がないため、犯罪を実証するのは至難の業だ。検察官も被告弁護人も、被害者の証言や目撃者の言葉、それから医者の簡単な診察に頼るしかない。これまで北キブ地方の中央刑務所に性的暴力によって告訴されたのは、30人に過ぎない。
 この地方では、年間何千件というレイプが起きている。

 昨年、最も大きな反乱軍の指導者、ヌクンダ将軍が逮捕され、ついで平和協定が結ばれた。そして、警察に出向いて加害者を訴える女性たちも増えてきたという。ゴマとブカヴではNGOや人権団体に助けられながら、裁判も開かれた。

アフリカが抱える問題の根底は

 世界でもアフリカは取り残されている。しかし、アフリカは世界でも重要な地域である。なぜ、アフリカはこんな状況になってしまったのだろうか。
 アフリカが世界経済の発展から取り残されてしまったのは、彼らの能力が劣っているとか、勤勉でないからといった理由ではまったくなく、地理的・環境的にアフリカという場所が問題の多いところだから、つまり外部環境が原因が大きい。とりわけ感染病などの問題は深刻で、ヨーロッパ人たちは、アメリカ大陸とアフリカ大陸に同じように移住したにもかかわらず、なぜアメリカのようにアフリカは発展しなかったかというと、気候の差や病気の存在が大きいためだった。

 どのように各国が援助をしても、人々が自立しようとしても、ひとたび内戦が起これば、全て破壊されてしまう。また、地下資源が豊か過ぎるせいで、利権を搾取する独裁政権が生まれやすい。
 最低限の教育すら受けていない人は、抽象的な思考ができないので、簡単なコミュニケーションを取ることすらままならない。アフリカの建設現場にはインドや中国からの作業員がたくさんいるが、すぐそばに仕事にあぶれているアフリカ人がたくさんいる。教育を全く受けていない人は単純労働にすら従事できない状況である。
 さらに深刻なのは母親、すなわち女性の社会参画と人権問題である。母親の自意識や教育レベルが低いと、どうしても子供の文字認識や概念認識の能力に問題が出てきてしまう。そういう子供がまた小学生とか中学生のうちに妊娠をして子供を育てて、という悪循環が生じているのだ。

 そこで大切な取り組みが、文化資本を積み上げたり、情報を蓄積したりする仕組みである。そのためには、現在普及しつつある携帯電話や光ケーブルなどの通信インフラが役立つ。加えて教育インフラを含めた、知恵が残る仕組み、人材を育てる仕組みが重要である。
 日本はODAやPKO活動という形でアフリカに対して、年間4,000億~5,000億円規模の援助を行っている。ざっと国民一人頭にしても年間約4,000円だという。

 2008年、慶応大学のメディア研究所が行った発表の中で、日本国内で行われる報道のうちでアフリカ関連の報道が何割を占めるかという調査結果によると、たったの0.3%だったという。

(おわり)

<参考資料>

・「「敵の姿」 1 ソマリア海賊」
(DAYS JAPAN 2009.7)
・「DAYS審査員特別賞 ボリビア リチウム・ラッシュ」
エイタン・ハドック(DAYS JAPAN 2010.5)
・DYAS国際フォトジャーナリズム大賞2位」
ジーン・チャン(DAYS JAPAN 2010.5)
・「INTERVIEW なぜ、“遠いアフリカ”に援助する必要があるのか?」
勝間 和代(COURRiER Japan 2009.10)」

<ピックアップ記事>

・「アフリカの算数」/Yell-O’-Journalism

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