女性を取り巻く環境は向上したのか(4)

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 どの国でも指導者といえば男性というのが相場であるだろう。たとえ女性がリーダーになった時は男性扱いされることが多い。いい例が「鉄の女」ことマーガレット・サッチャー元英首相や「内閣で唯一の男」と呼ばれたゴルダ・メイア元イスラエル首相である。女性リーダーを例外的な存在と見なすことにより、指導層の男性優位を保とうとしているのだろう。

 国連は3月に、95年に北京で開かれた第4回国連世界女性会議以降の進歩を検証する報告書を発表した。会議では女性の基本的な健康と安全を保障するという行動綱領が採択されたが、なかなか実行されていない。紛争地域の女性は命の危険や性的暴力の恐怖にさらされ続け、基本的な人権が後退している。
 しかし、女性の声が抑圧されがちな国々で、驚くほど多くの女性が反政府運動の先頭に立っている。イランの「緑の革命」の前線にも、アフガニスタンやソマリア、リベリア、ルワンダ、アンゴラの改革派の主力にも女性たちがいる。紛争地域では女性の姿が目立ち、彼女たちはブログで訴え、デモ行進や座り込みのストライキを率いる。
 これらの女性の抗議活動の高まりは、いくつかの意味で女性の政治参加が進んでいる傾向を反映している。世界全体では、女性議員の割合が95年の11.3%から09年末は18.8%に増えた。その主な理由は、イラクなどで導入されている女性議員のクオータ制(割り当て制)である。同時に、途上国全体で女子の教育レベルが急速に向上しており、女性の経済力の飛躍につながっている。中国では企業家の20%が女性。ロシアは73%の企業に女性の上級管理職がいる。

女性自身が立ち上がって、変化を起こす

 紛争地域や保守的な国では、女性が公の場所で抗議活動をすれば暴力を受ける危険がある。しかし、インターネットは、彼女たちがこれまでより安全に不満を訴える手段になっている。
途上国の女性の新しい世代は、自分たちの権利のために自分たちが戦わなければ、誰も戦ってくれないと理解するようになった。彼女たちは、過去の世代に比べてはるかに戦う準備ができている。多くの国で女子の初等・中等教育の就学率は男子とほぼ同水準になり、イランやインド、エジプト、中国では特に上昇している。
 国によっては、男女とも幅広く進んだ教育は共産主義や社会主義の遺産でもある。多くの途上国は、男女を問わず技術者や医師を切実に必要としており、懸命な努力が実っているという。
 アメリカのように、高等教育を受ける女性の割合が男性と同じか、上回ってさえいる途上国もある。ブラジル、ロシア、アラブ首長国連邦は大学卒業生の60%以上、インドは47%、中国は42%が女性である。さらに、女性の経済力も強まっている。今後10年間で世界の収入が増加する分のうち、大半は女性が稼ぐだろう。国際機関からの支援も増えている。女性の経済的地位の向上が、社会に平和と繁栄、安定をもたらす上で、時間とコストの面で最も効率のいい方法と見なされるようになっている。

 これからは女性に対して、政界への門戸をより拡大するような措置を講じるべきであり、公正さという観点からもいえるだろう。女性が議会や政府で存在感を示せば、男性とは異なる視点から政策を立案できる可能性がある。
 男女差と同じくらい、個人差というものもある。しかし男性だけの組織と女性だけの組織を比べてみると、明らかな違いが認められる。男性優位の組織はより大きなリスクを取る傾向があり、これは良い方向に作用することもあり、金融危機で明らかになった投資銀行の「暴走」のような問題を引き起こすケースもある。男性か女性のどちらかに偏った組織は、関心の対象も運営の仕方も異なる。

