マスコミの明暗(3)

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 マスメディアの厳しい状況は世界でも共通であるが、日本も厳しい状況である。
 しかし、日本には日本独自の問題が生じてもいる。
 世界のマスメディアと日本のマスメディアには、まだ壁があり、同時に、日本のマスメディアも日々、前に進もうとしているが、しかし、悪循環にも陥っている。

 その日本の状況をさぐる。

「放送法案 60年ぶり抜本的改正」

 60年ぶりにメディアの放送法が見直される。
 政府は3月2日、「通信と放送の融合を進める放送法改正案など関連法案を公表した」。「インターネット経由の番組配信など、通信と放送の垣根を越えたサービスに対応するため、現在の通信・放送関連の8法を4法に再編する」という。
 「法案によると、複数の放送局への出資を制限する省令『マスメディア集中排除原則』の一部を法制化する」。「出資比率の上限については、広告収入の減少と地上デジタル放送への移行対応で経営難にあえぐ地方の放送局に配慮して、現在より緩和して出資を受けやすくする方針だ」という。「その一方で、法制化することで厳格に適用する」。

 「新聞社と放送が密接に結びついて、言論を一色にしてしまえば、民主主義のもとである批判も生まれない」ということから、「同一資本が新聞社、テレビ局、ラジオ局を支配する『クロスオーナーシップ』の規制については、放送法改正案の付則に『3年以内に制度のあり方を検討する』と明記」。これは「ラジオやテレビの放送局開設時に、新聞社が出資して開局を支援した経緯もあり、規制は事実上、新聞社に対する出資規制の意味を持つ」ものだ。
 今後、注視したいものだが、どういった影響が出るのであろうか。

 さらに、「放送設備を保有して番組制作をする事業者しか地上波放送に参入できない仕組みを、設備を持たない番組制作事業者も参入できるよう改める」という。
 「通販番組の増加が問題視されたことを踏まえ、地上テレビや一部の衛星(BS)放送に教養、教育、報道、娯楽、広告など種別ごとの放送時間の公表も義務づける」。

 「1950年の放送法施行以来、60年ぶりに通信・放送分野の法体系が抜本的に見直される」。

<参考資料>
・「メディア 資本規制見直し 放送法案 60年ぶり抜本的改正」
中井 正裕、望月 麻紀(毎日新聞 2010年3月3日(水))

「「記者クラブ開放」に反対する新聞・テレビはいったい誰の味方なのか」

 日本の記者クラブ制度の評判は悪い。
 「日本の記者クラブは、1890年、帝国議会が発足した際に、取材を要求する記者たちが『議会出入り記者団』を結成したことに始まる」。「これをきっかけに、『情報を隠蔽する体質の根強い官庁に対して報道機関側が記者クラブをつくり、公権力に対して情報公開を求める』(日本新聞協会)という大義名分の下、全国の省庁、自治体、警察などに記者クラブが作られることになった」。
 「だが、1930年代後半になり、政府の言論統制が厳しくな」り、「その圧力に耐え切れず、ついには記者クラブ自らがその傘下に入ってしまう」。「そして大本営発表の戦争礼賛の記事ばかりを報じることになる」。
 「戦後、そうした反省に立って、記者クラブは復活した」。「49年には、『記者クラブは各公共機関に配属された記者の有志が相集まり、親睦社交を目的として組織するものとし、取材上の問題には一切関与せぬこととする』(日本新聞協会の方針)と、親睦団体の意味合いのもと、再結成している」。
 しかし「78年、日本新聞協会の編集委員らが記者クラブに対する『見解』を変更したことで性質は一変した」。
 「『その目的はこれを構成する記者が、日常の取材活動を通じて相互の啓発と親睦をはかることにある』(日本新聞協会)―『取材活動を通じて』」。「この文言によって記者クラブは実質上親睦団体から、取材拠点へと変わったのだ」。「ここには大手メディアしか参加できず、外国人記者やフリージャーナリスト、雑誌、ネットメディアは事実上締め出されている」。
 「その排他性によって、報道に対する競争がなくなった」。「権力側から記者クラブに加盟するメディアだけに流される情報を、各社横並びに報道するだけなので競争原理は働かない」。「閣僚や官僚の記者会見においても質問は予め決められた内容の“出来レース”である」。

