米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (2)

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 アメリカの大統領選が盛り上がり、民主党のバラク・オバマ上院議員(47)が次期大統領に当選した。そして、09年1月20日にアメリカの第44代大統領に就任することが決まった。
 これを受けて、アメリカ国内の反応、そして、世界の反応はどうだろうか。

 ヨーロッパの反応はこうだ。
 欧州連合(EU)のバローゾ委員長は11月5日、「新しい世界には新しい政策が必要。オバマ氏が欧州とともに世界の利益のため協力することを望む」(*1)。
 イギリスのブラウン首相も同日、「世界経済の困難な時期を乗り越えるため、人々を助ける決意をオバマ氏と共有している」(*1)「多くの価値観を共有する真の友人」(*2)、フランスのサルコジ大統領は「フランスと欧州に膨大な希望を与えた」(*1)、ドイツのメルケル首相は「世界は大きな転換点を迎えている。欧米が信頼感を持って緊密に連携できると思っている」(*1)「米欧が緊密に協力し、相互信頼の精神で共に危機に立ち向かえると確信する」(*2)という反応だ。ちなみに、フランス大統領府はオバマ氏への祝意を示した上で「米国民は変革と楽観主義を選択した」「仏と欧州は、世界の繁栄と平和維持のための新たなエネルギーを米国から得られるだろう」(*1)などと反応。
 アジアの反応はどうだろうか。中国のコキントウ国家主席は「米中の建設的協力関係を新たなレベルに押し上げるため共に努力した」(*2)という反応。韓国の大統領官邸報道官は11月5日「韓米の未来志向的同盟関係が一層高い次元で発展することを確信する」(*3)とした。
 しかし、辛口な反応もある。
 ロシアのメドベージェフ大統領は米大統領選の結果判明直後の11月5日、年次教書演説で米国に対抗し新型ミサイルを配備する方針を明らかにするなど米国と真っ向から対立。「急速な関係改善は期待できない」(マルゲロフ露上院国際問題委員長)(*2)とし、「米新政権とは本格的につきあうことを期待している」「グルジア紛争は北大西洋条約機構(NATO)拡大の口実として利用された。米国のわがままな外交政策の結果だ」(*4)などメドベージェフ大統領は述べた。ただ、12月4日のプーチン首相が国民からの質問に答えるテレビ番組では「米国との関係改善を望んでおり、前向きなシグナルを受け取っている」と語った(*10)。
 キューバのフィデル・カストロ前国家評議会議長(82)は11月14日、論評を発表し、「世界が変わると信じるのはまったく無邪気なことだ」(*5)と、現時点では米国の政権交代に過大な期待を抱くべきではないと指摘。「(米国が)より寛容になり、より好戦的でなくなるだろうと多くの人が夢を抱いている」とし、「現在の指導者(ブッシュ大統領)に対する軽蔑が、幻想を抱かせている」と分析(*5)した。
 南米のベネズエラの反米左派のチャベス大統領はオバマ氏の勝利を祝福する声明を発表(*6)。

