女性を取り巻く環境は向上したのか(2)

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 近年、女性の社会進出は世界的な現象になっている。
 今の米国の労働人口は、男性よりも女性の方が多い。信用収縮の直撃を受けたのが男性だったため、失業者の5人中4人が男性であった。英国でも不況は男性労働者を直撃している。

 今、社会で重宝されるのはマルチタスキング能力、コミュニケーション能力など。これらの能力は女性に得意とされている『女性的』なスキル。要するに、『男らしさ』を重んじる風潮は廃れてきているということだ。
 男性の特徴として、大きなリスクを厭わないこと、注意力が長く持続しないこと、そしてエゴに衝き動かされることがあげられる。こうした特徴は、石器時代から第二次世界大戦までは、男性にとって有利に働いたのだが、近年は、こうした特徴があると良い職に就けない時代になっている。
 英国では男子は女子に比べて学校の成績が悪く、大学への進学率でも遅れをとっている。08年の統計では、英国の女子大学生の数が17万2925人だったのに対し、男子大学生の数はたったの14万1643人。加えて10代の男子は同年代の女子に比べて、薬物乱用、飲酒、犯罪などの反社会的な行動をとる傾向がある。さらに、失業した際、職業訓練を受ける機関が長いのも男性だという。

 より平等な社会を築くために、女性に焦点をあわせた政策を各国がとってきた。その結果、今度は男性たちが、世の中で自分がどこに位置しているのか確信を持てなくなっているのかもしれない。
 そこで、仕事の世界の女性化が進む今、男性は自分たちの役割を再検討するようになってきた。20代の頃は男女の収入に大きな差はないが、出産を機に、比較的収入の低い女性が仕事を減らし、育児を担当するのが、これまでの通例だった。
 それでは、仮に女性の方が男性に比べて収入が高い場合、どんなことが起きるのか。社会的成功を収めた女性は、子育てに熱心なパートナーを見つけ、そのパートナーに家庭を任せる道を選択することになるだろう。現に、英国では、専業主夫の数がここ10年で倍増しており、現在、20万人に達していると報告されている。
 前世紀、フェミニズムの運動により、男女平等の道が切り拓かれたが、それは女性が男性になることを求める動きではなかった。フェミニズムを求めていたのは男女が対等になることだった。たとえ性差はあっても、男と女は同じ人間である。誰もが家族が素敵な生活を送り、子供が幸福に育ち、自分たちが充実して面白い人生を満喫できることを望んでいる。
 これからの社会は、女性が今後も学業で優秀な成績を取り続けるのであれば、世の男性たちは、新しい生き方を迫られるだろう。

消えない『差別』

 今や、アメリカの労働力の過半数は女性が占めている。史上初の女性大統領が誕生するのも、そう遠い未来ではないだろう。
 しかし、アメリカ初の黒人大統領が誕生しても人種差別が消えないように、企業のトップに女性が就いても性差別は撲滅できずにいる。実際、進歩に伴う矛盾―華やかな成功が、根強い不平等を隠すこと―がまさに問題なのだ。つまり、女性が進歩を実現したために、以前なら性差別と見なされたであろう偏見が、今も存在するのに無視されているのである。
 ある調査では、初任給の交渉をする女性は男性の4分の1だという。それには最もな理由がある。ハーバード大学の調査によると、初任給の増額を求める女性は「あまり感じが良くない」と見なされ、雇用されにくいのだ。それに、今の世代の女性は、『ただし』の意識を植え付けられている。バリバリやる、ただしやり過ぎないこと、自慢しないことといったことだ。若い女性は「嫌われる、仲間外れにされる」と思って自分を抑えてしまうのだ。
 このように性差別が微妙だけど確かに存在すると認めることは、今の世代には難しい問題である。

