クラスター爆弾対策が動き出す!(上)

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 戦争や紛争が起きれば大きな犠牲が生じる。戦争中や紛争中というのは、大きな話題になるものだ。しかし、問題はそれだけではなく、戦争・紛争後も深刻な問題が生じている。
 その深刻な問題の一つに爆弾による犠牲がある。99年にオタワ条約が発効。これは対人地雷禁止条約というもので、国連加盟国の8割以上の156の国が加盟して、事実上、地雷を禁止する条約だ。これまで地雷による戦後の犠牲が大きな問題になっていたが、この条約により地雷問題への解決が一気に進んだ。しかし、クラスター爆弾が登場し、深刻な問題になっている。しかも、内容は地雷と同じ特徴があり、戦後の大きな不安材料になる問題だ。

 クラスター爆弾は、親爆弾の中に、数十個から数千個の子爆弾が入る仕組みの爆弾である。もっと簡単にいうと、ぶどうをイメージすると分かりやすい。クラスター爆弾は英語でぶどうの「房」のことを意味し、一つの房(親爆弾)の中に、数十個から数千個の実(子爆弾)が入っているというわけだ。この親爆弾を飛行機から投下したり、ロケットなどで地上から発射すると、空中で親爆弾が分解して子爆弾がばらまかれ、子爆弾が爆発するという仕組みになっている。
 しかし、問題はここからだ。このクラスター爆弾が地上に落ちても爆発せずに放置され不発弾となっていることだ。場合によっては不発弾が3割も発生しているという。地雷のように地中に埋まるため、戦争が終わり平和になったとしても、不発弾に触れた人が死んだり、足や手を失うなどの障害を負うケースが後を絶たない。
 国際NGO(非政府組織)「ハンディキャップ・インターナショナル」が07年にまとめた報告書では、25か国・地域でクラスター爆弾が使用され、被害者を5万5,000~10万人と推計。また、被害者の98%が市民、約2割が男児だと指摘されている。

不発弾の深刻な被害状況

 これまでこのクラスター爆弾は様々な地域で使用されてきた。ベトナム戦争やイラク、アフガニスタン戦争で使われ、その他にもコソボ、最近では06年にイスラエル軍が第2次レバノン戦争で、08年にはロシアとグルジアがグルジア紛争で使用された。
 大量に使われた走りはベトナム戦争で、米国がベトナムと隣国のラオス、カンボジアへの爆撃に用い、被害が大きいラオスには約2億6,000万個の子爆弾が飛散。1~3割程度が不発弾として残ったとも指摘され、被害が出続けている。第2次レバノン戦争時、イスラエル軍は34日間に及ぶ戦闘で、推定400万発のクラスター爆弾の子爆弾を南部の1,127カ所(レバノン軍調べ)で撃ち、うち100万発が不発弾になったとされる。同戦争停戦発効(06年8月14日)後の犠牲者は、死亡46人、負傷340人。うち12歳以下の子供の死傷は36人に達している。不発弾が残ると推定される「汚染地域」は、レバノン南部の農地の約5%に及ぶとされ、06年の戦争後のクラスター爆弾による死傷者386人のうち、7割以上の276人が18歳以上の青年で、レバノン軍によると、うち9割以上は農作業や野外で家畜の世話をする最中に被害にあったという。生活の糧を得ようと除去が終わっていなくても畑に入って死傷するケースが少なくなく、汚染地域でありながら農作業が行われている農地は、全体の15~30%を占めると推定されている。成人被害者の9割は一家の大黒柱である男性で、稼ぎ手を失った家族の経済的負担は深刻な状況だ。
 クラスター爆弾による被害はこうした悪循環を巻き起こしている。NGO「ナンドマイン・アクション」が08年5月に発表した、レバノンでのクラスター爆弾による経済被害を推計する報告書によると、農業生産の損失は最大2,680万ドル(約23億7,400万円)。対象は地域の地主1人当たりの被害額は約8,000ドル(約70万9,000円)で、レバノンの1人当たりの国民総所得6,350ドル(08年)の1.25倍に達したという。

