どこに行くのか、ヨーロッパ!(5)

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 世界的な金融危機により、世界中が混乱に陥っている。ヨーロッパも例外ではない。

 そんな中、利益を上げている企業、立て直している国もある。
 その立役者の行動を見ることは重要なことだろう。

 大混乱のヨーロッパ。そこでも希望を見いだしている対策は、他の国々、地域にもヒントになるだろう。

「経済危機でも解雇ゼロ!ドイツの労働システムに学べ」
シュピーゲル(ドイツ/COURRiER Japon 2010.2)

 金融危機の影響もあり「世界的に失業者数が増加する中、ドイツの失業者数は、当初の予測を大幅に下回る320万人にとどまっている」という。「基幹産業の受注率が落ち込み、先進国の中でも金融危機の影響をとりわけ強く受けているドイツだが、失業率は一年前に比べて0.5ポイント上昇したに過ぎない」。

 「失業率の増加に歯止めをかけているのは、柔軟な労働時間の設定だ」。「特に労働組合、経営協議委員会、企業のトップが合意して取り決める『労働時間口座』、そして、従業員を解雇する代わりに労働時間を短縮する『時短勤務』のシステムによるところが大きい」。「この制度を導入している企業では、好況時に超過勤務をした場合、従業員は残業代を受け取らず、その分の労働時間を『口座』に貯めておく」。「不況で時短勤務になった際、口座に貯えておいた労働時間を使えば、好況時とほぼ同額の給料をもらえるという仕組みだ」。

 「ドイツのように好況時と不況時の労働時間を柔軟に設定する制度が整っている国は、実はあまり多くはない」。「ブラジル、フランス、スペインなどでは、社内に対立する労働組合が複数存在する」。「労働時間を変更しようとすると必ず反対する労働組合が出てくるため、不況になると会社側は従業員の解雇という選択肢しか残されていないことがままあるのだ」。

「強引なまでの“仕分け作業”で ハンガリーを立ち直らせた男」
フプロスト(ポーランド/COURRiER Japon 2010.1)

 2009年「4月からハンガリー首相を務めるバイナイ・ゴルドン(41)」。
 「金融業界を渡り歩いてきた経済人で、政界入りしたのは、わずか3年前」。「学生時代からの友人だったジュルチャーニ・フェレンツ前首相の誘いに応じて、国家開発庁の代表、経済大臣などを歴任した」。

 「就任からわずか6ヵ月で、これまでの20年間、どの首相も成し遂げられなかった抜本的な経済改革を行い、その“ショック療法”も効き目を見せ始めている」。

 「手始めに自分も含め、政府内の友人たちの賞与を下げ、各種手当、優遇措置を廃止した」。「消費税を大幅にアップする一方で、所得税を下げる税制改革にも着手」。「2010年の予算では年金、社会保障、家族手当のカットも行った」。「強い労働組合の圧力に屈することなく、公共交通機関への支援もカットした」。
 「結果、財政赤字は大幅に抑えられ、9%の失業率も下がる兆しが見える」。「1年前の危機で、ハンガリーを離れていった外国人投資家も戻りつつあり、11年度からは3%以上の伸び率で成長し始めるはずだ」。「不人気な政策を打ち出しながらも、支持率は政権発足時の8%から45%にまで上昇している」。

「危機下でも業績を伸ばす 欧州金融業会の“最大の謎”」
スペクテイター(UK/COURRiER Japon 2010.2)

 金融危機でも「無傷で危機を乗り越えた上に、業績を伸ばしている銀行があるという」。「それも、昨今の不況で最も打撃を受けた国の一つ、スペインの銀行だ」。

 その銀行とは「サンタンデール・セントラル・イスパノ銀行だ」。
 「サンタンデールの会長エミリオ・ボティン(75)は、欧州一の敏腕銀行家だ」。「ボティンの祖父が1857年に創業した当時、サンタンデールは小さな地方銀行に過ぎなかった」。「三代目の当主と聞くと、蓄財よりも浪費の才に長けていたそうだが、エミリオは違った」。「1986年に同行の会長に就任すると、『互いの顧客を取り合わない』というスペイン金融界の紳士協定を破り、精力的な買収、吸収合併を行ってきた」。「当初75万人だった顧客数は、現在9000万人に達するほどに成長した」。

