電子書籍がライフを変える!?(下)

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 このように、各メーカーから電子書籍端末が発売され、電子書籍の一大ブームが巻き起こっている現在である。しかし、このブームによりこれから電子書籍が本格的な位置につけるのだろうか。
 最初に「これから電子書籍の時代になる」と言われたのが、1985年頃のことだ。90年代以降、続々と「電子ブックリーダー」が登場し、そのたびごとに「書籍は全て電子化される」と言われてきた。しかし、結局はいずれにブームもあっさりと立ち消えになっているのが現実だ。
 米国での09年の電子書籍の売り上げは前年比2.8倍の伸び率を示すなど急成長している。だが金額面で見れば、3億1,300万ドル(約290億円)で、米書籍全体の市場(約2兆5,000億円)の1%にすぎない。日本と比べても、08年の日本の電子書籍の市場規模は464億円、09年度は推定520億円に上るという。現時点での市場規模で言えば、米国の電子書籍市場は、大まかに日本の半分ほどだ。しかし、この数字には日本で圧倒的に成功している「電子辞書」や「ケータイ小説」の市場は含まれていない。
 電子辞書の歴史は古く、第1号の誕生は79年。現在は250万台、市場規模は400億円を上回る。電子辞書の普及に伴って紙の辞書は売上を落としたが、実は両方合わせた辞書市場全体の規模は広がっており、電子化が市場を活性化したと言っていいだろう。さらに、年間3,000万台を販売する携帯電話は、単に「電話」機能にとどまらず、電子メディアとして、日本で独自の進化を遂げている。実際、「ケータイ小説」は約120万点とも言われ、従来のカテゴリーに収まることなく若者に支持されている。
 これらの背景には生活習慣が大きく関わってくる。消費大国である米国では、本もまた「消費」だ。特にペーパーブックなどは紙質や装丁にそれほどこだわらず、読んだら捨てることも多い。それに対して日本人は、廉価な文庫本であっても捨てず、全国に広がる古書市場や「ブックオフ」のような独特の流通が存在している。米国のハードカバー本は日本より大判で、値段も25~30ドル(約2,200~2,670円)前後と高額なため、電子書籍の値段がそれより格安観があり、電子書籍が大きく注目された。
 日本のビジネスマンがいつ本を読んでいるかと言えば、通勤電車の車内が圧倒的に多い。米国のビジネスマンはマイカー通勤が主流なため、本は「読む」よりもカーステで「聞く」、すなわち「オーディオブック」を活用することが多い。
 これらのことから、各国によって本の位置づけが違ってくる。

 読書には、大きく分けて「調べる」「学ぶ」「楽しむ」という3つの要素があるという。
・「調べる」は、既に電子辞書が先行している。電子書籍の検索機能や辞書や年鑑などで有効
・「学ぶ」は、音声と画面が融合すれば、語学の学習環境は飛躍的に向上し、双方向のやり取りが可能な電子書籍端末は、「eランニング」にうってつけのツールと言える
・「楽しむ」は、代表例として小説や文芸作品があげられるが、電子端末を読む上での実用的なメリットは意外と少ないのが現状だ。

向上していく、電子書籍の環境

 電子書籍の波はこれまで何度も来ているわけで、今回のブームも一過性のものになるかもしれない。しかし、それでも電子書籍の環境やプラットフォームも向上しており、それに活用できる技術も向上していることから、電子書籍の未来は明るいのではないだろうか。
 電子書籍の今後としては、キンドルが機能を一部多様化させていく姿勢を見せており、ヌックは、読書専用端末としての便利な機能の充実と低価格化を図る戦略。韓国のサムスン、英国のプラスチック・ロジックなど、有力企業からのベンチャーまで、新規参入を予定している企業は数多い。
 書店では、これまでパソコンやiPhoneなど向けに、小説やマンガなど約4,000冊を電子書籍化して販売してきたオンライン書店の理想書店(ボイジャー社)はiPadにも対応するという。
 現在の電子ペーパーはモノクロが一般的だが、早ければ今年末以降、カラー電子ペーパーを搭載した製品が出回り始める見込みだという。動画に対応する試作品も出始めている。カラー電子ペーパーであるが、2011年4月以降に、富士通フロンテックが「FLEPia(フレッピア) Lite」(となる見通し)を発売予定だ。フレッピアは世界で初めてカラー電子ペーパーを採用した電子書籍端末として09年3月に発売。FLEPia(フレッピア) Liteはフレッピアの新型といえる。
 人は結局、従来の物差しでしか新しいものが見られなく、旧来のパッケージに囚われているだけかもしれない。電子辞書が、紙を含めた辞書の市場を活性化したように、電子書籍という「新しいパッケージ」の登場が、全く新しいコンテンツ(中身)を生み出し、市場全体を活性化していく可能性は十分にあるだろう。
 紙の本の市場が狭まっても、書籍全体の市場は広がると考えれば、出版業界の未来は明るい。いちよし経済研究所は、電子書籍端末の市場が立ち上がることによって恩恵を享受する部品関連は、電子ペーパーとタッチパネルであろうと考えている。さらに、iPadのアクセサリ市場は既に数百億ドル規模に成長しており、この分野でのiPadの経済効果は、来年1年間だけで10億ドルに達する可能性があるという。

出版業界やマスコミだけでなく、電子書籍の発展は製造側にも大きな発展にもなる。発展すれば、技術も向上し、新しいアイデアにもつながっていく流れをつくれるだろう。

<参考資料>

・「電子書籍をカラー表示 米B&Nが端末 雑誌向きに」
奥平 和行(シリコンバレー)(日建産業新聞 2010年10月28日(木))
・「iPadの世界がやって来た!」
ファハド・マンジュー(Newsweek 2010.6.2)
・「可能性は無限大!? iPadが創り出す 新しいライフスタイル ITジャーナリスト佐々木俊尚が語る「コンテンツの制作にもiPadは向いているんです」」
(COURRiER Japon 2010.07)
・「電子書籍 本の読み方、出版形態が変わる」
土方 細秩子(ロサンゼルス在住ジャーナリスト),黒崎 亜弓(編集部)(エコノミスト 2010.6.1)
・「多機能か読書中心か 新製品も続々登場」
八木 昭彦(大和総研情報技術研究所副主任研究員)(エコノミスト 2010.6.1)
・「「本が無くなる」なんて誰が言った!?」
植村 八潮(日本出版学会副会長)(SAPIO 2010.8.4)
・「電子ペーパー、タッチパネル、配信事業にビジネスチャンス」
大河原 翔(いちよし経済研究所研究員),西平 孝(同主任研究員)(エコノミスト 2010.6.1)
・「iPadは本当に世界を変えたのか?」
ジョエル・シュクトマン(ジャーナリスト)(Newsweek 2010.11.3)
・「富士通系、4月以降に新型 カラー電子書籍端末 コントラスト比と書き換え速度2倍 半額の5万円内」
(日経産業新聞 2010年11月12日(金))

<参考記事>

・「出版業界-電子書籍市場規模は,574億円」/就活指南-
・「電子書籍は無い」/日本海総合研究所(仮)
・「何度目? 電子書籍元年」/蒼猿のコメント
・「電子書籍元年ですか」/先っちょマンブログ

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