クラスター爆弾禁止への流れと動き

 こうしたクラスター爆弾の被害を深刻に見て、クラスター爆弾を禁止しようとする動きが起こった。
 軍縮交渉「特定通常兵器禁止制限条約(CCW)締約国会議」が行われた。ここで規制に向けた交渉開始を検討したが、米露中など大量保有国が難色が示したため、ノルウェーなど有志国とNGOは07年2月、市民主導の軍縮交渉「オスロ・プロセス」をスタートさせ、08年5月、条約案で合意。3年半で発効にこぎつけた。
 そうして、対人地雷禁止条約(オタワ条約、99年3月発効)をモデルとした市民主導の軍縮条約として、クラスター爆弾を禁止する条約が、8月1日に発効した。これにより、
・同爆弾の使用、開発、生産、取得、貯蔵や移譲(輸出)が禁じられる他、これらの活動への援助、奨励も禁止される
・保有国は原則として8年以内に廃棄。貯蔵するクラスター爆弾の総数、廃棄の状況などは毎年、国連事務総長に報告する義務を負う
・自国や管理下にある地域の不発弾は10年以内に除去、廃棄する
・同爆弾の被害者には援助(医療リハビリテーション、心理的な支援を含む)を提供。締約国は米露中など非締約国との一定の軍事的な協力、軍事行動は認められる
といった内容が決まった。条約には17か国が署名し、コモロが7月28日に批准し、批准国は38に。市民主導の軍縮条約が発効するのは、対人地雷禁止条約に続き止めで11年ぶりとなった。

 こうしたクラスター爆弾禁止への動きが強まり、各国・団体も動き出した。
 日本は08年12月に署名、09年7月に批准、全廃を打ち出し、日英豪独仏といった米国の主要な同盟国もオスロ条約に署名。クラスター爆弾禁止批准国は、
・アジア:日本、ラオス
・オセアニア:ニュージーランド
・欧州:オーストリア、アルバニア、ベルギー、クロアチア、デンマーク、フランス、ドイツ、バチカン、アイルランド、ルクセンブルク、モンテネグロ、マルタ、ノルウェー、サンマリノ、スロベニア、スペイン、マケドニア、モルドバ
・アフリカ:ブルンジ、ブルキナファソ、マラウイ、ニジェール、シエラレオネ、ザンビア
米州:メキシコ、ニカラグア、ウルグアイ
 しかし、爆弾を大量に保有する米露中イスラエルなどが加盟していなく、米国務省はクラスター爆弾禁止条約署名式が行われた08年12月、「全面的な禁止となれば、米兵や同盟国を危険にさらす」として、条約に参加しない方針を示しており、必ずしもクラスター爆弾禁止に全ての者が賛成してはいない。
 だが、状況は変化している。99年に発効した対人地雷禁止条約(オタワ条約)の加盟国は国連加盟中の8割以上の156に上り、この条約で米国は発効以来、事実上、地雷を使用していない。オバマ政権は昨年12月、オタワ条約の締約国会議に初めて代表団を派遣。ロシアや中国と共にオブザーバー参加し対人地雷政策の包括的な見直しを発表し、地雷対策に強い関心を示した。このことから、オタワ条約と同じ効果をオスロ条約に期待をしている。
 そんな中、クラスター爆弾の現況は、NGOによると、同爆弾は米英仏露など15か国が使用、米英独仏中露など34か国が生産、85か国が数十億発を保有している。ヒューマン・ライツ・ウオッチによると、署名104か国中、保有国は33か国。うち、保有状況を公表している12か国だけでも、少なくとも66万2,000発(子爆弾は計1億4,400万発以上)が「廃棄待ち」といった状況だという。

(下に続く)

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