立ち上がった女性たち

 当時、ニューズウィークの奥付けの欄の下の方にある名前はほぼ全て女性のものだった。女性は殺人事件や国務省、68年の大統領選挙について取材しても、いざ記事を書く段階になると情報を男性の同僚に渡さなければならなかった。
 69年のある日、若いリサーチャーが弁護士の友人に不満をこぼすと、雇用機会均等委員会に相談するように勧められた。彼女は助言に従い、やがて集団訴訟の書類に署名する仲間が少しずつ増えていった。彼女たちは情熱的な若い女性弁護士と出会い、不安な気持ちを抱えながら機が熟すのを待った。
 1年後、全米で女性運動が高まる中、男ばかりのニューズウィーク幹部はフェミニズム特集を組むことを決めた。彼らは足元で起ころうとしている嵐に気付かず、社内に大勢いる女性を素通りして、会社の幹部の妻に執筆を依頼。編集後記で「一流のジャーナリストにして女性でもある」と紹介した。
 それが最後の一撃となり、特集号の発売前夜、ニューズウィークの女性たちはお金を出し合って1人を飛行機でワシントンに行かせ、雑誌の発行元であるワシントン・ポストの社主キャサリン・グラハムに特集号を渡した。
 翌月曜日の70年3月16日、米自由人権協会に設けられた会見場に『ニュースの雌鳥たち』(と地元タブロイド紙が呼んだ)がずらりと並び、特集号を掲げた。鮮やかな黄色い表紙のタイトルは、彼女たち自身の宣戦布告だった―『女性たちの反乱』。2日後にレディース・ホーム・ジャーナル誌で働く女性たちが座り込みの抗議を実施した。すぐに他の女性も続いた。
 希望が生まれた瞬間だった。そして、進歩は次々に続いた。20年後には前例のない数の母親が働くようになり、全米女性機構(NOW)など女性組織の会員が急増した。新しい合言葉は『ガールズ・パワー』。そして、00年に就業者に占める女性の割合が過去最大になると多くの女性が目標を達成したと思った。

 しかし、その後は、微妙な反動が潜行している。9・11テロと2つの戦争を経験し、大不況に直面して、男女平等はあまり重要な問題とされなくなった。世界経済フォーラムが教育、健康、政治、経済について評価する世界男女格差指数で、アメリカは06年の23位から09年は31位に後退した。これはキューバより低く、ナミビアを辛うじて上回る程度だ。
 アメリカでさえ、(女性たちは)成功にとって最大の障害は「男臭い、あるいは家父長的な企業文化」だと考えている。例えば、女性が最も多い職業は、秘書、看護師、教師、レジ係。働く女性の43%がこうした低賃金の『ピンクカラー』労働者だ。看護師を『お手伝いさん』と入れ替われば、60年代の上位4つとなる。当時の求人広告は男女別だった。
 40年前、ニューズウィークの女性たちはこれらの問題が解決されていくと思い、そう願っただろう。しかし、現実はどうだろうか。

現実はまだ…

 米教育省の統計によれば、大学の全ての教科で女性は男性より成績が高いのに、学校を卒業して1年後の給料を比べると、女性が受け取る金額は平均で男性の80%に過ぎないという。女性の就業問題を研究する非営利団体カタリストの最近の調査によれば、ビジネススクールでMBA(経営学修士号)を取得した後、最初の就職先で得る給料は女性が男性より平均4600ドル少ないという。
 09年にニューズウィークのアメリカ国内版に掲載された49本のメイン特集記事のうち、女性の記者が書いたのは6本だけだった。さらに、アメリカの有力雑誌の記事執筆者として名前が誌面に載る回数を比べると、女性は男性の8分の1に過ぎない。フォーチュン誌の上位500社に名を連ねる有力企業のCEOに占める女性の割合は、たったの3%。法律事務所の共同経営者や政治家に占める女性の割合は、4分の1に満たないという。それに、インターネットの世界でも例外ではない。

 ただ、当時の女性の立場を訴えた女性たちが達成した勝利の多くを、現代の女性たちが享受していることも確かだ。全国的な雑誌で取材し、記事も書く。バラク・オバマ米大統領が就任後、初めて署名した法律は雇用と賃金の平等を推進するものだった。
 だが、そのような法律が必要だということ自体が現実を物語っている。つまり、平等は今も絵空事なのだ。

<参考資料>
・「女性化する社会のなかで男たちが「第二の性」となる」
サンデー・タイムズ・マガジン(UK/COURRiER Japon 2010.4)
・「女性は本当に買ったのか」
ジェシカ・ベネット、ジェシー・エリソン、セーラ・ボール(Newsweek 2010.4.7)

参考記事
・「性の問題・その1    【女性蔑視・差別】」/私は害になりたい。 ~iZa!本家~

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