 一方のメディアの反応はどうだろうか。
 まずは米国メディアの反応をうかがう。
  ニューヨーク・タイムズ紙は11月5日付で「オバマ圧勝で人種の壁崩れる」(*6)、イラクから撤退しアフガニスタンのテロとの戦いに集中すべきだ。代替エネルギー開発を急ぐ必要がある。ちぐはぐな金融機関救済策の早期立て直しや移民政策も重要だ(電子版)(*7)。
  ウォールストリートジャーナル紙は社説で、「黒人と白人を両親に持つ」一人の男が(公共施設での黒人分離を認めた)ジム・クロウ法の終えん(64年)からわずか2世代で権力の頂点に立った」と歴史の重みを伝え、「米国を『人種差別主義』と呼ぶ西欧の民主主義国では起こりえなかったこと」を成し遂げたとつづった(*6)、民主党は議会選でも大勝した。オバマ氏が「労働者の95%」向けの減税を約束したことに注目する。(公約と対照的に)税金が増えると考える有権者は70%に上り、うち55%がマケイン候補に投票した。米国民は民主党が国を統治するすべを学んだかどうかを目にするだろう(電子版)(*7)。
  ワシントン・ポスト紙は「オバマ氏はブッシュ大統領の(負の)遺産を消し去ることはできないが、世界における米国の立場を好転させうる」とした。シカゴ・トリビューン紙は同氏の勝利が金融危機を追い風にしたもので、「新大統領は結果で判断される」との反応だった(*6)、有権者はオバマ氏に、ブッシュ政権やマケイン氏よりも優れた経済政策を期待している。地球温暖化など現政権が失敗した課題に対処できると考えている。ただ、米国で差別は残っており、黒人大統領が機能するかどうかは未知数といえる(電子版)(*7)。

 英国のメディアの反応は、タイムズ紙はオバマ氏の当選に関する「米国は言われるほど変化していない」(*6)、と同時に、米国民は再び独特の自己革新能力を発揮した。初の黒人大統領選出は歴史的だ。経済再建などオバマ氏の挑戦も歴史的になる(*7)。
  デイリーテレグラフはコラムで「いずれ新大統領は外交政策の危機に行き着く」。安全保障問題などで米国の国益と欧州の見解が衝突し、オバマ氏への「大いなる幻滅」が広がり、「6カ月もあれば反米主義が息を吹き返す」(*6)。

 仏のメディアの反応はというと、ルモンド紙は、米国民は二十一世紀の世界で米国が要する候補を選んだ。黒人は自分たちが米国民だとさらに強く考えるようになる。米新政権は同盟国との関係強化だけでなく、イランのような対立する国々との対話も進めるだろう。オバマ氏当選は世界にとってチャンスだ(*7)。

 ロシアのメディアの反応はというと、ブレーミャ・ノボスチェイ紙は「米国に変革が訪れた」。コムソモリスカヤ・プラウダ紙は「米国人はペレストロイカ(立て直し)を支持」、イズベスチヤ紙は「米大統領選でサーカシビリ(グルジア大統領)が敗北」との見出しで、マケイン氏を反露サーカシビリ政権に重ね合わせた(*6)。

 アジアでは、中国の中国共産党機関紙・人民日報が発行する11月6日付の時事情報紙が「環球時報」は中国人指揮者5人のインタビューを一挙掲載し、オバマ氏の対中政策について「楽観を許さない」。オバマ氏個人の評価については「理想主義者であると同時に現実主義者であり、中国の敵にはならないだろう」(*6)。
  新華社は、米議会は民主党が優勢になる。同一政党がホワイトハウスと議会で優勢になると、民衆の警戒心を引き起こすため、世論の抵抗などに直面するだろう。オバマ氏が大統領就任後に第一に着手するのは経済の立て直しだ。危機を克服できるかを世界が注目している(*7)。
 韓国の朝鮮日報は「上下両院を掌握する民主党も保護主義の意向が強く、アジア諸国がやり玉に挙げられる可能性が高い」(*6)。

 中東では、イスラエル最大紙イディオト・アハロノト(11月6日付)は、笑顔で娘を抱きかかえるオバマ氏の写真を1面にあしらい、「希望」の大見出しを掲げた。特にイランの各開発問題を巡る同氏の「対話路線」には、「オバマ氏は依然、謎だ」などと警戒感を隠さない(*6)。
 イランの保守有力紙レサラトは社説で、「イランに爆弾投下を」と叫んだマケイン氏に対し、対話重視のオバマ氏の対イランが意向に期待を表明。「現実のイラン」と向き合い、「イラン打倒」を目指しえ失敗した歴代大統領と同じ轍を踏まないよう求めた。オバマ外交は「私たちの対米戦略に左右される」とも指摘(*6)。

