地球環境をめぐる(6)

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 環境問題の取り組みで京都議定書がある。08年度の日本の温室効果ガス排出量は速報値で12億8,600万トン(CO2換算)で、京都議定書の基準年である90年度を1.9%上回る。金融危機の影響などで過去最高だった07年度より6.2%減ったが、25%減にはほど遠い状況だ。
 国立環境研究所の試算によると、国内対策だけで25%全てを削減するには、太陽光発電は05年実績の約55倍(7,900万キロワット)を導入し、新築住宅も全て高断熱タイプにしなければならないという。
 依然としてハードルは高いが、今後どう対策をうっていくのだろか。

 2009年9月、鳩山由紀夫前首相は2020年までに温暖化ガス排出量を1990年比で25%減らす目標を発表した。しかし、日本の環境政策には設計図がない。25%も減らすなら、いつ、何を、どこまでやるか。誰に、何を委ね、成果をどう生かすのか。ロードマップが見えないから、はじめの一歩が踏み出せないという大きな欠点がある。
 例えば、不安の一つは電力供給量に対する姿勢が見えないことだ。原子炉1基の発電量は太陽光発電の190万戸分に相当する。温暖化ガス削減を大きく前進させる切り札的な存在だ。18年度までに9基の新設予定があるが、政府の立場は不透明だ。

ハードルが高い条件に

 日本の温暖化ガス排出量では電力と鉄鋼が約4割を占める。ただ原発や省エネ製鉄所などの増減は10年、20年がかり。2020年に間に合わせるなら、別の野心的な取り組みが必要になってくる。
 それに、「負担」に対する説明もほとんどしていない。鉄鋼業界が最新の省エネ技術を駆使しても、20年度までに減らせる二酸化炭素は500万トン。仮に10%減らすように求められたら、1500万トンの追加削減を迫られる。
 05年に世界の太陽光パネル市場で日本勢は半分のシェアを占めたが、08年は2割強である。麻生太郎政権は太陽光発電の導入を05年比で20倍にする目標を掲げた。25%削減というなら、40倍にして排出量を3%減らすくらいでないと追いつけないという。

 一方の米国のオバマ大統領は『グリーン・ニューディール』という環境産業政策を打ち出した。「再生可能エネルギーなどに10年で1,500億ドル投資し、500万人の雇用を創出」「自動車の燃費基準を毎年5%向上」「再生可能エネルギーが全電力に占める比率を12年に10%、25年に25%に」といった、具体的でわかりやすい目標だ。

 地球環境産業技術研究機構(RITE)は2009年12月8日、各国・地域の2020年までの温暖化ガス削減目標を比較した場合、日本の費用負担が突出して大きくなるとの試算をまとめた。
 日本の目標を達成するには国内総生産(GDP)比で1.13%の対策が必要だが、欧州連合(EU)は0.08%、米国は0.29%にとどまるという。20年までの目標については日本が1990年比25%削減、EUが同20%減、米国が05年比17%減を掲げている。
 日本が目標を達成するには、二酸化炭素(CO2)1トンあたり476ドルの費用負担が必要で、EUは48ドル、米国は60ドルですむという。

環境悪化は進んでいく中で

 生物多様性は開発や外来種などで急速に失われ、世界で年間4万種が絶滅していると言われており、環境省のレッドリストによると、絶滅の恐れのある種は3,155にのぼるという。
 環境問題による影響がこうした形であらわれている中、政府は3月1日、多様な生物の保全と持続的な利用を目指す『生物多様性国家戦略』の改定案をまとめた。20年までに国内で新たに絶滅の恐れのある種が生まれないようにし、50年までに生物多様性を現状以上に豊かにするとの目標を掲げたものだ。10月に名古屋市で開かれる国連の『生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)』に向け、国内対策を強化するという。その改定案では、絶滅の恐れのある種が集中する地域をホットスポットとして選定し、地域の人と協力して保全に取り組む。海洋の生物多様性保全を総合的に進めるための『海洋生物多様性保全戦略』の策定や、海洋保護区設定を目指すことなどを盛り込んだ。さらに、生物多様性をめぐる科学的根拠を提案する『生物多様性と生態系サービスに関する政府間プラットホーム(IPBES)』設立に積極的に関与するなど、地球規模での環境問題への貢献を目指すという。

 日本は総国土面積3800万ha、国土面積の66%が森林を占め、先進国中ではトップレベルである。そのうち人工林面積は1000万haを超え、この面積は世界第6位である。ただし、人口一人当たりの森林面積は0.2haと世界平均の1/3、決して豊富な森林を保有しているわけではない。

 環境問題が深刻になる中、少しずつであるが、環境対策が活発になりつつあるが、日本の状況は深刻である。様々な生き物が生息することなどを指す生物多様性の国内状況について、環境省の検討委員会は3月2日、「全体として損失傾向は止まっているとは言えない」とする初の報告書案『生物多様性総合評価報告書』をまとめた。
 歴史的には住宅、ダム、道路などの開発とそれに伴う生物の生息環境の破壊が最大の原因と分析。ただ開発の速度がゆるんだ近年はこうした影響が薄れつつあり、新たなリスクとして温暖化が浮上しているとの見方を盛り込んだ。特に森林や海洋で温暖化の影響が大きいと指摘している。海洋では水温の上昇によってサンゴの白化現象が目立つようになったという。世界的にも影響は深刻で、今後10~20年で15%減少するとの予測もあるという。サンゴ礁は魚介類の生息地としても重要で、生態系に広範な損失をもたらす恐れがある。
 そのため、検討委は目標の達成状況を把握するために設けられた21項目を審議した。その結果、「地球温暖化の影響低減」「多様性の持続可能な利用促進」「遺伝的な多様性保身」のうち3項目は未達成だった。理由として、温暖化の低減策が検討中のままで、持続的な林業ができる国際認証を受けた森林面積が全森林の1%に過ぎない点を挙げた。「生息地保全」など9項目は不十分と結論付け、達成は化学物質汚染による影響低減など2項目にとどまり、残りの7項目はデータ不足などを理由に判断しなかった。

 日本は02年の生物多様性条約第6回締約国会議で、各国は「2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させる」との目標で合意したが、目標を達成できなかった。
 これをどう改善させるのだろうか。

<参考資料>
・「クローズアップ2010 法案 本格協議スタート 温暖化対策 司令塔不在 検討過程非公開 政府へ募る不信 25%減 実現に裏付けなく」
足立 旬子、柳原 美砂子、大場 あい(毎日新聞 2010年2月16日(火))
・「日本に成長を 3 環境立国へ設計図描け」
(日本経済新聞 2009年12月9日(水))
・「温暖化ガス削減 RITEが試算 日本の負担突出」
(日本経済新聞 2009年12月9日(水))
・森の保護のこと、マジメに考えてみよう」
(COURRiER Japon 2009.11)
・「「絶滅の恐れ」増やさぬ 生物多様性国家戦略 政府が改定案」
足立 旬子(毎日新聞 2010年3月2日(火))
・「「国内損失止まらず」 生物多様性 目標は未達成 環境省報告案」
足立 旬子(毎日新聞 2010年3が3日(水))
・「温暖化、森林・海岸に影響大 シカ・サル、高山の植生乱す 沖縄でサンゴの白化進む 環境省 生態系損失で報告書」
(日本経済新聞 2010年3月3日(水))

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