クオータ制のメリット

 そこで、クオータ制という制度が一つのキーワードになってくるだろう。
 マケドニアの議会は定数120人のうち40人が女性である。彼女たちがつくっている議員クラブは、党派を超えて活動する唯一の議員組織である。メンバーには与党議員も野党議員もいるので、意見が激しく対立することはあるが、分裂には至っていない。彼女たちは男女機会均等に関する委員会を通じて、児童福祉や働く母親の支援、家庭内暴力などの問題で政治的成果を上げている。
 これだけの影響力を及ぼせるのは、議員の男女比率に関するクオータ制があるからだ。クオータ制は多くの国で導入されており、女性の政界進出を後押ししている。
 カナダやアメリカ、イギリスでは、第一次大戦で女性が一定の役割を果たしたことが女性の参政権獲得への道を開いた。ルワンダや南アフリカ、ウガンダでは、旧支配体制との闘いにおける女性の功績が女性議員の増加をもたらした。その数はクオータ制によって一定水準に維持されている。北欧諸国ではかなり以前に、女性議員を増やすためにクオータ制が導入された。今や閣僚の男女比もほぼ半々になっている。
 だが、男女格差をなくすためのシステムで、クオータ性ほど強い批判にさらされているものも珍しい。このクオータ制に対して、アメリカやカナダでは、実際に導入するのが難しいという制度上の問題がある上に、特定グループを優遇する「逆差別」だという批判を浴びることも多い。
 しかし、クオータ制といった制度を増やすことが女性活動家の努力を後押ししている。「女性枠」がある46ヵ国は選挙で選ばれる公職の21.9%を女性が占めるようになったが、クオータ制のない国は15.3%である。
 ルワンダは国会議員の56.3%が女性ということで、世界でも最も多い。ウガンダ、ブルンジ、エクアドルは選挙で選ばれる公職の30%が女性で、団結して変化を起こせる「絶対数」に達している。これらの国々では、女性の政界進出が広い意味で民主化の証しと見なされている。

 これらのことから、クオータ制が導入されれば、議会での女性の存在感が強まり、一般女性の自信を育めるという利点もある。議会や政府の構成メンバーの男女比が社会全体と同様になれば、誰もが公職に就く権利があるというメッセージを国民に伝えられることができる。
 専門家によれば、クオータ制はその意義を政党自体が認めた時に最もうまく機能するという。政党が女性の役割の重要性を認識し、政治家として資質のある女性を候補者として起用し、有権者に支持を呼びかけるのが理想的だろう。

クオータ制がないイランでは

 クオータ制のないイランは、女性の国会議員こそ2.8%しかいないが、女性活動家は至る所にいる。昨年6月の大統領選では現職の再選という結果に疑惑が噴出し、あらゆる年代の女性が抗議活動に参加した。
 彼女たちが立ち上がった理由の1つには、野党勢力を象徴する2人の女性の存在がある。
・野党候補のミルホセイン・ムサビ元首相の妻は、著名な学者で作家のザフラ・ラフナバル。選挙戦では夫と堂々と手をつないで登場し、女性差別を終わらせようと訴えた
・メフディ・カルビ元国会議長の妻であるファテメも差別反対を訴えた
 ラフナバルは、イランの女性は男性と同じように教育を受け、政治家になる準備ができていると強調する。国内の大学は学位取得者の60%が女性で、イラクのように裕福な中流階級がたくさんいるのだ。
 イランのジャーナリストで現在はロンドンに亡命中のマシ・アリネジャド。ブログやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のフェースブックで政治的な抗議活動を続けるアリネジャドも、世界の女性活動家の新しい世代を象徴している。多機能携帯電話や小型デジタルカメラのおかげで抗議活動の映像を世界中に発信できるようになり、SNSは女性の動員を増やしている。

 しかし、イラクや中東地域、途上国の女性たちにとって、選挙に出馬することはかなり危険な行為である。イラクの憲法は、紛争に苦しむ多くの国と同じように、議会の総議席数の4分の1を女性にすることを義務付けている。こうした措置で女性の指導者や政治活動家が増えている一方で、反動も高まっているのも事実であるのだ。2月には北部のモスルで、連邦議会選のある女性候補者が射殺された。

社会の在り方を変える必要がある

 それに他にも問題がある。それは、世界でも混乱を極める国々で女性の政治力を高めることが、どのように国を良くしていくのか、本当に良くすることができるのか、ということだ。女性指導者が必ずしも男性指導者より平和的ではない例は、マーガレット・サッチャーやインディラ・ガンジーなどいくらでもいる。男性より優れた指導力があるという証拠もない。
 しかし、女性指導者は、優先順位が男性と異なる傾向がある。学問的な研究によると、女性政治家は国民の健康と教育、子供の養育をより重視するという。
 複数の調査によれば、子供は小学校に入学する頃には、男性と女性の役割分担という概念を既に頭に植え付けられているという。こうした偏見が無意識のうちに刷り込まれてしまうのなら、教育によって男女平等を実現するのは難しい。
 つまり、女性の政治家を増やすべきだと思ったら、まず社会の在り方を変える必要がある。私たちは社会の在り方を通して、世界の仕組みを理解していくからであるのだから。

<参考資料>
・「彼女たちの叫びを聞け」
ラーナ・フォルーハー(Newsweek 2010.4.28)
・「政治の世界のガラスの天井に負けないで」
キム・キャンベル(元カナダ首相/Newsweek 2010.4.28)

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