 「この悪名高い『記者クラブ』制度に対し、OECD(経済協力開発機構)は、情報を寡占し、非課税の貿易保護制作に当たる閉鎖的な組織だとして批判し続けている」。「EU議会も毎年のように『非難決議』を採択し、また『国境なき記者団』や日本外国特派委員会(FCCJ)も何年にもわたって再三、相互主義に基づく記者会見の開放を求めて抗議を続けてきた」。
 「記者クラブの開放は、政治家・官僚・記者との健全な緊張関係の構築を意味する」。「質問の事前提出もなく、不利な質問が飛んでくるのも避けられない」。「だが、そのことによって、政治家も官僚も鍛えられ、また記者の方も事前調査と取材が必要とされる」。
 「日本の記者クラブは、もっぱら官僚機構を補完、サポートする役割を演じてきた」。「政治や行政の批判はしても官僚の批判をしないのは、霞が関を敵に回すと情報がリークされないという恐怖心があるからだろう」。
 記者クラブ制度は、「国政の場で会見が開かれるとき、首相官邸であれば『内閣記者会』、自民党は『平河クラブ』といった記者クラブが主債権を持ち、加盟社のみが出席する」。「雑誌、海外メディア、ネット、フリーランスにまで参加資格を広げて会見を開いてきた」。

 最近、「岡田克也外務大臣は外務省の記者会見をオープンにした」。「9月29日、これは日本のジャーナリズム史上、記念すべき日となった」わけだ。
 しかし、「外務省の100席ある会見室には雑誌の記者と外国メディアだけで、外務省記者会の記者の姿はない」。「岡田外相が示した『大臣会見等の開放』に読売新聞の記者などが反対し、全会一致が原則の記者会は直前まで会見をボイコットする動きを見せた」。
 さらに「9月16日、鳩山内閣発足の日」。「官邸官僚と記者会が『セキュリティー』を理由に開放を認めなかった」。

 「フリーランスや雑誌が、“書き飛ばし”といわれるような記事を書くことが許された背景には、記者クラブ制度のために質問権、情報にアクセスする権利がなかったということがある」。「つまり、質問する権利がないということは、逆に言えば、権力側は反論権を放棄したとみなすことができるのだ」。
 「開放した外務省と金融庁に対して、すべてのメディアが質問権を獲得したのだから、書き飛ばし、言いっぱなしはできなくなる」。「少なくとも“外交ジャーナリスト”“金融ジャーナリスト”と称するフリーランスの記者たちはきちんと記者会見に臨み、質問を投げかけ、大臣や官僚からの反論もきちんと載せる」。「そうでなければアンフェアになる」。

<参考資料>
・「「記者クラブ開放」に反対する新聞・テレビはいったい誰の味方なのか」
上杉隆(ジャーナリスト/SAPIO 2009.11.11)

「記者クラブ開放を拒む新聞・テレビこそ日本最大の抵抗勢力だ」

 日本の記者クラブ制度問題が注目されてきている。
 「EU議会もOECD(経済協力開発機構)も規制緩和、情報公開、相互主義の観点などから記者クラブはおかしいと指摘し続けている」。「普通、外圧がかかると日本のマスコミは大騒ぎしたように報道するのに、記者クラブの問題については報道ゼロ」。「日弁連(日本弁護士連合会)も『記者クラブは国民の知る権利を阻害している』と指摘している」が、「全く報道しない」。

 記者クラブに属している側が「記者クラブ以外のメンバーを会見に入れたくない理由として挙げるのは3つ」。「1つは会見の主催権が記者クラブにあること」。「2つ目は会見場のスペースに限りがあること」。「3つ目はセキュリティの問題」。
 「記者会見の主催権が記者クラブにあるのは日本だけ」。「歴史的に言えば、戦前までの帝国議会の時代は権力側に記者会見の主催権があり、政権が交代するたびに自分に都合のいいことを書くメディアだけを排除した」。「だから、メディアが一致団結して主催権を自分たちで持った」。「その精神は健全だった」のだが、「戦後は自分たちの即得権益を守り、他の同業者を排除するための団結に変わってしまった」。
 「2つ目のスペースの問題は詭弁もいいところで、単に椅子を増やせばいいだけ」だという。「NHKや大新聞はそれぞれ10何人ものパスを持って」いるが、「全員が来るわけではない」という。「総理の就任会見のときなどに物見遊山に来る程度」だという。
 「3つ目のセキュリティは本末転倒で、実は世界中で最も危険な記者会見を開いているのは日本」だという。「なぜなら、世界では記者会見の主催権は権力側が持ち、逮捕歴がないかどうか、テロリストへの協力歴がないかどうかなどについて権力側が一人一人の記者をチェックする」。「ところが、日本の場合、個人に対するチェックはなくて、社ごとにパスを支給する」。「つまり、セキュリティのチェックを国家が民間の報道機関に丸投げしてしまっている」というわけだ。

 「日本のマスコミは、残虐な事件が起こっても、警察発表があるまでは一行も書かず、いったん警察発表があると、それに乗った一方的な報道を行なう」。「普通、世界のジャーナリズムは、警察発表があっても被疑者側も取材し、独自に事件を分析し、被疑者が犯人であることに疑問があれば、それについても言及する」。
 「しかも冤罪であることがはっきりすると、検察、警察の批判は行なうけれど、自分たちが間違った報道をしたことの検証は不十分だし、きちんとした謝罪も行われない」。

