クラスター爆弾対策が動き出す!(下)

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 クラスター爆弾禁止に向けて、各国自身も動き出している。この条約に実効性を持たせるため、国内法の整備に取り組んでいるわけだ。
 ニュージーランドは昨年12月の批准と同時に、使用や保有に加え、開発や製造に使われると知りながら投資を行った者に7年以下の禁固と50万ニュージーランドドル(約3,000万円)以下の罰金を科す法律を成立させた。このニュージーランドの法的に禁止する効果は、クラスター爆弾への投資を「非倫理的」として他の国にも広がっているという。
 日本は不発弾除去や被害者支援について、対人地雷での支援事業を発展させて取り組む姿勢だ。98~09年度までに「地雷・不発弾の除去」、「被害者支援」、「被害回避のための教育」で計約400億円を支援した。毎年、米、EUに次ぐレベルでの上位支援国となっている。自衛隊は計4種類のクラスター爆弾を約276億円かけて調達してきたが、防衛省は廃棄方法に関する調査を昨年から開始し、結果を今年度中にまとめ、来年度は廃棄に着手したい考え。
 英国では、子爆弾で3,800万個を保有していた英政府は、5月に条約を批准。発効3年後の2013年末までの全廃を掲げ、その44%の廃棄を既に終えた。国防省は82年のフォークランド紛争で使用したクラスター爆弾の不発弾除去に向け現地調査を進めている。さらに、駐留米軍のクラスター爆弾撤去も求めている。英外務省筋によると、英国内に貯蔵される米国のクラスター爆弾は10年までに、英国の海外領土からも13年までに完全に撤去することで合意を得た。
 ドイツは、09年に保有数を公表した時点で、約39万個、子爆弾で約4,619万個を持っていたが、発効5年後の15年までに廃棄を完了する目標を掲げている。
 ノルウェーは、オスロ条約の締結を主導。7月16日までに、全ての保有爆弾を破壊した。

過酷な除去活動

 クラスター爆弾禁止・廃棄への取り組みが加速される中、クラスター爆弾の除去作業は非常に過酷な状況に置かれている。
 06年、第2次レバノン戦争でイスラエル軍が大量のクラスター爆弾を撃ち込んだ、レバノン南部アッティリでは、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の仏部隊が、今も残る子爆弾の処理に取り組んでいる。しかし、作業員は、かさばって動きにくい防護服と防護面付きヘルメット(総重量25キロ)を着用し、小石の散らばる斜面で目をこらして捜した子爆弾を爆破する。さらに、夏季は30度を超える猛暑の中、体力と神経をすり減らすという過酷な状況だ。
 レバノン軍によると不発弾が残った可能性がある地域は、停戦時で推計43.2平方キロあるという。除去が終わったのは半分強だけで、06年のイスラエル軍侵攻後、発見・破壊された子爆弾は約200万発にのぼるという。
 NGO(非政府組織)「HALOトラスト」の活動では、不発弾発見には金属探知機を仕込んだ約1メートル四方のプラスチック製の枠を使う。体を枠の内側に入れベルトで枠をぶら下げて歩き回り、探知機が反応したら赤い目印を付けるという。爆発物処理班のほとんどは現地雇用だという。

