世界とアフリカ(3)

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 西アフリカにある世界最貧国のひとつ、ブルキナファソ。ブルキナファソは資源豊かな西アフリカにあって、開発が遅れている国である。南はガーナ、北はマリと、ともにアフリカ有数の金生産国にはさまれているが、ブルキナファソの金生産量はこれまでごくわずかだった。だが同国には周辺地域と同タイプで同年代の地層が存在しているため、大量の金が埋蔵していると期待されている。アイアムゴールドによると、ブルキナファソは2011年までにアフリカ第4位の金生産国となると見込まれている(1位は断トツで南アフリカ)という。

 ブルキナファソの北東部の中心都市ドリから北へ65kmほど行った半砂漠地帯に、「エサカン採掘場」と呼ばれる大規模な露天掘りの金鉱がある。
 荒涼とした灰茶色の大地には無数の穴が口をあけ、掘り起こされた土が高々と盛られている。日中の気温が40℃を軽く超える中、人々は泥だらけになりながら穴の中から石や土を運び出したり、水溜まりで砂金をふるい分けたりしている。掘削機や重機の類はどこにも見当たらない。
 採石場での生き埋め事故は少なくないという。場当たり的に進めていった結果、地下の岩盤がもろくなっているためだ。一つの穴の中で、一度に50人もの採掘者が作業することもあるから、大事故にもつながりやすい。
 そのためか、穴の中に入る前に、靴を脱ぐのがここでのルールとなっている。なぜなら、万が一、穴が崩れたときに中に誰がいたのか、すぐに把握できるようにするためだ。

金採掘に横たわる問題

 エサカンで金が発見されたのは、約30年前。もともと何もないただの平野だったが、現在では1万人以上が採掘に携わるブルキナファソ有数の金鉱へと発展した。だが金採掘では収入が安定しないため、人々の暮らしは貧しく、村には麻薬密売や売春、強盗などの犯罪がはびこっているという。
 エサカンで手作業の採掘者たちによって集められた金鉱石は、仲介業者によって買い取られ、ブルキナファソ各地に現在10ある民間の買い取り所へと持ち込まれる。ここで精製され、正式な販売ルートに乗せられた金は、加工業者の手にわたり、卸・小売業者へと流れていくという流れである。
 数年前には買い取り所に年間約3tの金が集められていたが、今ではその量は年間約1tにまで減少しているという。だが金生産量そのものが減っているわけではないので、買い取り所へ持ち込まれる以前に、仲介業者によって相当量が外国へ流出していると考えられる。
 しかも、仲介業者の中には児童労働など違法な仕事に関わっている者も多く、自分たちの出身や身分を明らかにしたがらない。こうして当局も把握しないまま、子供たちによって採掘されたブルキナファソ産の金は密かに世界中に出回っているのだ。
 実際の数字は把握していないが、かなりの金が(買い取り所を経ずに)外国へ売られているのは確かだという。
 金の生産の背景にはこんな深刻な問題が横たわっているのだ。

 ブルキナファソ国内には約200の金山や採石場があり、多くの子供たちが劣悪な環境のもとで働かされている。ある訓練所では全生徒150人のうち、3分の1はかつて金鉱で働いていた。
 その状況は深刻そのもので、毎日12時間も金鉱で働いて、儲けのほとんどは(仲介業者に)もっていかれる状況だという。
 つまり、金鉱で働くということは厳しい状況から抜け出せない悪循環がある。

 穴の中で働くことに恐怖を感じている子供は多いという。崩落の危険とつねに向き合いながら、真っ暗闇で長時間作業をしなければならない。
 恐怖心を和らげるために、子供たちは穴に入る前に精神安定作用のあるドラッグを与えられることもあるという。
 ILO(国際労働機関)は就業の最低年齢を原則15歳に定めているが、ブルキナファソの子供(7~14歳)のうち、劣悪な環境下で労働に従事する割合は実に52%にものぼるという。特に金山や採石場においてそれは顕著で、子供たちは学校へ行くことよりも、金鉱で働くことの方が優先される。エサカンの採石場でも5,000人以上の子供が働いていると見られている。
 それに拍車をかけてしまっているのが、金鉱での貴重な働き手である子供たちを、親が学校へ行かせようとはしないということだ。しかし、子供が金を掘ること自体は法律違反ではない。政府は(児童労働をさせないよう)零細採掘者に対して啓蒙活動も行っているという主張(政府)。

成り立たない生活から採掘へと……

 しかし、この状況が変わらない背景として、エサカンでは、技術をもたない素人でも数m掘れば簡単に金を見つけられるチャンスがあることから、多くの貧しい人々が引き寄せられてしまうことだ。
 それに加え、雨が降らなくなって、食糧が底をつき、家族全員分の食べ物が手に入らなくなり、それで農業をやめて、金採掘を始めることにしたケースも多い。こうやって農業から金採掘に切り替える人々が多いのだ。
 サハラ砂漠に近いここブルキナファソ北部は「サヘル」と呼ばれる乾燥地帯。人々はヒエやアワ、トウモロコシなどの雑穀を育てて生活しているが、近年は雨期でも雨が十分に降らなくなり、農作物が育たなくなったという。そこで農地や家畜を手放して、雨量の比較的多い南部へ移住したり、天候に左右されない金採掘に身を投じたりする者が増えている。こうした人々は「気候難民」と呼ばれている。
 農業をしていたときは、雨が降らないとまったく食べられなくなる。でもここにいると、他にまだ稼ぎようがあるというのだ。金鉱での生活のほうがはるかにましだとなってしまうのだ。このように、環境の変化により農業では生活ができなくなって、金採掘に流れてしまうのだ。
 さらに、金採掘はギャンブル性が高く、数年間ほとんど収入がないときもあれば、数日でいっきに50万CFAフラン(約10万円)を稼げるときもあるという。だから、収入がないときの埋め合わせをするために、彼らは手作りのアクセサリーや家畜を売って生計を立てている。それらの状況に加え、風が吹けば、家の中でも砂ぼこりが舞う。このような環境だから、この地では呼吸器系疾患にかかる者も少なくない。

 政府の立場としては外国資本の進出を歓迎している。彼らは環境に配慮しているし、厳しい労働規定も設けている。ノウハウのない零細採掘者たちに任せるよりも、確かな技術をもった大企業に開発を任せた方がはるかに良いという。
 これらの悪循環から抜け出すための一つにドリにある全寮制の職業訓練所「ANPE」がある。この施設はユニセフ(国連児童基金)の支援を受けた前出のNGO「アプロデブ」が運営し、貧しい家庭の子供たちに2年強にわたる実習プログラムで溶接や電気、木工、縫製などの技術を教えている。

(つづく)

<参考資料>

・「ブルキナファソの「金鉱村」へ サヘルに生きる「気候難民」」
(COURRiER JAPAN 2009.8)

<ピックアップ記事>

・「■ブルキナファソリポート(2)」/日々崖っぷち~アフリカ編(仮)
・「■ブルキナファソリポート(1)」/日々崖っぷち~アフリカ編(仮)

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