地球環境をめぐる(2)

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 英国の波打ち際でワニが日向ぼっこし、ブラジルは広大な砂漠に、ヴェネチア、ホーチミン、ニューオリンズ、ムンバイなどは伝説の廃墟になる。そして人類の90%は死に絶える…。それが、平均気温が4℃高くなった世界だという。
 前回、こうした大規模な気温上昇が起きたのは5,500万年前、暁新世・始新世温度極大期と呼ばれる出来事による。この時は、海中で凍ったまま不活性化していたメタンが急激に気化し、5ギガトンもの炭素を放出したのである。既に温かくなっていた地球の気温は一気に5~6℃も上昇し、水のなくなった極地には熱帯雨林が生い茂り、大量の二酸化炭素が溶け込んだために海の酸化が進んで、多くの海中生物が死んだ。海水面は現在より100mも上がり、南アフリカからヨーロッパまで砂漠が広がった。
 温暖化の影響は気温上昇のテンポや極地の氷がどれだけ溶けるかによるが、今回も暁新世・始新世温度極大期と似たようなシナリオになりそうだ。
 恐ろしい結果を招く、4℃程度の温度上昇は、容易に起こりうるという。07年に『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)』が発表した報告書は、今世紀中に世界中で平均して1.1℃~6.4℃の気温上昇が起きるとしている。各種の試算では2100年までには気温が4℃上がるとされている。中には50年までにはそうなってしまうとする科学者たちもいる。

 温暖化後の世界はどうなってしまうのだろうか。
 温暖化により、二つの緯度で乾燥ベルト地帯が生まれるという。一本は、中米から欧州南部、アフリカ北部、日本を横切る乾燥ベルト。もう一本は、マダガスカル、アフリカ南部、太平洋諸島国家、オーストラリア、チリを横断するベルト地帯である。
 今、人間が定住し、耕作している土地の多くは、いずれにも適さなくなるという。海水温が上がって膨張し、氷河が溶け、嵐で波が押し寄せるため、まず沿岸部では海水面が現在より2mほど上がる。グリーンランドの氷原と南極の氷の一部も溶ければ、海水面と南極はさらに上がる。
 今世紀末頃には、南極西岸部では氷を見るのは難しいかもしれない。そうなれば、海水面が少なくとも1~2mは上昇することになる。

『水』がさらに貴重に

 地球の陸地面積の半分は、南北の緯度30°線に挟まれた熱帯地域に属している。この地域は、とりわけ気候変動に弱く、インド、パキスタン、バングラデシュは、今日よりも短期で激しいアジア・モンスーンに見舞われ、恐らく今日を凌ぐ破滅的な高波に襲われるという。また、アジア中が旱魃に悩まされ、バングラデシュは国土の3分の1を失うかもしれない。そして、アフリカも恐らく激化するだろう。
 さらに、気温上昇によって土中の水分が失われるため、水資源は世界中で枯渇するだろう。世界中の主要な砂漠は拡大することが予測され、サハラ砂漠は中欧にまで達するだろう。氷河が消えると、ドナウ川やライン川といったヨーロッパの河川は干上がってしまう。似たような影響はペルーやアンデス山脈、ヒマラヤやカラコルム山脈にもおよび、その結果アフガニスタン、パキスタン、中国、ブータン、インド、そしてベトナムに水が供給されなくなるだろう。

 充分な水が保証される唯一の場所は、緯度の高い地域である。それ以外の世界は、ところどころにオアシスが点在する砂漠となってしまうだろう。人類は、種としては生き延びることができるだろうが、今世紀を通じて「自然淘汰」は膨大な規模に及ぶだろう。世紀末に生き残っている人類の数は、恐らく10億もしくはそれ以下だろうという。
 人類は国境を越えて大移動することになり、降雨量が増えるだろうと予測されるカナダ、シベリア、スカンジナビア、パタゴニア、タスマニア、南極西部などに人口が集中するかもしれない。住居は林立する高層の建物になり、このような極端な集住状態では、疾病が急速に広がる恐れがあるので、早期発見のための警戒システムを整備して、疫病の大流行を防がなければならない。それに、水は稀少なので、食糧生産の効率も高めなければならない。
 海水の酸度も上がり、プランクトンが枯渇するため魚が消える。鶏は耕作可能な地域の辺縁部でかろうじて飼えるだろうが、牛を放牧するような場所は望むべくもない。家畜は山羊などの、砂漠の灌木を食べてでも生きられるような丈夫な品種に限られるだろう。
 都市部に電力を供給するため、発電の大部分は、巨大な太陽光発電設備になるものになる。ヨルダン、リビア、モロッコを横断する巨大な太陽光パネルを敷設すれば、世界中の発電の3倍にも上る量になる。また、原子力、水力、風力、地熱発電も補助的な電力源になるだろう。
 土地、エネルギー、食料、水を効率的に使えば、現在の人口が生存できる可能性がある。しかし、地球環境の生物多様性の大部分は消滅し、種の多くは、温暖化、水不足、生態系の消滅などにすんなりと適応できないし、飢えた人類に食べられてしまうからである。

力を合わせて、見つめ直せば可能性が出てくる

世界が4℃も温暖化するという最悪の予想が実現してしまったら、今日のような多様で生命あふれる地球は望むべくもなくなってしまう。ひとたび4℃の温暖化の勢いは止め処もないものになり、人類の運命はさらに不確かなものになるだろう。安全を期すためには、炭素排出量を15年後までに70%も減らさなければならない。だが今のところ、人類は毎年3%ずつ排出量を増やしている。
 それは人間に耐えられない気温上昇ではないのかもしれない。しかし、人間はその時に残る資源で生き延びられるだろうか。土地と生産手段を再配分すれば可能かもしれない。私たちは、食料、水、エネルギーの点で、各国が自給体制を敷かなければならないという先入観にとらわれている。だが、世界を新鮮な目で見直し、資源のありかを考えて、人口、食料、エネルギーの配分を考え直す必要があるだろう。

<参考資料>
・「気候変動シミュレーション「地球の気温が4℃上がったら…」」
ニューサイエンティスト(UK/COURRiER Japon 2009.11)

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