地球環境をめぐる(10)

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 肉の消費量が多いのは富裕国だけでなく、今では新興国での消費量も増加しつつある。
 環境保護活動家によると、肉はCO2排出量で計ることができ、牛肉を1kg食べると自動車で250km移動する際に排出される量に相当するという。この原因は牛の消化システムによるCO2排出や、飼料のために広大な土地の森林破壊が進むからだ。
 中国やインドでは既に牛乳を飲み、肉を食べているし、FAO(国連食糧農業機関)によれば、世界の肉の消費量は今世紀半ばには現在の2倍になるという。消費が劇的に落ち込めば畜産業で生計を立てているおよそ13億人の生活が危ぶまれることになる。

 畜産業が気候変動に与える影響は、生産方法によって変わる。粗放方式(自然の力に任せ、資本や労働力を極力抑えた農業経営)では、より多くの牛を必要とするため、CO2が増えてしまう。一方、生産方法を集約していけば排出量は減る。しかし集約し過ぎると排出量が増加することになる。森林破壊が起きている地域から餌を輸送するために使うエネルギーが増加するからだ。
 畜産業界がCO2量の4分の1は反芻動物、とりわけ牛から排出される。先進国を見ると、牛肉から採れる蛋白質約1kgからは、鶏肉から採れる同量の蛋白質と比べて3~4倍の量の温室効果ガスが発生していることになるという。
 FAOが2006年に行った調査では、畜産業界では輸送業界よりも18%も多くの温室効果ガスが排出されているという。この数値のうち、かなりの部分を占めるのがメタンガスだ。メタンガスはCO2より熱を蓄積する力が23倍もある。反芻動物、特に牛のげっぷやおならを通じてメタンガスが排出され、家畜の糞からはCO2よりも地球温暖化を引き起こす力が296倍も高い窒素酸化物が発生する。
 その上、とりわけラテンアメリカでは、広範囲の土地が牛を育てるための牧草地に当てられ、そのために森林が破壊されてきた。さらにラテンアメリカで生産される大豆栽培の90%は富裕国での家畜の飼料に使用されている。
 FAOの報告書には細かい補足が必要だ。FAOは、世界的にみると畜産業は温室効果ガス総量の18%を排出していると記している。しかしその裏には富裕国における畜産関連の排出量は全体の3%に過ぎないという事実がある。
 富裕国では排出源が多様にあるため、畜産の占める割合が少ないのだ。逆に貧困国の中には、ガスの排出量の60%までを畜産が占めると推定される国もある。

森林破壊阻止を気候変動対策の中心に

 09年末にデンマークのコペンハーゲンで行われた国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)が開催された。その成果は、熱帯雨林の破壊を食い止めるため、富裕国が貧しい国に資金援助するという。
 森林破壊によって排出される二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスは、年間排出量の約15%に相当―世界中の自動車や飛行機、列車や船の排出量の合計を上回っているという。森林破壊阻止を気候変動対策の中心に据えたのは、今回が初めてだ。森林破壊が世界最悪だったブラジルでは、09年の伐採のペースは従来の3分の1に激減した。
 一度破壊された「二次林」は再生ペースが遅く、元の原生林のような生物多様性は見られないとされていた。だが、コスタリカとパナマの例は、熱帯雨林が生物多様性の90%をわずか20年で回復できることを示した。しかも急速に回復している地域は予想以上に多い可能性があり、そうした地域を保護すれば、原生林を保護するのと同様、温室効果ガス排出量を削減できるかもしれない。
 経営コンサルタント会社マッキンゼーによれば、CO2排出量を削減するには、熱帯雨林を保護する方が代替エネルギーに切り替えるよりはるかに安上がりだ。森林保護に1ドル投じれば、太陽光発電などの新技術の開発に6ドル投じるのと同じ効果があるという。

サムソ島の試み

 サムソ島に困難が訪れた。全ては一つの問題から生じた。それは、“過疎”だ。
 そうした中、あるアイディアが生まれる。97年にデンマークのエネルギー環境省が、風力発電の投資先選定コンテストの開催を決定。サムソ島は、そのコンテストへの参加を決めたことだ。
 73年の石油危機に際しては、這う這うの体で乗り越えたくらいだ。当時のデンマークはエネルギー資源の実に90%を石油に依存していた。この時の教訓がもとで、デンマークは再生可能エネルギーの実用化を真剣に検討するようになった。その甲斐あって、今では世界の風力発電市場の3分の1をデンマーク企業が占めている。
 トラクターは採種油を燃料とするようになり、住宅は省エネルギー仕様に改築され、屋根にはソーラーパネルが設置された。その中で最も効果的な投資は、1メガワットの電力を供給できる地上用の風力発電タービン11基の導入だった。他にも十数機の大型タービンが島の沖合に設置された。島とデンマーク本土を切り離す、カテガット海峡に並ぶタービンが生み出す電力量は、島の自動車やフェリーを賄えるほどだ。10%程度の余剰電力は、本土へ向けて販売されている。
 住民4,300人が暮らす、約114km2の島には、青々とした芝生が一面に拡がり、驚くほどの強風が吹く。このサムソ島は、消費エネルギーが100%自給自足な島である。石油を使うことなく、もちろん原子力発電所もない。デンマークは1985年に原子力発電を廃止している。暖房と交通手段のためのエネルギーは、完全に風力や太陽光、そしてバイオガスで賄われている。つまり、陸と海に並ぶ風力タービンから供給される風力エネルギー、ソーラーパネルから得られる太陽光エネルギー、養豚場で採算されるバイオガスだけで成り立っているのだ。

<参考資料>
・「肉1kgで自動車は250km走れる!?地球の未来は“草食系”が救う」
エル・パイス(スペイン/COURRiER Japon 2009.11)
・「ブラジル 地球温暖化防止に熱帯雨林の底力」
(Newsweek 2010.1.13)
・「過疎の島からデンマークの誇りに風力発電で生き返ったサムソ島」
D(レプブリカ・デレ・ドンネ)(イタリア/COURRiER Japon 2009.11)

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