存在感が強くなる中国(2)

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 現在、アメリカと中国の関係に多くの人が注目している。その関係は何も国と国との関係だけではない。国と企業の関係も、企業と企業の関係も大いに含まれている。それにアメリカと中国の関係は、それぞれの体制や歴史、文化も大きな影響を与えそうだ。
 最も重要なのは、中国政府内で今、アメリカや先進諸国との関係を軽視する傾向が強まっている可能性があることだ。80~90年代、近代化を目指す中国の外交方針は単純そのものだった。それは、西側、特にアメリカと仲良くすることだった。
 中国政府にとってアメリカは、資金源として、製品の輸出先として、またWTO(世界貿易機関)加盟などの目標を達成するための政治的な協力者として必要な存在だった。78年に改革開放を始めた鄧小平から江沢民前国家主席に至ったと考えているようだ。

 最近、中国政府の姿勢は変わってきた。通常、中国政府は儀礼へのこだわりが強く、オバマ米大統領のような国家元首に対し、序列の劣る温(中国の国家元首は国家主席)の側が傲慢な振る舞いを見せたことなどなかった。だが時代は変わっており、中国政府の変化もその反映かもしれない。この10年で中国の国内市場は成長し、先進国以外への輸出もかなりの比率を占めているようになり、資本収支も大幅な黒字になっている。その分、中国が先進国の政府や企業に調子を合せなければならない理由は減ったのかもしれない。
 昨年12月、コペンハーゲンで開かれた国連気候変動枠組条約締約国会議(COP15)でも、中国はこれまでに例がないほど欧米諸国を軽んじた。この会議での中国外交は、全体に不可解なものだった。12月18日の午後に各国首脳が集まって行われた非常に重要な会議に、2線級の中国政府関係者が出席した。いつもの中国政府なら考えられないようなヘマだ。
 シンガポールや韓国のような東アジアの小国は、成長しても先進国になっても常に対外開放を志向してきた。だが巨大な中国は、経済の出世の階段を上るにつれて国内の力関係に気を取られ、対外的な関心は薄れていくように見える。

国内の力関係が変化

 80年代と90年代前半には、主として私有企業が中国の成長を牽引した。最近では、都市部の国有企業が主役に躍り出て、経済に対する国の力も強まった。これは、中国政府が景気刺激策のため、GDP(国内総生産)の12.3%に上る財政出動を行った過去1年間に加速した現象だという。
 中国進出企業の話では、中国政府の新たな目標は中国企業を世界のトップ企業に育成することだという。そのためには、もう先進国企業に無制限の市場アクセスを与えるわけにはいかないと、あからさまに認めているそうだ。
 しかし、中国国内外で拡大している深刻な矛盾や対立がある。
 中国は主要国の中で唯一、手の込んだ公の検閲システムを持つ国であり、全ての情報関連企業は検閲を受け入れなければならない。同時に中国政府は、サイバースパイとサイバー攻撃を目的とした世界一精巧なシステムを開発することに全力を傾けてきた。
 中国からのハッキング被害はこの数年で増加している。しかも標的は人権団体にとどまらず、外国企業や政府にも広がっている。国外からの攻撃の多く、ひょっとすると大半は中国から仕掛けられているかもしれない。中国からのサイバー攻撃を、アメリカの国防当局が直面する中で「単独では最大の問題」と呼ぶ。それに、中国の経済社会が近代化するにつれて、中国の一党独裁体制と経済的野心の間に軋轢が強まっているという。
 このように、インターネットが中国を変化させているように、中国もネットを変化させている。そして、グローバル化が中国をつくったように、中国もまたグローバル化を形作っているということだ。

