世界とアフリカ(2)

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 今から16年前の1994年4月、コンゴの隣国ルワンダで多数派フツ族(人口の85%)穏健派の大統領の航空機が撃墜された直後に、フツ族過激派が少数派のツチ族(人口の14%)とフツ族穏健派の大量虐殺を行った。その時、隣国ウガンダにいたツチ族の軍勢がルワンダに攻め込み、権力を握った。彼らはアメリカの軍事訓練を受けていたという。フツ族のルワンダ政府軍や過激派は、報復を恐れる100万ともいわれるフツ族の難民とともに、コンゴに逃げ込んだ。こうして部隊はコンゴ東部に移った。
 そこには、多くの利害が絡んでいる。虐殺を止めるための国連軍の増派と軍用車両の移送を、安保理でアメリカとイギリスが徹底して妨害したという。虐殺首謀者たちをコンゴに逃がすために、フランスが迅速な行動を取ったという。その後、ルワンダにアフリカ唯一のアメリカ大使館が建設され、ルワンダは対アフリカ、特に対コンゴのアメリカの前線基地になり、アフリカで唯一アメリカ人がビザなしで入国できる国になった。

 アメリカがスペイン人によって「発見」された頃、ポルトガルによってコンゴ王国は奴隷貿易の中心となった。19世紀になるとベルギー国王のレオポルド2世が植民地化し、天然ゴムを収奪し、人々を強制労働に駆り立て、人口が半減したという。その後は多国籍企業によってダイヤモンド、金、木材、コバルト、スズ、ウランといった資源が収奪された。ちなみに、広島と長崎に落とされた原爆のウランは、コンゴからベルギー経由でアメリカに運び出された。コバルトは世界の埋蔵量の65%がコンゴに集中しているという。
 60年にコンゴは独立を果たし、ルムンバ首相がコバルトの国有化を宣言したが、61年にルムンバ首相は暗殺された。
 フツ族難民にまぎれて、コンゴに来たルワンダ虐殺の首謀者であるフツ族武装勢力FDLRは、コンゴ東部の資源地帯一体を支配し、難民キャンプを基地にし、難民たちを「人間の盾」にし、ルワンダに侵攻し、攻撃を繰り返した。ルワンダ虐殺の後、この勢力をルワンダから追放したツチ族中心の新政府とアメリカは、次の東コンゴの鉱山地帯からFDLRを追い出さなければならなかった。
 そうした時に、アメリカにとって深刻な脅威が新たに起こった。08年の本格的な中国の介入である。60億ドルにのぼる中国による巨額の資金援助によって、インフラ整備と鉱山採掘権の契約を両国が交わしたのだ。これにより、コンゴだけでなくアフリカ全土への中国の浸透は急速に進んだ。
 当時、東コンゴは、フツ武装勢力の他、ルワンダ、ウガンダ、現地武装勢力マイマイ、そしてツチ族のコンゴ反政府勢力CNDPなど、多くの勢力が入り乱れて、資源奪取の競争が激化していた。

 08年、ヌクンダ将軍に率いられたCNDPは大規模なコンゴ政府への反乱をおこした。戦闘の拡大によって、難民たちはキャンプから先を争って逃げ、北部のインド軍で構成される国連軍もゴマに逃げた。CNDP軍はゴマに接近し、ゴマは大混乱に陥った。08年から09年にかけて、アメリカに新政権が誕生するのと同時に急速な新展開が起こった。アメリカのお膳立てで、コンゴとルワンダ両国の和解と合同軍事作戦という思いもかけない進展があったのだ。
 コンゴ政府にとって目の敵だったヌクンダ将軍はルワンダ政府に逮捕され、数日後には3,000人のルワンダ軍が東コンゴに侵攻し、コンゴ政府軍と共同でフツ過激派のFDLRの軍勢を掃討した。敗走するFDLRをアメリカの偵察機が追跡し、情報はルワンダ側に伝えられていたという。この戦闘では、国連軍はコンゴ軍の支援を行った。
 現在、コンゴに展開する国連軍は2万人。ウルグアイ、南アフリカ、インド軍などによる資源の不法収奪や武器横流し、レイプなどの黒い噂もささやかれている。コンゴ政府は国内に展開する国連軍を2011年夏までに撤退させるよう、国連側に要請しているという。
 各武装勢力は衝突を繰り返しながら、コンゴ政府軍に統合され、コンゴ東部の鉱山地帯には現在、様々な武装勢力の影響下の政府軍が展開している。

資源を奪い合う

 そこには、資源争奪戦という大きな背景が存在している。レアメタルと難民という関係は結びついている。
 東コンゴには、レアメタルのコールタンが世界の80%の埋蔵量があるという。これが携帯電話やデジタルカメラ、パソコンなどIT産業やゲーム機器などの発達とともに、爆発的に需要が急増したレアメタルだ。その需要がピークを迎えた2000年、ソニーのプレステ2が品切れになったのも、このコールタンの供給が追いつかなくなったためだという。
 コールタンの需要のピークは2000年頃で、その後、価格が下落し、今は同じ鉱脈にあるスズ鉱石が採掘されている。今世紀に入りスズの値段が高騰したが、それはEUで06年に、鉛が人体に有害だとして電気製品への使用が禁止されたことで加速された。一人の男がホースで水を流し、その水が流れる道に並ぶ男たちはスコップで意思をすくっては岸に投げる。これをひたすら繰り返し、やがて水を止め、水の底に沈んだ黒い砂状のものを集める。これがスズ鉱石。
 レアメタルといった資源が、東コンゴで戦争と難民と死者を生み出した戦争の重要な原因の一つだといえる。さらに、コンゴ東部の資源の採掘現場周辺で、武装勢力が資源の搾取のために暴力によって、市民を奴隷扱いし、その資源を売った金で武器を買い、兵力が増すことによって鉱物地域への支配をますます強化しているというサイクルだ。
 難民キャンプ、コールタン(レアメタル)産地、そして戦場。「ルワンダ虐殺」から「コンゴの闘い」。そして、「携帯電話、ゲーム機の爆発的需要増加」といった、それらを全て繋ぐカギである、コールタンをはじめとしたレアメタル。これは私たちが恩恵を受けている文明の利器、特に最近すさまじい発展を遂げているIT産業関連が、アフリカで大きな悲劇を生み出している。

 コンゴは世界最貧国のひとつで、国連の「人間開発指数」で179か国中177位。人口の80%が毎日1ドル以下の生活を送っているという。
 地下資源の輸出がその国の経済を支えており、しかも極貧状態にある国が内戦に陥りやすいという。世界銀行によると、世界の内戦の8割は、世界の国のうち最も貧しい16%の国々で起きており、一人あたりの収入が2倍になると、内戦の可能性も半分になるという。

(つづく)

<参考資料>

・「特集 アフリカ難民と私たち 1 なぜ彼らは遠い存在なのか」
広河 隆一(DAYS JAPAN 2010.7)

<ピックアップ記事>

・「アフリカの角」/吉備団子の全球北東西南

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