米オバマ大統領が誕生 「チェンジ」は達成されるか (1)

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 2008年11月4日、アメリカ大統領選挙が実施された。
 9・11テロ後、アメリカはアフガニスタンとイラク戦争で泥沼化し、いまだにその泥沼から這い出せないでいる。そんな中、さらにアメリカに追い討ちをかけたのが、リーマン・ブラザーズの破綻。この破綻がきっかけで、金融業会も大混乱に陥ってしまった。
 戦争に、金融危機に、アメリカの地位・信頼は失墜しており、ブッシュ政権の支持率はどん底の結果に陥っている。そんなブッシュ政権の共和党の不利の中、ジョン・マケイン上院議員は大統領選挙で、共和党候補となり、バラク・オバマ上院議員と大統領選を迎える結果になった。
 民主党の変革の勢いはすさまじいものがあったが、予想に反して、共和党のマケイン氏の勢いもあなどれなかった。というのも、戦争や金融危機といったことで、共和党が不利な背景の中、マケイン氏は健闘した。民主党の予備選挙で、オバマ氏とヒラリー・クリントン上院議員との戦いは史上最長のもつれになり、一方、マケイン氏は先に予備選挙に勝利し、一足先に大統領本線へとこまを進めた。

 さて、4日、アメリカで大統領選の投票が開始され、この結果、当選したのは、民主党のオバマ氏(47)。オバマ氏は4日深夜、地元イリノイ州シカゴで「変革が訪れた」と勝利演説を行い(*1)、となり、来年の2009年1月20日に第44代大統領に正式に就任(*2)することになった。任期は2013年1月までの4年間(*2)。
 結果内容は、オバマ氏の獲得選挙人数は「365」、マケイン氏は「173」。オバマ氏は「28州と首都」、マケイン氏は「22州」をそれぞれ制した(*3)。
 全米約1万8千人から回答を得た米メディアの出口調査によると、オバマ氏の男性からの支持率は49%で、マケイン氏の48%とほぼ並んだ。女性はオバマ氏56%、マケイン氏43%。オバマ氏の黒人の支持率は95%、ヒスパニックは66%に達する(*4)。
 年代別にみると、オバマ氏がマケイン氏にリードを許したのは65歳以上の高齢者のみ。30歳から60歳代前半までは小差でマケイン氏をかわしたほか、18歳から29歳の若者は66%がオバマ氏を支持し、32%のマケイン氏とは倍以上の大差がついた(*4)。
 白人全体のオバマ氏の支持率は43%。マケイン氏は55%。18―29歳の白人に限ると、オバマ氏の支持率(54%)はマケイン氏(44%)を10ポイント上回った(*4)。
 所得階層別では、年収1万5千ドル(約150万円)未満のオバマ氏の得票率は73%で、マケイン氏の25%を圧倒。1万5千ドル以上3万ドル未満の層でも60%の支持。20万ドル以上の富裕層もオバマ氏への支持は52%に上り、マケイン氏の優位は10万ドル以上20万ドル未満の層など一部に限られた(*4)。

 今回の大統領選挙には様々ね記録が破られた。
 まずは、オバマ氏が当選したことによって、米国建国の1776年以来、初めての黒人大統領(*2)が誕生することになった。これに関しては、アメリカ史上最も大きな衝撃となるニュースだといえる。そして、投票率であるが、64.1%(米ジョージ・メイソン大がまとめた推計値)と、過去最高水準を記録した模様。これまでの最高は、(記録が残っている)1960年以降で、ケネディ大統領が当選した60年の大統領選の63.8%(*5)、推定投票者数は1億3660万人で、過去最高だった04年の1億2230万人を大きく上回る見通し(6日付け)(*1)。48年間の破られていなかった記録が破られた形となった。なお、AP通信は、1908年の65.7%が過去最高だったと報じている(*5)。
 さらに、期日前投票に関しては、AP通信が3日、期日前投票状況を26州を対象に集計した結果、2440万人を超えた。全米の期日前投票者数は当日投票を含めた投票総数の30%強を占めると予測され、前回04年の22%から大幅に増える見込み(*6)という結果を、選挙序盤に見られた形。
 今回の選挙の特徴として、オバマ氏が共和党の牙城とされた南部に食い込んだこと(*3)があげられる。ブッシュ大統領は00年と04年に南部14州を総なめにしたが、オバマ氏はこのうちバージニア、ノースカロライナ、フロリダの3州を奪取、バージニア州で民主党が勝利したのはジョンソン大統領以来44年ぶり、ノースカロライナ州ではカーター大統領以来32年ぶり(*3)。さらに、オバマ氏は、前回04年に民主党候補ジョン・ケリー上院議員が勝利した19州と首都を守った上で、共和党のブッシュ大統領が勝利した31州のうち9州を奪取、民主党は「指定席」とされるカリフォルニア、オレゴン、ワシントンの西海岸3州に加え、西部のコロラド、ネバダの3州を共和党から奪取(*3)した。

