地球環境をめぐる(9)

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 世界中の自動車より森林破壊で排出されるCO2の方が多く、年間排出量の20~30%に上るという。化石燃料の燃焼による排出量が森林破壊による排出量を超えたのは80年代で、森林伐採による排出は19世紀以降のCO2増加分の40%を占めるというのだ。
 環境を考えた発電の中に風力発電が注目されている。アメリカでは現在、アメリカの電力の1%強にすぎないが、23年までに20%に達する可能性があると、米エネルギー省は予測している。2009年7月にコンサルティング会社マッキンゼーが発表した報告書の試算によれば、モーターや窓などをエネルギー効率の高いものに替えるだけで23年までにエネルギー23%削減できるという。

 それでは、企業はなぜ効率改善に取り組まないのだろうか。アメリカのエネルギー関連法規では燃料廃熱を再利用して電力を作るより利益が大きいそうだ。工場のエネルギー効率改善に投資すれば、長期的にはコストの節約になる。だが、ある世論調査によると、アメリカの企業経営者の80%は次の四半期の損益が悪化するのなら、そういう投資はしないと答えているという。

炭素隔離の技術で、土壌管理

 トウモロコシを原料とするエタノール燃料の生産は、実はガソリンより多くの温室効果ガスを排出する。有望なのは遺伝子組み換え酵素によってセルロースやリグニンを破壊し、発酵性の化合物にする酵素加水分解。第1世代のいかなるエタノール系燃料作物よりも、単位面積当たりで多くの燃料を生産でき、第3世代バイオ燃料の長所は(ガソリンとの)混合に絡む問題がないという。それに酵素加水分解のエネルギー効率は、理論的には無限に改善できるという。
 炭素隔離の技術を使えば、土壌をもっと吸収できる可能性がある。
 世界の農家が根覆い(マルチング)、不耕起栽培、被覆植物と有機肥料を採用すれば、世界の耕地約1,500万平方キロは年1ギガトンのCO2(年間排出量の約12%)を隔離できる。人間が排出するCO2は全て隔離できるという。
 ただし、もし土壌管理で大量のCO2を吸収できることを知ったら、人々は排出量削減の努力をしなくなるのではないか―政治的にみて判断が難しいのはこの点である。

 化石燃料から排出されるCO2を現在より15%多く土壌に吸収されることができる。それが事実なら、今後50年間で大気中のCO2を50ppm削減できる(産業革命前、大気中のCO2濃度は280ppmだったが、現在は387ppm。危険レベルは450ppmまたはそれ以下とされる)。
 バイオ炭はキビの一種やトウモロコシの皮などの廃棄物を燃やして作る多孔質の炭。バイオ炭はたばこのフィルターが煙を吸収するようにCO2を吸収するので、年間排出量の40%を隔離できるという。メタンガスは人間が引き起こす温暖化の原因の27%、ハロカーボン(ハロゲンを含む炭素化合物)は8%、黒色炭素(木材、動物のふん、ディーゼルを燃やした際に出るすす)は12%、一酸化炭素と揮発性有機物は7%、そしてCO2は―43%だった。見方にもよるが、43%という数字は意外に少ないと言えるかもしれない。
 CO2を削減したければ、エネルギーの86.5%を占める化石燃料の使用を大幅に減らすしかない。それ以外の温室効果ガスを削減する方がCO2だけの削減より、はるかにコスト効率がよさそうである。黒色炭素1トンの削減は200~3,000トンのCO2削減と同じ効果がある。
 CO2以外の温室効果ガスを削減すれば、気温が2度上昇する時期を30~50年遅らせることができる。2度の気温上昇は水位の上昇、干ばつ、洪水などの災害が激化する危険レベルとされている。
 ピュー・リサーチセンターの最新世論調査によると、地球温暖化を示す確かな証拠があると考えるアメリカ人は、08年4月の71%から57%に急減した。温暖化の原因は人間の活動だと考える人も47%から36%に減った。石油・石炭業界が巨額の宣伝資金をつぎ込み、人々を混乱させているせいもある。

マングローブの貢献度

 熱帯・亜熱帯地域の海岸や河口域に生えるマングローブ。
 経済的観点からは、マングローブ林など沿岸の生態系の貢献度はゼロに等しいと思われてきた。だが国連環境計画が算出しに成功した、生態系の経済的効果は絶大だった。ベトナムはマングローブのおかげで、堤防の維持費を700万ドル以上も節約できた。
 収入を漁業とエコツーリズムに頼る島で、サンゴ礁の破壊が与える影響が計算されたことがある。研究者はサンゴ礁が呼び寄せる魚と観光客の数を算出し、防波堤としての役割も考慮。すると1ヘクタール当たりの価値は、年間100万ドルに相当することが分かった。
 数年前、インドのデリー近郊で開発話が持ち上がった時は、地元政府が調査を実施。その結果、きれいな水があり豊富な魚がいて保養地にもなる現地は年間275万ドル相当を稼いでいると判明し、その恩恵は開発による利益を大きく上回った。
 米ニューヨーク州の01年の調査では、川の環境を保護する方が浄水施設を建設するより80%も安く済むという。

<参考資料>
・「「環境伝道師」ゴアのプロジェクト第2章」
シャロン・ベグリー(サイエンス担当/Newsweek 2009.12.2)
・「生態系保護は開発より儲かる」
(Newsweek 2009.12.9)

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