支援に黄色信号……

 こうした地道な活動の上で不発弾除去作業が行われているが、クラスター爆弾禁止条約にしろ、除去作業にしろ、状況は芳しくない。
 オタワ条約ができた背景には、地雷の重要度が低下していたことがある。それで禁止条約を機に地雷離れが進んだ。その結果、オタワ条約発効以来、条約非加盟国の間でも対人地雷使用は大きく減った。NGO・地雷禁止条約キャンペーンによると、08~09年に対人地雷を使用したのはロシアとミャンマーだけである。しかし、クラスター爆弾の重要度は高いという立場をとっている国がある。米国はクラスター爆弾は、「米軍火力の半分以上を占める」と、主力兵器であることから、大規模な軍事侵攻では不可欠な兵器と考えられていることがあり、これにかわる兵器がないと使用禁止は難しいとしている。クラスター爆弾の禁止条約作りが始まった07年2月以降も、米露は同爆弾の使用を続けているとされる。
 さらに、深刻なのがクラスター爆弾除去や被害への支援活動だ。国際NGO「ハンディキャップ・インターナショナル」の聞き取り調査によると、65%の被害者が「政府の援助が足りない」と答えている。
 さらに、深刻な問題がクラスター爆弾の不発弾の除去作業が、世界各地で資金不足に陥っていることだ。これには金融危機に端を発した経済悪化で寄付金が少なくなった影響が大きく、同爆弾が大量に撃ち込まれたかつての紛争地では、資金不足が除去作業の長期化に直結している。
 コソボ紛争に伴う99年の北大西洋条約機構(NATO)軍の空爆でクラスター爆弾が投下されたコソボでは、不発弾除去の活動資金は事実上、全て外国の政府や企業からの寄付金に頼っている。今年は米、スイス両政府の資金で、65人の爆発物処理班を維持できるが、来年の寄付のあてはないという。資金不足で活動できなくなれば政府系組織やNATO指揮下の国際治安部隊だけで処理にあたることになり、作業の長期化は避けられない。完了は15年はかかる見込みだという。
 資金不足の影響は深刻で、同じコソボ紛争を巡るNATO軍空爆を受けたセルビアでも資金不足は深刻で、ベオグラードの政府機関「セルビア地雷行動センター」によると、150以上の処理計画を立てたが、資金不足で実行できずにいる。また、今年は寄付金の集まりは遅く、8月まで不発弾処理を始められなかったという。
 06年の第2次レバノン戦争で、イスラエル軍が子爆弾で400万発のクラスター爆弾を撃ち込んだレバノン南部では、07年には114あった除去チーム(国際非政府組織、国連のチームを含む)は、現在、半分以下の45に減少。08年の金融危機以降、支援の出足が鈍っており、除去費用は、1平方メートルあたり25~30米ドル(約2,200~2,600円)と見積もられているが、小国レバノンには重い負担である。
 非政府組織「ランドマイン・アクション」の08年5月の報告書によると、レバノンでクラスター爆弾の除去費用や民間人の死傷で生じた費用も加えれば、被害総額は最大2億3,300万ドル(約201億円)にのぼるとみられる。同爆弾は貧困層の多い南部の経済状況を、さらに悪化させており、各国の資金援助が求められている。
 しかも、同爆弾除去への取り組みの情報格差も問題になっている。セルビアはNATOに対し、標的のGPS(全地球測位システム)座標や投下時の航空機の高度・方向・親爆弾の種類、爆撃結果など8項目の情報提供を求めたが、わずか2項目の情報しか得られなかった。しかし、一方のコソボ地雷行動センターには「十分な情報が与えられた」という。米英独などNATOの主要加盟国はコソボ独立を認めており、あくまで認めないセルビア側と対立するという構図になっている。

 クラスター爆弾禁止条約が発効し、除去や支援活動が加速しているが、経済状況や政治状況といった影響もあり、クラスター爆弾禁止・廃棄・除去・支援への流れには、まだ依然として課題が数多くある。
 ようやく動き出した活動をどう拡大し、影響を与えていくのか。はじめは小さい動きだったが、今では条約発効までに至っているわけで、今後の動きは加速するだろう。しかし、課題も多く、動きが止まらないとはいえない。問題を真剣に考え、解決へと歩んでいく必要がある。

<参考資料>

・「追跡 「犠牲 この子で最後に」 レバノン 草むらに散った6歳」
和田 浩明(ソルタニー(レバノン南部))(毎日新聞2010年7月31日(土))
・「クラスター爆弾禁止条約あす発効 「犠牲者 この子で最後に」 保有国、8年以内廃棄」
大治 朋子(ワシントン)(毎日新聞2010年7月31日(土)
・「クローズアップ2010 クラスター爆弾 レバノンまだ半数残留」
和田 浩明(レバノン南部アッティリ)(毎日新聞2010年7月31日(土))
・「クローズアップ2010 クラスター禁止 8月発効 根絶へ非加盟国包囲網 「持ち込ませず」 波及効果を期待 加盟国増など課題も」
福島 良典,小倉 孝保(ブリュッセル,ニューヨーク)(毎日新聞2010年2月18日(木)
・「市民が主導 クラスター条約 主力兵器に歯止め 対人地雷禁止 越える影響度」
澤田 克己,斉藤 義彦(毎日新聞2010年2月18日(木))
・「除去「地雷より危険」 使用続ける米露 国際的「圧力」必要」
大治 朋子(ワシントン)(毎日新聞2010年7月31日(土))
・「日本、来年度に廃棄着手」
服部 正法(毎日新聞2010年7月31日(土))
・「NEWS NAVIGATOR なるほドリ クラスター爆弾って? 1個の中に子爆弾数千個 終戦後も不発弾で市民犠牲」
服部 正法(毎日新聞2010年7月31日(土))
・「STOPクラスター 第17部 新生条約の課題 1 発効後も傷跡深く コソボ 先見える除去 NATO投下情報 セルビアに少なく」
樋口 直樹(毎日新聞2010年8月2日(月))
・「クラスター禁止条約 発効 批准38カ国 英独、廃棄前倒し」
笠原 敏彦(ロンドン,欧州総局)(日本経済新聞2010年8月2日(月))
・「STOPクラスター 第17部 新生条約の課題 4 不発弾 命がけの農業」
和田 浩明(毎日新聞2010年8月5日(木))
・「STOPクラスター 不発弾除去 細る寄付 経済悪化 作業長期化避けられず」
樋口 直樹(ウィーン),和田 浩明(カイロ)(毎日新聞2010年8月16日(月))

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