 南米ベネズエラでは、チャベス氏の声明について反チャベス派の有力紙ウニベルサルは11月6日、「声明には明らかに和解姿勢のトーンがあり、外交儀礼以上の意味がある。対話を開けるというサインをオバマ氏に送ったものだ」との識者の分析を掲載(*6)。

 アフリカのエジプトの政府系紙アルアハラムは11月6日付の社説で、オバマ氏の勝利によって「米国は変革する能力を証明した」と褒めたたえる一方、「(現)政権が作り上げたイスラム教への敵対停止」と「他国への内政干渉の終了」を図る機会だ、とも指摘(*6)。

 このような各国の反応、メディアの反応があり、オバマ次期米大統領への期待と警戒がうかがえるわけですが、現在、中東の問題となっている、イラク周辺の現地の反応はどうなっているだろう。
 イラク国民は、母国の荒廃を招いたブッシュ共和党政権に反発する人々は、オバマ氏が約束した駐留米軍の早期撤退を歓迎する一方、同氏が唱える「イランとの対話」によってイランの影響力が増すことなどを懸念(*8)しているという。
 一方のイランの反応は、当選当初の歓迎ムードが、やや現実的な見方に変化してきたそうだ。核問題などで対立するイランとの「直接対話」を表明していたオバマ氏が、その後、慎重な姿勢を見せ始めたことで、イランのモッタキ外相は11月19日、「米大統領の姿勢は、選挙期間中と就任後では変わるものだ」と指摘、「我々は米国人の(イランに対する)発言を精査しているが、オバマ氏が来年1月に大統領に就任し、対イラン政策が発表されるのを待っている」とも述べ、新政権の出方を慎重にうかがう姿勢(*9)。
 中東での歓迎ムードは「歓迎ムードはブッシュ政権の罪があまりに大きかった反動」(*2)との分析もある。

 このようなことから、次期大統領にオバマ氏が当選したことに対して、多くの反応と期待と警戒がうかがえた。このことは、毎回の米国の大統領選挙に対して、注目されることであるが、今回の注目度は眼の見張るものがある。
 その注目度に対して、オバマ氏はどう答えるのだろうか。「チェンジ」を掲げ、変えようとすることができるのだろうか。

つづく

<参考資料>
*1 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『欧州、関係立て直し望む』
*2 毎日新聞 2008年11月6日(木)『各国首脳 期待の声 「ムード先行」慎重論も』
*3 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『FTA批准や対北朝鮮で不安 韓国』
*4 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『米新大統領に期待と警戒 ロシア、早くも揺さぶり ミサイル配備表明 対米批判明確に』
*5 毎日新聞 2008年11月16日(日)『オバマ氏への期待「無邪気なことだ」 カストロ前議長 指摘』
*6 毎日新聞 2008年11月8日(土)『オバマ大統領誕生へ―――世界のメディアは』
*8 毎日新聞 2008年11月7日(金)『イラク 米軍早期撤退に懸念 オバマ氏公約 治安に不安も』
*9 毎日新聞 2008年11月21日(金)『イラン 「オバマ熱」冷め慎重に 米との対話 就任後の姿勢注視』
*10 毎日新聞 2008年12月5日(金)『プーチン氏 米次期政権に期待感 「首相会見」 露大統領復帰の憶測』

<参考記事>

・「【米大統領選挙】祝バラク・オバマ」/gujin blog

・「オバマ大統領が開く世界を妄想する」/戦争に負けた国

・「んー、アメリカ大統領選の報道姿」/freedomの「ん( )」なブログ

・「Presidential Inauguration 2009」/写楽 in Yahoo

・「第286号 転換の時代」/日々通信 いまを生きる

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コメント

  1. 谷口 永治 より:

    和広さんへ

    すみません。返事が遅くなってしまいました。
    リンクありがとうございます。
    こちらからのリンクはDiaryのほうからでもよろしいでしょうか?

    谷口永治

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