<参考資料>
・「記者クラブ開放を拒む新聞・テレビこそ日本最大の抵抗勢力だ」
上杉隆・井沢元彦(対談)(SAPIO 2009.11.25)

「記者クラブの年間13億円超「公費支出」を事業仕分けせよ」

 日本のジャーナリズム問題は深刻であるが、「記者クラブと対立し一日二度の会見を開いてきた亀井金融相だが、ついに記者クラブが折れた」。3月中にも記者クラブ側の方針転換によって、全ての記者による同時参加での会見開催が行われる予定だ」という。「しかも、主催権まで大臣側に明け渡すという、外務省と同じ完全解放である」。
 明るい兆しだが、「記者クラブにはまだ大きな即得権益が残っている」。
 「記者クラブメディアは庁舎内に記者室を構え、各社ごとに一定のスペースを確保している」。「また、記者クラブが主催権を持つ記者会見場に関しても、非記者クラブメディアを締め出す形で事実上の占有を行っている」のだ。

 「中央の各省庁に質問状を送付し、記者クラブに対しどれだけの便宜供与が行われているかを調査」をみてみる。
 「中央官庁のなかにある記者室・記者会見場のスペースを、永田町・霞が関など各地域のオフィスビル相場に照らして換算」。「なお、記者会見場については、現状で筆者の定義するオープン化(会見の主催権を官が持った上で非記者クラブに開放)に該当する外務省のみ試算から除外」。
 「その総額は、中央官庁だけで年間約12億6268万円に上ることが判明した」。
 「例えば、金融庁や文部科学省の入った霞が関コモンゲートには民間企業も入居している」。「民間企業がオフィス利用する場合は賃料を払うことになるが、取り扱っている不動産業者によれば『坪3万円台後半から4万円台』という高額物件だ」。
 「昨年9月に消費者庁が発足した際には、高層ビルへの入居が問題になった」が、「記者クラブも約130m2の記者室に無償で入居していたのである」。
 「同ビルの賃料は1m2あたりに月1万1034円だから、年間賃料を試算すると記者室だけで約2600万円」で、「出席に当たって記者クラブへの申請が必要な会見場も含めると、約5600万円にも上る」という。
 他の例でも「記者室にある机や椅子、電話・ファックス、テレビなどの備品は官庁側が用意したもので、外務省にはプラズマビジョンまである」。「電気代は全記者クラブが官庁の負担で、なかには電話・ファックス代まで払っているところも」あるという。
 「人件費に関しても、記者クラブのために専従の職員をつける官庁は多い」。中でも「農林水産省は、記者クラブの受付要員3名を外部委託し、年間1068万円もの人件費を業者に支払う厚遇ぶりである」という。
 「賃料にそれら経費を上乗せしたところ、試算できた範囲でもトータル年間約13億4308万円が、中央官庁から記者クラブへ便宜供与されている」という。

 「民間の任意団体にすぎない記者クラブが、国民の財産である官庁の建物の一部を独占的に無償で使用するのは、公金や公の財産の使用について規制した憲法第89条の精神に反する疑いがある」。
 「その法的根拠について官庁や記者クラブの側」は、「『記者室は庁舎の目的外使用に当たらない』とした昭和33年の旧大蔵省管財局長通達を根拠に挙げてくる」。

 しかし、これも長続きはしないかもしれない。「今年、横浜でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の会議が開かれる」。「記者クラブメディアは自分の首を締めるから書かないが、事業仕分けの場で記者クラブへの経費が問題視されたのだ」。「記者の食事代、土産代まで含まれ、プレスセンターの設備を含めた合計が約67億円」。「『4000人のうち半数以上が日本のプレス。横浜で開催されることを考えるとオーバースペースであると疑われる』として、経費を3分の1に削減すべきとの意見が仕分け人から出た」。「結果、プレスへ提供する食事などプレス経費全体で約20%の削減を行ない、約54億円まで圧縮されることになった」。
 「同様のことは首相の外遊取材でもある」。「かつては記者らが首相と同じ政府専用機に同乗し、高級ホテルの食事代、宿泊費まで税金でまかなわれていた」。

<参考資料>
・怒りのキャンペーン 第8弾 ジャーナリズムは変わらなくていいのか
「記者クラブの年間13億円超「公費支出」を事業仕分けせよ」
上杉 隆(ジャーナリスト/SAPIO 2010.3.31)

参考記事

・「記者クラブ解放は何時?」/DJ ROSHI NEWSから
・「記者クラブは、セキュリティの問題なのだが、…。」/この国を孫たちに残すのか、(妄言偏見録)

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