 「欧州の大手金融機関が次々と政府の支援を受けたり、国有化されたりする中で、サンタンデールは時価総額でフランスのBNPパリバを抜き、欧州最大の銀行に成長、規模では世界6位、収益性では世界3位に躍り出た」。
 「成功の秘訣は『仕組みが理解できない商品は買わない。自分が買わないような商品は売らない。よく知らない顧客には融資しない』ことの3つだとエミリオは言う」。「サンタンデールは、投資銀行業務に重点を置かない方針のおかげで、サブプライムローン関連の損失を最小限に抑えることができた」。

 「これほどの規模に成長したというのに、同行はいまだに家族経営にような形で運営されているという」。

「欧州「雇用の奇跡」は本物か」
ラーナ・フォルーハー(ビジネス担当/Newsweek 2010.2.24)

 「アメリカとヨーロッパの失業率は現在、約10%と同様にあるものの、欧州北部の国はドイツ(7.5%)もデンマーク(7.4%)もオランダ(4%)もこの数字を大幅に下回っている」。
 しかし、「問題の『奇跡』の本質を理解し、持続性がある現象かどうかを見極めることが欠かせない」。

 「ヨーロッパ各国の政策は今のところ奏功しているが、景気回復が遅れた場合は大変なリスクを背負うことになりかねない」。
 「ヨーロッパの小国の中には、グローバル経済の流れに逆行する繁栄ぶりを見せているところもある」。「ノルウェーが高い成長率と低い失業率を維持しているのは、恵まれた石油・天然ガス資源や巨額の資産を持つ政府系ファンドのおかげ」で、「こうした条件に当てはまる国は限られるため、ノルウェー型成長は世界的モデルになり得ない」。
 「スウェーデンの立場も独特だ」。「90年代に規制緩和を進めた同国は巨大な新興国市場に通信インフラなどの資本財を供給する国として台頭」。「09年には成長率マイナス4.7%を記録したが、今も急成長を続ける中国の力という助けを得て成長率は今後2年間で2~3%に達すると予想されている」。

 そんなヨーロッパの状況であるが、「エコノミストによれば、ヨーロッパはアメリカに遅れて失業率拡大に見舞われる傾向がある」。「アメリカは今年中に失業率のピークを迎える見込みだが、ヨーロッパの経済大国は来年になっても失業率の上昇に悩まされるだろう」というのだ。
 「ドイツの失業率は11年までに2ポイント上がって9.5%に達すると、ドイツ銀行はみている」。「一方、アメリカの失業率は同機関に約2ポイント下がる見通しだ」。
 「経済成長に目を向ければ、アメリカの10年の実質GDP(国内総生産)成長率が約3%と予測される一方で、ユーロ圏は1%ほどにとどまる」という。「景気回復が早いデンマークも1.8%が精いっぱい」だ。

 「今回の景気後退でより高い失業率に苦しんだのは、不動産バブルの崩壊で建設・不動産部門という大規模雇用産業が打撃を受けた国だ」。「アメリカもしかり、イギリスやスペインやアイルランドもしかり」。「つまり、この3ヵ国は他のヨーロッパの国々よりアメリカと共通する点が多い」。
 「エコノミストによれば、ヨーロッパでは数年以内に低成長・高失業率の傾向が復活する可能性が高い」。「原因は、アメリカに先駆けて債務返済に取り組んでいる(その結果、短・中期的成長に歯止めがかかる)ことだけでなく、人口統計学的な事実にある」。
 「アメリカ人はヨーロッパ人より多くの子供を産んでいるし、今後も産み続けるだろう」。「おかげでアメリカは長年にわたってヨーロッパより速い成長を持続できる」。

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