 その注目の中国の勢いは目を見張るものがある。中国の1~3月期の国内総生産(GDP)は前年同期比6.1%増。1992年以来、最低の伸び率だったが、一部地域では中国政府が目標に書かれる8%成長を上回っている。
 高成長率の維持が目立つのは、四川省、重慶市などの内陸部で、四川省の同期の域内成長率は10.8%、重慶市は9.0%で、全国平均を大きく上回った。沿海部でも江蘇省は同10.2%成長を記録した。既に着工した北京―上海を結ぶ高速鉄道の路線の4分の1が江蘇省を通過する計画となっており、政府の投資が経済を支える構図があるためだ。
 輸出拠点として中国の経済を支えてきた上海市、広東省は経済悪化に歯止めがかからない。上海市の成長率は2008年通年で9.7%、広東省は10.1%だったが、今年1~3月期はそれぞれ3.1%、広東省は同5.8%となった。これは輸出の減速が最大の原因だが、道路整備などが一巡、インフラ投資など大規模な官需が見込めないことも響いている。つまり、グローバルな部分、特に売る方が厳しい状況である。

活発になる中国の状況

 中国の地方景気の二極分化が鮮明になってきた。4兆元(約57兆円)の景気刺激策を受けたインフラ投資が集中する内陸部などは1~3月期に2ケタ前後の成長率を維持するが、広東省など輸出型の民間企業が集中する沿海部は減速が続く。成長を牽引してきた沿海部と発展の遅れが指摘される内陸部の景況感が逆転した格好で、工場閉鎖が続く沿海部は消費も不振な状況である。中国国内の状況が逆転した形になっている。
 中国政府は4兆元のインフラ投資を『カンフル剤』に使い、個人消費主導の景気回復に移行する戦略だが、足元の消費でも、官需に依存する地域と民間企業が集積する地域で明暗が分かれる。
 中国のGDPに対する輸出の割合は4割近くあるが、今年1~4月の輸出額は前年同期比で約2割減少。これを4兆元の景気刺激策で穴埋めしている構図である。

 そんな明暗が分かれる中国の内部であるが、中国の影響力は増している。エネルギー分野では中国の影響力は大きくなり、資源争奪戦が既に始まっている。
 その中国は既に米国に次ぐ世界2位の石油消費大国となっており、2008年で世界消費量の約10%を占める。08年の石油消費の輸入依存度は約5割となり、政府予測によると、20年には消費量が08年比で3割以上増えるが、生産量は微増にとどまるため、輸入依存度は約6割に高まる見通しだという。
 中国のエネルギー消費量は既に驚異的な状況であるが、今後、中国政府は国家戦略石油備蓄量を5年後をメドに現在の2.6倍の2億7000万バレルに増やすという。浙江省などにある第1期備蓄基地の原油充てんがほぼ完了し、年内にも第2期の備蓄基地の建設に着手する。中国が近く建設に着手する第2期備蓄基地は、8カ所で構成し、合計備蓄量は2680万キロリットル(1億6900万バレル)。5、6年以内には大半の基地を完成させ、順次充てんを始めていくという。
 中国の国家備蓄量は、第1期基地の充てん完了時点で約1640万キロリットルと原油輸入量の20日分程度に相当する。これに対し、日本は09年4月末の段階で、国の直轄事業である国家備蓄(103日分)と、石油備蓄法に基づき民間石油会社などに義務づけられている民間備蓄(81日分)を合わせると184日分(8608万キロリットル)という。
 なお、中国政府は20年に原油備蓄量を先進国並みの90日分程度までに高める方針で、第2期と同規模の第3期基地の設置も検討している。
 中国の戦略は着々と進んでおり、それに伴い、世界にも影響力を増している。

<参考資料>
・「文明の衝突「グーグルVS中国」」
ファリード・ザカリア(国際版編集長/Newsweek 2010.1.27)
・「中国の地方景気 構図様変わり 沿海部失速/内陸部は2ケタ成長 官僚が「逆転」演出」
吉田 渉(日本経済新聞 2009年6月6日(土))
・「中国、石油備蓄2.6倍に 5年後メド 4000億円かけて新基地」
(日本経済新聞 2009年6月29日(月))

参考記事
・「新型兵器は中国にだけは輸出するな!損をするだけだ」/絆(きずな)

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