 今回の大統領選は多くの人々に影響を与え、期待度が高いことをうかがわせた。オバマ氏の地元イリノイ州などで投票待ちの長い列ができ、ニューヨーク州ディクスビル・ノッチ村では、投票総数21のうちオバマ氏が15標を獲得し、マケイン氏の6票を上回った。この村での結果は全米の動向に影響はしないが、これまで共和党が圧倒的に強く、民主党候補が最後に勝利したのは1968年(*6)ということからも、オバマ氏の勢いがうかがえ、国民の期待が高いことがわかる。ちなみに、ブッシュ大統領は過去2回とも大差で勝利(*6)している。
 そして、勢いは続く。オバマ氏は04年にブッシュ大統領が勝利したオハイオ、バージニア両州などを奪還。得票率は52%で、民主党候補が5割を超えた(5日午前までの米メディア集計によると)のは76年のカーター氏以来(*1)。7日には、米大統領選で勝敗が決まっていなかった二つの州のうち、南部ノースカロライナ州で民主党のオバマ上院議員が勝利。同州で民主党が勝利するのは1976年ぶり(*7)。14日のAP通信の報道で、米中西部ネブラスカ州で大統領選の開票作業が終わり、民主党のオバマ次期大統領が選挙人5人のうち1人を獲得した。同州での民主党の選挙人獲得は1964年以来となる。残る4人は共和党のマケイン上院議員が獲得。14日現在の獲得選挙人数は、オバマ氏365人、マケイン氏162人(*8)となった。 そして、19日、中西部ミズーリ州でマケイン氏が勝利し、全米50州と特別区の首都ワシントンの集計がすべて終了した(*3)。
 こうした結果、民主党はクリントン前大統領以来、8年ぶりに政権を奪還(*2)した。

 今回の大統領選には、オバマ氏、マケイン氏の他にも消費者運動家のラルフ・ネーダー氏やリバタリアンのボブ・バー元共和党下院議員ら10人以上が第3党から出馬したが、第3候補の支持率は今回、1%以下で大勢に影響しなかった模様(*6)

 大統領選に伴い、米連邦議会選も行なわれているが、こちらはまだ最終決着がついていない。
 20日現在、上院(定数100で任期6年。2補選を含む35議席改選)は非改選分も含め、民主党58、共和党40、未決着2。下院(定数435で任期2年。全議席改選)は、民主党255、共和党175、未決着5となっている。民主党は76年の選挙を最後に、60議席以上を獲得していない(*9)。

 今回の米大統領選は多くの期待と影響を与えた。アメリカ国民の選挙に対する思いは、オバマ氏の「チェンジ」に大きく影響され、改革しようとする力が大きくなっている。同時に、大統領選は、アメリカ以外にも大きな影響を与えている。日本はもちろん、ヨーロッパからロシアから、中東、アフリカ、アジア、そして、アメリカに近いキューバにも。
 その各国の反応は、アメリカの大統領選挙ではなく、世界の選挙のような雰囲気にもなっているから驚きである。アメリカから世界に影響を与え、世界からアメリカにも影響を与えている。選挙の流れを見ても、波乱万丈な展開、そして、その結果、多くの歴史的な衝撃の記録がうかがえた。

 果たして、この選挙が転機になり、オバマ氏の「チェンジ」が改革へと導くことができるだろうか。

つづく

<参考資料>
*1 毎日新聞 2008年11月6日(木)『内政・外交を大転換 米大統領選 オバマ氏勝利宣言 「この国の真の力は武力ではなく、民主主義に由来する」』
*2 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『オバマ氏、大統領選勝利宣言 米経済再生に余力 「変革の時、到来」 政権移行へ準備加速』
*3 毎日新聞 2008年11月22日(水)『民主、9州奪取 オバマ氏365人 地滑り的大勝 米大統領選 集計終了』
*4 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『2008年米大統領選 オバマ氏 幅広い層が支持 女性56%、ヒスパニック66% 白人の若者も過半 出口調査』
*5 日本経済新聞 2008年11月6日(木)『投票率最高に 64%、米大推計』
*6 毎日新聞 2008年11月5日(水)『08年大統領選 アメリカの選択 「期日前」空前の3割 「民主支持」優勢に 最終投票率60%超えか』
*7 毎日新聞 2008年11月9日(日)『ノースカロライナ オバマ氏接戦制す』
*8 毎日新聞 2008年11月16日(日)『ネブラスカ州で選挙人1人獲得 民主、64年以来』
*9 毎日新聞 2008年11月22日(土)『議会選は未決着 民主の「上院安定多数」焦点』

<参考記事>

・「オバマ氏の勝利」/ハゲのブログ

・「勝利の後、次期大統領バラク・オバマは、シカゴのグラント公園で、大勢のサポーターと話します。 」/英語仏独伊・葡・西音読器 ReadPlease &『戯曲』

・「1438 オバマ氏、勝利の演説/日本はどうする/保健分野もよろしく」/ビギナーズ鎌倉

・「election」/スピーチカフェonsite

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コメント

  1. マケイン氏の大統領選運命( Doomed from the start.)

    John McCain to win 2008 US Presidential Election
    http://www.intrade.com/jsp/intrade/trading/t_index.jsp
    上のグラフは10月14日(投票日まで20日のカウントダウン)までのマケイン氏が大統領になれるかのイント…

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