地球環境をめぐる(8)

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 地球温暖化が問題になっており、様々な取り組みが始まっている。しかし、その取り組みにはある程度のコストがかかるだろう。温室効果ガスの排出を規制しなければ、温暖化のコストは国民1人当たり年間収入の2割に達する可能性があるという。
 温暖化コストは世界の年間GDP(国内総生産)総額の2.5%という線が有力だという。100年分の気候変動が経済に与える影響は「比較的小規模」で、「1~2月分の経済成長の規模と同等」という。
 こうしたコスト予測は所詮、予測にすぎないと思うかもしれないが、そこに含まれる意味は大きい。多くの人が温暖化の悪影響を実感するまでにはあと100年、大掛かりな工事でダメージを抑制しようという動きが始まるまでにはそれ以上の年月がかかるかもしれない。

 アメリカや中国も今や、キャップ・アンド・トレード方式による温室効果ガスの排出権取引の採用や炭素税導入に向けて動いている。こうした制度が効果を挙げるには、排出者が真に「炭素の社会的費用」を償う仕組みでなければならない。言い換えれば、彼らが輩出した分の炭素が与えるダメージの量を測り、それに見合う負担を課す必要があるからだ。だが、コストの計算は簡単ではない。最大の原因は、ダメージが表れるのがずっと先だということだ。排出された二酸化炭素(CO2)は100~150年にわたって大気中に存在し続ける。
 排出削減努力を行わず、現在のペースで経済成長を続けても、2075年まで微々たるものにすぎないという。

炭素隔離

 環境問題の関心が高まる中、温室効果の原因である二酸化炭素(CO2)を回収し、貯蔵することで大気中のCO2を減らすプロジェクトが本格化し始めている。先鞭をつけたのは、海中にあるCO2を貯蔵する計画を進めているノルウェー、そして180万tものCO2を貯蔵する計画を進めているカナダである。EUが公式にCO2の回収・貯蔵を呼びかけたのを受けて、フランスの石油メジャー、トタルもこの計画に乗り出した。
 二酸化炭素隔離と呼ばれる、CO2の回収・貯蔵の仕組みは研究から実験の段階に入ったわけだ。温暖化に対する一つの解決になるかもしれない策が動き始め、これからこの効果が実態としてあらわれる。

 火力発電所(CO2排出全体量の約40%を占める)やセメント工場、製鉄所など大量にCO2を排出する場所で、一気に回収するという計画がある。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、この方式を用いることで火力発電所で発生するCO2の8割を、また自動車や家庭などから排出される分の2割から4割も回収できるという。
 しかし、実用化となると、より複雑な工程が必要となる。火力発電所など大規模排出源でのCO2の回収にはいくつもの方法がある。最も普及しているのは、燃焼で発生するCO2を科学的な溶媒を用いて回収する方法である。
 これらの方式は、エネルギーを大量に必要とするのでコスト高になってしまうことがハードルになっている。CO2ガス1tを回収するための費用が60~100ユーロと高すぎるのだ(専門家によると、普及のための上限は1tあたり25ユーロである)。
 最終的にCO2が地下に封入されることで、炭素隔離が完成する。封入場所としては、原油や天然ガスの採取が行われた後の層があげられる。この層は9,000億tの貯蔵が可能だが、点在しているためCO2の輸送が問題になる。より有力なのは、地下数千mに広がる塩水の帯水層である。この層は、世界中いたるところにあるし、最大で10兆tのCO2貯蔵が可能だと算出されている。
 つまり、解決策の手段はいくつかあるが、それぞれにメリット・デメリットがある。それに、この技術が実用化されるまでどれくらいかかるかは、まだはっきりしていないのが現状だ。経済的・技術的に実用に堪えられるようにするため、乗り越えるべきことがたくさんあるというわけだ。

注目のプロジェクト

 フランス南西部ベアルン地方にある天然ガスの産地ラックで、トタル社が進めているプロジェクトは、ラックにある高炉で、空気の変わりに酸素を使う「酸素燃焼」を用いてメタンガスを燃焼させる。この時、排出されるのはCO2と水蒸気のみであるため、CO2を回収するのは技術的に容易である。回収されたCO2は近郊のルースにあるもはや採掘されていない天然ガス貯蔵層までパイプラインで輸送される。天然ガスが吸収されていた多孔質の石は、CO2の吸収にも利用できるため、CO2は大気に放出されることなく、地下4,500mの層に封入される。この実験が成功すれば、2017年には本格的な実用化が可能だという。ただし、地下に貯留することによる悪影響はどうなのだろうか。
 ラックでの実験の結果、実用化の見通しが立てば、地下にCO2を封入できる塩水の帯水層があるオランダやパリ近郊などでも同様の炭素隔離のプロジェクトが進められるかもしれない。
 本当に塩水の帯水層が何百年もの間、CO2を封じ込められるのかは証明されていない。この層が完全な密閉状態でなければ、酸化ガスが上昇してきて、飲用可能な地下水層を汚染する。CO2の貯留は温暖化を妨げる利点があるものの、核廃棄物と同様に地元住民の反発を招く恐れがあるのだ。これは実に大きな問題であり、もし、実行するのであれば、必ずクリアしなければならない課題である。

 風力発電は、06年の世界の発電導入量は太陽光570万キロワットに対して、風力は7,390万キロワットとケタ違いで、原発70基分も風力でまかなっているという。その中で日本の順位は世界13位で、風力発電小国である。風力は立地が難しいとか、騒音がひどいとか、野鳥被害が出るというデメリットがある。
 風力発電メーカーは電力会社に発電用タービンを大量に買ってもらっている。顧客筆頭の電力会社が急増にいい顔をしないので、風力派は太陽派ほど強力な運動ができなかった。
 ちなみに、日本では洋上風力発電が有望である。風力で原発30基分の発電が可能だという。

<参考資料>
・「温暖化コストはハウマッチ?」
バレット・シェルダン(本誌記者/Newsweek 2009.12.16)
・「ついに動き始めた“究極のエコ”「CO2封じ込め」プロジェクト」
ル・モンド(フランス/COURRiER Japon 2009.8)
・「潮田道夫の千波万波 風力を忘れるな!」
(毎日新聞 2009年6月28日(日))

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